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半島を出よ



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半島を出よの評価: 4.00/5点 レビュー 322件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全230件 81~100 5/12ページ
No.150:
(5pt)

生き延びろ。

この小説は私が今まで読んだ本の中で最も感動したものの一つであるが、だからこそ読み終わった時点は、書評を書くとかそういうレベルのことができない。これは、村上龍氏の小説を読んだ直後に感じる共通の事象だ。いま、かなり長い時間を経てこの小説のことを不意に思い出し”あの、鮮明に印象に残っている文章をもう一度読みたい。”と本棚からこの本を取り出しページをめくり、線を引いた多くの箇所をたどった。その部分は、下巻142ページと159ページに記載されている、スリョン中尉の父親の言葉だった。「スリョン、よい詩を書くことができる人間になりなさい、読む人の側に立った詩を書くんだよ。」村上龍氏の小説には、暗闇の中に細く力強い一筋の光がさす部分がある。その部分に救われたマイノリティーに属する人間の数は、少なくないはずだ。
半島を出よ (下)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (下)より
4344007603
No.149:
(4pt)

徹底したリアリズム

私は実は、小説に出てくる病院に勤めているのですが、あまりにもリアルな描写に驚きました。登場人物はもちろん実際と異なりますが、病院の中の様子がそのまま小説に出てくるのです。研究室の並び方が少し違いますが、確かに奥の研究室はホテルシーホークに面しており、クライマックスのシーンでは、ここを視点にするのが最もダイナミックな映像になると計算されているのでしょう。このシーンは自分にも瓦礫が飛んで来るような錯覚に陥りました。シーホークの中の宴会場の名前などもそのまま使用されており、よくシーホークがここまでの使用を許したものだと感心しました。でもここまでリアルだと逆に映画化はしにくいでしょうね。
読んだ後、密告した市役所の女性はどうなったのだろうと気になりました。感情移入しにくい登場人物が多いですが、この女性の行動はさておき、一番自分の立ち位置に近いかもしれないと思いました。残されたこどもたちが気がかりです。
半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)より
4344410017
No.148:
(5pt)

すごい!

時代背景がすでに勉強になると思う、住基ネットや、物流、中央集権、官僚支配など。
アメリカに見放され、逆に反アメリカの日本、さらに大国となった中国に怯える日本。
核武装に走ろうとしている姿は、何気にアメリカ追随すぎるの現代日本を警告しているのかな?
それは、経済や時代に精通している村上龍だからこそかける。

占領軍に立ち向かおうとするのが、いわゆる社会不適合な危ない少年達。

とても凝っていて、壮大なストーリーだと読みながら何度も感心した。
特に福岡が舞台なので、福岡人には描かれている風景が普通に浮かび、現実感が溢れる。

この小説を通して、思想が注入されるようだ。同時に知識量、考え方に圧倒された。

面白い。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.147:
(4pt)

結構リアル

まったくのフィクションなのですが、「こういう状況はありかも」と思わせる展開がなかなか良かったと思います。
イラク戦争後なかなか収束しない中東情勢からアメリカ経済の弱まり、日本へ波及して弱体化したところへ、北朝鮮の部隊が遠征軍と称して侵攻してくる、それに対して日本政府はまともな対策が取れないといった辺り、リアリティを感じました。
ただ、皆さんも書いてますが、前半(上巻)は「これは」と思わせるのですが、後半になってくると、「それはやはり無理があるだろう」というような感じになってきますね。
まあフィクションなのでそれはそれでありなのですが、前半が良かっただけにちょっと残念と言う感じでしょうか。

でも、平和ボケの今の日本の状況に「日本人よもう少し危機感を持て」という警鐘を鳴らしてるような、そんな作品です。
改めて日本の危機管理を考えさせられます。

【2009/01/20 追記】
本書の冒頭の描写と、この年末年始の日比谷公園の状況を見比べて、だんだん似たような状況になってきたと感じられるのは私だけでしょうか・・・?
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.146:
(4pt)

