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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数370

全370件 121~140 7/19ページ

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No.250: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

冬雷の感想

著者初読み。物凄く惹き込まれた作品でした。
作品単体が凄いのか、著者の他の作品もこのクオリティなのか未知ですが、場や人物の情景が頭に浮かぶ素晴らしい地の文でした。あらすじから感じる内容は、苦手意識を感じる古めかしく難しそうな内容だったのですが、読んでみたらスルスル頭に入り、先が気になる一気読みの面白さでした。

物語は孤児の主人公が古くからの伝統風習を重んじる名家の養子になる所から始まります。読みやすいと感じるのが、主人公と読者の状況不明の感覚がシンクロした構成である事。名家に入り、そこで出会う人物、風習、仕来り、役目、といった情報と理解が、主人公を通して徐々に把握していく為、複雑な背景でも楽しむ事ができました。

ミステリというよりオリジナルの物語を楽しむ事に趣があります。ただ、あの時何が起きたのか、町で何が起きているのかが見えてくる終盤はミステリの解決編の様で楽しめました。一同が集まり一風変わった展開での解決編だったなという印象も得られました。

少し余談ですが、島田荘司・御手洗シリーズの龍臥亭事件ぐらいまでの初期の頃のワクワク感を思い出しました。ミステリより物語に夢中になっていたら最後何かが明かされる感覚。毛色は違うのですが、個人的にそんな感覚を思い出すほど惹き込まれた次第です。

扱う内容の雰囲気は地道で重苦しいものなのですが、読書中はそうは感じさせず綺麗に描かれている物語。素晴らしい作品でした。他の作品も手に取ってみようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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冬雷 (創元推理文庫)
遠田潤子冬雷 についてのレビュー
No.249: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

虹を待つ彼女の感想

人工知能による死者の再現を軸に、何故彼女は自殺したのか?という謎を追いかける物語。

横溝正史ミステリ大賞受賞を受賞した本書。作品雰囲気は"横溝正史"から連想する古くアナログ的なミステリとは違い、人工知能を始めとしたプログラム要素となる機械学習や音声合成のワードもでる近未来風な作品。過去の受賞作品群と比べても少し毛色が違う為、受賞作品の審査時では新しく感じたのではないかと思う内容でした。

本書の主人公はかなりクセがあり読者に嫌悪感を与えやすい為、その感覚が本書の物語自体の評価に繋がりそうな危険を孕んでいると感じました。冒頭から主人公の特性付けとして紹介される内容は、勉強もスポーツも恋愛も何でも予想通りで人生が退屈であり自分の真の性格を表に出さないように仮面を被って生きている。みたいな流れでとても痛々しい。ただその痛々しさも最後まで貫いていけば一本筋で通る気がしますが、死者の水科晴に酔狂していく辺りから心境の変化と前向きに感じる良さもあれば、弱弱しくぶれていくと感じる面もある為に魅力を感じずでした。1番がっかりした所は頭の良い人工知能のエンジニアという設定で尖がっていたのに、写真のExif情報を知らないエピソードが出た時。をい!と思わずツッコミたくなってしまいました。一般人も知られてますし、エンジニアでは基礎知識であり人工知能学習ならそもそもExifも学習パラメータで使うでしょ。という感じでして所々設定が浅く感じてしまうのが残念に思いました。

主人公の癖が強いだけで物語の展開は面白く読めました。
水科晴の自殺の謎、それを調査していく流れ、人工知能開発の現場、調査していく内に不穏な流れとなる緊迫感、、、etc.
物語の起伏要素が多く飽きずに最後まで読めました。文章も読みやすかったです。

結末や真相についてはあまり納得できるものでなく、なんとなく当事者達で収束してしまった感が強くて好みに合わなかったです。横溝正史ミステリ大賞作品というのも違う気がしますが1つの作品としては面白く読めたので、あまりミステリを気にせず"人工知能で死者を再現する者達の物語"として捉えると、とてもよいドラマかと思いました。
虹を待つ彼女 (角川文庫)
逸木裕虹を待つ彼女 についてのレビュー
No.248: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

