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笑ってジグソー、殺してパズル



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笑ってジグソー、殺してパズルの評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

謎解きの材料欲しさに殺人事件を更に起きることを望む探偵って…

更科ニッキシリーズの第1作がこの作品。
前回読んだ『だれもがポオを愛していた』はこれに続く作品となるが、一致する登場人物は主人公の更科ニッキのみで、『誰もが~』ではこの事件については触れもされないから単独で楽しめる作品となっている。

実業家の邸宅で起こる3つの殺人事件。現場は全て同じ部屋でしかもジグソーパズルがばら撒かれていたというシチュエーションが一緒というのが本書の事件。
作者は各章及び犯行現場の見取り図をそれぞれパズルのピースに見立て、102片のピースが出揃った時点で読者への挑戦状を提示する。久々にトリックとロジックに特化した本格ミステリを読んだ。

そしてやはりこのシリーズ探偵更科丹希の性格には反感を覚えずにはいられない。殺人事件の謎解きが好きだという点は甘受してもいいが、事件の捜査の過程で人の秘密を暴いてバラすのが好きだと云ったり、犯人の仕業、例えば今回の事件では殺人現場にジグソーパズルがばら撒かれていることに意味がないと嫌だと云ったり、ましてや謎解きの材料がもっと集まるために誰かもう一人死なないかな、などと人の命を軽視する考えを示すに至っては、例え才色兼備であっても、こんな探偵なんかには助けてもらいたくない!と思わざるを得ない。
エキセントリックなキャラクターを案出するのはいいが、本格ミステリが殺人事件を題材にした読者との知恵比べ的要素を前面に押し出した小説とは云っても探偵が人非人であってはならないと思うからだ。人道的、道徳的な感性が欠如しているこの更科丹希という女性がどうしても好きになれない。

そして彼女の推理方法というのが動機には頓着せず、現場に残された証拠と事実のみを重視してトリックを解き明かし、犯人を限定するというもの。
これはつまり裏返せば読者への挑戦状を提示しているが故に、本書に散りばめられた各登場人物の裏側に隠された事情は推理の材料には一切ならないと公言していることになる。

確かに純粋な作者と読者との推理ゲームに徹する姿勢はいいとは思うが、それを極端に演出する為に探偵役の性格を上記のように設定するのはいかがなものか。
そしてやはり推理小説は小説であるから、理のみならず情にも訴えかけるが故に驚愕のトリックやロジックもまた読者の心の底にまで印象が残るのでは、と個人的な見解だ。

「小説を読むことは人生が一度しかないことへの抗議だと思います」

という名言を残したのは北村薫氏だが、この言葉が表すように心に何か残るものがなければ小説ではないのだと私は思う。
自分には起きない出来事を知りたいから、疑似体験したいからこそ人は物語を書き、読むのだ。だからパズルだけでは今の時代では認められないのではないだろうか?

こういう作品を読むと私はもはや本格ミステリを読むことは出来ないのではないだろうかと懸念する。読書を重ねるうちに嗜好が変わってしまうのは否めないだろうが、本格ミステリから読書の愉しさに目覚めた私にしてみればこれはすごく寂しいことである。

この真偽については次に小学生の頃からミステリに離れていた私を再び読書好き、ミステリ好きに開眼させてくれた島田荘司氏の作品を読むことで再度確認したいと思う。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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