よく取材している

話がおもしろいよりよく取材しているなあというのが率直な感想である。
最期には参考文献として様々な書籍がのっている。また現地の人、脱北者の方への取材もかなりしているなという印象。
日本という国を占拠しようと思うなら新幹線テロを起こすんじゃなくて離島を占拠すれば一発だというとこを読んでそりゃそうだなと妙に納得した。
村上氏はこの本を書き今の日本政府に対しての危機意識の欠如を喚起したのであろう。こういう状況になれば取るであろう日本政府の対応が本の中で現実の物としてありありと感じられた。
ただいつも村上氏の本を読んで思うのだがそういった現実を描いている反面妙に出てくる人が漫画チックで浮いている感じがする。今回も主役となる人物たちが現実ではめったにいないであろう個性を持った人物たちであった。
面白かったが少し違和感のある作品であった。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.145:
(4pt)

近未来小説の傑作

「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞を受賞した時に
サイン会で受賞作にサインをもらって以来のファンである。
最近は彼の著作はあまり読んでいなかったが、本作は
話題になった本であり、文庫本になったのを機会に読んだ。
筆者渾身の大作である。日本社会の矛盾を見事に突いた
小説。北朝鮮に福岡ドームをハイジャックされ、観客を人質に
とられた。そして福岡全体を占領され、日本から独立すると言う。
エピソード毎に主役が変わるのがいいのか悪いのか判断できない
が、著者は意図的にそれぞれの立場から事件を描こうとしたと
思われる。ストーリーの展開を違った角度から描き立体像を
浮き彫りにしている。日本社会からはみ出た若者が最も
果敢に高麗遠征軍に立ち向かうというアイロニー。
悪の権化のような北朝鮮の軍隊の兵たちがかえって純粋な
人間であることを知らされる。
息詰まる最後の爆破の瞬間。このストーリーのハイライトだ。
映画化が望まれるが、多分政治的配慮からないと思う。
行間がなくて文字がびっしりで読みにくいのが
唯一の難点だ。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.144:
(5pt)

作家の腕力が生みだした傑作!、続編を期待するのは欲張りだろうか?

村上龍はデビュー作の風俗的テーマや性的な皮膚感覚がついてまわるようなイメージが先行する作家、という認識だった。しかしいくつかの作品を読んで、実は力でねじ伏せるような書きっぷりができる作家なのだと感じるようになった。そしてこの作品ではさらに進化して、社会的テーマに対して、真っ正面から政治的・経済的事実を踏まえたフィクションを構築した。
 SF作家でもなく、戦記物を得意とする伝奇作家や、軍事や経済社会評論家でもなく「村上龍」が書いたことがすごく衝撃的だった。読んでみてその内容と完成度にももちろん驚愕した。兵器や戦略戦術の細部に拘らずに、反乱軍と市民両者の衣食住に目を配った定量的なシミュレーション的作風が何とも不気味で面白くてたまらなかった。
 日本社会のぬるい感じと、政府の無能さが繰り返し述べられているところは、カレル・ヴァン ウォルフレン「人間を幸福にしない日本というシステム」という本が思い出される。強い憤りに満ちた文章だ。終章、問題は解決し平和が戻ってきたシーンが描かれるが、重要なのはこの国のシステムは結局何も変わらなかったということだ。中央政府を信じられなくなり独自の道を進み始める福岡・九州、そして生き残ったコリョの広報担当官と女性兵士と莫大な資金。地域ナショナリズムが広がっていく日本の中で、残った二人が邂逅し使命に再度覚醒する時、新たな物語が始まるのではないか、と期待してしまうのは欲張りすぎだろうか。
 ところで、共和国では本書はどのように読まれているのだろうか、最後にそれが気がかりだ。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.143:
(5pt)

傑作

傑作である。

北朝鮮の特殊部隊が福岡に上陸し、市を占拠する、というアクロバティックな設定ではあるが、読ませる。作家の資質というのは想像力と表現力に尽きると思うが、両方が十分に発揮されている。

最近の「経済かぶれ」で誤解されているかもしれないが、村上龍は基本的にラディカルな作家である。ラディカルというか、アナーキーと言った方がよいかもしれない。つまり、国家とか、大組織とかいうものをあまり信用していない。運命は自分で切り開けるし、切り開くものだと思っている(はずである)。経済の知識とかお金というのはあくまでそのためのツールでしかない。