殺人鬼にまつわる備忘録(記憶破断者)の感想

著者作品はSF寄りの記憶をテーマにした作品がいくつかありますが本書はその1つ。

・前向性健忘により記憶が保てない主人公
・触れた相手の記憶を操作できる殺人鬼
この2人の衝突の物語。

まず殺人鬼の行動や言動が胸糞過ぎて気分が悪くなりました。暴力から殺し、洗脳、日常の人々に対しての強烈な悪です。白昼堂々犯罪を行っても周りにいる目撃者の記憶を改ざんし自由に活動する倫理破壊。気分が悪くなりますが、ホラー文学として気持ち悪くなる文章や物語が巧いなという感想も得ました。苦手な人は苦手な話が多いです。

対して、記憶が保てない主人公。目覚めた所から物語は始まり、枕元に置かれたノートには自分の記憶障害と、"殺人鬼と戦っている"というメモが残されている。状況の混乱や疑心暗鬼、一方、慎重な言動や推測など頭を働かせる様が面白く読めました。

殺人鬼にどう挑むのか。悪との遭遇のサスペンスとして、不安な気持ちを抱えたまま最後まで一気に読めた面白い作品でした。
同じ主人公・田村二吉が登場する未読の別作品がある為、いつか追って読もうと思いました。
殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
No.247: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

楽園とは探偵の不在なりの感想

個人的にかなり惹き込まれた作品でした。とても面白かったです。

物語は特殊設定もの。
世の中に『天使』という存在が突如現れた世界。人間の罪を監視し、2人以上殺したものは地獄に引き摺り込まれる。
連続殺人という行為があり得ない世界の中、孤島の館にて事件が発生していく。

特殊なルールによるミステリとして期待されがちですが、個人的にはミステリとして楽しむというより世界観の方が楽しめました。天使自体の存在、天使が降臨した事により変わった世の中、犯罪が減り探偵の存在意義の変化。世界観がとても丁寧に描かれていたのでSFやファンタジーものとして惹き込まれた次第です。
現実的な要素で代弁すると世界が変わる"災害もの"としても捉えられます。震災・隕石での崩壊と違い、天使という切り口で世界の変容の新しい物語を作り、そこにしっかりと本格ミステリを絡めているのが見事でした。

登場人物達も分かりやすく特徴があり読んでいて面白い。キャラの雰囲気は明るく魅力的なのに対して世界は悲壮感に包まれている対比を感じました。主人公の探偵としての悩み、過去の仲間達との良い思い出と苦悩。色々な感情も心に響きました。

タイトルから感じますが、ミステリや事件要素ではなく、探偵とは何かに趣がある内容。
物語としてとても面白い作品でした。
楽園とは探偵の不在なり (ハヤカワ文庫JA)
斜線堂有紀楽園とは探偵の不在なり についてのレビュー
No.246:
(7pt)

なるほどフォカッチャ ハリネズミと謎解きたがりなパン屋さんの感想

ほんわか日常の謎のライトミステリ。
小学生から読んでも大丈夫な内容で、ゆるふわ系。殺伐さ皆無。

物語は、パン屋の女性に一目ぼれした大学生の主人公が、彼女と話す切っ掛け作りの為にパン屋に通い、身近に起きた謎についてお話するという流れです。

日常の謎を扱いますが、謎の程度はとても小さな事。本書の主体は男女の物語+ほんわか雰囲気。そこにちょっとだけ謎が加わったような話。男子学生の良い意味でのバカ騒ぎな雰囲気、漫才の様にボケとツッコミがあるユーモアな雰囲気、初々しい学生の恋愛模様を微笑ましく感じる読書でした。
ハリネズミは二人の様子を眺めるキューピットのような存在で、雰囲気を和ませる良い味出してます。

表紙にて雰囲気が出ている通り、小中学生から読ませられるミステリとしてよい作品だと思いました。
なるほどフォカッチャ ハリネズミと謎解きたがりなパン屋さん (メディアワークス文庫)
No.245: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ワトソン力の感想

『ワトソン力』というネーミングセンス、設定勝ちな1作。(☆7+好み補正)

