髑髏城の花嫁



※タグの編集はログイン後行えます

※以下のグループに登録されています。


【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

7.00pt (10max) / 1件

7.00pt (10max) / 1件

Amazon平均点

4.00pt ( 5max) / 3件

楽天平均点

3.74pt ( 5max) / 17件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
0pt
サイト内ランク []C
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

33.00pt

0.00pt

0.00pt

55.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)2011年10月
分類

長編小説

閲覧回数1,947回
お気に入りにされた回数0
読書済みに登録された回数1

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)

2011年10月28日 髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)

クリミア戦争から祖国への帰途、エドモンド・ニーダムと戦友は特命を受け、瀕死の青年をダニューヴ河畔にある髑髏城へと送り届けた。巨大な頭蓋骨を模した城の外観、陶磁器の人形のような女主人、黒装束に身を包む召使たちの姿は、奇異な印象をふたりに与えた。その後、無事祖国イギリスに戻り、姪のメープルとともに会員制の大手貸本屋で働き、多忙な日々を送るニーダムは、ある日ロンドンで、かつて城へと送り届けた青年と再会を果たす。別人のように生命力溢れる青年は、伯爵を名乗り、ノーサンバーランドにある屋敷での仕事を依頼したいと言う。はりきる姪とは反対に、ニーダムは不吉な胸騒ぎを感じていた。奇しくも“髑髏城”と呼ばれる屋敷で、ふたりを待ち受けていたのは、想像を絶する奇怪なできごとだった。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

髑髏城の花嫁の総合評価:7.75/10点レビュー 4件。Cランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ミステリ読者はどうしてもタイトルに先入観を抱いてしまう・・・

田中芳樹氏の新シリーズ、ヴィクトリア朝怪奇冒険譚シリーズ第2作が本書。
田中氏のシリーズ物はなかなか完結しないので有名だが、本書においては三部作と決まっており、しかも最終巻も珍しく既に刊行済み。1作目の『月蝕島の魔物』が2007年、本書が2011年で最終巻の『水晶宮の死神』が2017年に刊行と本当に田中氏のシリーズ作品としては実にスピーディに完結しているのは奇跡に近い。

今回エドモンド・ニーダムとメープル・コンウェイが訪れるのはイギリス北部のノーザンバーランドに聳える髑髏城が舞台。但し1作目もそうだったようにこのシリーズは田中氏オリジナルの味付けがなされた怪物が登場するのが特徴で、本書も同様。

まず物語の発端として十字軍の遠征がプロローグとして語られるが、それが7回に亘って行われた十字軍の遠征のうち、歴史上「キリスト教史上の不名誉」とか「十字軍の恥さらし」と呼ばれている第4回十字軍のエピソードである。
本来聖地エルサレムをイスラム教諸国から奪還することを目的に派遣されているのに資金難のため、ベニスの商人に多額の借金をすることになり、地中海の商業権を独占しようと企む彼らに唆され、同じキリスト教徒である東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルに攻め入った無様な軍なのだ。そしてコンスタンティノープルを陥落させた後、その悪行三昧が問題になり、北方の辺境への遠征を命じられ、あえなく撃沈することになった十字軍のたった1人の生き残りユースタス・ド・サンポールを、ダニューヴ河畔に聳える髑髏城の主、永遠の命を持つ絶世の美女ドラグリラ・ヴォルスングルが見初めたことがニーダムたちの敵となる新フェアファックス伯爵ライオネル・クレアモントに繋がる。

さて髑髏城と聞いて私はすぐにディクスン・カーの『髑髏城』を想起した。カーの髑髏城は本書のダニューヴ河畔ではなくライン河畔、本書ではかつての東ローマ帝国が舞台なのでルーマニアになろうか。そしてカーはドイツで微妙に位置は異なるがほぼ似たような地方である。
そして本書の髑髏城の主ドラグリラはワラキアの貴族であり、ワラキア公国と云えば、吸血鬼ドラキュラのモデルとなった串刺し公ヴラド・ツェペシュである。つまり吸血鬼の系譜であるのだが、敢えて田中氏はそう安直な方向に進まないという田中氏なりの矜持なのか。

さて本書ではシリーズ1作目の後での出来事であり、直接的には関係ないのだが、1作目のアンデルセンとディケンズの旅のその後も語られる。
なんとアンデルセンがディケンズの家に泊まりに行き、親切にしてくれたことを吹聴したことで小説家志望の人間やファンの連中がアンデルセンに紹介状を書いてもらってディケンズの家まで押しかけ、自分の原稿を読むことを強要したり、出版社への紹介や家に泊めてくれと頼んだりとかなり迷惑したことが書かれている。アンデルセンがディケンズの家に泊まりに行ったことが史実だったことを考えるとこれもまた史実なのだろう。

