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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数370件
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96年に書かれたコンピューターウィルスを用いたサイバーミステリー。
MS-DOSやパソコン通信時代が描かれており、その時代ですでに人工知能を巧く絡めた作品となっているのが驚きでした。 90-00年代のパソコン好きやエンジニアの方にとても楽しめる作品となっております。ミステリーやサスペンス的な要素や構成については今読んでも十分に面白く、コンピューターやウィルスの進化の目的は今読んでも違和感がないのが素晴らしいです。著者の当時からのコンピューターの知識量が垣間見れる作品でした。 MS-DOSやフロッピー、モデムなど、機材や環境については古い単語である事は否めませんが、それを気にしなければコンピューターのベーシックな要素で物語が進むため、ネットワークやコンピューターの原理など初心者エンジニアの方にはそういう面でも楽しめそうです。 ウィルスは何故広まるのか、どこへ到達するのか、終盤の1つの解については現代のAIとの関りの考え方と違和感のない道を示しています。著者の先見性に驚かされました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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かなり好みの作品でした。92年の作品ですが今も問題なく楽しめます。
冒頭は宗教施設や反対運動の過激なデモ模様がレトロな村を舞台とするホラーを感じさせました。そこから監視カメラで囲まれた宗教施設の火災の謎、教祖の死、そしてそれを切っ掛けに生まれた主人公の頭の中に入り込んだ意思。という具合にどんな物語に展開するのか予想できないワクワク感のある読書でした。 あらすじにある通り、SF、ミステリー、恋愛、など当時には珍しいジャンルミックスの作品です。所々に生まれる奇妙な違和感がホラーやSFでの演出と思いきや、ミステリー的な解法で巧く繋がるスッキリ感もあり、かなり巧妙な作品だと感じました。 恋愛要素についてはとても好みなのですが、惜しむべきはもう少し男性と女性が惹かれ合う切っ掛けを描いて欲しかったです。あまり説明がないので一目惚れ感が凄くて、そんなご縁でこの行動力は違和感です。ベタですが男性側に頼りがいがあったり、知的な要素があったり、女性を助けたとか何かしらのエピソードがちゃんとあれば個人的に非の打ち所がないと感じる作品でした。 |
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2024年の本屋大賞超発掘本に選ばれたきっかけで読書。
1994年の作品であり、その年代を考えればやはり先駆け的存在の1つだと感じます。思い返せば90-00年代ごろこのネタが流行りました。そのままの単語が使われている映画も頭によぎるぐらいです。とはいえ本書のテーマが分かってしまっても先が気になる面白さの作品である事は間違いありませんでした。 読者はワープロで打たれた54個の文書ファイルを読み進めるという構成です。 複数名によって書かれた文書を読み進めるうちに奇妙な違和感が起きてきて、序盤は誰かの勘違い?こういう事なのでは?と思ったらそんなの想定済みですよと言わんばかりにその考えをボツにする展開が発生し、この作品はホラーなのか?SFなのか?一体これはどういう事なのだ?と先が気になる物語で楽しみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書は事前の予習が必要な作品。
対象読者は野﨑まど作品が好きな人、そして野﨑まどが脚本を手掛けた『正解するカド』を視聴している人向けとなります。その内容を知っている人に向けて仕掛けられた予想外の展開の物語となります。狭い読者層向けの作品なのですが、該当する方に楽しめる作品です。ファンの期待に応えている作品と言えるでしょう。 本書はアニメオリジナル作品となった野﨑まどの『正解するカド』のスピンオフ作品を、野﨑まどファンである作者の乙野四方字が依頼を受けて執筆するという物語です。アニメのストーリーを小説化した作品ではなく、完全オリジナルの物語です。 物語の主人公は乙野四方字自身。大ファンの野﨑まど作品に関われる依頼に喜ぶ一面もあれば、その期待故にプレッシャーでまったく書けなくなる悩みが描かれます。登場人物や出版社とのエピソードが本当の事のようにリアルに描かれているのが面白く、どこまでが本当の事でどこから創作なのか不思議な感覚での読書でした。その雰囲気が続いていく中で、まったく執筆できずに病んでいる作者の前にアニメ作品に登場するキャラクターが現れるという流れです。 