目立たず平凡な和戸宋志。彼は周囲の人達の推理力を飛躍的に向上させる能力を持つ。
ゲーム用語で言うと味方に推理力のバフを与えるエンチャンターの人物。本人以外が名探偵になるという設定。これが非常に面白い。

著者の過去作品のイメージは事件と解決のみを主軸とした問題集のようなパズル小説の印象でした。本書もその傾向は変わらずなのですが、登場人物皆を名探偵の如く推理させる事により、従来の解法1つだけにとどまらず、1つの事件・問題に対して豊富な謎解きシーンが楽しめる作品集に仕上がっており、読んでいて楽しかったです。

映像・ドラマ化も面白そうです。誰もが名探偵役になれる設定って斬新ではないでしょうか。俳優さん皆が主役みたいな名探偵役が出来るわけです。そういう点でもこの『ワトソン力』という設定はかなり発明な印象で驚かされました。

トリックや真相はパズル小説の様で現実的ではない感じではありますが、今回はそんな事は気にせずユーモアある雰囲気とミステリの楽しさを味わえた一冊でした。おすすめです。
ワトソン力 (光文社文庫 お 63-1)
大山誠一郎ワトソン力 についてのレビュー
No.244:
(8pt)

だから僕は君をさらうの感想

帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。

恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。
読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。

主人公は誘拐犯の父を持つ息子。
その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。

巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。

気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。

ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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だから僕は君をさらう (双葉文庫)
斎藤千輪だから僕は君をさらう についてのレビュー
No.243: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

透明人間は密室に潜むの感想

表題作を含む4つの短編集。
・透明人間の倒叙ものである『透明人間は密室に潜む』
・アイドルオタク達の裁判員制度『六人の熱狂する日本人』
・聴覚が優れた特殊能力を用いた犯人当て『盗聴された殺人』
・船上の脱出ゲーム『第13号客室からの脱出』

特に2話目はアイドルオタクならではの気づきを用いた推理劇が新鮮でした。
3話目の探偵コンビとなる上司と部下の関係も良くてシリーズで読みたい程。

作品の雰囲気については、過去に『紅蓮館の殺人』を読んでいますが、その印象とは違いキャラクター達が元気で勢いがあるように感じました。言い換えると筆が乗っているというか読んでいて面白い。本書も手に取るまで表紙の雰囲気から重そうだなと感じていたのですが、読んでみたらサクサクと楽しい読書でした。著者からミステリが好きなんだなという気持ちがとても感じる作品で楽しかったです。
透明人間は密室に潜む (光文社文庫)
阿津川辰海透明人間は密室に潜む についてのレビュー
No.242: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

命の後で咲いた花の感想

不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。

ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。
男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。

本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。

他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。

世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。

▼以下、ネタバレ感想
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命の後で咲いた花 (メディアワークス文庫)
綾崎隼命の後で咲いた花 についてのレビュー
No.241: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 A+B+Cの殺人の感想

安定の面白さでした。☆7(+好み1)
シリーズ作品ですが1作目以降はどこから読んでも問題ありません。
今作は長編作品ですがサクッと一気に読める。気軽に楽しめるミステリとして良かったです。

ミステリの謎については早々に見えてくるので謎解き重視の方には好みに合わないと思いますが、人間模様のドラマを楽しみたい方には丁度良い作品です。本年には予想通りドラマ化したので正にそれ向きの作品となっています。

本シリーズの幅が広がったと感じる所は、閻魔娘の沙羅が地上で活動するようになった事。事件が起こる前に閻魔の娘として死期を感じる者の近くで活動した所がシリーズ内での変化でした。
沙羅の活動がより見えてくるのは好みの問題であり、この流れだと、伊坂幸太郎と知念実希人それぞれの死神がそばにいるという『死神シリーズ』と似たような印象を受けました。どれも好きなシリーズなので同系統が読めるのはそれはそれで楽しみです。

印象に残った所として、沙羅が堕落した人間に対して述べる説法について。
ダメ人間の反面教師と閻魔からの人間の志のメッセージの対比や例が巧く、自己啓発のように読者の心に響かせる面を感じました。ミステリやドラマだけではない魅力も含まれたとても良い作品でした。
閻魔堂沙羅の推理奇譚 A+B+Cの殺人 (講談社タイガ)
No.240: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

