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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数359件
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2作目も読んでこのシリーズはちゃんとしたミステリの部類だと感じました。
児童ミステリの部類ですが、しっかりとしたデスゲームものであり、かつ知能を使った謎解き&犯人(狼)当てのストーリー。 シリーズものなので1作目から読書推奨。 前回の人狼構成は狼vs村人でしたが、本作は騎士が加わります。"人狼"自体を知らなくてもどういう役回りなのかちゃんと1作目から順番に説明されている丁寧な作り。ルールをしっかり読者に把握させたうえでの犯人(狼)当ての事件模様は面白いです。騎士という役回りから誰を守るか、皆どういう疑心暗鬼になるか、登場人物達の思考回路に違和感なく読めるのが意外と素晴らしかったです。 終盤のトリック的な仕掛けについてはもう少し説明があればと思いました。少し納得し辛い内容なのが残念。とはいえ、そういう細かい所が気になるぐらい他は十分に面白いので次巻も楽しみなシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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猟奇殺人犯の名前があなたと同じだったら……?
現代的な問題を内包した社会派のミステリ。 読書前は全員が同姓同名という題材のネタ的な作品かと思っていました。キャラの書き分け小説?ぐらいの印象。 が、読んでみたら速攻で考えを改めます。現実的で起こり得る社会的テーマを持つ考えさせられる作品でした。 未成年による児童殺傷事件。世間を賑わせる事になった猟奇殺人が発生。警察やメディアは未成年事件である事から犯人の名前は非公開。この時点では他人事のように犯人の名前を公開しろ!と世の中が騒ぎ立てます。ここら辺の導入は神戸の事件を思い出させました。当時と違うのは現代のインターネット社会により、SNSによる情報の拡散、特定班、不確かな情報と思い込み、炎上……。という感じで、いざ公開された犯罪者の名前が自分と同じだったという展開。名前が同じである事による悪い方向への運命の転換が描かれていきました。 本書はこの問題をある種のシミュレーションのような感覚で読みました。 どういう被害が発生するのか。SNSによる誹謗中傷の攻撃者やその活動のきっかけとなる情報源、でも実はその情報そのものが思い込みであり真実とは異なる可能性も秘めている。拡散していく分かりやすいステレオタイプの表面と、真相となる裏側の話。ここら辺が現代的な社会的テーマで問題喚起を打ち出しつつ、ミステリとしても楽しめるようになっているのが見事でした。 ちょっと思うのが表紙が地味すぎというかエネルギーがないというか、書店や新刊情報で見てても印象に残っていませんでした。 たまたまネットの感想が流れてきて目に留まって読んだ次第。 現代的な社会派ミステリとしてオススメなのでもうちょっと広まって欲しいなと感じます。良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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カッコいい女性主人公ものとして面白く読めました。
冒頭からエリート弁護士事務所所属の強い女性の思考が全面に出ており、キャラの印象付けとしては十分。 過去に3ヵ月だけ付き合った元彼の奇妙な遺産相続の遺言状から物語は展開します。 『このミステリーがすごい!』大賞作品ではありますが、ミステリというより弁護士のお仕事小説といいますか、 企業を舞台にしたエンターテインメント小説の印象でした。 第一章は主人公のキャラ付け、第二章では弁護士ならではの企業を相手にした戦い方。ここまでは抜群に惹きこまれました。それ以降ももちろん面白い物語であり、事件模様や展開、真相に至るまで綺麗にまとまっており楽しめます。 ミステリっぽくなくお仕事小説に感じるのは、読者の目線と主人公の目線が重なり辛く感じる為です。主人公が強すぎてこの事件の物語を俯瞰して眺めているような、主人公を追っ掛けるような読者目線であり、事件よりも凄い人の背中を見ている読書感。一緒に謎を考える余地がありません。いい意味では力強く勢いがある主人公。読者はそうだったのか!と驚くのではなく、事件の結末を教わったような気分。遺言状の経緯やそれぞれの舞台裏の真相はミステリとして内容十分なので、明かされていく演出や展開が欲しかった所。さらによくなりそうな勿体ない印象でした。 文章は読み易く、一見固くなりそうな弁護士や企業話もコミカルで楽しめました。主人公の魅力が分かりやすいので俳優を引き立てるドラマ向きかも。 続巻があれば読みたいと思います。 |