ジャンルとしてはSFメタフィクション小説。現実や虚構やその他いろいろな要素が入り混じる作品です。そして要素として何を混ぜているかというと、野﨑まどの作風や、アニメの『正解するカド』の内容なので本当に読者は限定的です。ただそれらを知っている人にはわかると思いますが、野﨑まどが最後にどんでん返しのように仕掛ける構成やユーモアを本書特有の世界で行われているのが見事でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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メフィスト賞受賞の『線は、僕を描く』の続編。前作は必読。本作は完全に非ミステリの青春小説です。
前作同様、文章の表現力が凄まじく素晴らしい読書体験でした。 物語の好みとしては良い面と悪い面があり、ちょっと悩ましい方が強かったのが正直な気持ちです。 1作目はサクセスストーリーの展開でゴールが綺麗に決まっていた為、その続きとなる本書はどう始まるのだろうと手に取りました。あらすじにありますが序盤は主人公の苦悩が描かれたスタートでした。進路に悩み優柔不断な主人公の姿が描かれます。正直な気持ちとして、読んでいてあまり良い気持ちではありませんでした。ウジウジした主人公の姿を見て、一作目のあの姿はどこに行ったんだと思う次第。きっと1作目で盛り上がったゴールを描いたので、一度その雰囲気をリセットする為に主人公を逆境に立たせたんだろうという構成の都合を感じてしまった次第。1作目と2作目の物語の繋がりが弱く、急に逆境だったから変に感じたのかもしれません。その感覚だった為、終盤近くまではどんよりした気持ちを感じながらの読書でした。1作目のような水墨画での新しい知的好奇心は得づらく刺激を変える事が少ない為、読者は最初に得た気分のまま読み進めるんじゃないかなと思いました。 と、気になる事はありましたが、その苦悩が伝わるぐらい文章表現が巧い。関わる人のちょっとした全てを語らないセリフや想いなど、読書体験としては素晴らしかったです。好みと合わない点は多いのですが作品の水準はとても高いです。逆境からスタートである構成も相まって終盤の力強いシーンは圧巻でした。揮毫会や水墨画家達の大団円も見事で映像化が期待されます。 主人公の決断は好みと違うものだったり、ラストから感じる画家たちとの関係性もなんだかピンと来ないので、個人的には物語は1作目で完結な気持ちでした。 |
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まずは小言を。帯や宣伝コピーが意図しない内容で過剰です。
「反転」やら「伏線」やらそういうのを期待して読むと思っていたのと違うという感想になりますのでご注意を。 売る為とはいえ作品が不当な評価に繋がるので残念な気持ちになりました。作品に罪はないので評価はちゃんと別扱いです。 正しい作品のテーマをお伝えすると、本書は身体醜形障害という自分が醜いと思い込んでしまう精神障害を扱った青春ミステリです。SNSの誹謗中傷により自分がブスで醜いと思い込んで悩む姿が描かれています。アイドル活用やSNSや動画配信など、顔を出す活動の現代的な要素を絡めていきます。 物語は大御所ミステリ作家の遺稿を読むという作中作の構成であり、遺稿では何を伝えたいのかが読者に考えさせる謎となります。ミステリーとして上記のテーマをちゃんと絡めた内容であったのが見事でした。 帯で感じるような一発ネタの仕掛けを楽しむ作品ではなく、障害を含むルッキズムをテーマとして扱い、それがどのようなものかを読者に伝え、悩みや希望ある物語へ変化していきます。読後感は良く面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『僕が愛したすべての君へ』/『君を愛したひとりの僕へ』のスピンオフ作品。
別の並行世界を描いた作品であり、SFやミステリ成分は特になく物語の補完的位置づけです。 3作品を通して一番印象に残り良かったポイントは、別の並行世界の幸せを描いた事だと思いました。 世の中にこの手の作品は豊富にありますが、これ系の愛読者には隠しテーマが存在します。それは並行世界の恋愛もの作品もしくは恋愛アドベンチャーゲームにおいて、選ばれなかった側はどうなるのかという事です。作品によっては選ばれなかった側の不幸を描いたり、メタ要素で読者やプレイヤーを悩ませる作品の方が世に多い中、全てをハッピーエンドのように描いているのは中々の特徴的な要素だと思いました。著者の優しさかと感じます。 小説2作品と映画も観てから本書を読みました。描かれなかった所を優しい雰囲気で補間された内容です。新たな展開というのは無いのでシリーズ作品が気に入った人向けの作品。本書だけや最初に読むのはオススメしません。 3作どれも面白く物語を堪能しました。良かったです。 |