最近では、軟弱な世相を反映してか「人間いくらがんばっても運命には抗えない」みたいな、Yoshi君とか『世界の中心で、、、』みたいな作品群が人気を博しているが、改めてラディカルな作家として村上龍を位置付けてみると、この小説はそういう考え方へのアンチテーゼを示しているとも言える。ちなみに、別に「運命」の箇所は、「家族」でも「国家」でも「組織」でも「遺伝子」でも、何か抗いがたいものであればなんでもよい。「そんなの関係ねえ」っていうのが村上龍の基本的な態度である。

何か困難に対面したときに、人間は何か抗いがたい大きなものへ原因を求めがちである。「運命だから」とか「家のしきたりだから」とか「会社が言うんだから仕方ないでしょ」とか「わたしって何食べても太っちゃう体質なのよね」とか「おれだって生まれつきこの顔だから文句いうなよ」みたいな。そんなの関係ないのである。いや、そう言い切るとちょっと苦しいが、少なくとも、200年前に比べたらあんまり関係なくなってきているはずである。

『半島を出よ』というタイトルは、もちろん半島を出て日本にやってきた北朝鮮特殊部隊員(めちゃくちゃ優秀である)のことを想起させるが、彼らが真に出るべきだったのは、北朝鮮という国家の軛だったのかもしれない。また同時に、「半島」というのは、日本人が知らぬ間にひたっている、なんだか軟弱な運命論のことなのかもしれない。
半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)より
4344410017
No.142:
(5pt)

イシハラとノブエ

について、一言。彼らは村上の小説「昭和歌謡大全集」の登場人物。
村上は以前から、日本の一般大衆が自覚なき被支配階級に属する(滑稽なことに被支配階級には政治家・国会議員なども含まれている)、という思想を持っていて、この小説にもそのような思想が色濃く出ている。
この本では、支配階級でも被支配階級でもない自由人(かつマイノリティー)として、イシハラたちが描かれている。わかりやすく言えば、自由人とは、社会常識に縛られず自ら思考・行動する人、というような意味だ(村上がはっきりこういっているわけではないが・・・)。
北朝鮮の軍人も当然ながら、被支配階級に属する人々で、村上の思想からすれば、自らの判断で行動するイシハラたちに勝利するはずもない。
村上は、被支配階級に属する我ら一般大衆をある意味軽蔑しているように見える。しかし、一方で「いつまでも自分で考えず、行動しないと本当に世の中こうなっちゃうぜ」とアフェクションを伴う警告をしているのである。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.141:
(4pt)

北朝鮮コマンドに福岡ドームが占拠された!