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学園ラブコメミステリ。☆7(+1好み)
版元レーベルの兼ね合いでタイトルと表紙が超ラノベテイストなので、ミステリ読者には敬遠されそうですが中身はちゃんと謎解きしている学園ラブコメミステリです。 シリーズ2作目で変にキャラものや別ジャンルになる事なく、1作目から順当に学園内の日常を舞台にしたミステリをしているのが好感でした。扱われる謎も現代寄りで新鮮。同級生からの相談で、ネット上の知り合い調査やSNSの文脈などを元に人物を推測するというものが扱われます。"学園ミステリ"というジャンルは昔からありますが、時代設定が現代的になっています。 本書は謎解きに重みがあるのではなく、謎解きを軸にそれに関わる同級生や先生たちとの交流を描く青春小説にも感じられました。山田姉妹と主人公の掛け合いも良く、学園内の悩み事を好奇心だけでなく、無下にはできない優しさが感じられるのが良いです。1作目以上に皆との接点が増えていき充実した学校生活を感じられる展開でした。さらに巧いのが3話目に至ってはその学園生活の姿に対比する形での物語が扱われている事。この年代の負のテーマがあり、雰囲気を壊す事なく巧く扱われている事が印象的でした。 前作同様に謎を解く事で人の救済となっている点が大変好み。 キャラクターの明るい雰囲気や会話の流れが優しくポジティブなので読んでいて嫌な気持ちにならないのが良い。作者の性格なのかな。このシリーズは好みで続編希望です。 余談。 本書は去年の発売時期11月ごろに購入しましたが表紙が水着だったので気分的に夏まで寝かせました。読んでみたらリアルな季節は関係なくて物語内が1巻の高校生活新学期から始まり、そのまま時間軸が夏という事でした。イラストは明るく可愛く作品にマッチしていて好み。1作目の表紙はミステリ読みにも伝わるシャーロックでしたが、本書の水着は振り切っていきなり攻めたなと笑えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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土砂崩れで避難した洋館を舞台に行われる人狼・デスゲームもの。☆7(+1好み)
毎夜、仲間に化けている人狼を見極め投票をする。見事狼を当てられれば助かるが外せば喰われるという人狼をモチーフにした作品。 児童書ミステリなので子供が読んでも平気。誰が狼なのか疑心暗鬼や謎解きの様子をシンプルに楽しめた作品でした。 ある程度デスゲーム作品や人狼もの作品に触れている場合、捻った考え方を持つと思われるので想像の範囲で真相が見えてしまうかもしれません。ただ本書のレーベルの小中学生をターゲットに考えると巧いバランスで仕掛けてきていると感じます。子供思考での誰が狼なんだと仲間を疑い悩む展開が良かったです。 個人的にデスゲーム作品は好きで、本書は読み易くちゃんと仕掛けがある内容だったのでシリーズを追っかけようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ストーカーが主人公のホラー作品でありますが、ラブストーリーとも思える不思議な体験が得られた作品。
学生時代に出合った女性をふと思い出した主人公。彼女の現在を興信所を使って調べ、家に侵入しつつ盗聴・盗撮などストーカー行為をする日々。ただそこで見知った現在の女性の暮らしはDV夫によって奴隷となっている姿だったという流れ。 最初の数ページは主人公のストーカー行為に気持ち悪さを感じましたが、それ以上にDV夫の異常な暴力の姿に嫌悪感を抱きました。著者の作品の持ち味として凌辱シーンとなる暴力と性描写が描かれますが、本作は単なる小説の娯楽要素ではなく、DV夫の狂人を描き、圧倒的な悪の表現と手が出せない恐怖を植え付ける効果として描かれ読ませます。 よくあるストーカー作品はストーカーをする者が敵位置にいるのですが、本作はどちらかというと応援したくなるようなヒーロー側の立ち位置。不幸なヒロインの女性、それを盗聴・盗撮して見る事しかできない主人公。陰の者の思考や行動がよく表されており、それぞれの登場人物がどうなっていくのか中盤からは先が気になる一気読みでした。 現実的には好む内容ではないのですが、1つの作品として異常者の恋愛作品として楽しめました。 著者作品の傾向で暴力と性描写が多いのでこれらが苦手な人にはオススメできませんが、 その点を踏まえた上で異常な恋愛作品を求める方にはオススメです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから感じる印象と読後は違うものでしたが、犯罪小説の1つとして巧く整ったと感じる作品で楽しめました。