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並行世界の存在が実証された世界におけるSF恋愛小説。☆8(+1好み)
2つの作品『僕が愛したすべての君へ』/『君を愛したひとりの僕へ』で1セット。上下巻という意味ではなく、どちらから読んでも楽しめる作品です。 私の読書順序は『僕愛』→『君愛』の順で読んだ後、→もう一度『僕愛』を読みました。 どちらから読むかの参考として 『僕愛』の方は作品の構造を曖昧とし、登場人物達のドラマをメインで楽しめます。 『君愛』の方は作品の構造が明確になり、世界設定を把握して楽しむ作品となります。 ミステリ―好きの人は『僕愛』→『君愛』の順序が良いかと思います。普段から序盤は謎で最後に真相がわかるような作品を読み慣れていますのでこの順序の方で問題なく楽しめます。一方、よく分からない事が苦手で全容がわかった上で作品を楽しみたい方は『君愛』→『僕愛』となります。 時間ものの恋愛作品において、本書の特徴として面白いなと感じたのは、並行世界が全員に認識されている事です。その設定で恋愛要素が含まれると、違う世界線での恋愛に抱く感情はどのようになるのかが興味深く読めました。今の時間軸の恋人と、違う時間軸の恋人を大切にした場合、並行世界を認識している恋人の視点からは嫉妬や羨みの感情はどのような形で納得するのかとか、夜の関係や結婚の瞬間に対してはどうかなど、なかなか踏み込んだSF作品として楽しめました。表紙はライトノベルっぽいですがしっかりと早川書房のSFだなと感じた次第です。 全てを読んだあとでハッピーエンドなのか、そうではないのか、読者に委ねられます。読者がどの世界やキャラをメインで考えるのかで変わる事でしょう。恋愛アドベンチャーゲーム(ある意味平行世界)やSF作品、特に某有名なSF映画の結末に近しいものもあるので、この手の作品はそういう所に落ち着くのかなと感じる次第でした。何はともあれこの手の作品は好みなのでとても楽しい読書でした。 単体でそれぞれ2作品の結末を楽しみ、両方を読むとその関係性をメタ的に俯瞰できる面白い試みの作品でした。 |
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圧巻の作品でした。
単純なパニック小説かと思いきや、人類の進化論に関する著者なりの説を描いた作品。 デビュー作の『QJKJQ』は好みに合わなくて著者の作品を敬遠してしまっていたのですが、その後数々の賞を受賞している事から改めて作品に触れた次第。著者の作品イメージが変わりました。凄く面白かったです。 ジャンルはSF+パニック小説から始まり、その原因に触れる一端として、チンパンジーの霊長類研究やAIの研究まで範囲を広げていく流れ。知識的欲求が降り注いでくる物語なので文庫600ページの厚い本ですが飽きさせない読書でした。ただ万人向けではなく人により好みが分れるかと思います。人によっては論文に近しい固い物語を読まされているように感じてしまうかもしれません。 ざっくり傾向を他作品で例えると、軽いライト向けの鯨統一郎『邪馬台国はどこですか?』のような著者なりの新説を伝える中、描き方はジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』の様に帰結するイメージ。ちょっと誇大かもしれませんが、少しでも興味を持ってもらえればと。そんな新説をミステリとして体験できた内容でした。 人類の進化はこのように起きたのではないか。今のなお人間の無意識に起きている反応はこういう事でないか。神話の物語は実はこういう事ではないのか。などなど、著者なりの説とそれを面白く体験できる物語が素晴らしかったです。 読んだら誰かに話したくなる。そんなエピソードでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書はあらすじや帯に書かれている通り、内容や展開の情報を伝える事が禁止されている作品。その為それ以外の所で感想をお伝えです。
まず本書はマニア向けの作品です。 ミステリをある程度読み慣れており、普通の謎では満足できず、新しい刺激を求めている人向け。話の整合性や多少展開がおかしくても気にせず、とにかく変なものが読みたい人に刺さります。一方、ミステリはあまり読んでいなくて普段は一般文芸をたしなみ、なんだか話題になっているからと著者の事を知らずに本書をいきなり手に取るような方には印象が悪い作品になるので要注意です。 本書を手に取った切っ掛けは『2024年度 本格ミステリベスト10』にて1位になった事からです。このランキングは一般文芸以上にミステリに重きが置かれるランキングです。著者の前作の『名探偵のいけにえ』に続いて1位な訳です。これは気になります。『名探偵のいけにえ』は白井智之作品の中では少し著者成分がマイルドで一般の方にも楽しめるような整ったミステリでした。