内容が濃い小説になりそうなので(また下巻はまだ読んでいないので)、上と下を分けての御紹介にします。
 この小説は、北朝鮮民主主義共和国の特殊部隊9名が日本に潜入、プロ野球オープン戦で盛り上がる福岡ドームを武力制圧。彼らを人質に国内から五百名の特殊部隊隊員を引き入れ、福岡を中心に九州を占拠してしまう物語です。北朝鮮への反乱軍を名乗った彼らに対しては、北朝鮮からは反逆者故に好きにしてもらってもいいという回答が正式に日本政府にだされ、アメリカは日本を守る価値を見いださず九州から撤退。日本政府首脳も、首脳陣の不在の間に先手を取られ、愚かにも特殊部隊隊員を逆制圧するチャンスを逃し対策を取れないままに九州を封鎖して本州と切り離してしまいます。
 日本に北朝鮮が攻め込むなんて、ナンセンス、無茶苦茶な話だと普通は思いますが、読んでいるとじわじわともしそうなったら日本政府の対応はこの小説にでてくる弱い政府よりさらに弱腰なんじゃないだろうかと暗澹たる気分になりました。そして、それは政府がどうこうという以前に、我々一人一人も日常であまりにも暴力や戦争から切り離された世界に住んでいるから、いざこういう事態になったら闘う前に全ての戦意を喪失してしまうかも知れないリアルさからくることに気付いてさらにもう一度暗くなってしまいました。
 小説の中で語られることですが、日本人は暴力に慣れていないし暴力を振るわれることに我慢ができない。だから、自分が逆に暴力を振るう事、徹底的に暴力で何かを解決することを考える能力を失ってしまっているのだ、というのは妙にリアリティがあります。今の若者が粗暴だという話はよくされますが、あれとても自分が反撃されること暴力に飲み込まれることがないことが前提でのことで、自分がまったく同じような事をされるという前提の世界では決してああはなれないのは目に見えてあきらかです。
 戦争から六十年余、日本人は本当に暴力に弱くなったと思います。
 それがいい事だとも悪い事だとも一概には言えませんが、最近の外交問題とか軍事の問題を見ていたら、日本はそのことについて完全に力を失っていることはやはり事実ですし、そのことが弱点としてしか作用しないような処世を国際社会でしているのが暗い気持ちにさせます。
 話を小説に戻しますが、そういう弱い部分を突かれて、福岡市民は北朝鮮の軍隊に侵略されたのに従順に従い、政府も市民を巻き添えにしてでもという断固たる軍事対決をしないままに時間が過ぎていきます。上巻の最後のほうで初めて反抗作戦らしきものが始まりかけますがあまりに弱そうです。むしろかえってそうした予期せぬ事態に北朝鮮兵士の方が不思議な心持ちになっています。あまりにも従順な市民。信じられないほどの贅沢な市民の暮らし。北朝鮮では考えられない衣服等の個人所有物という概念。ヌード写真がどこででも手に入る異常な誘惑と堕落した街。それらに彼らの中にもなにかが目覚めていきます。まだ何かは彼ら自身にもわかりませんが、何かが彼らの中にも起き始めています。そういう状況の中、下巻に物語は続いていきます。
 果たして、北朝鮮のもくろみは成功するのか、韓国、アメリカ、中国はどうでるのか。
 そして、このレビューではあえて触れなかった、経済が破綻してあぶれだした異端の若者たちの集団はこの物語にどう絡んでいくのか(上巻で結構ページを割いているわりに彼らは全然まだ物語の本筋に絡んでいません)。
 ひさかたぶりに村上龍に興奮の一冊でした。

 追記・小説の中で2007年に各施設の一部停止と放棄で、アメリカが北朝鮮に大幅に譲歩。北朝鮮問題でアメリカが日本から距離を置き、自民党が大敗して下野するという下りがあります。予言にしては当たり過ぎです^^
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.140:
(5pt)

読みにくいけど星4つ

とにかく読みにくい。
どのページを見ても文字がびっしり。
内容は面白いのだが、改行が少なく、投げ出したくなる。
それでも我慢して読み続けると、今度は睡魔が。
この連続で、何とか上巻を読み終えた。
村上龍を読むのは、「限りなく透明に近いブルー」以来20数年ぶりだが、
こんなに読みにくい作家だったかな。

この本、銀行預金凍結っていうことが出てきて以来、ずっとひっかかってることがあるのだが、住宅ローンなんかはどうなっているんでしょう。
それと、給与はほとんどが銀行振り込みだと思うんだけど、そういう人の生活ってどうなってるんだろう。
本書のように庶民は平穏に暮らしていけるんだろうか。
それらのことが引っ掛かり、なかなか集中できなかった。
その分減点。

ストーリー的には、ほぼ先が読めるのだが、どういうだまし方をしてくれるか楽しみである反面、改行のない文字地獄がまだ続くかと思うと・・・。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.139:
(5pt)

現実を凌駕するフィクション

もし今、北朝鮮が日本に攻めて来たらどうなると思う?

いやいや、あり得ないっしょ。

そうだろうか?

実際彼らは2006年7月に、日本海に向けてミサイルを発射した。

でも私達に危機感は無い。

戦争などは、遠い国のお話。
巻き込まれるはずが無い。
もし何かあってもアメリカが助けてくれるさ。

なぜそう言い切れる?

私達はもっと危機感を持つべきだ。
私達はもっと知るべきだ。
私達が思っているよりもずっと、私達が生きているこの国は危ういって事を。

舞台は2011年。
財政破綻し、国際的孤立を深める日本。

そんな日本に、北朝鮮軍は侵攻する。

福岡は瞬く間に占拠される。

自衛隊は何も出来ない。

警察は何も出来ない。

政治家は何も出来ない。

アメリカは?

