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破裂



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【この小説が収録されている参考書籍】
破裂
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)
破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)

破裂の評価: 3.93/5点 レビュー 69件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.93pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全49件 1~20 1/3ページ
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No.49:
(5pt)

この作品で一休止

医療ドラマが好きで、エッセイから始まり短編、中編と久坂部氏の作品を立て続けに読みました。面白くてたまらないけれど、その分疲れました。この長編を以て一休みしようかなという気分です。それほど満足感の深い作品でした。
破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)Amazon書評・レビュー:破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)より
4344409892
No.48:
(5pt)

老人介護問題や、自分の老後が心配になりました。

老人介護問題は深刻です、政治家や教授クラスの医者が真剣に裏工作や駆け引きなしで取り組むべき問題だと実感しました。
破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)Amazon書評・レビュー:破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)より
4344409892
No.47:
(5pt)

長寿社会に対する重い問いかけがされている

医療事故の真相の解明が軸になっているが、著者が本当に語りたかったテーマは、その医療事故を起こした医学部のエリート香村が研究していた画期的な心臓病治療法を悪用して、日本の長寿問題を解決しようとした厚生労働省の佐久間の行動の是非についてである。

佐久間のキャラクターは不気味で独善的で好きになれる人はあまりいないだろうし、行動も極端かつ時に暴力的であり、これだけを見れば著者は佐久間を悪人として描き、佐久間の行動を批判するスタンスのように見えないこともないが、本当は佐久間の主張に共感しているのではと感じる場面が結構ある。特に老人が息子にののしられる場面が最後に置かれたのを見た時にそれを確信した。

それにしても、医療事故や安楽死という重いテーマを一級の娯楽作品に仕上げた著者の力量は素晴らしい。難しいことを考えなくても楽しめる作品である。
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)より
4344409884
No.46:
(5pt)

読んでいて公立福生病院の事が頭をよぎった

みんなそれぞれの立場でそれぞれの正義がある。何が正しいのかはわからない。ただ自分の始末は自分でつける(考える)しかないのだろう。
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)より
4344409884
No.45:
(5pt)

日本の高齢化社会の問題の解決策

現役の医師として、このような解決策(安楽死)を提示した本を新書で刊行したらマズイから小説化したのかな?と邪推しました。
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4344409892
No.44:
(5pt)

理想の死とは。超高齢化社会に一石を投じる作品。

読み応えたっぷりの文量ながら終盤に向かって読む手が止まらなくなった。未曾有の超高齢化社会に突入する日本に警鐘を鳴らす作品。医療の進化は本当に正しいのか。正しさが必ずしも善とは言い切れないのではないかと考えさせられる。白い巨搭を彷彿とさせながら医療と高齢化社会を見事に切り裂いたまさに破裂。PPKは理想なのかも。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
4344006984
No.43:
(5pt)

途中、どうなることかと。。

同じ作者のものを何冊か読んでますが、やはりこういった長編のもののほうが面白いです。
途中、主人公が主人公の役割を果たせない感じ(話を進めていけない)になってしまって、もう最後はどうなっちゃうの?と心配になりましたが。
破裂は、日本の医療制度の現状、問題が提起され、強引に解決しようとする形で物語が進みます。 この作家の作品は日本の医療制度についてちょっと考えさせられます。
破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)Amazon書評・レビュー:破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)より
4344409892
No.42:
(4pt)

サービス満点

山崎豊子さんの『白い巨塔』と同様、大阪大学医学部付属病院が「舞台」のモデル(単にモデルであり、阪大病院で似たことが起きた、ということではない。多分)。医療過誤訴訟の提起から判決までを物語のタテ軸に据えているところも、同じ趣向だといえる。異なるのは次の2点ではなかったか。

 一つは、『白い巨塔』が大学病院内での権力闘争を主なテーマにしていた一方、本書は「長寿化社会の予防」や「安楽死」という新しいテーマも無視できない要素として取り込んでいること。もう一つは、ここのレビューでも本職の医師の方々が触れておられるように、医学的な面での記述がおおむね妥当で正確、という安定感が窺えることだ(『白い巨塔』も、山崎さんが当時のガン治療を中心にねじりはちまきで勉強されたことは承知しているが)。

 という次第で、本書の悪役たる「香村助教授」が放つ悪辣なイメージは、『白い巨塔』の財前五郎の迫力には及ばないとはいえ、物語としては至ってよく出来た1冊だと思う。『白い巨塔』の里見にあたる「江崎」の変貌と再生の描写には少しばかり筆が足らなかった気もするが、現役の医師によるフィクション2作目、ということを思えば、総花的なサービス満点の記述が続き、やはりなかなかの力量だと思う。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
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No.41:
(4pt)

