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変わらざるもの
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変わらざるものの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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フィリップ・カーのグンター・シリーズ全6冊読了。 先月、積読になっていた(しかもなぜか2冊もw)第6作目の『死者は語らずとも』を読んで、「これはすごい!」と思って過去の5冊分を全部買って読んでみたのである。 当初は、このグンター・シリーズは3部作として書かれ、日本では1990年代に新潮文庫から出ていたが、すでに絶版。 古本で手に入れた。 後半の3作はPHP文芸文庫で今も新品で手に入る。 それはさておき、このグンター・シリーズの初期3部作は、フィリップ・マーロウをワイマール末期からナチス支配下のドイツに置いたような作品である。 作者本人も、そのことを意図しているのだが、シチュエーションとしては見事に嵌っている。 何しろ皮肉一つ言うにも命とりになりかねない時代である。 そこで様々な事件にぶち当たり、解決していく(あるいは解決できないでいく)のだが、実在の人物が多数登場して、説得力は相当なものである。 2作目では、ハイドリッヒの下で、やむなく事件を解決する役回りとなり、3作目では戦後のドイツ・オーストリアでスパイものの展開となる。 4作目では、人体実験のナチスの医者に入れ替わる陰謀にはまることによってイスラエルのモサドの前身のような機関に命を付け狙われる。 その結果、後期の5作目は舞台をアルゼンチンに移す。 そこでペロンやエビータもからむ醜聞と事件に巻き込まれる。 第6作目では、戦前のドイツと革命前夜のキューバが舞台である。 5作目と6作目は、戦前のドイツと1950年代のブエノスアイレスやハバナを往還する叙述スタイルが取られているが、まあとにかく、仕掛けの大きさには舌を巻く。 大がかりなどんでん返しがこれでもか、これでもかと続くのである。 もちろん、そこにはご都合主義的な展開も含まれているのだが、その壮大さに免じて、という気持ちにさせられた。 もう1つ、この6作に共通しているのは、主人公のグンターが何度も絶体絶命の状況に追い込まれることだ。 本当に、どうやってこの窮地を脱するのだろうと思って読み進めると、都合よく(笑)助かる。 ここいらもご都合主義なのであるが、以前読んだスティーブン・キングか誰かの「ミステリーの書き方」といような題名の本には、読者を惹きつけるこつは主人公がもうどうやっても助かるとは思えないような絶体絶命のピンチを描くことだというようなことを書いていた。 フィリップ・カーがこの本を読んで倣ったとは思えないが、確かにこの手法はミステリーの王道なのだと実感はしたのであった。 作者のフィリップ・カーはすでに亡くなっており、続編が書かれることはないが、まだ本邦未訳のグンター・シリーズが2冊あるようである。 これが翻訳されるのを楽しみに待ちたい。 | ||||
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ここまで悲惨な目に遭う主人公もいないんじゃないでしょうか。 ダイハードのジョンマクラーレンも真っ青という感じ。それでいてやったれ〜!!と此方が思う展開で全くやっちゃわない主人公なんで カタルシスもゼロ。背景が背景なのでしょうがないのではありますが・・・。 『人でなしでは無い人』は、『人でなし』の発想および思考回路が全く理解出来ないが故に人でなしでは無いのであって、 減らず口ならぬ減らず愚痴を叩き、ニヒリストぶっても、根が素直なグンターは毎度毎度、想像を絶する『人でなし』共の手のひらで転がされてしまいます。 根が素直で情に厚い。その上自分ルールに対しては実に愚直に従う哲学者でもあります。 殊、女性。しかも美人が絡んでしまうと猪突猛進になってしまう。我らが主人公のこの癖が、 この再開第一弾では、余りにも悪い方へ悪い方へと己を導く要因になってしまっているので、正直、ファンとはいえ、いや、ファンだからこそ途中で放り投げたくなってしまった程(笑) 地面を這いずり回りながら七転八倒。何故、この場面でで読んでるこちら側をスカッとさせてくれないんだと、 著者フィリップカーを恨んでしまいそうになるほど、終盤は奥歯を噛み締めながらページを繰ったほどに、実にもどかしい。 おいおい、グンターってこんなにおばかさんでは無かっただろ?と面食らう程です。 おかえり!と呼ぶには、あんまりな再開第一歩。 少なくともシリーズ再開前の作品にはあった、 騙され操られ、出し抜く関係に置いても、わずかといはいえ、お互い様ですねへへへwと言ったような含み笑いを浮かべる程度の人と人とのやり取りの妙、隙すらも全く無く、 その暗澹たる空気が、前作ベルリンレクイエムよりもより濃厚に悲惨になっているのは、読んでて辛かった。 オチというか、かろうじて意趣返しになる場面でも、その手段が余りにも偶然に任せるようなやり方で、モヤモヤが残りました。 再開第二弾になる次作の方が好みです。 | ||||
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本書『変わらざるもの』は、『ベルリン・レクイエム』刊行から、なんと、15年後に翻訳されたベルリン三部作に続くグンターの新シリーズである(本国刊行は2006年)。 大戦が終結し、未だ連合軍の支配下にある1949年のミュンヘン。義父のホテルを継いで生計を立てていたグンターだったが、病院で療養中の妻の近くで、探偵業を再開することにした。混乱する社会情勢から滑り出しは順調だったが、夫の生死を確認して欲しいという女性の依頼を受けてから様相は一変する。捜査の途中、グンターは、暴漢に襲われ、小指を切り落とされてしまう。復讐を誓い、暴漢の首謀者をつけ狙うグンターは、首謀者と会う依頼人を目撃するのだった ・・・ 本書は、ナチスの戦犯狩りがおこなわれているドイツを背景に、ユダヤ人の復讐部隊やCIAが暗躍する壮大なスケールの謎解きミステリとなっている。一見、無関係に思われる出来事が、すべてジグソーパズルのピースになっていて、クライマックスでは、完成したパズルを前に思わず唸ってしまった。架空の人物を除けば、歴史小説としても楽しめる贅沢な作品といえるだろう。プロットがかなり入り組んでいるので、じっくり読み進めなければならないが、その分、見返りはかなり大きい。ラストは一気読みの盛り上がりを見せる。定番のグンター危機一髪も健在なので、私は、残りのページ数で決着がつくか心配したくらいだ。 『偽りの街』では38歳だったグンターは、本書では50歳を超える。減らず口と女性運のなさだけは、相変わらず。シリーズは八作まで刊行されているようなので、これからもグンターの活躍に期待したいところ。出版社さんには、是非、刊行を継続して欲しい! なお、本書は、単独作品として読むことができる。ただ、随所にあわれる過去の登場人物の名前は、グンターとの因縁を想起させるので、ベルリン三部作を読んだ方が感慨深くなるだろう。 | ||||
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