続く本書はどういう傾向になったのかなと思いながらの読書でしたが、それは早々にいつもの白井智之作品と感じた次第(笑)。むしろ前作で抑圧されていたんじゃないかと思うぐらい、本書では大爆発しています。倫理感が欠如しており、ミステリの為なら何でも活用してしまおうという意気込みをとても感じた作品でした。※誉め言葉です。 万人には薦められないのですが、個性的なものが体験できる記憶に残る一冊でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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児童書向けの本格ミステリ。
子供達にミステリを読ませたい。推理を楽しんでもらいたい。そういうコンセプトの作品です。その思いに対する作品の品質はとても高いものでした。 扱うミステリは学校のプールに放たれた大量の金魚の謎。誰が何のために?というもので、小学生の3人組がこの謎に挑みます。 登場人物達のやりとりや、学校内での出来事が最後の謎解きに向けての手掛かりとして活用されています。本書には『読者への挑戦』があり、ちゃんと謎解きの推理が楽しめる作りになっているのが見事でした。 読み終わってみれば無駄がないエピソードで作られており、手がかりの散りばめ方がとてもうまく、児童に読ませる謎解き本としての完成度は高いものでした。他、表紙の主人公が海外ミステリを読んでおり、その作品紹介が巻末に掲載されています。この巻末紹介で次の読書へ繋げようとするなど、ミステリの読者層を広げようとする気持ちをとても感じました。イラストも豊富で絵柄はとても可愛いです。本書のイラストとデザイン力はとても高い為、手に取りやすいでしょう。この作品によって小学生読者が増えると良いなと思いました。 ~~~ さて、以下は点数とは関係ない、個人的に気になる所です。 推理をする作品としての問題と解答はよかったのですが、問題自体の魅力が弱いのが難点に感じました。児童向けという事を理由に軽い謎では読後の心に残る作品にはなり辛いです。簡単な問題を解いたようなお話なので、シリーズとしてもっと続きが読みたい!という気持ちにはならなかったのが正直な気持ち。何か作品を象徴するぐらいのインパクトがあれば良いなと思いました。 小学校内の部活動のような設定について。 ミステリクラブとして学校の中に自由に使える部室がある設定ですが、小学校でこの設定は違和感です。中学生の部活動なら納得ですが、この設定は奇妙に映りました。もともと中学生のお話から小学校向けへと変わってしまったのでしょうか。あと、たまたまだと思いますがこの設定は青崎有吾の『体育館の殺人』という有名所と被ってしまっています。探偵役の名前も"天馬"で同じなので気になりました。 値段設定について。 これは版元の悩みになりますが、子供にミステリを楽しませたい気持ちは分かりますが、値段設定が1,210円(税込)というのは悩ましい価格設定です。講談社青い鳥文庫、角川つばさ文庫、集英社みらい文庫などの700-800円代の子供の為の価格設定を考えると、本書はちょっと商売っ気があります。児童書ミステリは他にも手ごろな価格で存在する中、本書がどこまで広がるのか気になる次第。可愛く今風なデザインにして本屋大賞にノミネートされるなど作品作りと営業販促は強そうなので本書がどのような立ち位置に行くのか今後の展開に興味を持った次第でした。 |
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冤罪事件をテーマとした社会派ミステリー。
これはとても圧巻の作品でした。「面白い」以上に「凄い」と思ったのが率直な感想。緻密なストーリー、社会的なテーマ、そしてミステリー仕立ての構成。完成度の高さに唸らされます。素晴らしい作品でした。 読後にシリーズ作品で2作目である事を知りましたが問題なく楽しめました。2作目から読んだ為、どの人物に対しても先入観なく疑いながらの読書。序盤は行方不明者の人探しから始まり、23年前に起きた事件に関係してくるのですが、ここら辺はまだ序の口。どこに着地するのか先が見えない展開が続き500ページ近い本なのに一気に読めた次第。1作目、3作目も上下巻の凄いボリュームで躊躇しますが早めに追っ掛けようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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音楽教室を舞台としたスパイもの。主人公は音楽著作権連盟の職員。教室での状況を調べるべく上司の命令により潜入していく流れ。
