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双生児
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双生児の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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1999年の英国。 第二次世界大戦期を扱うノンフィクション作家として知られるスチュワート・グラットンが、ダービシャー州バクストンの書店で新作のサイン会を行っているところへ一人の女性が現れた。 アンジェラと名乗ったその女性は、サインが主目的ではなく、スチュワートが出している広告が興味を惹いたらしい。 彼は、チャーチルの回顧録の中に見つけ出した人物、ソウヤー空軍大尉についての情報を求めて雑誌などに広告を出していたのだ。 回顧録の記述によれば、ソウヤーは良心的兵役拒否者であると同時に、空軍大尉でもあったのだが、そんなことがあり得るのだろうか。 アンジェラの旧姓はソウヤーであり、亡父の遺した戦時の体験記がスチュワートにもたらされるのだが・・・ アンジェラの父、J.L.ソウヤー氏の体験記は、仕官前の青年時代から始まっており、そこで双子であることと片割れのイニシャルもJ.L.であることが明かされ、早急に核心に迫るのかと思うと、かなり裏切られることになる。 体験記は、1941年5月10日のハンブルク爆撃の帰途で撃墜されたソウヤーが、外傷とともに記憶障害を患ったため、時間を追って書かれてはおらず、また、二人のソウヤーの視点が出てくるため、相当に混乱させられるが、その混乱が本書の醍醐味。 ソウヤー兄弟は、性格は異なるものの、二人とも同じ大学のボート部に所属しており、1936年のベルリンオリンピックに揃って出場して三位に入賞し、ルドルフ・ヘスその人から銅メダルを授与される。 ドイツの副総統であるヘスは、和平交渉のため1941年5月10日、強行的な夜間飛行でイギリスへ渡ったが、今でも替え玉説などか云々されていて、この歴史上の人物を巻末に至るまで巧みに活用している。 そもそも、スチュワートがソウヤー空軍大尉に興味をもったきっかけは、自分自身の生年月日である1941年5月10日が奇しくも英独戦争の終結した日であることからなのだが、フィクション部分も含めて全てが「1941年5月10日に何があったのか?」という謎に収束されていく展開の技巧性は見事の一言。 また、謎を追っているはずのスチュワート自身が謎の核心であることに気付いた時は、慄然とさせられた。 プリーストの他の作品、特に「奇術師」との類似性は多いが、様々な仕掛けの多さでは本作に軍配。 SF関連の賞も受賞しているが、読み解く愉しさが感じられる作品でもあり、本邦ではミステリとしての評価が高いのも頷ける。 | ||||
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素早い対応でした。満足してます。ありがとうございます。よろしくお願いします。 | ||||
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この作品のすばらしさについては先のれびゅあーの皆さんに語り尽くされています。ただ、日本人としての立場からすると、一つ留保があります。この作品を楽しむには第2次世界大戦初期の欧州情勢、とりわけ英独における講和の試みについての詳しい知識が必要で、さもないと真実と虚構の境目をさまようのも、なにが真実で何が虚構かわからなくなってしまいます。 | ||||
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魔法で味わった作品の世界がグニャリと歪む感覚は健在であった。 奇術師で?となったのだが本書ではその歪んだ白昼夢的な世界を見事に再現している。 第二次世界大戦史のこうなるべきであったかもしれないというIFまでもがその歪んだ世界を形成する核として使われている。勿論歴史を知らぬ者でも十分楽しめる。 第二次世界大戦下の登場人物の歴史を読み進むにつれ、いつの間にか違和感とともに作品の内に引きずり込まれていく奇妙な感覚がある。それも何度も前のページと読み直しながら。 魔法に次ぐ傑作ではないだろうか。 | ||||
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’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第4位、「このミステリーがすごい!」海外編第15位にランクインした、英国SF協会賞、アーサー・C・クラーク賞受賞作。 ストーリーは歴史作家グラットンが、サイン会で初対面の女性から、手記を渡されるところからはじまる。それは彼が次回作のために調査していて、チャーチルが回顧録の中で指摘したある矛盾を解決するはずのものであり、雑誌で情報の提供を呼びかけていたものだった。それが冒頭の第1部。 ここから第2部と、第3、4部を挟んで第5部のふたつの部で一卵性双生児のふたりによるパラレルワール・歴史改変ストーリーが展開されるのである。 ベルリンオリンピック、第二次世界大戦、チャーチルの思惑、ルドルフ・ヘスの独英単独講和の画策など知的好奇心をくすぐるテーマながら、正直、歴史が分岐してゆく過程を読み解くのはなかなか難しかった。読み終わった今でも物語の正誤性がつかずにいる。 プリーストは、SF、ミステリーにおける技巧を縦横無尽に駆使して、同じイニシャルを持ち、歴史の流れに翻弄される一卵性双生児、ジャックとジョーの人生を、虚実入り乱れた「語り=騙り」で描ききっているのだ。 本書は、知的水準の非常に高いSFミステリー・エンターテイメントであるといえよう。 | ||||
