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化身
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化身の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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短編集、三編所収。 「化身」はモダンホラーというよりも幻想小説。「雷魚」もホラー小説の体をとってはいるが青春小説である。文章自体は巧みだが、展開と問われると下の上。もっと読みたいと思わせる力が足りない。リーダービリティは巧みの域で、今後の活躍に期待できる。 「幸せという名のインコ」これが本短編集の中で頭一つ抜けている。 バブル崩壊後からリーマンショックを生きた人間であれば、この恐怖は身に染みるものがあるに違いない。自分は何もしていないのに海の向こうの経済崩壊が日本にも飛び火、主人公自身の職業であるデザイナーの仕事にも悪影響が及ぶように。そんな中、娘が買ってきたインコが予言を始める。 主人公が苦悩する描写には身が引き裂かれる想いが伝わってくる。下手をすると主人公自身が殺人犯になっていた可能性だってある。インコにはそういう未来が見えていた。舞台としては家、外出先。登場人物たちも主人公、妻、娘、そしてインコと最小限だ。改変すれば密室劇にもサイコスリラーにもなったが、絶妙な塩梅でホラーというジャンルに踏みとどまっている。「猿の手」を彷彿とさせると言えばピンとくる読者も多いか。事実、追い詰められ、苦悩を抱え込んだ主人公の姿は読者(特に働き盛りの男)の胃を追い詰め、世間のシビアさを容赦なく突き付けてくる。現実世界が苦しめられている「不況」。これをホラーのネタにした作品は存在するが、多くが貧困や、社会情勢を背景にしている。本作の様に貧困が目の前にあり、それをどうにか回避しようとする様を、精神状態を細やかな筆致で描写し、ホラーとして昇華した作品は珍しい。一読の価値ありだ。 | ||||
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他の方々の感想欄ですでに言い尽くされている感はあるが、ホラーを怖い話でなければならないと決めつけて読む者にとっては、は?どこが怖いの?という話である。 私の場合はホラーは恐くなければならない、という持論は特にないので、この作品はつまらなくは無かった。 ホラーに関しては海外のモダンホラーから入った口なので、ホラーに求めるものが一般とは少しずれているのかも知れない。まあ、一概にホラーと言っても千差万別だからね。 むしろあえてジャンルという檻に閉じ込められる事で、作家の個性が潰されるのであれば、ホラー大賞という枠そのものが作品にとり害でしかない。 何が言いたいかと言うと、私にとっては、要するに読んでる間が楽しめれば良いのだ。 で、この作品。ラストの蟻のシーンはホラー的恐怖を微妙に感じはしたものの、 ディーンrクーンツほどのスリルもサスペンスも感じられなかった。 確かに読む前にレビューをちら見していた通り、恐くない。 恐くないからつまらない、というかと言えば、決してそんな事はない。 私としてはそこそこ楽しめる作品であったと言わせてもらおうか。 他の人はまだ指摘してはいないが、主人公が転落した池の構造を、私はなんとなく女性の子宮のようにイメージした。 その子宮にイメージされる池の中で変態する主人公の姿は、夢野久作のドグラマグラ作中で描かれた胎児の夢を彷彿とさせる。 それは淫夢に似てどこか甘美なものを感じさせる。 私がこの作品を読んでいて感じたのは、始終そんなものであった。 他の方々のレビューでよく指摘されている、主人公の心理にまるで恐怖や不安が感じられないというのは、生々しさのないそうした夢のようなぼんやりした感覚が、作品の通低音として流れているためだろう。 あえてジャンルにこだわる人に言わせてもらうならば、そう、これはホラーではない。幻想小説なのである。 ぼんやりした甘美なる夢の浮揚感をこそ、楽しむべき作品である。 そしてそうした演出のために作者が意図したのか、しないのかはわからないが、 この作品が主人公の一人称で書かれている事が効果をあげている事は、確かだと思う。 人生に対してどこか捨て鉢になって熱帯のジャングルへ踏み込む自体、すでに主人公の心理は通常の感覚ではない。 池に落下してもそれほど恐怖を覚えなかったのも、恐らくはそのためであろう。 しかしさりとて自殺をする勇気はなく、とりあえず空 腹になれば、何か食べたいという生命の根源的衝動のみが主人公の心理を支配していたのだろう。 そうした精神状態が肉体を変化させたのならば、当然それに伴い精神も変貌しておかしくはない。 あえて恐怖たこだわるならば、主人公の恐怖を感じないそうした心理状態をこそ、恐怖とよぶ事が出来るのではないか? だからこの作品を一人称ではない、三人称的な映像で表現したなら、作品のイメージは随分と変わるだろう。 | ||||