スパイ小説としての立ち位置は、戦略や頭脳を描く作品ではなく、スパイとなった主人公の苦悩や成長を描く作品となります。 物語は実在した音楽教室著作権裁判をモチーフにしている内容であり、音楽教室から使用楽曲の著作権料を徴収を示した出来事は数年前ニュースになりましたので記憶に新しい出来事です。それぞれの名称を微妙にずらして書かれていますのでわかる人にはわかる内容です。 主人公が若手の社員で上司の指示に従いスパイになるというバランス感覚が良かったです。 まだ会社に染まり切っておらず、多くの悩みを抱え、社会と自身の葛藤を抱えており、考え方や行動も若さゆえの動きとして描かれていました。明かせない素性や幼少のトラウマなど心が深海の闇に染まっている姿が描かれているのもよいですし、人や音楽との出会いにより気持ちが揺れ動く様子も良かったです。 音楽小説ですが演奏シーンがまったく描かれずスキップされているのが印象的でした。そこが描きたい所ではないという事でしょう。 著作権についてのそれぞれの正義の考え、会社としての考え、個人としての考え、なかなかと拾うポイントが多く楽しみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有名な故に積読していた一冊。何となく内容を知ってしまっていた為読んでいなかったのですが、これはちゃんと読んで正解の一冊でした。
冒頭からの爆発事件がいきなりクライマックスかの如く盛り上がり、そこからどんどん謎や怪しい人物達が登場して先が気になる読書でした。キャラクターが本当によくて、主人公はもちろん周辺に出てくる人物達も人としてどんな姿かリアルに存在する感覚がとてもよい。 ミステリーとしての構造も世界の広げ方が想定外の所へ行くのも素晴らしいし、ちゃんと収束させる物語なのが見事。30年ぐらい前の作品ですが今読んでも楽しめます。 扱う内容がちょっと重めのハードボイルドなので好みが分かれそうな作品ではありますが優れた作品である事は確か。江戸川乱歩賞の作品群の中でも飛びぬけているなと感じます。とても面白かったです。 |
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世の中のレビューに多くある通り、後半までは凄く面白くて夢中で楽しい読書でした。
その分、期待させておいての結末が非常に物足りなさを感じたというのが正直な気持ちです。 文庫版の著者あとがきにて、本書は悲劇と喜劇を描いたとありました。 登場人物達は悪い人達ばかりで、悪い方向へ人生が転落していく悲劇の物語は抜群に面白かったです。社会問題を描きつつも暗くなり過ぎない雰囲気のバランスが巧く、とても読み易い読書でした。群像劇として複数視点の物語を楽しみ、物語が交差していく楽しみもあります。ただほんと最後の最後の喜劇としての描き方が好みに合わなかった次第でした。喜劇が悪いわけではなく雰囲気の描き方がどうも馴染めなくて読後感が残念な気持ちでした。ほんと最後だけが悩ましい所で、作品は面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
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ドローンを用いた災害救助小説。
障害者×災害救助×ドローンを用いつつ、「無理」という言葉の重みや前向きな行動に光を灯すような作品でした。面白かったです。 物語の舞台は地下に建設された障害者支援都市。ITを用いたインフラが整う空間で、目が見えない・耳が聞こえないと言った人々が暮らしやすい都市開発が行われている場所。そこで巨大地震が発生し「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障害をもった人が取り残されてしまったという災害救助の作品です。どこにいるか声が出せないのでわからない、呼びかけても聞こえない、地下に閉じ込められている為見つけても目が見えないで出口へ誘導もできないという救助が不可能状況です。 さて最初に小言を言いますが本書の宣伝方法について。 帯や書店ポップやSNSにて「どんでん返し」「2度読みミステリー」と言った言葉でその手の読者を釣ろうとPRしていますがそういう作品ではないです。誤解を与えますし、それを期待して読むとまったく関係ないので不当な評価を得てしまう事でしょう。版元の宣伝方法には正直疑問です。発売前後の世の中のレビューはそういう感想が溢れていますが、そういう宣伝活動がされたんだなと察してしまう次第でして悪い印象ですね。作品に罪はないのでちょっと思う次第でした。 改めますが本書は災害救助の物語でミステリー要素は極小。そしてもう一つのテーマが主人公の内面に存在する「無理」という言葉。「無理だと思ったらそこが限界」という言葉に捕らわれた主人公の物語です。障害者のできる・できない。救助のできる・できない。難しい局面やそこでのあきらめない気持ちなど考え方がとても読ませられました。 欲をいうと災害小説なのでもっと緊迫した状況やパニック感が欲しかったです。遠隔でドローンを用いて救助する人達の視点なので読者は安全地帯から見守る読書となります。その為危機感が描き辛いのでドキドキ感が弱くなってしまう。救助小説のラストは緊迫感や絶望感が深いほどエンディングの開放感が輝くのですが、それが本書は弱い為ちょっと物足りなさを得ました。 広告に釣られて予想と違う作品でしたが、「無理」の言葉の考え方には得るものがありましたし読後感も良い作品で面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2023年度の日本推理作家協会賞受賞作。