また1作目に続いてウィルキー・コリンズが幕間でしばしば登場する。彼も直接物語には関わらなく、当時彼は人気作家だったらしいが、よほど田中氏はこの作家を気に入っているのだろうか。

そして田中作品には歴史上の蘊蓄が語られるのが常だが本書も例外ではない。例えば、ディケンズとサッカレーが当時仲が悪かったのは有名な話のようで、彼ら2人がインドカレー店でお互いに激辛カレーの我慢比べをするシーンでそれが強調される。
これは上の2大作家が犬猿の仲で会ったことに加え、インドから戻ってきたイギリス人によってインドカレーがイギリスで親しまれ、広く食べられるようになったことを示している。

またインドに赴任した総督は当時のイギリス大臣の5倍の年俸をもらっていたようだ。私の海外勤務中は1.8~2倍でそれでも多いと思っていたが、まさかこれほど差があるとは。
ただやはり向こうの気候や風土に合わなくて赴任中や帰任して死去する総督も多くいたらしい。
侵略者の彼らが行った功績の1つに「サティーの禁止」がある。当時インドでは夫が妻より早く死ぬと妻は一緒に夫と共に生きていても火葬にされなければならなかったらしい。常々インド人は家長の権力が強すぎて、それに逆らう者は家族であっても命を奪う思想が今でも残っているらしいが、非人道的な物凄い風習である。

またダニューヴ河口に全世界の7割のペリカンが繁殖のために集結し、ペリカンは大きな口で一気に魚を食べてしまうから当地の漁師たちに嫌われているいわば害鳥でもあるらしい。
しかしよくよく考えると基本的に鳥が空を飛べるのは自身の身体が軽く、尚且つ空を飛ぶほどの翼を動かす筋肉が発達しているからだが、水も含めてそれだけの魚を口に含んでも空を飛べるペリカンの筋力は物凄いのではないだろうか?
つまりペリカンは案外食べると美味いのでは?

またニーダムと戦友のマイケル・ラッドがライオネル・クレアモントを髑髏城に送る道中のダニューヴ河で大ナマズに襲われ、格闘するシーンが登場するが、この河には本当にヨーロッパ大ナマズという体長2mを超すナマズが今でも生息しているらしく、しかも人間を襲うこともあるらしい。単に冒険活劇のために設えた生物ではないようだ。

また本書ではスコットランド・ヤードの創設者の1人でイギリスで最初の刑事でもあるウィッチャー警部も登場するのだが、私がかねてより思っていたロンドン警視庁がなぜスコットランド・ヤードと呼ばれているのかが本書で語られる。スコットランドがまだイングランドと別の国だった頃にスコットランド王室の御用邸があり、両国が統合され、御用邸が無くなった広大な跡地に警視庁が建てられたことが由来のようだ。

こういった教科書では習わないエピソードが私にとっては非常に興味深く、面白い。

ただ本書に登場する岩塩の山をくり貫いて髑髏の形に仕立て上げた髑髏城はさすがに作者の創作のようだ。上に書いたように吸血鬼伝説の色濃いルーマニアを舞台にしているからこそさもありなんと思わされるが。

東欧の歴史は私が世界史を専攻していなかったせいかもしれないが、さほど日本人には知られていないように思われ、今回1907年の東欧を舞台であることから彼の地が歴史上いかに混沌としているかが解ってくる。19世紀には次々と正体不明の人物が国王を名乗っていたとのことで、更に本書の敵フェアファックス伯爵はそれらを統合するヴラヒア国王になるとの野心を抱いている。

上述のようにフェアファックス伯爵ことライオネル・クレアモントは髑髏城の主ドラグリラ・ヴォルスングルとユースタス・ド・サンポールとの間に生まれた子であり、髑髏城の最初の主はイエス・キリストや仏陀やモーゼさえも生まれていない昔からスカンジナビアに住んでいたナムピーテスというバイキングの有力な一党の一族で、その中の1人ハルヴダーン・ナムピーテスであった。このナムピーテスという名前はナウビトゥルというスカンジナビアの古い言葉に由来し、その意味は「死者をついばむ者」である。
そしてこのナムピーテス族は勇猛かつ残酷で他のバイキングからも一目置かれていた。そして彼らが東ローマ帝国の都コンスタンティノープルに渡り、そこで産出される琥珀を運ぶ商隊の警護をして目覚ましい活躍を見せたのでヴラヒア国王の称号を授かったのだった。