助けてくれない。

追い詰められた政府は、成す術も無く福岡を閉鎖。

そんな時どうする?

と、村上龍は問いかける。

巻末13ページに及ぶ参考文献に裏づけされる綿密な取材による精密な描写、圧倒的なリアリティーは、読者を引き込み、フィクションであるはずの小説と現実の区別を不可能にさせる。

そして私達は、フィクションを通して現実を知り、危機感を覚える。

その瞬間に『半島を出よ』は、現実を凌駕する。

もはや現実さえリアリティーがなくなってしまった今、私達が本当の意味で現実を知る手段は稀有なものとなってしまっている。

あなたが生きている今は本当に現実なのだろうか?

本書を手にとり、確かめてみよう。

そこには現実がある。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.138:
(5pt)

イラク戦争(アメリカ=北朝鮮 イラク=日本)

この作品のポイントは、章ごとに話の主観人物が切り替わり、役人、イシハラグループ、北朝鮮の兵士と様々な立場からこの事件を眺められることだ。北朝鮮の兵士は「木でできた短い箸は使いづらい」と嘆いたり、日本人が金正日と呼ぶのを「偉大なる首領同士」と呼んだり、徹底的に北朝鮮兵士としての立場を踏まえている。
 イラク戦争で米兵に正義を名目に勝手に侵入して勝手に略奪、虐殺、強姦されるイラク人の気持ちが少し分かるような気がした。むしろこの北朝鮮兵士のほうが紳士的といえるぐらいだ。しかし外敵には変わりは無い。
 その外敵に媚びて順応する福岡市民。臭いものには蓋をと福岡を封鎖する政府。そして外敵との戦闘に何かを見出そうとしているイシハラグループ。何が本当の正義なのか。それは実は結果論なのかもしれない。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.137:
(5pt)

なぜ人を殺してはいけないのか、の一つの答えを示す物語

近未来の起こっても不思議のないことを描いて、現代社会を風刺していますが、いつも希望があります。社会に適応できない(しない)人たちに生きる場所と意味を与える希望が書かれています。

なぜ人を殺してはいけないのか、と問いかけたかった少年たちが、自らその意味を知るようなる物語を軸に、さまざまな人生を歩んできた人たちの独白によって、人間と人間社会が抱える問題と希望を描いています。

そんなことを抜きにしても十分面白い小説です。
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434400759X
No.136:
(5pt)

イイッス!

先ほどようやく読み終えました。いや〜面白かった。

他のレビューもチラッと見ましたが結構辛口の批評も多いですね〜どこがそんなに問題なのか良く分かりませんが。批判的に見ることができないのは、私が自分の頭で社会的にリアルにシミュレーションする能力が乏しい、龍氏のファンなので心情的に氏に擦り寄っているだけ、というのはあると思います。

でも面白かったですね〜個人的にはやはり。北朝鮮の軍人たちが作戦会議の様なものを経て攻めてくるところは実にドキドキワクワクでした。そういう言い方は不謹慎なのかもしれませんが。また、普通の人が日常の中で見過ごしがちな問題、特に日本人が抱える問題で、あまり人が言わないことをズバリと指摘する、それも評論家のような難しい言い方ではなくて、というところがさすが人気小説家の技量だな、と思いました。あと随所に出てくる人間観察も鋭い!と思いました。私が印象に残っているのは、自分にとって重要でない人間に対してだけ威張る首相とか、最後の方に登場するたくましい主婦たちの描写です。首相については、そういう人いるんだよな〜という感じで、主婦については、女性の強さをたたえられるっていいな〜という感想でした。

でも全体を通して意外だな〜と思ったのは、激しい戦闘シーンが短いことです。結構大激戦みたいなのが出てくるんだろうな〜と思ったら、居座ろうとする朝鮮軍に対して周りがどう対処しようとするか、というのがメインでしたね。そういうのは返ってリアルな感じがするとは思いますけどね。朝鮮軍人の心理描写も見事だと思います。朝鮮軍の人が自分の育った過酷な境遇を思い出す場面では、思わず涙がこみ上げそうになったときもありました。私自身、田舎の中流家庭で育ったということもあり、あまり開けていない環境や貧しさというものに対して少しは想像ができる気がします。