様々な問題を含んだ問題作・・

本作は、「高齢者問題」「医療過誤」「医療裁判」など
複数の問題を内包している。

始めは「医療過誤」の話しかと思いきや、
中盤以降は、「医療裁判」がメインとなる。
その中に、「高齢者問題」が横たわる。

ある男性が、心臓の手術後に亡くなった。
その理由は、心臓に残された針が原因か・・。
それとも、別の原因があるのか・・。
また、高齢者の医療費の増加は、国の財政を圧迫している。
厚労省の役人が行おうとしている施策は、
医療費削減のための福音か・・。
それとも、悪魔の所業なのか・・。

内容は濃いが雑多な感じを受けることなく、
ストーリーを楽しむことが出来た。

常にスリリングな展開であり、
ボリュームを気にせずに読破できた。

最後の展開は、やや性急な感じが否めなかった。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
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No.40:
(5pt)

現実にありそうで怖いお話

医師や役人という特殊な世界の主人公たちの発想行動が実際にありそうで怖いです。 迫力があり、一気に読んでします面白さがある本です。 今後の小説にも期待しています。
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No.39:
(5pt)

面白いけど主人公が殺されるのは残念

老齢人口が増える日本で実際にありそうな役人の発想は怖い。 医療ミス、人口の高齢化、等現代の問題点がリアルで本当にありそうな話です。 テレビでは、医療ミスを犯した医師が小説よりよい人に描かれています。 このように現実にありそうな話を小説にするのは勇気が必要ではないでしょうか? 今後も現実社会で起きている問題を小説にしてもらうのを楽しみにしています。
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No.38:
(5pt)

ようやく内容に時代が追いついた  怖いほどのリアルさ

ようやくNHKの土曜ドラマになりますね。 出版当初読んだときに強烈な衝撃を受けました。 その割りに、あまり話題にならなかったのが不思議でしたが、このタイミングでのドラマ化。 ようやく、本の内容に時代(読者)が追いついたということでしょうか。 怖いほどのリアルさで迫ってくる一冊でした。
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No.37:
(5pt)

問題性か娯楽性か―考えさせられることと楽しむことのあいだ

ちょうど今TVドラマとして始まったところらしいが、その原作である。

作者は現役ばりばりの医者らしい。
それが読みようによっては暴露的な『廃用身』で衝撃デビューした。
役に立たない身体の部分を切り取って捨てる、
という「医療」を開発した医者をめぐる生々しい話である。
老人医療が主に絡むし、タブーともいえる重い話題だから、
一度読み出したものの息苦しくなって中断した。
内容もさることながら、
本気でそれが正しいと考えている「良心的な」医者の報告書、という
現実と虚構の区別のつかない方法が強烈で、それも辛かった。
つまりフィクションの体裁をとってはいるが、
真っ向から現実の問題を扱っているのである。

本書を読むに際して、
宣伝のどんな殺し文句に惹かれたのかはもう記憶にない。
ただ漠然と、より娯楽性が高いような印象はあったかもしれない。
とはいえ、この作家だ。
読んでいても恐ろしいのではないか、と恐る恐るだったが、
いったん読み出すとやめられなくなって、ほとんど一気に読了した。

この段階ではまだ経験の少ない作家ということなのか、
ぎこちさを感じないでもなかった。
視点の移動のバランスの悪さや、エピソードのつなぎ方、
終わりの方のあっけなさなど。
医学的知識なども、現場の知識経験に裏付けられた迫力があるにしても、
ちょっとくどすぎはしないか。

しかし構想力、筆力には恐るべきものがある。
素材は、今回も医療ミスであり、
また超高齢化社会と安楽死、というふうに重く生々しい問題なのだが、
この両者を、エリートだが手術ミスの多い医者
(つまり医療ミスの問題が出てくる)が、
老人に活力を与えるものの危険な副作用を持つ新薬を開発する
(だから老人問題が出てくる)、という設定でつないで、
さらに裁判の戦いの魅力なども盛り込み、
娯楽性豊かな物語をつむいでいく離れ業には驚かざるを得ない。

読み終わるのが深夜に及んだので、
恐ろしい終わりが待っていると嫌な気もしたのだが、
とりあえずその点はほっとした。
そこにはある種の再生のドラマもある。
恐れたようなどろどろしたことにならないのもよかった。
娯楽性の高いのはむしろ救いだ。

だが、娯楽性を加味し、
かつ一種のカタルシスを作り出してより読みやすく、
つまりより売れるようになった分、
問題の扱いが軽くなった感も否めないのではないか。

確かに、一方では、主人公らしき人物があったとしても、
単純な善悪ではもちろんないわけで、
だから主人公も苦しんだり、いろいろ無様な姿をさらしてもいるし、
ジャーナリストのエゴも描かれている。
いろんな立場、考え方が、それぞれ相対化されて、
何が正しいかが決して単純な問題ではないことが示されているのはいいと思う。
また、モンスター的な登場させる方法を責めるのは簡単で、
それをどうするのだという問題は残るものの、
この人物の考えに同調する人間は、
老人のなかにもそれ以外の人間でも少なくないはずだ。
いったいどう考えるべきなのか。

