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水妖日にご用心: 薬師寺涼子の怪奇事件簿



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水妖日にご用心: 薬師寺涼子の怪奇事件簿の評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Eランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

案外しっかりT〇Rを愉しんだのでは?

今回の物語の舞台は東京ザナドゥ・ランドと警視庁内部。前者は千葉にあるのに東京という名前を冠し、さらに愛くるしいキャラクターで日本では無類の人気を誇るアミューズメントパークという説明から、名前を呼ぶのも公共のメディアでは著作権の関係から憚れる東京ディ〇ニー・ランドのことを婉曲的(?)に指したものであるのは明白。

この東京ザナドゥ・ランドについて述べる内容が特に辛辣。グリム童話やアンデルセン童話を堂々と流用し、恰も自家薬籠中の物のように振舞うといった件はその極致だと思った。
かようにこのシリーズは田中氏が日頃抱えている日本の政治と歪んだ社会のシステムへの不満という毒を存分に吐くために書かれているといっても過言ではないほど、本書は痛烈な皮肉と罵倒に満ちている。

例えば本書に登場する外務大臣はマンガ・アニメ好きのA元大臣をモデルにしている。その描写と人物説明に込められた皮肉はこれまた強烈で田中氏がいかにこの政治家を好きではなかったのかが目に見えて解るほどだ。

しかし本書にも書かれているが本書刊行当時2007年12月では次期首相の有力候補だったA元大臣が実際に首相となったのに、文庫が刊行されたちょうど3年後にもはや彼が首相だったのは遠い昔となり、彼の退陣後、与党も変わってしかも首相も2人も変わっているというたった3年間での日本の政治の激変振りに思いを馳せると呆れるしかない。

今回の敵はゴユダという名のワニ人間。メヴァト王国に昔から存在し、時に君主に成り代わって国政を支配していた怪物である。メヴァト王国は作者の産物であるから、これは全くの田中氏の創作か、もしくはメヴァトが位置する周辺の国、インド、ネパール、チベット、ミャンマーのいずれかの国に昔から伝わる言伝えから取ったのかは解らないが、それにしてもワニ人間とはちょっと発想が貧困のように思う。

そういえばこの薬師寺涼子シリーズは筆致や設定はライトノヴェル風だが、書かれている内容は必ずしも中高生が読むほど健全ではない。
主人公の涼子は己の財力を傘に堂々と買収を持ちかけるし、相手の弱みを握って常に優位を立とうとし、恐喝を行いもする。つまり情操教育上、あまりよろしくないのだ。
前にも書いたが、このシリーズは田中氏が日本の現状に対して声高に存分に不満を並べ立てるために書かれている節があるので作者の想定する読者層はもっと高い年齢層にあるのだろう。逆に大学生や社会に出た若者には日本という国の歪みを認識させるのに実にとっつきやすい読み物かもしれない。

しかし前作も軽井沢で今回も東京と舞台が日本。それまで海外を舞台にしていたことを考えると取材費の縮減という創作の外側の台所事情が気になるところだ。
とはいえ、今回の舞台の東京ザナドゥ・ランドのモデルとなったテーマパークのオフィシャルホテルについて作中で書かれていることから取材のために宿泊したと察せられるので、それなりにやはり取材費は割かれているのだろう。う~んこんなことを感想に書くなんて私もずいぶん卑しくなったものだ。


▼以下、ネタバレ感想

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