あなたの罪を数えましょうの感想

シリーズ2作目ですが、本書単体で楽しめる作品。
前作では物足りなかった著者成分を十分に感じられた作品でした。

前作同様に物語は2つのパートが交互に描かれます。
1つ目は、廃屋で監禁された男女6名の惨殺シーン含む事件模様。
2つ目は、事件後に訪れた探偵パートの調査。

著者の持ち味である惨殺、微グロ、狂人の描写が活かされている内容。それ系が苦手な方には好まれない内容です。
B級スプラッター映画の中に探偵やミステリ要素を混ぜ込んだ内容であり、それが過激的な要素なだけでなく、真相がこの世界だから納得できる内容になっているのが見事。個人的にプラス点でした。

一方、純粋なミステリを好む方、グロが苦手な方には非常に評判が悪くなる作品です。良い意味でのB級・インディーズに属する少し尖がった所に魅力を感じる方向けの作品。個人的にこの著者の持ち味と本格ミステリっぽさを混ぜ込んだ作風は好みで、今後の作品も楽しみにする次第。

ちなみに帯の推薦が綾辻行人ですが、館ではなく『殺人鬼』の綾辻行人が推薦、と言えば内容がなんとなく伝わる事でしょうw

▼以下、ネタバレ感想
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あなたの罪を数えましょう (講談社タイガ)
菅原和也あなたの罪を数えましょう についてのレビュー
No.239:
(7pt)

悪夢の身代金の感想

気軽に楽しめた群像劇でした。
同著者の『悪夢の観覧車』も群像劇でしたが、このシリーズはそういう系統でしょうか?好みなので他の作品も読んでみたくなりました。

あらすじは、女子高生が交通事故に遭遇し、轢かれて瀕死のサンタクロースから身代金を託される所から始まる。
誘拐犯からの指示、意図しないアクシデント、主人公と読者は同じ目線であり、何が起きているか翻弄される物語は先が気になる面白さでした。章を変える毎に視点が変わり徐々に全貌が分る構成も面白い。コンパクトな群像劇ながらミステリ仕掛けの真相もあり気軽に楽しむのに良い作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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悪夢の身代金 (幻冬舎文庫)
木下半太悪夢の身代金 についてのレビュー
No.238:
(8pt)

異世界の名探偵2 帰らずの地下迷宮の感想

異世界転生×本格ミステリ 第2弾。

2作目も相変わらず面白かったです。
1作目のような登場人物・舞台紹介の必要がない為、本書は本筋に集中した物語が楽しめました。

舞台は「帰らずの地下迷宮」。ダンジョンもの。
ファンタジー小説としてダンジョン内を進む冒険ものとして楽しめました。さらにミステリとして、ファンタジー特有の一方通行の壁の中の室内で起きる密室・消失事件、毒殺もの、疑心暗鬼、と多くのガジェットを盛り込んだ作品。読者への挑戦までのワクワク感は見事ですし、解答編もそうきたか!と物語の作り方の巧さに驚きました。

ファンタジーだから作れるダンジョンものの新しさ。
そのダンジョンという特性を十二分に活用しミステリへ昇華した素晴らしい作品だと感じました。

▼以下、ネタバレ感想
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異世界の名探偵 2 帰らずの地下迷宮 (レジェンドノベルス)
No.237: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくるの感想

学園ラブコメミステリ ☆7+1(好み)

タイトルと表紙の雰囲気からTheラノベを感じさせますが、中身は謎解きありの学園ミステリ。殺伐さがない各事件の内容と、読後感が非常に良い作品でした。

まずミステリとして面白いのは2話目の『史上最薄殺人事件』。
絶版となって入手不可能になってしまったミステリのシリーズ最終巻。その謎をカバー情報から解き明かすもの。あらすじ・登場人物の設定の情報を元に、ミステリの作法を用いて推理する話。ノックスの十戒や安楽椅子探偵というワードもでておりミステリ好きの読者の心をくすぐります。