異なる登場人物達のエピソードが平行して進む群像劇。 それぞれの物語が社会的なテーマを扱っており、読み進めて行く事で社会問題を知る流れとなっています。 扱う物語が人によっては心苦しい物語の読書となる為、好みが分れる作品。ただそういった心苦しい複数の物語を群像劇として絡み合わせて作られた本書のドラマは圧巻でした。率直な感想はよくこういう物語を思いついて描けるなという小説家の凄さを感じた次第です。 暗いテーマなのですが先が気になり目が離せない読書。作品の面白さとして☆8。個人的な好みとして-1という事でこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2019年のCWA受賞作。
以前から気になってはいましたが海外もので580ページのボリュームに躊躇して積読状態でした。 読み始めてみると躊躇していた気持ちは杞憂でした。翻訳はとても読み易く、冒頭からは猟奇殺人模様が描かれ一気に作品に惹きこまれました。 読み終わってみるとページ数の多さは納得のボリューム。各キャラクターの魅力や警察組織模様、飽きさせない連続殺人、社会的な問題、などなど魅力的な要素が豊富であり、かつそれらが絡み合った本作の物語は圧巻の内容でした。海外ミステリの警察ものとしては個人的にオススメ。ただ注意事項としては陰鬱な事件内容なのでそういうのが苦手な方はご注意を。最後の終わり方も好みで満足でした。本書単体で完成されているのですがシリーズとして続きもあるのですね。どうなるのだろう。気になるシリーズになりました。 |
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凄く好みの作品で楽しい読書でした。
ライトノベルやアニメ系が好きなミステリ読者にオススメです。 まず特徴的な要素として【事件の手掛かりは、すべて太字で示される。】という作りになっており、ミステリーや推理小説は難しいという読者に対して読み所が提示されています。なんでこんなネタ要素が太字?と思う箇所も、後の推理でちゃんと活用されるのが面白いです。新しい読者獲得の実験にも感じました。 こういう仕掛けがある事から本書は推理ものに特化している印象が強いのですが、実の所謎解きよりも学園ラブコメのハーレムものとして楽しい雰囲気を味わいました。 例えば事件現場にプールがあるのもミステリで必要な要素としてではなく、水着を描きたかったのだろうなと感じる次第でして、ミステリよりも学園ラブコメの楽しさが強い。でもちゃんと仕掛けは施されている塩梅です。ここら辺は読者の好みが分かれる所なのでラノベやアニメ系が好きな方にお薦めというワケです。 キャラクターがどれも可愛く明るくてよい雰囲気。読後感も気持ちよいので次巻も楽しみです。 |
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前作はYoutube配信で話題になり動画で視聴。小説として読むのは今作が初めてです。
書店でとても盛り上がっていたので手に取りました。前作のようなちょっとした仕掛け本程度の内容だろうと期待はしていなかったのですが、読み終わってみるとミステリの仕掛けを豊富に練りこんだ作品で驚きました。 前作『変な家』は間取りから家の謎に迫る物語であり、本作も同じ傾向を感じさせる"絵"から読み解く謎解き物語となります。 ただこれはほんの序盤の導入だけで、その後は絵を用いながら奇妙な物語が展開されます。面白い所は読者の興味を惹きつける語りや構成。複雑ではない物語だけどなんかおかしいバランスがとても良く、スラスラと読めて先が気になる読書でした。一方あえて悪い表現で本書をとらえると小説としての中身が軽く、文章で表現するのではなく絵や挿絵で補完した小説とも言えてしまいます。ですので人により何を評価するかで好みが分かれるかと思いました。個人的には物語が面白く読めましたし、多くの読者がミステリを味わえる作品という事でとてもアリに感じました。 表紙とタイトルをもっと硬派な社会派ミステリの装丁にすると中身もそのような印象を受けるぐらいちゃんとミステリをしていました。面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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