水晶宮の死神



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初公開日(参考)2017年07月
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長編小説

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水晶宮の死神

2017年07月20日 水晶宮の死神

ニーダムと姪のメープルが務める貸本屋に、写真機を抱えた挙動不審な青年が現れた。幼い少女を執拗に観察する彼にニーダムが声をかけると、青年は数学教師のチャールズ・ラトヴィッジ・ドジスンだと名乗った。翌日、ニーダムとメープルは水晶宮(クリスタル・パレス)を観光に訪れ、彼と再会する。そんな折、場内で騒ぎが。現場に駆けつけた二人は、麻袋に入れられた首のない死体を目撃する。ヴィクトリア朝怪奇冒険譚三部作、完結!(「BOOK」データベースより)




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(7pt)

イギリスの闇歴史を楽しみつつ、完結

ヴィクトリア朝怪奇冒険譚3部作最終作。
田中氏のシリーズ物は完結に数十年費やすことがざらなのだが、幸いにしてこのシリーズについては僅か10年で完結することになった。しかし3部作であっても10年も掛かるのが田中氏である。

さて1作目では月蝕島というスコットランド沖の孤島、2作目ではイギリス北部のノーサンバランドにある髑髏城と国外に出ないまでも日帰りするには遠く、その地に行くまでもが冒険となる場所であったのに対し、今回の舞台水晶宮は元々ロンドンのハイドパーク南にあったがロンドン東南郊外のシドナムに移築された建築物である。
そう、最終作の舞台はロンドンに住むニーダムとメープルたちが日帰りできる安近短な冒険舞台なのである。

それだけではなく、1作目の月蝕島、2作目の髑髏城が作者の創作であったのに対し、今回の舞台、水晶宮はかつて実在した建物である。この実在した建物の地下に広大な遺跡が存在し、そこを根城にする死神と名乗る仮面の男が今回の敵だ。

この<死神(デス)>と自らを名乗る仮面の男の正体はヴァネヴァー・ダグラス・コンプトンバーグという自身をメトセラの子孫だと名乗る67歳の医師だが、その容姿は都市不相応の若い美男子であり、バラクラーヴァの激戦を生き抜いた31歳のニーダムを凌駕する膂力を誇る。ちなみにメトセラとは旧約聖書に登場する有名な「ノアの箱舟」のノアの祖父で969年間生きたと云われている人物だ。

このコンプトンバーグは水晶宮の古代遺跡に遺された古書を参考にニワトリヘビや赤帽子(レッド・キャップ)といった怪物たちを生み出すマッドサイエンティストで、ニーダムとメイプル、ウィッチャー警部、そしてディケンズらはこれらの怪物たちとの戦いを余儀なくされるのだ。ちなみにニワトリヘビとはその名の通り、頭がニワトリの大蛇で捜索に来た警官隊たちを丸呑みにする。また赤帽子は血で赤く染めた帽子を被った妖精でこれもまた人を襲うのだ。

さてこれまでのシリーズでは19世紀に実在した人物たちが大いに物語に絡み、それら偉人たちの伝記では書かれていない蘊蓄が読みどころであったが本書でもチャールズ・ラトウィッジ・ドジスンが登場する。と云われてもピンとこないだろうが、実はこれは『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルの本名なのだ。今回登場時はまだ同作を発表していない時期で売れてない作家の1人である。

彼が世界で最も早い時期のアマチュア写真家の1人であったこと、12歳以上の女性が嫌いな性格―女性恐怖症なのか、幼児性愛者なのかははっきりとしない―であることなど意外な情報が明かされる。

個人的には1,2作に登場したウィルキー・コリンズがいよいよ満を持してニーダムとメープルの冒険に参加するのかと思ったら、最終作の本書ではその影さえもなかった。その不足を補うかのように今回はディケンズが参加し、ステッキを用いて登場する怪物たちとの立ち回りを演じる。

蘊蓄といえば歴史好きの田中氏の趣味が横溢しているのも特徴で、例えば15世紀にはスコットランドの南西部、ギャロウェイ地方で25年に亘って旅人を襲っては食べていたソニー・ビーン一族という食人族がいたこと、昔、墓泥棒が盛んだったのは医学の発展のために死体解剖をするために医者がなかなか手に入らない死体を欲したから、等々。いわば教科書では習わないイギリスの闇歴史が語られ、それがまた実に当時のイギリスの風習や風俗を偲ばされ、不謹慎ながらこのシリーズを愉しみにしている一面である。

これまでのこのシリーズではあまり耳にしたことのない怪物が出てくるが、本書に登場する赤帽子は調べてみればよく見る醜悪な妖精で、ニワトリヘビはコカトリスを彷彿とさせる。ただ睨まれても石にはならないが。

最終巻である本書で気付かされたが、これら3部作が全て1857年にニーダムたちが経験した冒険であることだ。つまりある意味この年は彼とメープルの人生のターニングポイントであったと思える。