キャラクターものとしても男主人公+双子姉妹の三角関係的なトリオも良い感じ。ラノベとラブコメの定石然り、3人で謎を解く探偵仲間の雰囲気がとても読んでいて楽しかったです。

ミステリの謎解きだけに注目すると物足りないですが、ライトに楽しむミステリとしては非常によい作品。
個人的な評価ポイントとして、死なないミステリで、可愛い双子姉妹の学園ラブコメ、事件の真相が悪意なく救済となっている点が好みでした。続編も期待。
探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる (MF文庫J)
No.236: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

新参者の感想

数年ぶりに東野圭吾作品を読書。
著者作品はドラマや映画化している有名どころ。これらは敢えて読まないでもいいかな。という心理が勝手に働いて未読でした。久々に読むと流石に巧すぎるという気持ち。やはり有名作品はそれなりに面白いという事を改めました。

事件の描き方、着目する視点が凄い。
ミステリの殺人事件自体を検証するのではなく、事件が起こった町の人々が主点。日本橋という小舞台の中で生きる人々。各々に接点はなくとも同じ町で暮らしていれば何かしら繋がりがでてくる。この繋がりが見えた所はミステリの謎が解けたような晴れやかさを感じました。

各章の登場人物達のエピソードには陰鬱さはなく、日常の謎と人情味を感じるエピローグで構成されており、読んでて悪い気分はしません。万人向けのミステリとして質の高さを感じました。

敢えて難をいうと、尖がったものがないので、面白いけど心に残ったり揺さぶったりするものがない印象でした。これは個人の好みの話。作品の質はとても高く久々の加賀シリーズとしても面白かった。
新参者 (講談社文庫)
東野圭吾新参者 についてのレビュー
No.235: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

タイタンの感想

『仕事とは何か?』をテーマに含む、野﨑まど流のSFエンターテインメント作品。
著者の作品傾向の中では『know』や『2』に近く、おふざけ要素もないSF作品となっています。『know』では知るとは何か?を扱いましたが、本書は『仕事』について哲学をも用いて感じる作品となります。『know』は少しラノベ表現がありましたが、本書のタイタンは近未来SFとした少し硬派寄りな雰囲気の作品です。

物語の舞台は人工知能が発達しあらゆるものがオートメーション化され、人類に仕事という概念がない世界。
この世界観の中で、人工知能に何が起きたのか?何が起きるのかとミステリのホワイダニット作品のような求心力で読ませます。近未来のシミュレーションや冒険ものを感じる飽きない場面転換もよく、仕事に対して帰結する解答もなるほどと思わせた所が見事でした。近年の流行りネタとなる人工知能やタイタンという存在要素も巧く活用している点が好感触。著者の作品がどんどん面白く進化していて、今後も楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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タイタン (講談社タイガ)
野﨑まどタイタン についてのレビュー
No.234: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ダンガンロンパ霧切 7の感想

シリーズ最終巻。 北山猛邦の本格ミステリがとても活きており、シリーズ完結編として綺麗にまとまった内容でした。

本書はシリーズを途中で投げてしまった人でも楽しめる配慮を感じます。
1巻⇒2巻⇒3巻⇒7巻 と読んでも大丈夫。
※シリーズを追わなくなったとしても名作2巻以降だと思われる為。

結末に向けてのおさらいとして、登場人物、探偵図書館、宿敵の犯罪被害者救済委員会の説明、行われるデスゲームの概要を改めて解説しています。また舞台は1巻のシリウス天文台で行われる館ものミステリでありシリーズ読者はワクワクの設定です。
ダンガンロンパのトンデモ設定の中だからできる本格ミステリとして、著者の特性が活きているのが楽しかったです。

霧切響子の過去の物語。五月雨結との関係。儚くも綺麗にまとまりました。
キャラクターデザインとしての霧切の三つ編みにとても深みを感じます。キャラクターへより良いエピソードを盛り込んだスピンオフ作品として満足の作品でした。