ただ本書の物語の展開は唐突感が否めない。なんせニーダムとメープルはライオネル・クレアモントの依頼でノーザンバーランドの荘園屋敷に図書室や書斎を作るために訪れたのにいきなりそこで集めた血族たちを殲滅して富と権力を独占しようという大量虐殺に巻き込まれる展開が理解し難かった。
目的の異なる人物たちをなぜ一堂に集める必要があるのか。つまり手段と目的の辻褄が合わないのだ。
そんなちぐはぐな印象の中で一気に物語は荘園屋敷で殲滅作戦が行われ、それに巻き込まれたニーダムとメープルの2人が自身の生き残りを賭けて、ライオネルと対決するようになり、物語が一気に結末へと向かう。ここら辺はどうもやっつけ仕事のように感じてしまった。

あと今回登場するクリミア戦争時の戦友マイケル・ラッドの存在がほとんど生きてない。口が達者なお調子者のラッドはクリミア戦争が終わった後もスクタリ野戦病院でナイチンゲールの手伝いで戦傷者たちの世話をしていたが、衰弱したライオネルをダニューヴ河畔にある髑髏城に現地除隊証明書を渡すという条件で共に連れて行った仲である。ライオネルは無事髑髏城へ送ってくれた謝礼にそれぞれに2500ポンドを渡したが、ラッドはニーダムに金貨50枚を渡しただけで自身の分も含めて5000ポンドせしめた、何ともしたたかな男である。

またイギリス最初の刑事ウィッチャー警部も、ラッド同様にさしたる活躍も見せないままである。

とまあ、様々な役者が登場しながらも結末はいささか肩透かしを食らった感は否めない。
というよりも主人公のエドモンド・ニーダムはクリミア戦争のバラクラーヴァの激戦を生き残った銃の名手というキャラ付けがなされているものの、書中の挿画に描かれた穏やかな風貌の英国紳士というイメージが怪物たちと渡り合うタフなヒーローへ結びつかないのだ。そして好奇心旺盛なこよなく書物を愛する姪のメープル・コンウェイもまたその書物愛とジャーナリスト志望という芯の強さだけが特色で、苦境を乗り越える線の太さを感じない。

つまり一般人に少しばかり特徴づけられた主人公2人に対して、相対する出来事が怪物や人外の者との遭遇と戦いというスケールの大きさと釣り合わない違和感をどうしても覚えてしまう。

とはいえ、本書ではその辺のバランスの悪さにこだわるよりもやはり田中氏の博識に裏付けられた裏歴史のエピソードや次々と登場する歴史上の人物、しかもこれまたイギリス文壇の著名人やウィッチャー警部ら学校では習わない有名人たちとの織り成す物語に素直に浸る方がいいのだろう。

さて最終巻の2人の関係にも何か進展があるのだろうか。
しかし彼ら2人は小父と姪の関係であり、近親過ぎて結婚はできないはずだ。なので2人の間での色恋沙汰は期待できないだろう。

果たして田中氏はどんな結末を持ってくるのか。ただ単に後日談が語られるだけの味気ないものにならないよう祈りたい。


▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.3:
(4pt)

古典的だが田中作品の味がしっかり出ていて気楽に読めました。

前回のシリーズの続編と思ったのですが、お話は全く別物ですこしがっかりしましたが、
楽しく読む事が出来たので、4☆です。
髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)Amazon書評・レビュー:髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)より
448802484X
No.2:
(4pt)

いつもながら

書かれれば安定して面白いですよね
遅筆で有名ですが・・・
最終巻は早くだしてほしいです
髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)Amazon書評・レビュー:髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)より
448802484X
No.1:
(4pt)

面白いけど、毒気は控えめ

ずいぶん長いこと新作見てないと思ったら、体を壊されていたそうです。
近頃音沙汰を聞かないので、作品放置のまま終了かと危惧していました。
一日も早い御快癒をお祈りします。

内容は、元気で本好きな姪と、クリミアの戦場帰りの伯父のコンビの息のあった活躍が楽しめるシリーズ第二段。
当時の風景が思い浮かぶ描写は相変わらずで楽しませてくれます。
ただ、銀英伝や創竜伝の毒気と批判精神が好きな人にはちょっと物足りないかも。

私の主観では、田中先生の作品は、過去の作品を翻案(「隋唐演義」「岳飛伝」)したものより、
オリジナル作品・架空歴史(「ラインの虜囚」「奔流」「銀英伝」等)の方が遥かに読み応えがあります。

今後も、「楊家将演義」に手をつける前に、過去の宿題を完済してほしいなぁと思いつつ、
続きを待ちたいと思います。
髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)Amazon書評・レビュー:髑髏城の花嫁 (Victorian Horror Adventures 2)より
448802484X



その他、Amazon書評・レビューが 3件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク