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(短編集)
鬼火
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【この小説が収録されている参考書籍】
鬼火の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.11pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 21~27 2/2ページ
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| 本来、本書の表題作は『鬼火』であったが、『蔵の中』の映画化による話題から売上を期待した出版社がこの表題に変えたものであって、メインはやはり元の表題作の『鬼火』である。 『鬼火』だけではなく本書に収められているのはいずれも金田一耕助が登場する以前の戦前の作品で、乱歩の言うように「意識してか無意識にか」谷崎潤一郎の影響が見られ、中でも『鬼火』の登場人物たちの妄執には鬼気迫るものを感じずにはいられない。 ただ、例えば『鬼火』ではなぜ語り手の竹雨宗匠が代助とお銀の死の真相を知っているのかとか、『蔵の中』の笛二は結局何をしたくて磯貝に原稿を送ったのかとか、『蝋人』の今朝治は獄中にいたはずなのにどうして山惣の妾宅に現れたのかとか、各作品にツッコミを入れたくもなる。 つまり本書の作品は戦後の作者作品と違って合理性・論理性に欠けているのだが、そういうツッコミは無粋と言うものだろうか。 『面影双紙』だけは最後のオチが利いていて面白かったと思う。(いや、『鬼火』もツッコミを入れたが、理屈ぬきで面白かったと思う。) | ||||
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| 「鬼火」「蔵の中」「かいやぐら物語」「貝殻邸奇譚」「蝋人」「面影双紙」の6編が収められている。 いずれも昭和10-11年に執筆されたもので、横溝の作品のなかでも異色の、幽玄美を押し出した幻想的な作品となっている。 グロテスクだけど美しい、怪しい世界が広がっている。じめじめとした日本的な「暗さ」がある。決して出来は悪くないと思う。 ただ、どこかランスの悪いところがある。横溝は、こうした作品には向かないような気がするのだ。ミステリとしての合理性が先に立ってしまっているし、どんでん返しが持ち込まれたりすると、読者ははっと現実に引き戻されてしまうのだ。また、結末の弱さも目立つ。 こうした作風で突き進まず、戦後に金田一ものをつくり出してくれたのは、本当にありがたいことだ。 | ||||
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| 昭和10年前後に執筆された短篇、中篇が収録されたこの作品集は推理小説ではない。後年の作品にも顔を出す、著者の耽美的で幻想的そしてグロテスクな世界感だけが凝縮された収録された作品集である。「文学的な完成度が高い」という指摘があるが、まったくそのとおりだと思う。 金田一耕助シリーズも横溝正史でなければ書けない小説だが、この世界も著者にしか書き得ないであろう。横溝正史を語る上で避けることの出来ない一冊だ。 なお、本書の解説は、横溝作品の殆んどの解説を手掛ける推理小説評論の大家中島河太郎である。出来の良くない作品の解説になると粗筋を紹介してしまう癖がある人で憎めないのだが、本書の解説には力が入っている。そういう面からもこの作品の価値をうかがい知ることが出来る。 | ||||
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| 二人のいとこ同士の画家の葛藤を軸に展開される怪奇耽美小説。 火傷を負い顔が醜くなりゴムマスクで隠すー後の犬神家の一族の佐清に生かされているようなところもある。 一時は軍部の指示により大幅な削除を命じられたのだが、後に原文が見つかり現在では当時そのままで読めるようになった。 | ||||
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| 横溝正史の著作の中でも もっとも文学的な完成度が高い短編集である。これを読むと 横溝の資質が 泉鏡花や谷崎潤一郎に近似していることがよく分かる。 蔵の中は 高林陽一がATGで映画化した。高林という特異な美学を持つ映画監督を惹きつけたことは 邦画史の一つの事件である。実際 高林は 本陣殺人事件も映画化するほどの入れ込みようである。 横溝の映画というと どうしても「犬神家の一族」となってしまう。角川映画を世に轟かせた一作で それはそれで エポックメーキングではあったが 本当に横溝自身に迫ったのが高林陽一だと 小生は 確信犯的に 確信している。 | ||||
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| 昭和8~11年に発表された5短編を収録。 「新青年」への発表された4編はどれも佳作だと思います。中でも一人称形式で語られる中編「鬼火」の出来が良く、2人の画家に纏わる嫉妬・憎念の物語を美しくも悲しく描ききっています。読後感も良。乱歩氏は、谷崎潤一郎の「金と銀」「ある少年の怯れ」「恐ろしき戯曲」と本書収録の「鬼火」「面影双紙」「蔵の中」に一部類似性が見られると述べられたようですが、確かにその点は否めないとは思います。 しかし、各作ともに設定とその細に渡り描かれている世界・雰囲気は魅力的であり、少ない枚数ながらどれもが完成度の高い作品となっております。本来比較するべきではないとは思いますが、(入手困難でしょうが)谷崎作も読んでみてはいかがでしょうか。 | ||||
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| この短編集に入っている、「面影双紙」について書きたい。この作品は恐怖をテーマにしたものだと思うが、それは化け物とか、怪物といったものでは無い。いちばん身近な存在・・・人間である。これを読み終えたあなたは、しばらく呆然として、空想と現実のはざまから抜け出れず、著者の小説技巧に驚愕するであろう。 | ||||
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