Zの悲劇
評判
Zの悲劇の評価:
3.88/5点 レビュー 50件。 C ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1〜9 1/1ページ
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Zの悲劇の評価:
3.88/5点 レビュー 50件。 C ランク
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初読は創元推理文庫の鮎川信夫訳だった世代です。電子書籍版がほしくて宇野利泰訳に手を出しましたが、冒頭から違和感がはげしくて物語の世界に入りこめず、思わず原文、鮎川訳と見くらべました。
真っ先に抵抗を感じたのは、語り手ぺーシェンスが父親のことを「パパ」と呼んでいること。
原文が"dad"とか"pop"ならパパでいいでしょうが、ぺーシェンスは地の文でも会話でも父親を"father"と呼んでいます。パパ、パパの連発でいきなり薄っぺらくなってしまった感じ。
鮎川訳では、地の文では「父」、会話では「お父さん」と訳していました。私はだんぜんこっちが好き。
また宇野訳は、善意にとれば親切なのですが、注釈がわりに原文にない言葉を大量に追加して、おそろしく文章のテンポを悪くしています。
一例としてぺーシェンスの自己紹介のくだり。
原文 「As for the rest, I may aptly term myself the Wandering Nordic.」
宇野訳「そのほかの諸点を一括して表現すると、"野放図に世界各地を歩きまわる金髪女"とでも呼ぶのが適切であろう」
鮎川訳「その他のことといえば、わたしはさまよえる北欧人といったらぴったりすると思う」
レーンの従者クエーシーの描写。
原文 「An astonishing little man with a hump on his gnomish back popped in and out of the room.」
宇野訳「部屋には、背中に瘤があり、地中の宝物を守るという小鬼を連想させる男が出入りして、わたしたちのもてなし仕事を担当していた」
鮎川訳「地の精みたいな背中に瘤のあるおそろしく小さい男が部屋を出入りした」
きわめつけのヘンな訳は、カリアー弁護士がドウの弁護にやる気をだす場面のセリフ。
宇野訳「こんどの大戦でドイツ軍の軽戦車部隊が強行した国際法無視の国境侵犯行為にしたって、弁護を引き受けてみせますよ」
戦後に改訂された異本の可能性を完全否定はできませんが、WW2開戦後の1942年のリトルブラウン社版(クイーン名義の初版)でも原文は次のとおりですし、1980年代のペーパーバックも同様でした。
原文 「I'd defend the Duesseldorf Maniac.」
鮎川訳「デュッセルドルフの狂人でも弁護してみせますよ」
"Duesseldorf Maniac" は有名な殺人鬼ペーター・キュルテンのこと。前後の文脈からしても、殺人容疑者の弁護の話をする場面で「国境侵犯でも弁護してみせる」ではあまりにトンチンカンでしょう。
正直これまで、クイーンの初期作は、論理的な流れさえまちがえなければ誰が訳しても大差ないと思ってましたが、今さらながらこんなに変わるものかと驚かされました。
宇野利泰氏は学生時代にさんざんお世話になった訳者さんですが、この訳はダメだと言わざるをえません。