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男たちの絆
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男たちの絆の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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初めて著作を拝見するニワカです。 1986年発表、1988年翻訳(2023年現在からは日本語訳も35年前。副主人公格の男の子が12歳なので…なんと2023年には47歳ぐらいになっていることに!って作中の人物ですが) ミステリ自体を余り読まないので、今の(と言っても35年前)ミステリのお約束が分らず、舞台のインディアナポリスってどこでしたっけ、と無知きわまる初心者ぶり(五大湖近くのインディアナ州の州都で、州の人口は700万以下。日本で言えば埼玉県ぐらいの人口が、面積94000㎢、北海道より一回り大きい行政区分に住んでいる)をさらしつつ、ググりながら読みました。 この「ググる」遥かな祖先が、1986年のこの時代にその姿をちらほらと垣間見せ始めています。登場人物や、警察が「中央コンピュータ」的な所でデータを精査して該当の人物を、的な事をしており、この時代、インターネットの祖先の祖先が生まれ始めて、以後10年で世界は激変するのですが、そのはるかなさざ波のようなものが現れています (筆者が読んだのはポケットミステリ版でしたが、訳者が「こうしたコンピュータに関係する犯罪が現実に起きたようだ」と驚きを込めて記している、そんな時代です) インターネット、携帯電話が人類文明を根本的に生活面で変えたことが一世代前のこの小説から如実に感じるとともに、それとともにタイトルではありませんが「男たちの絆」的な人間の情緒、感情はまったく変わっていない事も痛感しました。 主人公のパウダー警部は、これ、ハードボイルドたがらですかね、50才近いのに圭角が取れていないですね!人を見れば皮肉や軽口をたたかなくては気が済まないのか、読んでいて同年齢ぐらいの筆者は「うーん…これがアメリカ人の尊重する個性とやらだとしたら、この人、日本社会ではどんなに優秀でも一年でポスト失うな」と確信する我の強さというか口の悪さで、それでこの人の能力で持っていることは分かるにしても、もうちょっとこのどぎつい性格はなんとかならんのか、と思いつつ読みました。これは周囲の人にも突っ込まれているので、メリケン社会でもこの人は出色のようですが、それにしてもちょっとバランスを欠いた人だと思います。 感心したのは(それもまたパフォーマンスという説明付きながら)部下の女性刑事が数年前に足を撃たれ、その後は車いすで堂々と勤務していることで、こうしたアメリカでの人権の尊重ぶりはやはり一日の長がある、と感心しました。副主人公で重要な役割をする人物も車いす生活者ですし。 しかし同時にその人も「僕から見ると車イスでない人はちょっと個性に欠けているんだが」的な事を申されるので、ああ、ハードボイルドというのは唯我論でないと生きていけない宇宙なのかねえ、それともアメリカはここまで自己の正統性を吠えたてないと権利もない世界なのかねえ、と頭を抱えました。(他のミステリを読む限り、著者の宇宙はやや自己主張が激しそうではありますが) 驚くのはアメリカないしインディアナ州警察のセクショナリズムで、失踪人なら失踪人、データ管理はデータ管理、と役付きで職位と職権が厳密に分断されていることで、これによる内輪もめ、または職権侵犯にならないかの神経戦が凄いことは、警察自体の力を殺ぐことになっていないかしら、と未来の他国人ながら心配になってしまうレベルで警察のセクショナリズムに描写されており、いささか面食らいました(現実のアメリカ警察や日本の警察もそうなのかは知りません)これまたググるとインディアナポリスの人口はわずか88万。日本で言えば堺市、浜松市、ちょっと小さいですが東京都大田区ぐらいで、とすれば浜松警察や大田区警察を舞台にした小説も理論上は成立することになりますね) と、まあ、その中で主人公パウダー警部は人生の選択につながるかも知れない分岐路に立ったり、その中で息子や、作中に出てくる男の子と不思議だけれど説得力のある関係性を持ったりして、タイトル・ロール「男たちの絆」とおりの体温の高い社会性を持っていることが描かれ、犯罪小説、探偵小説、警察小説というより、義理人情小説のような感じで読みました(それにしてもクールな義理人情で、日本の社会の関係性との違いを示していて象徴的ですが)それにしても、多分このパウダー警部の登場する作品で日本語訳があるのはここまでらしく、この先のパウダー警部はどうなるのか不明なのが残念。 この小説はミステリとしては普通に殺人があってそれを解決というよりは、警部さんが町の悪も抱き込んで謎の回収にかかるという定石通りではない警察のヒトコマ、日記という感じで、推理小説としての「謎解き」はキチンとしているけれども、ミステリとしてはかなり変格的な印象。 ですがミステリ無知の筆者、1980年代半ばのインディアナポリスをトレースした、アメリカを舞台にした現代小説を読む感触で読みました(日本式の元号時代区分で言えば昭和末期で、令和初頭からは⅓世紀昔の現代であり、アメリカ風にはロナルド・レーガン時代で、以後クリントン、オバマ、トランプを経てバイデンですから2020年代のアメリカ人にとってもこの小説はちょっと昨日の小説と思います)。 パウダー警部、たぶんトランプ大統領時代ぐらいか、或いは今もご存命かな? そんな風に印象的な人物でした。面白かったです。 | ||||
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