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バレエ・メカニック



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【この小説が収録されている参考書籍】
バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニックの評価: 3.56/5点 レビュー 16件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.56pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全10件 1~10 1/1ページ
No.10:
(4pt)

テイストの異なる三章からなら物語

昏睡状態の少女の夢想が東京をのみ込んでいくというSF作品。

三章からなり、画家である女子の父親、主治医、父親のスケッチモデルと主人公を変え、時を隔て物語が紡ぎ出される。それぞれ章のテイストが異なるのが特徴。

一章は、少女の夢が東京に現出し、人々を恐慌(〈理沙パニック〉!)に陥らせる。少女が自身の失われた大脳の代わりに都市を使って夢みる、という発想が面白い。

二章は、恐慌から三年後、死した少女の声が聞こえた人々を訪ねる主治医の物語。一章の文章のややこしさはなりを潜める。幻想から現実へと転調した感がある。

終章は二章からさらに40年。近未来なムードたっぷりで、懐かしのサイバーパンクの趣となる。分かり難さも含めて...。

死生観などと難しく考える必要はないのかも。
バレエ・メカニック (想像力の文学)Amazon書評・レビュー:バレエ・メカニック (想像力の文学)より
4152090677
No.9:
(5pt)

これバギー・イン・ザ・ドールハウス?

2009年に発売された「バギー・イン・ザ・ドールハウス」と不思議なほと似てる作品(パクリという意味ではありません)

仮死状態の少女→少女の夢が浸出するファンタジーホラー→SF路線という流れもソックリなので、この作品が好きな方はそちらも読まれてはいかがでしょうか?
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4152090677
No.8:
(5pt)

文章の御馳走

冒頭からの数頁を今でもそらんじられるくらいに好き。幻想文学からハードSFへの滑らかな展開やセンチメンタルな物語も至極だが、要所を掻い摘んでみると散文としてのポテンシャルも高い。そんな奇跡みたいな一冊。
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4152090677
No.7:
(5pt)

なぜ、今まで読まなかったのか、ちょっと後悔

早川書房から出ている「想像力の文学」という叢書の1冊。だいぶ前に購入してはいたんだけど、積読状態でようやく読むことができたが、なぜ今まで、この本を読まなかったのか、ちょっと後悔している。

津原泰水については、河出書房新社から出ている大森望編のSFアンソロジー、『NOVA』に収録されていた「五色の舟」が最初に読んだ作品。いわゆるFreaksを描いた作品だったが、まさに想像力をかきたてる作品で、かなり衝撃を受けた作品だった。その後、この作家については、いずれちゃんと読んでみようと思って、購入はしていたんだけど、ようやく読むことができたが、想像以上にスゴい作家だった。

舞台したては、SF小説なんだけども、それ以上に、彼の文体が酔わせる。ストーリーを楽しむと言うよりも、彼の書く文章、それ自体が、非常にマジカルでファンタジックで、日本にこんな作家がいたんだと感心した。まさに「想像力の文学」叢書に相応しい作品だった。
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No.6:
(4pt)

予測できない展開にも、最後は感動させられる

幻想的な世界を醸し出す言葉の連なりがとても美しい小説。
でも、このような小説は読み手を選ぶのだろうと思わされる。
それに慣れていないと物語の世界に没入するのが難しい。

1章を読み終わるまではそんな風に思っていたが、章の終わりで突然、語り手の状況が理解出来て泣かされて以降、言葉に酔わされて見えなかった世界が急に目の前に開けてくる。

そして3章にいたるまでに別世界へ運ばれるような物語の展開に不思議な気持ちが沸き起こる。

決して自分の好きな王道ではないかもしれない。
しかし予測できない展開に最後は感動させられた。

各章最後の1頁で物語の世界が果てしなく開けていって、このような物語も良いなと感じさせられました。
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4152090677
No.5:
(4pt)

なんだか分からないけど美しい……

『11』を読んだときも文章にほとほと感心しました。

これはまたすごくきれいな文章の作品ですね。
サイバーパンクというジャンルやシュールリアリズムというのが
正確には分かりませんので申し訳ないですが、とにかく幻想的な
雰囲気が充ち満ちていて、あるときはエロティックだし、
あるときはハードボイルドだし、全体にSFだし。
それをこれでもかって言うくらい正統的な日本語で(漢字と
ひらがなのバランスの美的配分も大好きです)綴られると
なんだかワケがわからない、とか言いつつも、あっというまに
エンディングまでいきました。

第一部の人称が「君」つまり読んでる人?というのもこのあたりの
引き込み力を生じさせる要因なんですかね。読み始めは、おいおい
と思いましたが、言われているうちにすっかり物語の中に
入ってました(笑)

第二部の彼女も続けて読んでいれば何となく分かるのですが、
それをまた第三部で人称を含めてひっくり返していくといのは
すごい構想力だし、また文章表現の限界に挑むといったら
大げさだけど、実験小説にとどまらない魅力を持っています。
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4152090677
No.4:
(4pt)