しかしこういう問題提起が残るにもかかわらず、
やはりどこか問題が置き去りにされた感じは残る。
ひとつには、それはプロットの問題で、
読者としては、最初問題だったはずの医療ミスの問題が、
それ自体はなんら深められずに安楽死の問題にすり換えられてしまった、
という印象があるのではないかと思う。

というわけで野心的な分、問題もあるように感じられるが、
ドストエフスキーを愛読し、若いころは純文学を目指した、という作者、
その後も旺盛に執筆しているようだし、今後も期待したいと思う。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
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No.36:
(4pt)

誇張はあるもののかなり現実に近い感覚が

久坂部氏の前作「廃用身」に続き、高齢介護社会問題の作品での医療編。
医療裁判に教授選挙と言えばすぐに「白い巨塔」を連想するが、
それに強烈個性の官僚が準主役級で登場。

私は大学病院勤務の経験はないが、医療施設の経験、介護福祉世界の経験があり、
その感覚で読めば現実にかなり近い感覚を持った。
本書内官僚が進める政策「ぴんぴんポックリ」だが、この本が発表されるずっと前の介護保険導入以前の長野県で、
実際にあったもの(参照:ピンピンコロリ-Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%AA)で、
もちろん、医療的に殺す訳ではないが、ずっと元気で死ぬ時には寝込まずコロリ、つまり寝たきりが税金消費の悪癖とし、
本人も尊厳が保たれた状態で死ぬことができるということで、当事者も自治体も国もみなハッピー、というもの。
このスタイルは、メタボ対策、リハビリ対策、在宅看取り対策(施設入所させない)、検診推進、という形で、
実際に今の施策になっている。
人を個でみずにマスでみる、これも医療、介護の世界では常識。
それを法ではなく、経済的手段(診療、介護報酬)ですすめるのもだ。
人も世の中も、理念や道理に流れず、金のある方向にむくのが常。
それをあくまでフィクションとしながらも、如何にもモデルがありそうで、なさそうでの現実感を漂わせて、
きわどい世界を小説家してると思う。
ほとんどが実名を使わないスタイルだが、現実に存在するものがふたつ。
「厚生労働省」と「阿武山病院」、それに土地勘がある人ほど、リアルな風景描写が現実に似ていると感じるはず。
前作の「廃用身」の神戸の情景描写も同様である。
実際にこの現場で働いてみて、それ以前に持ってたイメージとは悪い意味で違ってたのも、
誇張はあるもののかなり現実に近い感覚が持てた。

わかる人には「ありえるかも」の世界、知らない人には「トンデモ」の世界。
知らないが上の怖さはあるが、知らずに済むのが幸せかも、これがこの現実仮面世界と思う。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
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No.35:
(5pt)

緻密なはちみつ

この作品に登場する医師も、看護師も、厚生省の役人も、なにかしら欠点をもつので、リアリティがあって、こんなことが現実にあったのではないか?と思わせるほど、おもしろい! (上)を読みすすんで、最後は、どーなっていくのか?と、はらはらする のではなく、納得する。共感して
吐息が出る。フィクションながら、途中では、「天寿」計画を先導した役人が、もっと したたかにやってくれたら・・と、願ったりして、うまいこと
考えた「死に方」だと感心した。
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)より
4344409884
No.34:
(5pt)

感動!

こういうのが、地道に売れ続けるのが日本の文化の向上です。感動!!!
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
4344006984
No.33:
(4pt)

社会派サスペンス

社会派サスペンスの中でも、医学界をテーマにして、白い巨塔孤独のメスと並ぶぐらい面白い、書き手が医者と言うことで、話に真実実がある、
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)より
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No.32:
(4pt)

江崎先生!!

