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凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂
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凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.13pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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新版であるこちらの文庫本を先に、後からハードカバーの旧版を読みました。 率直な感想を言うと、この2冊はほぼ別物と言ってもいいくらいに改編されていました エピソードも変更されている為、登場人物に対する印象も変わりました まず、さっちゃんこと老婆の正体は克子だと思っていた。 こちらの文庫本にははっきりと書かれていないので読み解くしかありません まず丸顔という特徴が一致する、出身地が樺太だと言っている、息子の名前が「克徳」 さっちゃんの愛称は「さゆり」とかからきているのかと勝手に想像。 亡くなって葬儀をあげたとあったが、子供と口裏合わせて上手く切り抜けたのかと。 つや子の事はどこかの旅館で働いていたとしか書かれていないし キクと再会させるにはもう少し説明がないと納得しづらい。 ただ、克子だったにせよ、つや子だったにせよ 十数年ぶりとはいえ再会すればキクはわかるんじゃないかと言うのが引っかかっていました。 もしや第3の容疑者が?そんなモヤモヤが残り、旧版のハードカバーも読んでみたのですが そちらははっきりと老婆の正体が明かされています そこに至るまでの経緯も詳細に。 改編されてしまった分、殺人の動機に説得力がなくなってしまったのが残念です おそらく真犯人がどうという所は二の次で、女の生き様を見せたかったのでしょうから そこは突っ込みどころではないのかもしれませんが、 それなら推理モノのような副題をつける必要はなかったのでは? スッキリするという意味では前作の方が良かったです。 樺太脱出からのキクのお話は惹きこまれますし、新版、旧版どちらも読みごたえがあります | ||||
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終戦時の樺太から北海道への帰還から始まり、 今へと続く自身の起源を巡るサスペンス。 しかし、その最中彼は殺されてしまいます。 広大な北海道を舞台に繰り広げられる、 「凍原」という作品通りに涼しげでヒンヤリとする作品です。 なかなか面白かったです。 | ||||
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一着しかない黒のパンツスーツで出勤する。心なしか肩のあたりが窮屈になっている。流行り廃りのないデザインだったので、五年間買い換えていない。仕事に支障が出るようなことでもない。毎日の仕事着は伸縮素材のパンツとシャツ、あとは季節に合わせた数着のジャケットがあれば充分だった。着るものに気を遣ったり金を掛けるという意識はなかった。化粧もチューブのファンデーションとリップグロスで終わり。髪は肩までの長さで、普段はほとんど一本に結わえている。縛る長さがあれば毎月美容院まで行かなくても済み、スタイルを気にする必要もない。 → p.44 - 45 本作ほど、私が作中の登場人物に誰一人として感情移入できない作品は珍しい。ただ、p.44 - 45にある主人公の女性刑事・松崎比呂の名前に負けない女性であることを色んな意味で放棄している描写と、17年前に比呂が水谷姓だった頃に湿原にのみ込まれて水谷家の家庭崩壊の原因になった弟・貢が消えた場所と同じく彼女がロクデナシの先輩刑事・片桐周平と共に捜査することになった青い眼の日本人男性・鈴木洋介の遺体が遺棄された現場になった場所が湿原であり、帯の“顔の無い女”という言葉に興味を抱いたから買ったのだ。 片桐が何故ロクデナシかと言うと、息子が青い眼だからって拒絶して良い理由にはならないが、受け入れられなかった父親を罵倒して暴力をふるった彼がどうしても許せなかった。 確かに、鈴木洋介は殺される理由は皆無だった。それなのに彼が自身のルーツを探すことでキクが不利益を被るとしても杉村純は真っ赤な他人の彼女のために自身の母親を殺人犯の母に貶めてしまったため、私には彼が常軌を逸した犯人だとしか思えない。しかも助けたくても助けられなかったという仕方の無さにより許しようがあった貢の死に際し、湿原の方に歩いて行ったという虚偽の発言で関与していることを闇に葬ろうとしたのだから。ところで、貢は冷たい水の中に閉じ込められたままなのだろうか? どんなに時間がかかろうとも水に土に還ることが出来ればいいのに。 | ||||