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第16回日本ホラー小説大賞を受賞した本作であるが、読了後これはホラーなのか?という問いがまず自分の中で浮上した。 主人公が徐々に異形と化していく流れはどこか穏やかであり、格別の悲愴もなければドラマもない。本作において作者が描こうとしているものは、一切の飾りを取り払った生々しいまでの「生」、あるいは生命そのものに対する原色の美しさである。極限状態に追い詰められる「生命」、追い詰めるものもまた自然という「生命」、その中で「生命が生きるために進化した」――その過程や現象は明らかに異常で奇妙ではあるが、恐怖感はなかった。 そう、本作にハラハラドキドキゾワゾワガクガクといったものは「ない」。テーマとしてはもはや純文学に近いのではないかと思う。ゆえに自分としてはこれはホラー小説では「ない」。 一般的な感性(あるいは期待)でホラー小説を読もうとして本作を手に取った場合、読者は拍子抜けするだろう。なぜなら怖くないから。ホラーを見たい・読みたいという欲求に本作はこたえてくれない。 前述したように純文学的なテーマとストイックな文章は評価に値するが、これまで貴志祐介や岩井志麻子等を輩出してきた賞に求められるべき驚きや感動、そして恐怖が圧倒的に弱いことが残念である。べつに異常者や化物や幽霊が出てきて暴れ回るものだけがホラーだというつもりはないが、「こういうホラーもあるんだ」と主張する前にせめてまず「怖さ」を磨いた作品が読みたかった。 評価はおまけして☆3つ。作品自体を軽んじているわけではないので悪しからず。ホラー小説大賞という冠を外して読めばそれなりに興味深く地味に面白かった。 | ||||
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最近のハードなホラーが好きな人には駄目だと思う。表題作のタイトルはグロテスクな描写や自分の体が変容する恐怖を期待させるが、そういうものは何も無い。描写力はあるがグロテスクでなく綺麗と感じさせるものだし、恐怖でなく楽しい感じだ。逆に、最初から楽しいものを期待して買うと表題作は楽しめると思う。他の二つについて。表題作で見られた発想の良さが少しでも感じられる第2編・3編を期待してたらあてが外れた。どこかで読んだようなありふれた話で、がっかりした。でも筆力は相当なものなので、安心して読める。文庫版で気楽に読むには良いかもしれない。 ・「化身」 特殊な環境に遭難した主人公が、日々を生きる中、体が環境と生活に適応し、どんどん変容していく話。生態系の最下位にいた主人公が、その頂上にまで達する話で、楽しい。特に○○を食べるためにジャンプするシーンなどわくわくした。体が変容していくが、それに対する主人公の苦悩など一切無い。むしろ環境に適応してウェルカムと感じているよう。読み物としてのレベルは申し分ないが、日本ホラー小説大賞という肩書きは似合わない。設定だけはホラーであるが、ホラーとして進行していかない。というより、最初から読者を怖がらせようとすらしていない。 ・「雷魚」 池に現れる「女の人」の話。少年の心はよく書けているが、ややありきたり。 ・「幸せという名のインコ」 飼っていたインコが様々な<お告げ>をする話。オチは見え見えだが、最後のインコの言葉自体はなかなか面白かった。だが、これもよくある話。新しさはない。 今のところあんまり次を読みたいとは思わないが、「化身」に匹敵する怪作なら是非買いたい。 | ||||
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日本の外れにある島で、一週間の休暇を過ごそうとした主人公は地上から距離のある池に落ち、絶体絶命の窮地に陥る。しかし、体は次第に水に順応するように変化していく。――化身―― どの短編もオチが秀逸で、そこに至るまでの紆余曲折も面白い。それぞれホラーの趣旨が違い、作者の人並みはずれた才能が窺える。 ただ、文体にくせがある。一つに、最初に事件の結論を書いて、その後にその顛末を書く手法を執っている。こういった小説を読みなれていない為、最初は戸惑ってしまった。 しかしその文体といい、発想といい江戸川乱歩を彷彿させた。もちろん、その領域にはまだ達していないが、化けてくれることを祈る。 | ||||
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密林にぽっかり開いた池に落ちてしまったら・・・この状況は確かに怖い。そして現代の不安な社会を暗喩しているのだろう。ただご都合主義的な話の進め方がどうも腑に落ちない。もっと徹底的にリアルに描いた方が良かったと思うんだけど。 | ||||
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「端正な文体で完璧な世界を生みだしたホラー大賞史上最高の奇跡 」なんて大仰なコピーはもういいかげんにやめてほしい。 誰も信じていないのだから。「奇跡」なんて1000年に一度も起きないようなことを言うのです。ホラー大賞受賞作は次に何が起きるのだろうと思わせ、変身が始まると皮膚の下がぞわぞわするような感覚を覚えてなかなか興味深く読めたが、他の書きおろし2作は残念ながら凡作。今後どういう物語を紡いでいくのか期待して待ちたい。 | ||||
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