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(短編集)

イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり



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イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたりの評価: 7.00/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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No.1:
(5pt)

イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたりの感想

岩手が生んだ偉大な童話作家であり詩人である宮沢賢治。
時はケンジが稗貫農学校で教鞭をとっていた頃。
ケンジは論理的思考と科学的分析力を持つ一方、非常に好奇心旺盛で行動力がある変わり者でもある。
そんなケンジには花巻高等女学校で教鞭をとる藤原嘉藤治という親友がいる。
カトジのもとには奇妙な相談がまい込み、カトジはケンジを頼る。
こうしてケンジとカトジのコンビが、さながらホームズとワトソンのように奇妙奇天烈な事件を解き明かしていく―・・・

全四編の短編集です。
「ながれながれにながれたり」「マコトノ草ノ種マケリ」「かれ草の雪とけたれば」「馬が一疋」。
各題は賢治の作品から名付けられています。。
作中の時期は賢治が稗貫農学校教師で、かつ妹のトシが花巻高等女学校教師を辞め療養している頃になります。
賢治を探偵役に据えているだけあって、賢治へのリスペクトが感じられます。
各題だけでなく、作中諸所に賢治の作品を思わせる箇所があります。
事件は賢治の作品へ影響している形になっており、その辺りにも著者の賢治でミステリを書こうという意欲を感じます。
また、賢治の生涯や思想、人物像も掘り下げています。
有名な信仰に関する親子の衝突や科学への興味云々のエピソードだけではなく、賢治の生家やレコード収集についても触れています。
この辺りは賢治に詳しい方はニヤニヤものかもしれません。
事件の背景には、当時の花巻の深刻な貧困問題がえがかれ、それに対する賢治の苦悩も上手く浮かばせ取り上げています。
探偵役には時に天才だが、極端に強引で配慮に欠け、人の心に土足で踏み込むようなキャラクターもいます。
ケンジは確かに天才で強引なところもありますが、話の落としどころというか、諸所に信仰深い賢治らしさや優しさが感じられます。
カトジとの関係も互いに信頼し合っていて、片方をあまりないがしろにしないので、読んでいて苛々はしません。

しかし、本作はすごく好みが分かれる作品だと思います。
まず、賢治が好きか否かで大きく分かれると思います。
更に、賢治好きでも、好きだからこそ楽しめる人と、好きだからこそ苦手な人がいると思います。
あと、賢治が探偵役なので仕方ないのですが、岩手訛りが結構読みにくいです。

賢治の作品には彼の死生観に満ちているものや、登場キャラクターがあっさり死んでしまうものもあります。
しかし、個人的に賢治は素朴なイメージがあります。
そのため所謂「人の死なないミステリ」と想定していたのですが、本作は予想に反し、大掛かりなトリックを用いた人死にもあるミステリです。
賢治を探偵役にした意欲作だとは思うのですが、私はどうにもそこに違和感が有ります。
また、賢治を取り扱った作品としては印象深いのですが、ミステリとしてはあまり印象に残らないかなとも思います。
好みがある作品だとは思いますが、続編も出ていますし、賢治もミステリも好きな方は一読してみるといいと思います。

あんみつ
QVSFG7MB

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