物語は平凡な家庭が凶悪犯罪に巻き込まれる内容で、生き残った男性被害者の視点と犯罪を行なった加害者の視点が交互に描かれます。著者作品は凶悪犯罪者の視点で暴力やエロの描写が持ち味ですが、本書はさらに被害者の視点を取り入れて復讐という憎悪の立ち上がりを加えました。 ジャンルはホラーやサイコもの。謎解きやミステリを求める人には不向き。ただ毒を食らうと言いますか、犯罪者視点の少し刺激が強いものが読みたくなる時は著者の作品を手に取る次第。 犯罪に巻き込まれる理不尽さ。犯罪を行なう異常心理。世の中どういう繋がりで巻き込まれるか分かりません。些細な1つの切っ掛けが描かれた本作。現実的に起こり得そうなバランスと結末の虚無感は見事でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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AI探偵シリーズだからこそ可能となる奇想の仕掛けに驚きました。
本格ミステリが大好きな気持ちが伝わる要素やセリフが多く散りばめられており読んでいて楽しい作品でした。☆7+1(好み補正)。 注意点として本作は単体では楽しめないです。 シリーズを順番に読んで作品の性質を把握した上で、著者が仕掛ける普通とは違ったミステリが味わえる作品となります。 シリーズの好みとしては、1作目は好みで2作目が思ったのと違う方向性で敬遠していたのですが、3作目の本書は前作の苦手意識が杞憂に終わり、ミステリのお約束をお約束としてそのまま扱う面白さや、AI探偵&主人公の掛け合いなど読んでいて楽しい作品となりました。 "四元館"という"館もの"作品の中で斬新さを打ち出す仕掛け。AI探偵シリーズという特性だからこそ納得できるバランスが見事でした。どんなにぶっとんでいても、そこに辿り着くまでの事前説明や要素がちゃんと小出しで盛り込んでいる丁寧さを感じます。 真相解明の終盤の展開と演出はかなり巧かったです。 犯罪AIがコーディネートする事件という設定もよく、今後の事件に期待が持てます。 主人公&相以と以相の物語としても今回は面白く楽しめました。次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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あの世の喫茶店が舞台のライトミステリ。
死んだ魂が生まれ変わる前に訪れる来世喫茶店。大事な思い出、最後に会いたい人、生まれ変わる前のちょっとした相談、イケメン店主のマスターがいれる珈琲を飲みながら当時を振り返るという流れ。お客様の話を聞いていると、ふとした疑問や勘違いが発覚し、実はこういう事だったんじゃないかと謎が解き明かされる構成。バー/喫茶店もののミステリです。 大きな驚きや仕掛けは無いですが、出版レーベルのターゲットを考えると適した雰囲気や内容ですし、話も読みやすいので楽しめました。最後の章に至ってはそれまでのエピソードの繋がりを感じ、丁寧に役割や小道具を考えられている作りだったと感じます。女子小中高生でライトミステリをお探しの方にはオススメ。 一応の気になる読後感として、結末はハッピーエンド模様で終わってますが、主人公と家族の今後を考えると素直に喜べないのが本音でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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著者初読み。物凄く惹き込まれた作品でした。
