■スポンサードリンク


千年紀末古事記伝 ONOGORO



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
千年紀末古事記伝ONOGORO (ハルキ文庫)

千年紀末古事記伝 ONOGOROの評価: 4.50/10点 レビュー 2件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

問題作?いやいや壮大な冗談話でしょう!

日本の古事記には隠された謎があった!
本書ではその謎を解き明かすという趣向のミステリなのだが、物語の舞台はその古事記を編纂する稗田阿礼と太安万侶がいる飛鳥~奈良時代である。

神の誕生から日本を作ったとされる伊邪那岐と伊邪那美の登場。そして伊邪那美が黄泉国に行ってからのエピソード。更にスサノヲ、アマテラス、ツクヨミの誕生にヤマタノヲロチ討伐、等々我々が古事記で知った内容が描かれる。

さほど古事記、日本書紀に詳しくない私でも昔話等で語られる天照大御神が天岩戸に閉じこもる話、ヤマタノヲロチ討伐の話、因幡の白兎の話についてはある程度知識があったが、本書ではそれらが微妙に異なっている。

しかし物語はどんどん進む。
どんどん神々は誕生し、どんどん時代が過ぎ去っていく。

稗田阿礼が全てを語り終えた時、そこからが古事記の真相が判るのだ。

しかしこれらもまた最後の一行で全てが冗談であったことが明かされる。

しかし私は本書はまた別の目的で書かれたのではないだろうかと推察する。

稗田阿礼によって語られる神々の営みはほとんど全てが男女との交合(まぐわ)いによって構成されているからだ。

とにかく神の世界はセックスに満ちていると云うのが率直な感想である。
不完全な神として神の世界である高天原から追放された伊邪那岐と伊邪那美。余計な物を持つ伊邪那岐と足らない箇所がある伊邪那美がお互いに不足する物を接合することで神を生み、世界中に神で満たそうとする。

日がな一日、来る日も来る日もセックスに明け暮れ、子を産んではまたセックスと、交合ってばかりだ。
次第に神も余計な物を敢えてつけて伊邪那岐が寝ている最中に伊邪那美と交合う。更に伊邪那美は自分の生んだ神々とも交合い、更に子を産む。

またスサノヲは亡き母を偲び、その面影を実の姉アマテラスに見出し、立ち向かう千人もの兵士を切り捨て、更に制止する兄を殺してまで姉と交合う。何か事が起きる根源が全てセックスと子作りによって片付けられている。

まだ秩序などない神々が住まう世界。従って彼らは本能の赴くままに生きている。美しい女がいれば素直に交合いたくなる。それが人の妻であっても交合いたいのだからしょうがない。

実の兄弟であっても好きになった女を取られれば嫉妬に駆られて殺したくなる。なぜなら憎くて仕方がないからだ。

現代の我々は人間らしい生活を送るために長年培われてきた知識と秩序について小さい頃から教育されているがゆえにこのような本能的な感情を抑えて理性的に振る舞うことが成されているが、神々の世界ではまだこのような概念すらないため、実に自由奔放に欲し、そして生きているのだ。

しかし姦通罪、近親相姦、同性愛、etc、奔放な性活動のオンパレードだ。
私は神の物語と称して一種のポルノ小説を書くことが鯨氏の本当の狙いだったのではないかというのが感想である。

ミステリ要素もある。
本書は入れ子細工とした歴史ミステリではあるが、作中話として語られる神々の話の中に密室殺人が登場する。それは姉のアマテラスと交合うために天の岩屋戸に立て籠もったスサノヲが岩屋戸を開けると髪を切られ、背中に短剣を突き立てられたアマテラスの死体を残して忽然と消え失せるというものだ。

しかし金田一耕助を思わせる思金神によってその密室殺人の謎は早々に解明される。

ここにおける本格ミステリ要素は単に添え物に過ぎないことがこれで解るだろう。
やはり本書は歴史ミステリの意匠を借りたポルノ小説であることが鯨氏の真意ではないだろうか。

問題作?いやいや鯨氏特有の壮大な冗談話でしょう。
しかも物凄い量の知識と情報を収集した上で語られるジョークだ。
この作品の登場人物を全て確認したとき、鯨氏がこの冗談話に費やした労力に恐れ入ることだろう。これぞバカミスの真髄とも云うべき作品か。労力の割には評価に繋がらないところが非常に残念ではあるのだが。



▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!