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本書は歴史小説であり、SFであり、広義のミステリでもある。恋愛小説の側面もある。 ジャンル小説で良心的徴兵忌避者を主人公とすることはタブー破りだが、9・11以降の、テロと”きれいな戦争”の時代に住む私たちにぴったりであり、すぐれて現代的な意味でのモラルを取り扱った小説になっている。 アイディア、プロット、背景描写と全ての要素において、ジャンル小説の標準を遥かに凌駕しているが、同時に純粋に小説を読む愉しみを味わえる純文学小説でもある。 ”生活感がなく”、”何も起こらない”、と言われている保坂和志の小説のファンでも十分に愉しめるものだ。 本書が傑作と言われる所以だろう。 | ||||
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第二次大戦中に「良心的兵役拒否者にして戦争の英雄」という二律背反的賛美を受けたJ.L.ソウヤー。彼が残した手記に記された真実とは…。 一卵性双生児である二人のJ.L.ソウヤーをめぐる摩訶不思議な物語です。1940年代半ばの米中戦争、41年に終結した大戦、など、幻惑的記述が続きます。こうした幻夢の世界をどう辻褄あわせしていくのか、そのからくりについて想像を巡らしながら読み進めましたが、物語の終盤にさしかかっても自分なりの解答を他人に披露できるほどの自信をもつには至りません。そして497頁で迎えた結末とともに書を一旦閉じても、胃の腑に落ちるような感覚は得ることができませんでした。 巻末の大森望(評論家)の懇切丁寧な解説を読んで、自分の曖昧だった推察があながち間違いではなかったという安堵感はようやく得られましたが、この解説がなければプリーストが張り巡らした仕掛けを、確信をもって味わうことは不可能だったでしょう。 では私はこの小説を楽しめなかったかというと、実はそんなことはありません。確かに私は仕掛けを十分には見抜けませんでした。しかし作者にとって仕掛けは手段に過ぎないはず。 この小説は幻想世界に読者をいざないながら、現実世界の戦争の悲劇と平和の尊さを見事に描いていると感じさせるだけのものを持っているのです。平和を実現せんとするソウヤーの次の台詞は私の心を強く打ちました。 「ぼくは、平和が抽象概念ではなく、自分の人生において成し遂げられる現実であるという考えに雷に打たれたようになって、廊下に立ち尽くした。われわれの赤ん坊は、平和な世界に生まれてくるのだ。」(374頁) 平和を成し遂げる。平和に積極的にコミットしていく。そんな経験を果たして幾人の読者が意識的に持つことができるでしょうか。 仕掛けの読み解きに気をとられるばかりだとしたら惜しい、そう思わせる小説です。 | ||||
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この作品は五部構成になっています。この構成自体が、すでに作者の綿密な計算によって編み出されたものであることが、読み終わってやっと解ります。 第一部のノン・フィクション作家スチュワート・グラットンと第二次大戦で活躍したJ・L・ソウヤーの回顧録を持って登場するアンジェラ・チッパートンとの出会いからして謎を含んでいます。 それに続く第二部では、私たちのよく知っている歴史に基づいた出来事が展開します。 第三部を挟んで、第四部、第五部では、これはパラレル・ワールドの話なのかと思わせる既知の歴史認識とは違った展開をして行きます。 「奇術師」同様、双子、夢、幻想、こうしたものが、綯い交ぜになって不思議な世界を展開し、最後には、見事にどんでん返しをくらいます。 全く見事な作品であり、長編ながら一気に読ませてしまう魅力のある作品です。 | ||||
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非常に込み入った書き方で、一度読んだだけでは半分も理解していないように感じる。やはり原題の方がしっくり来るような気がする。もう何回か読み込んで、しっかりと理解したいと思う。 | ||||
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第二次世界大戦でのナチス・ドイツの侵攻と、それに対して徹底抗戦する英国。半世紀以上前に起きた戦時中の出来事を、英国人の一卵性双生児の兄弟、J・L・ソウヤー(ジェイコブ・ルーカス・ソウヤー。通称、JL。あるいは、ジャック)とJ・L・ソウヤー(ジョウゼフ・レナード・ソウヤー。通称、ジョー)それぞれの視点から描いていくストーリー。爆撃機による都市爆撃の凄まじさや、「我々は、絶対にあきらめない」をスローガンに掲げて戦うチャーチル英国首相のキャラなど、第二次世界大戦の英独戦の読み物としても真に迫っていて、なかなかの読みごたえがあったんだけれど、本作品を貫いて流れているテーマはそれではありません。では、どんなテーマ、どんな狙いが隠されているかというと・・・。作者が仕掛けた企み、真のテーマに気づく道のりこそが本書を読み解く楽しさであり、何よりの面白さ。○○○○ものと言ってしまうだけで、これから読む方の興を削いでしまう恐れがあるので、口チャックしておきます。一本の線から平行して走る二本、三本のそれへと分岐し、収斂したかと思うと拡散していく話を、どうぞ存分に堪能されますように。 ところで、本書の一番の妙味。私にとってそれは、どの辺にあったのか・・・・・・ ついさっきまで確かに現実だと認識していたこの世界が、いつの間にか不気味な、得体の知れない世界へと変貌していくところ、だったかなあ。話の前半のJ・L・ソウヤーの記述を念頭において読み進めていくと、話の後半、もうひとりのJ・L・ソウヤーの話に入ってから次第に、「あれれ?」となるんですね。この「あれれ?」の謎が分かり、作者の仕掛けた企みが途中で分かってなお、話の行き着く先が知りたくてわくわくしながら頁をめくっていきました。話の後半、ジョーが体験する気味の悪い、不思議な出来事。そこが一番、ぞくぞくしたなあ。面白かったなあ。 | ||||
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