作品単体が凄いのか、著者の他の作品もこのクオリティなのか未知ですが、場や人物の情景が頭に浮かぶ素晴らしい地の文でした。あらすじから感じる内容は、苦手意識を感じる古めかしく難しそうな内容だったのですが、読んでみたらスルスル頭に入り、先が気になる一気読みの面白さでした。 物語は孤児の主人公が古くからの伝統風習を重んじる名家の養子になる所から始まります。読みやすいと感じるのが、主人公と読者の状況不明の感覚がシンクロした構成である事。名家に入り、そこで出会う人物、風習、仕来り、役目、といった情報と理解が、主人公を通して徐々に把握していく為、複雑な背景でも楽しむ事ができました。 ミステリというよりオリジナルの物語を楽しむ事に趣があります。ただ、あの時何が起きたのか、町で何が起きているのかが見えてくる終盤はミステリの解決編の様で楽しめました。一同が集まり一風変わった展開での解決編だったなという印象も得られました。 少し余談ですが、島田荘司・御手洗シリーズの龍臥亭事件ぐらいまでの初期の頃のワクワク感を思い出しました。ミステリより物語に夢中になっていたら最後何かが明かされる感覚。毛色は違うのですが、個人的にそんな感覚を思い出すほど惹き込まれた次第です。 扱う内容の雰囲気は地道で重苦しいものなのですが、読書中はそうは感じさせず綺麗に描かれている物語。素晴らしい作品でした。他の作品も手に取ってみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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人工知能による死者の再現を軸に、何故彼女は自殺したのか?という謎を追いかける物語。
横溝正史ミステリ大賞受賞を受賞した本書。作品雰囲気は"横溝正史"から連想する古くアナログ的なミステリとは違い、人工知能を始めとしたプログラム要素となる機械学習や音声合成のワードもでる近未来風な作品。過去の受賞作品群と比べても少し毛色が違う為、受賞作品の審査時では新しく感じたのではないかと思う内容でした。 本書の主人公はかなりクセがあり読者に嫌悪感を与えやすい為、その感覚が本書の物語自体の評価に繋がりそうな危険を孕んでいると感じました。冒頭から主人公の特性付けとして紹介される内容は、勉強もスポーツも恋愛も何でも予想通りで人生が退屈であり自分の真の性格を表に出さないように仮面を被って生きている。みたいな流れでとても痛々しい。ただその痛々しさも最後まで貫いていけば一本筋で通る気がしますが、死者の水科晴に酔狂していく辺りから心境の変化と前向きに感じる良さもあれば、弱弱しくぶれていくと感じる面もある為に魅力を感じずでした。1番がっかりした所は頭の良い人工知能のエンジニアという設定で尖がっていたのに、写真のExif情報を知らないエピソードが出た時。をい!と思わずツッコミたくなってしまいました。一般人も知られてますし、エンジニアでは基礎知識であり人工知能学習ならそもそもExifも学習パラメータで使うでしょ。という感じでして所々設定が浅く感じてしまうのが残念に思いました。 主人公の癖が強いだけで物語の展開は面白く読めました。 水科晴の自殺の謎、それを調査していく流れ、人工知能開発の現場、調査していく内に不穏な流れとなる緊迫感、、、etc. 物語の起伏要素が多く飽きずに最後まで読めました。文章も読みやすかったです。 結末や真相についてはあまり納得できるものでなく、なんとなく当事者達で収束してしまった感が強くて好みに合わなかったです。横溝正史ミステリ大賞作品というのも違う気がしますが1つの作品としては面白く読めたので、あまりミステリを気にせず"人工知能で死者を再現する者達の物語"として捉えると、とてもよいドラマかと思いました。 |
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著者作品はSF寄りの記憶をテーマにした作品がいくつかありますが本書はその1つ。
・前向性健忘により記憶が保てない主人公 ・触れた相手の記憶を操作できる殺人鬼 この2人の衝突の物語。 まず殺人鬼の行動や言動が胸糞過ぎて気分が悪くなりました。暴力から殺し、洗脳、日常の人々に対しての強烈な悪です。白昼堂々犯罪を行っても周りにいる目撃者の記憶を改ざんし自由に活動する倫理破壊。気分が悪くなりますが、ホラー文学として気持ち悪くなる文章や物語が巧いなという感想も得ました。苦手な人は苦手な話が多いです。 対して、記憶が保てない主人公。目覚めた所から物語は始まり、枕元に置かれたノートには自分の記憶障害と、"殺人鬼と戦っている"というメモが残されている。状況の混乱や疑心暗鬼、一方、慎重な言動や推測など頭を働かせる様が面白く読めました。 殺人鬼にどう挑むのか。悪との遭遇のサスペンスとして、不安な気持ちを抱えたまま最後まで一気に読めた面白い作品でした。 同じ主人公・田村二吉が登場する未読の別作品がある為、いつか追って読もうと思いました。 |