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札幌で二年間生活したわたしはなんども釧路を訪ねている。釧路湿原はタンチョウヅル、国立公園、ゴルフ場であり、明媚な風光を楽しむ行楽地であった。しかし、この作品では暗澹とした人間模様を象徴するものであり、人間の運命を飲み込む得体の知れない広がりを見せている。湿原を舞台に過酷な半生を生きた女たちのその後の凄絶な生きざまが、著者の独壇場であろう、荒涼とした情感のうちに語られる。 「十七年前、当時十歳だった弟がそこの小学校のグランドに自転車を置いたまま行方がわからなくなったんです。湿原って遠くからだと草ぼうぼうの原っぱに見えるけど、葦の下はずぶずぶの泥炭地でほとんどが水なんですって。水が冷たくて植物は上手に腐ることもできないそうです。そんな植物が枯れては泥と一緒に積み重なって、巨大な浮島みたいになってるんです。泥炭が途切れたり穴が空いたりした場所は、谷地眼って呼ばれます。弟は多分、その谷地眼に落ちたんです。」 失踪した男の子の家庭は崩壊した。姉・比呂は崩れていった家庭とは距離を置き、しかし失踪の重みを受け止めたままに、いま30歳の女刑事として孤独な日々をおくっている。そして当時この事件を担当していた刑事・片桐とペアを組み、湿原で発見された殺人事件を追う。 「湿地に足を取られて死んだ者は、土に還ることも出来ず、永遠に水の中を彷徨っている。釧路湿原で発見されたサラリーマンの他殺死体。被害者があけてしまったのは64年も前に封印されたパンドラの箱だった。」 序章の一節で1945年8月12日の樺太が語られている。ソ連参戦による住民虐殺である。母と妹を目の前で殺された娘・キク(20歳)の血で血を洗う凄まじい樺太脱出行が始まる。 キクの物語と交互になって比呂・片桐の捜査活動が進められる。二人は釧路、札幌、小樽、室蘭、留萌と地道に捜査を続ける。果たして彼らはパンドラの箱に辿りつけるのか?と。ミステリー愛好家でなくともこの推理小説のおおまかな構図は推定できる。よくある構図であり、わたしがこう述べたところで、ネタバラシにはならない。(ひねりは当然に用意されている。)そんな推定は著者も承知のうえだ。そのうえでぐいぐいとひきつける。よく出来た推理小説である。それは謎解き一辺倒のミステリーではなく、読ませどころに冷酷・非情、壮絶な人間ドラマがあるからだ。 序章からはやくも、わたしがかつて好んで読んだ懐かしい作風のミステリーだと直感した。1960年前後、社会派推理小説の金字塔といえる傑作、松本清張『ゼロの焦点』 と水上勉『飢餓海峡』である。また10年以上遅れて森村誠一の『人間の証明』があった。 これらに共通するものは終戦直後の混乱の中である事件が起こる。長い年月がたって、事件の当事者たちは接点をもたないままに、それぞれの人生を歩んできた。ある日、その延長線は交差して、あらたな事件が起こる………というパターンである。 また犯人を追う側は快刀乱麻の推理ではない、全国各地を足で探索するのである。リアリズムで当事者たちの過去を辿るのである。あの戦争とは………、と思いをはせつつ、当時のわれわれ世代は自分の経験していない、しかし、実際に起こりえたであろう哀切の人間ドラマに深く感興を覚えたのだ。 そしてローカル色がみごとにちりばめられ、また暗く哀しい詩情が通奏低音として流れていることも共通してあった。 「事件の根を手繰ってゆくと、その時々を懸命に生きて来た人の、燃えるような過去が血をしたたらせている。」 これは30歳の女刑事・比呂の述懐である。過去に屈託し虚無的で誇りを持ち合わせず、メールだけでつながったセックスフレンドを持つ女。「過去が血をしたたらせている」との生々しい表現。これは清張にも水上にも森村にもなかったキャラクターだ。今風の人物像でなかなか魅力があった。 刑事の個性や風俗には現代が感じられるとは言え、 桜木紫乃には社会派推理小説の黄金時代を再現する意図があったのではないか。 だとすればわたしにはそれは成功していると思えるのだ。 | ||||
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「行方不明になった弟は、今も湿原の中に、土に還ることもできずにいるのだろうか?」 つらい過去を持つ比呂は、警察官となり再び釧路に戻ってきた。弟を飲み込んでしまったかも しれない釧路湿原で、今度は成人男性の遺体が発見される。その事件は、過去に封印された はずのできごとをしだいに暴いていくことになる・・・。 17年前、当時10歳だった弟が行方不明になった。今も心のどこかで弟を捜し求める比呂。 当時捜査をしてくれた片桐は、今は比呂とともに今回の事件の捜査を担当している。弟の友だち だった純も、自分の店を持つほどになっている。月日は流れているのだ。だが、どんなに月日が 流れても、絶対に真実をさらせないこともある。永久に封じ込めてしまわなければならない 過去が暴かれようとしたとき、悲劇が起こる・・・。さまざまな人間のしがらみがからみ合い、 物語に深みを与えている。「こんなに悲しい生き方しかできなかったのか?」と問わずには いられない切ない描写もあった。けれど、設定や結末には斬新さがなく、感動を与えてくれる までには至らなかった。全体的にはまあまあの作品だと思うが・・・。 | ||||
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