しかし、最初の農民の殺人や、福岡の犯罪人に対する拷問など、やはり描写が残酷というかグロいというか、この人はこんなにグロいシーンを書き続けていい加減神経が参らないのかな、と思ったこともありました。ただこういう状況ではそれぐらいの方がリアル、また小説に求められる刺激、ということなのかもしれません。

また、イシハラたち(フリーター、プータローですかね?)の間のやり取りもアホラシイものが多い気がして、私は個人的にはこういう変わったキャラは興味がそそられるんですが、世間の読者に受け入れられるのかな?という気がしたこともありました。

あとすごく気になったのは福岡人の博多弁です。これは細かいことかもしれませんが。ハードカバーの方のレビューで他の人も書いてるかな? 龍氏は長崎出身なのに意外だな?と思ったんですが、いまバリバリの博多弁は、福岡市の若い人はあまり使いません。語尾にちょっと特徴があるくらいで、会話にはあまり方言は出てきません。おそらく40代くらいの人までそうだと思います。昔ながらの福岡弁でしゃべる人は結構年配の人か、福岡でも市から離れた地方の人だと思います。会話がものすごい博多弁なので心の中でちょっと笑ってしまいました。でもこれは地方感を出すための計算なんでしょうかね?

でもイシハラたちの集団が軍と戦う流れはイイな〜と思いましたけどね。確かにリアルでない部分があるかもしれませんが。良質なハリウッド映画のアクションを見ているようなワクワク感がありました。少数の人、マイノリティの人が大きなものに立ち向かう、という龍氏の中にあるロマンティシズムなんだろうな〜と勝手に解釈しています。西日本新聞の記者が優秀、という場面にもそういうのがあるような気がしました。
半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)より
4344410017
No.135:
(5pt)

待ってました

通勤時に読むので文庫化を心待ちにしていました。
北朝鮮反乱軍、九州封鎖、無能な政府、イシハラ達のそれぞれを時系列的に読み進められ、それぞれの時間が同じ時間(期間)でも、濃さの違いを感じるのは、その目的意識の違いでしょうか。確かに身につまされる部分もありました。
また、新しい世界が出てきますね。今度は猛毒蛙に建築学・住基ネットも出てきました。
いつもの村上龍さんらしい、小説だと思います。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.134:
(5pt)

半島を出たものの

上巻をあっという間に読みすすめ、下巻にすすむ。
この時点である程度の展開は読めますが、それでも事細かなディテールをひとつひとつ読みたくなるのが、村上龍さんの小説です。
「退廃の発見」という小題と、「教養の無さが崩壊に繋がっていく...」云々というコトバが、それ以後の展開を一気に加速させた、という感じでした。
その後の政府の対応や、米中との関係、自立する九州:福岡....で、興味の残る生き残った反乱軍達。いつもの村上龍さんらしい、「だから何なのさ」ですね。
半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)より
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No.133:
(5pt)

リアルなシミュレーションと壮大な物語

この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。

この上巻は北朝鮮が日本でテロを起こす事がメインで描かれているが、これに関しては非常に緻密な情報収集を行った上での、一種のシミュレーションといった感じで、前述したように、話が現在の日本の状況に即していて、とてもリアルな緊張感に満ち溢れている。村上龍の戦争小説として、「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」といったものは、ある条件を最初に設定しておく事で、物語を構成していた故に、読んでいて現実感というものがとても遠くにあった気がするのだが、この小説はとてもタイムリーな話題ゆえ、僕自身、身の毛のよだつような、恐怖を感じる事が出来た。