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個人的にかなり惹き込まれた作品でした。とても面白かったです。
物語は特殊設定もの。 世の中に『天使』という存在が突如現れた世界。人間の罪を監視し、2人以上殺したものは地獄に引き摺り込まれる。 連続殺人という行為があり得ない世界の中、孤島の館にて事件が発生していく。 特殊なルールによるミステリとして期待されがちですが、個人的にはミステリとして楽しむというより世界観の方が楽しめました。天使自体の存在、天使が降臨した事により変わった世の中、犯罪が減り探偵の存在意義の変化。世界観がとても丁寧に描かれていたのでSFやファンタジーものとして惹き込まれた次第です。 現実的な要素で代弁すると世界が変わる"災害もの"としても捉えられます。震災・隕石での崩壊と違い、天使という切り口で世界の変容の新しい物語を作り、そこにしっかりと本格ミステリを絡めているのが見事でした。 登場人物達も分かりやすく特徴があり読んでいて面白い。キャラの雰囲気は明るく魅力的なのに対して世界は悲壮感に包まれている対比を感じました。主人公の探偵としての悩み、過去の仲間達との良い思い出と苦悩。色々な感情も心に響きました。 タイトルから感じますが、ミステリや事件要素ではなく、探偵とは何かに趣がある内容。 物語としてとても面白い作品でした。 |
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ほんわか日常の謎のライトミステリ。
小学生から読んでも大丈夫な内容で、ゆるふわ系。殺伐さ皆無。 物語は、パン屋の女性に一目ぼれした大学生の主人公が、彼女と話す切っ掛け作りの為にパン屋に通い、身近に起きた謎についてお話するという流れです。 日常の謎を扱いますが、謎の程度はとても小さな事。本書の主体は男女の物語+ほんわか雰囲気。そこにちょっとだけ謎が加わったような話。男子学生の良い意味でのバカ騒ぎな雰囲気、漫才の様にボケとツッコミがあるユーモアな雰囲気、初々しい学生の恋愛模様を微笑ましく感じる読書でした。 ハリネズミは二人の様子を眺めるキューピットのような存在で、雰囲気を和ませる良い味出してます。 表紙にて雰囲気が出ている通り、小中学生から読ませられるミステリとしてよい作品だと思いました。 |
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『ワトソン力』というネーミングセンス、設定勝ちな1作。(☆7+好み補正)
目立たず平凡な和戸宋志。彼は周囲の人達の推理力を飛躍的に向上させる能力を持つ。 ゲーム用語で言うと味方に推理力のバフを与えるエンチャンターの人物。本人以外が名探偵になるという設定。これが非常に面白い。 著者の過去作品のイメージは事件と解決のみを主軸とした問題集のようなパズル小説の印象でした。本書もその傾向は変わらずなのですが、登場人物皆を名探偵の如く推理させる事により、従来の解法1つだけにとどまらず、1つの事件・問題に対して豊富な謎解きシーンが楽しめる作品集に仕上がっており、読んでいて楽しかったです。 映像・ドラマ化も面白そうです。誰もが名探偵役になれる設定って斬新ではないでしょうか。俳優さん皆が主役みたいな名探偵役が出来るわけです。そういう点でもこの『ワトソン力』という設定はかなり発明な印象で驚かされました。 トリックや真相はパズル小説の様で現実的ではない感じではありますが、今回はそんな事は気にせずユーモアある雰囲気とミステリの楽しさを味わえた一冊でした。おすすめです。 |
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帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。
恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。 読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。 主人公は誘拐犯の父を持つ息子。 その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。 巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。 気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。 ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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表題作を含む4つの短編集。