シリーズを振り返ると、1巻,2巻がミステリ成分強めで世界観とミステリのやりたい事をやった作品。3巻からはキャラや世界観の説明が混じってミステリとしてもキャラものとしても薄くなってしまった印象。6巻が終盤へ向けて面白さ。最終巻が原点回帰的なミステリと大団円。という印象。
シリーズが終わり寂しく感じますが、著者の新たな本格ミステリを楽しみにしています。

▼以下、ネタバレ感想
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ダンガンロンパ霧切 7 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 7 についてのレビュー
No.233:
(7pt)

ダンガンロンパ霧切 6の感想

シリーズ6作目。最終巻が出たためシリーズ読書再開。3~5作目にて物語が一段落した為、本書は最終章へ向けて新たな気持ちで読書。
個人的にはダンガンロンパおよび本書のシリーズ作品として楽しめた内容でした。

ただ本書の評判は悪いですね。その理由が明らかなポイントが2つあります。1つは単体作品ではボツネタになりそうな小ネタトリック集なミステリである事。2つ目は期待させておいて何もないというガッカリさせる要素がある事。
この2つは読書した人はわかります。で、この点が好みの別れ所でしょう。
ただこの2点は『ダンガンロンパだしなぁ。』で納得しました。ダンガンロンパのゲームやアニメの絶望に比べれば、それ系ですね。

本書をただのミステリとして作っても意味がない。シリーズ作品のダンガンロンパとして何ができるか。みたいな事を考えるとアリな気がしてくるわけです。
事前にトリックのヒントが明かされる『黒の挑戦』という存在自体を逆手にとっての探偵同士の攻防。トリプルゼロクラスの凄さ。形式島の2話目は期待させておいてアレな絶望的な落胆(苦笑)。残酷性。狙撃戦としてテーマをしっかり貫いた構成。良い点をみれば3~5作目の落胆とは違って楽しめた作品でした。最終巻まで続けて読みます。

▼以下、ネタバレ感想
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ダンガンロンパ霧切 6 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 6 についてのレビュー
No.232:
(8pt)

三毛猫ホームズの騎士道の感想

今の時代に読んでも気軽に楽しめるライトミステリ。
本書はドイツの古城を舞台としたユーモアある館ものミステリです。
シリーズ作品ですが本書から読んでも問題ありません。

やはり携帯電話のない時代のミステリは好みです。
古城の入り口となる橋が崩落し外部との連絡が途絶えた舞台。各人何かしらの目的を感じる怪しい関係者達。その中で発生する殺人事件。中世の処刑具まで現れて雰囲気は抜群でした。
シリーズ名にもなっている猫のバランスがいいですね。マスコット的な動き。皆が悩んだ所で示される猫からのヒント。こんな所に手がかりが!と、猫が見つけてくれる。雰囲気が壊れないヒントの出し方が巧いです。仕掛けや犯人や舞台の構成などしっかりミステリをしていて楽しめました。
三毛猫ホームズの騎士道 (角川文庫)
赤川次郎三毛猫ホームズの騎士道 についてのレビュー
No.231:
(8pt)

十二人の手紙の感想

書店に大量に並べてあり、『隠れた名作ミステリ』という帯に釣られて読書。結果満足。
1980年出版なので40年前の作品。掘り起こし作品としての仕掛け販売で流行中みたいですね。

書簡体小説という手紙の文章で作られた短編集です。

手紙という性質上、第三者となる読者が得られる情報は断片的です。文章から人物・境遇・物語、手紙をやりとりしている人の間柄が好意なのか敵対なのかなど、徐々に見えてくる構造が面白い。短編集として、手紙を用いた多様な文芸を味わえます。そして意外な結末を感じる瞬間はミステリのどんでん返しの味わいを感じました。

現代のSNSやメールは直ぐに相手に文章が送れる為、短文を複数回やり取りする性質があります。
40年前の本書が今取り上げられて面白いと感じるのは、そういった現代的なやり取りとは違い、時間の掛かる手紙のやりとり、文章のフォーマット、書き方、相手に伝える文章など、手紙そのものが改めて新鮮に見えたからだと思いました。

おすすめです。
十二人の手紙 (中公文庫)
井上ひさし十二人の手紙 についてのレビュー