特筆されるべき点は、様々な人々の目線より作品が構成されていく所だろうと思う。政治家、一般市民、北朝鮮の兵士、マスメディア、社会からはみ出したもの達等、それぞれの価値観の違いがあり、優先するべきものも違う。そういった中で発生する、ほんの少しの認識のズレが、様々な問題を引き起こし、事態はどんどん悪化していく事になる。実際僕がこの人だったら、どういう行動を取ったのだろう?そういった想像をしながら読んでいくと、やはりこの小説に出てくる人々と同じ行動を取らざるを得なかったのではないか?そんな風にも感じさせられる。本当に取らなくてはならない行動を示されていても、それぞれの立場でモノを考えると、とてもややこしい問題が数多く存在し、正しい行動に繋がっていかないように思う。そういう意味で色々と僕自身も考えさせられる事となった。

多くの情報量を含み、読者に飽きさせない緊張感を作品中に張り巡らせた、村上龍の渾身の作品であるように思う。読んで決して損は無い小説だと思う。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
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No.132:
(5pt)

リアルなシミュレーションと壮大な物語

この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。

この上巻は北朝鮮が日本でテロを起こす事がメインで描かれているが、これに関しては非常に緻密な情報収集を行った上での、一種のシミュレーションといった感じで、前述したように、話が現在の日本の状況に即していて、とてもリアルな緊張感に満ち溢れている。村上龍の戦争小説として、「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」といったものは、ある条件を最初に設定しておく事で、物語を構成していた故に、読んでいて現実感というものがとても遠くにあった気がするのだが、この小説はとてもタイムリーな話題ゆえ、僕自身、身の毛のよだつような、恐怖を感じる事が出来た。

特筆されるべき点は、様々な人々の目線より作品が構成されていく所だろうと思う。政治家、一般市民、北朝鮮の兵士、マスメディア、社会からはみ出したもの達等、それぞれの価値観の違いがあり、優先するべきものも違う。そういった中で発生する、ほんの少しの認識のズレが、様々な問題を引き起こし、事態はどんどん悪化していく事になる。実際僕がこの人だったら、どういう行動を取ったのだろう?そういった想像をしながら読んでいくと、やはりこの小説に出てくる人々と同じ行動を取らざるを得なかったのではないか?そんな風にも感じさせられる。本当に取らなくてはならない行動を示されていても、それぞれの立場でモノを考えると、とてもややこしい問題が数多く存在し、正しい行動に繋がっていかないように思う。そういう意味で色々と僕自身も考えさせられる事となった。

多くの情報量を含み、読者に飽きさせない緊張感を作品中に張り巡らせた、村上龍の渾身の作品であるように思う。読んで決して損は無い小説だと思う。
半島を出よ (上)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (上)より
434400759X
No.131:
(4pt)

リアルな絶望感と未来への希望

この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。

この下巻は何も有効な対策が取れない日本の政府やメディア、そして諦めに支配された風潮に代わり、社会のはみ出しモノ達が北朝鮮のテロリスト達に対し、必死の抵抗を行うという話がメイン。前述したように上巻とのスタイルが少し違う為に、期待を裏切られる読者も多いかと思うのだけれど、一貫した村上龍の意志は受け継がれているし、本来彼の小説はこういった壮大なスケールをもった物語こそが持ち味だと思うので、僕自身はこういうやり方は上手くはまったというように思えた。ただ、あまりにも話に無理がありすぎる部分も多い為、以前の名作に比べると若干物語りの信憑性が薄いと感じる部分があった事も否めなかった。

物語重視故に、上巻に比べると、この下巻は魅力的な人物が多数現れる。北朝鮮軍のブレイン達、占領された福岡の果敢な人間達、そしてはみ出しモノであるイシハラグループのメンバー達。緻密な人間描写と彼らの生き様、状況が変わるにつれて変化する心理描写等、とてもスリリングで読み応えがある。傍目では優秀な人間でも、色々な葛藤や驚き、そして弱さを持っていて、そういったものに対し果敢に挑んでいく姿は、やはり美しいし、僕自身力を与えられる部分でもある。ラストがあまりにも綺麗に決まりすぎていて、何処か矛盾を感じてしまうのが勿体無いのだが、あまりにもリアルで残酷な現状を暴き出してしまった上巻に対して、未来への希望というものを村上龍自身、最後に示したかったのではないのだろうか?そんな風にも思えた。
半島を出よ (下)Amazon書評・レビュー:半島を出よ (下)より
4344007603

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