・透明人間の倒叙ものである『透明人間は密室に潜む』 ・アイドルオタク達の裁判員制度『六人の熱狂する日本人』 ・聴覚が優れた特殊能力を用いた犯人当て『盗聴された殺人』 ・船上の脱出ゲーム『第13号客室からの脱出』 特に2話目はアイドルオタクならではの気づきを用いた推理劇が新鮮でした。 3話目の探偵コンビとなる上司と部下の関係も良くてシリーズで読みたい程。 作品の雰囲気については、過去に『紅蓮館の殺人』を読んでいますが、その印象とは違いキャラクター達が元気で勢いがあるように感じました。言い換えると筆が乗っているというか読んでいて面白い。本書も手に取るまで表紙の雰囲気から重そうだなと感じていたのですが、読んでみたらサクサクと楽しい読書でした。著者からミステリが好きなんだなという気持ちがとても感じる作品で楽しかったです。 |
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不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。 ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。 男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。 本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。 他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。 世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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安定の面白さでした。☆7(+好み1)
シリーズ作品ですが1作目以降はどこから読んでも問題ありません。 今作は長編作品ですがサクッと一気に読める。気軽に楽しめるミステリとして良かったです。 ミステリの謎については早々に見えてくるので謎解き重視の方には好みに合わないと思いますが、人間模様のドラマを楽しみたい方には丁度良い作品です。本年には予想通りドラマ化したので正にそれ向きの作品となっています。 本シリーズの幅が広がったと感じる所は、閻魔娘の沙羅が地上で活動するようになった事。事件が起こる前に閻魔の娘として死期を感じる者の近くで活動した所がシリーズ内での変化でした。 沙羅の活動がより見えてくるのは好みの問題であり、この流れだと、伊坂幸太郎と知念実希人それぞれの死神がそばにいるという『死神シリーズ』と似たような印象を受けました。どれも好きなシリーズなので同系統が読めるのはそれはそれで楽しみです。 印象に残った所として、沙羅が堕落した人間に対して述べる説法について。 ダメ人間の反面教師と閻魔からの人間の志のメッセージの対比や例が巧く、自己啓発のように読者の心に響かせる面を感じました。ミステリやドラマだけではない魅力も含まれたとても良い作品でした。 |
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シリーズ2作目ですが、本書単体で楽しめる作品。
前作では物足りなかった著者成分を十分に感じられた作品でした。 前作同様に物語は2つのパートが交互に描かれます。 1つ目は、廃屋で監禁された男女6名の惨殺シーン含む事件模様。 2つ目は、事件後に訪れた探偵パートの調査。 著者の持ち味である惨殺、微グロ、狂人の描写が活かされている内容。それ系が苦手な方には好まれない内容です。 B級スプラッター映画の中に探偵やミステリ要素を混ぜ込んだ内容であり、それが過激的な要素なだけでなく、真相がこの世界だから納得できる内容になっているのが見事。個人的にプラス点でした。 一方、純粋なミステリを好む方、グロが苦手な方には非常に評判が悪くなる作品です。良い意味でのB級・インディーズに属する少し尖がった所に魅力を感じる方向けの作品。個人的にこの著者の持ち味と本格ミステリっぽさを混ぜ込んだ作風は好みで、今後の作品も楽しみにする次第。 ちなみに帯の推薦が綾辻行人ですが、館ではなく『殺人鬼』の綾辻行人が推薦、と言えば内容がなんとなく伝わる事でしょうw ▼以下、ネタバレ感想 |
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