え、江崎先生が、前半と後半で全くの別人に!!
前半はあんなにかっこよくて、枝利子や看護師の安部さんでなくても、ほれてしまいそうなんで、私の脳内では、俳優の向井理のイメージだったんですが。後半の江崎先生ったら…。

個人的には、佐久間の「人口ピラミッドの正常化」には賛成なんです。私も、死にたくても死ねないお年寄りをたくさん見てきたんです。私自身、「認知症・老化等で自分で自分のことができなくなる前に、ぽっくり死にたい派」です。

仕事でオランダに住んでいたことがありますが、その時に「安楽死法」ができたんですよ。さすがオランダ!と思いました。オランダの安楽死は、先が見えているお年寄りだけでなく、けっこうな若者(全身マヒの障がい者、専用のPCでメール交換等の作業はできる)でも、安楽死OKですからね。ちょっとやりすぎな気がする時もあるんですけど、本人(若者で全身マヒ)が死にたいと願っているにも関わらず、体が動かないために自殺できないのであれば、それを手伝ってあげることができる法律というのは、すごいことですよね。
例えば、物語ラストの佐久間のあの状態。彼なら、あんな状態で行き続けることを拒むでしょう。(ただ、佐久間は意思を伝えられないし、日本の法律ではあの状態での安楽死認められない)

小説としては、ちょっとアラがあるのは認めますけど、面白く読ませていただきました。
破裂Amazon書評・レビュー:破裂より
4344006984
No.31:
(4pt)

テーマと意外性は◎、物語としては△

作者の扱うテーマは『廃用身』から変わっていない。その一貫した主張は、一見きつい言葉だが、考えようによると自由で心地良い。医療を神話のように扱うマスコミに比べると、現場を知っている医師のメッセージとして「苦しい生を強要するより、本人が望む死を」「死はできるだけ安楽に、できることなら快楽に」など書かれていると、妙に安心してしまう。

医療ミステリとして本書を読むと最高に面白い。手術で針が体内に残された、医療ミスだという匿名の手紙、患者の突然の死因は針なのか否か、医療ミスの裁判は認められにくいというが、はたして勝訴できるのか否か・・・
下巻で真実が二転三転、ウラを読んだつもりだったのに、さらにウラをかかれてしまう。医療の素人でも、読んでいるうち現場を知り尽くした気分になるのは作家の腕。
登場人物も多彩。医療ミスで父親を亡くした娘、その裁判に協力したいと思うが専門知識のない夫、狡猾に立ち回る担当医、担当医を擁護するように見せかけつつ自らの野望へ猛進する官僚、事件を自らの出世作にしようと目論むノンフィクションライター、ライターに協力する麻酔医、麻酔医に想いをよせる看護師。誰もが個性的なので「誰が誰だか」という混乱は起きない。読み出すと止まらなくなる。

ただし、医療・社会問題という「小道具」を剥がして「物語」のみ読むと、結末は少々安易。
「和尚」もそうだが、特に拍子抜けなのが中心人物である麻酔医の江崎。人物はすこぶる魅力的。正義漢であろうとしつつも精神的に弱く、身勝手で人間くさく、その堕落の仕方はいっそ心地良い。ぜひ活躍してもらいたかったが、底辺まで堕ちたあと、立ち直るきっかけが陳腐、立ち直っても何もしない。
その恋心は、淡くて上品で好印象。ありふれた三角(四角?)関係も、本編にどう絡むのかと緊張感が悪くない。だがその結末もやっぱり陳腐。互いのパートナーにかえって失礼な気が。いっそ「後悔と真実の色」のように悲劇のハードボイルドに酔ってしまいたかった。だが、若干むりやりにでも、勧善懲悪で結んであるおかげで、読後感は悪くない。

あと、これは個人的な感想だが、関西在住の一人として、この作者の描く舞台は、殆どが関西、リアリティや描き分けの都合もありしょうがないのだろうが「小物の悪人」の台詞を関西弁にするのは、あまりにも古くさく興ざめなので、できればやめてもらいたい。
破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)Amazon書評・レビュー:破裂 下 (2) (幻冬舎文庫 く 7-3)より
4344409892
No.30:
(4pt)

医療におけるそれぞれの正義

医療ミスを取り上げるジャーナリストと,協力する医師のやり取りから物語は始まる.
医療の構造的な問題を炙り出すという大義目分の下に取材が進められるが,
一方で,記事が面白くなるために,協力する医師の身に圧力がかかったり,
事件に発展したりすることすら期待するジャーナリストの姿が,率直に言って不快である.

中盤からは,ある医療過誤の真相を追う流れと,
高齢化社会への過激な対策を実現するために暗躍する官僚の活動が中心となる.
久坂部氏がモチーフとする題材はいつも現実的で,提示される対策は過剰なまでに過激である.

あらゆる手段で具体的な方策と人的資源を確保し,世論を誘導して施作を実現しようと官僚の姿は,
薄気味悪くもあり,ある種の信念に対する畏怖も感じる.

とはいえ,一官僚や国の省庁のやり方としてはいくらなんでも陰謀史観的にすぎる.
あらゆる事象を国家権力を使えばコントロールできるというのは,非現実的というより,安易な発想のように思える.

医師の良識と過剰な自意識,ジャーナリストの使命感,官僚の理想.
それぞれの立場の正義が対比されつつ下巻の結末へ向かう.
破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)Amazon書評・レビュー:破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)より
4344409884

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