イメージの奔流、主体の喪失と拡散

ペタンディックだが簡潔、多彩なイメージが奔出する文章。

 説明なしで話が進んでいくのを楽しいと見るか、わけがわからないと感じるか、そこは人によって違うだろうが、1章では東京が「理沙パニック」とされる集団的な幻覚のような事象が起き、2章では「パニック」のその後を探求する。3章は、そこから二十年後くらいの話か。単行本にするときに書き下ろしされた章なので、多少は毛色が違うかもしれない。

 一章では、主人公の芸術家は「君」という二人称で語られる。二人称小説の常で、語り手の「私」が出てくるが、それは二章で主人公(視点人物)となる医者の龍神だ。しかし、二章では<彼女>という三人称となっている。
 ただ、三章で「せめて三人称単数で考えろ」といったセリフが出るが、このことは二章の<彼女>というのが、自分で自分のことを<彼女>と呼んでいるのだということを、示唆している。

 そうなると、三章の安定しない主語、一人称複数の「僕ら」であったりは、チルドレンであるトキオを視点人物とする物語としてはともかく、一章、二章の龍神という語り手に対して、余計な存在と言えるかもしれない。いや、あえて外側の視点、ということで出てくるのか、見届ける存在として。

 ネットワークによって、私たちの意識はつながっている、と現代社会について言える部分がある。新聞・テレビ等のマスメディアの登場以前には、「私たち」というのはせいぜい村落共同体の範囲で、「国家」に対してそういう意識はなかった。それが、どんどんと広がり戦争の世紀に入り、また、インターネットの登場などによって、「私たち」という主体の概念は変化していった。あるいは小宇宙化しているのかもしれないが。ネットイナゴとして行動するとき、私たちは「私」を忘れているだろう。サッカーのワールドカップなどの応援でもいいが、それを延々と続けていて、「私」に目を向けないとなると?

 そういった、ネットワークによって意識(=脳)がつながった状態、としての三章の「リサ・チルドレン」は個人的には興味深かったが、あんまり評判はよくないらしい。短いからなのか、ファンタジー(幻想小説)を理論化すれば、SFになると誰かが言っていたが、そこの部分が足りないのか。確かに千夏が出るのもよくわからないし。

 個人的にはちょっと消化不足の感じもあるが、ともかく、「想像力の文学」と題するだけの作品であって、楽しめました。
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4152090677
No.3:
(4pt)

イメージの本流に浸れる幸せ

不条理なイメージがきらめく様な本流となって、その中に飲み込まれる。それが読んでいる間中とても心地良く感じられました。ストーリーとしては多少難解なところもあり、個人的には2章までで完結したほうが良かったのではないかと思います。3章では2章までの登場人物のその後ですが、新たな役割付けに無理があるかな。でも久しぶりに読んでよかったなと思えたSFでした。

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No.2:
(5pt)

美しい!

とにかく文書が端麗である。ほとんど脳死し、残った脳幹だけで植物状態となった少女の脳機能を都市が補完しはじめる、たったそれだけの話なのだが、それゆえ重要となる現実の都市に舞い狂う幻影の描写が完成された散文の美となっている。ところで読み進むうちに感じたのだが、この作品は山野浩一の「花と機械とゲシタルト」の進化系となってはいないだろうか? 原理は違うが特殊な幻影の発生があるという点および人称への拘り方が、その主な理由だ。山野作品では(パラコンパクト化によって空間に孔が開くとはいえ)、主要舞台は精神病院に限定されていたが、それがここでは東京(正確には、武蔵野、山の手、都心)にまで拡大されている。
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4152090677
No.1:
(5pt)

幻想小説発サイバーパンクSF行

「理沙パニック」という物理現象が東京を覆う。これが第1章だ。現代造形作家木根原が中心人物だが、それを「君」という二人称で描くものだから読み始めは混乱しっぱなしである。前衛ショートフィルムやアニメ、童話などのイメージが物理現象となって混沌の世界を描く。もう一人の重要人物は、言うまでもなく理沙。意識のないまま機械につながれ何年も延命し続けている。ストーリーの整理や解説はするまい。ただ、最後にきちんと整合性はとれる。「シナの5人兄弟」の5番目の弟の特技は、いつまでも息をしないでいられること。
 第2章は、龍神医師が中心人物。ここでまた意地悪な書き方をされるので、何度も1章へ戻って読み返した。えっ「彼女」っていうのは龍神?おわっ姉っていたっけ?だがこれも最後に向かって収斂していく。
 第3章の中心人物はトキオ。このころはもう慣れっこになったが、またまた何度も1章や2章を読み返す羽目になった。
 だが、美しい情念のきらめきを、サイバーパンクSFの形の中で描き出している。傑作だ。
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