本書に登場する若干13歳の天才少年ジェームズ・モリアーティが今回最大のゲストだ。そうもちろんこの人物こそ後のシャーロック・ホームズのライバル、モリアーティ教授である。彼がライヘンバッハの滝に落ちて行方不明となったところまで語られるが、それが「最後の事件」のようにシャーロック・ホームズと共に落ちたことまでは語られない。ひたすら彼の天才性とその早すぎる死を惜しむニーダムとメープルの姿が語られるのみ。
作中の中での彼は物事を俯瞰してシニカルに見るひねたガキだが、メープルの言葉にのみ従うところを見ると少し年上の女性にほのかな恋心を抱くところを見せて、それまでにないモリアーティ像を描いている。

作者の田中氏がなぜ1857年という年を選んだのかも定かではない。歴史を繙くと有名な事件ではセポイの乱があったりアメリカで世界恐慌が起きたりしているが、本シリーズにはあまり関与はしなかった。

とにもかくにも作者はヴィクトリア朝時代を舞台にその時代を生きた偉人や著名人たちを自らの筆で描きたかったのだろう。歴史や風俗、そしてその時代に生きた人々の意外な側面が見れて個人的には楽しかった。

作者ももう御年72歳。
最近永らく中断していたシリーズに決着をつけているのは人生の後片付けをしているかのようだが、年上のスティーヴン・キングがまだまだ健筆を奮っているのだから、まだまだ衰えず、読者の留飲を下げるかつての田中氏の躍動感ある物語をこれからも紡いでほしいものだ。

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No.4:
(1pt)

キャラの扱いとストーリーが散らかっています

大変困ったことに、感想らしい感想が出てこない。魅力的な舞台、悪くないキャラ造形、鉄板の小道具(死体)ときて、何故か全く見るべきところがない。
最初から最後までニーダムと何かが取っ組み合いして、メープルが「おじさま」とか言ってるだけ。ページ数が残りわずかになったら、悪役が全ての事情を説明して下さいました。
キャロルとナイチンゲールは何のために登場したのかさっぱりわからんし、例の少年はやたらカッコいい描写をされるだけされて、何かしたってほどでもないし…。
作者はスリーデッカーの形式に合わせて三冊出したかったんだと思いますが、ネタがないのに無理に出版するのはよくないです。散漫かつ冗長です。
水晶宮の死神Amazon書評・レビュー:水晶宮の死神より
4488027709
No.3:
(4pt)

完結するにはもったいない作品

19世紀のイギリスを舞台にした、ヴィクトリア朝怪奇冒険譚も、いよいよ完結。といっても、前作からかなり年月が経っての発売なので、やっと刊行された、というより、あっ、出てたんだ、というのが正直な感想です(笑)。
最近の田中先生の作品は、ある作品では政治批判色が強すぎたり、またある作品の完結編ではかなり強引な幕引きを行ってしまい、ファンから総バッシングを食らったりと、いろいろと問題のある作品が続いていました。そんなわけで、今作もどうなることやらと不安に思いながら読み始めましたが、喜ばしいことに、その心配はただの杞憂でした。

このシリーズは歴史上で有名な登場人物が出てくることが魅力のひとつでしたが、今作はより多くの著名人が出てきます。クリスマス・キャロルを書いた文豪家ディケンズはもちろん、あの不思議の国のアリスを書いた(のちに書く)ルイス・キャロルこと、ドジスン。さらには、主人公エドモンド・ニーダムの命を救ったあの女史も登場します。
さらに主人公コンビ、エドモンドとメープルに匹敵する活躍を見せる謎の天才少年。その正体は、あの有名な推理小説に出てくる某教授を示唆していたり……

ストーリー展開も、最初に謎めいた殺人事件が起こり、だんだんとオカルトめいた話へ以降していく感じは、夏の魔術シリーズに近い感じ。ワンパターンと言う人もいるでしょうが、それは間違いです。なぜなら、夏の魔術しかり、晴れた空から突然に…しかり、アップフェルラント物語しかり(これはちょっと違うかな)、田中芳樹氏の伝奇小説で一番面白いのはこのパターンなのです。

惜しいと感じた点は、ラストが若干駆け足がちだったこと。そして、このシリーズがこれで完結してしまうということでしょうか。私は田中芳樹氏の小説で一番面白いジャンルはスペースオペラでも、ファンタジーでもなく、冒険伝奇小説だと思っているので、そのシリーズが完結してしまうのは残念でなりません。
十年後でいいから、またひょっこりと続編を刊行してくれることを望みます。
水晶宮の死神Amazon書評・レビュー:水晶宮の死神より
4488027709
No.2:
(4pt)

ようやく完結

長かった(執筆期間が?)シリーズが完結しました。間が空いていましたがそこはさすがの田中先生読み応え十分でした。さあ、次はアルスラーンですか?(お願いします!)
水晶宮の死神Amazon書評・レビュー:水晶宮の死神より
4488027709
No.1:
(4pt)

ここ近年の作者の本の中ではましな作品。

この所の作者の小説は作者の不調も関係有るのか熱心な方も駄作と認めるものが多かったが、今回は近年の悪癖が作品に表れておらず読後に不快になることも無かったです。

今回は有名な探偵小説に登場する教授が謎の少年として出てきます。
水晶宮の死神Amazon書評・レビュー:水晶宮の死神より
4488027709



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