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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数215件
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96年に書かれたコンピューターウィルスを用いたサイバーミステリー。
MS-DOSやパソコン通信時代が描かれており、その時代ですでに人工知能を巧く絡めた作品となっているのが驚きでした。 90-00年代のパソコン好きやエンジニアの方にとても楽しめる作品となっております。ミステリーやサスペンス的な要素や構成については今読んでも十分に面白く、コンピューターやウィルスの進化の目的は今読んでも違和感がないのが素晴らしいです。著者の当時からのコンピューターの知識量が垣間見れる作品でした。 MS-DOSやフロッピー、モデムなど、機材や環境については古い単語である事は否めませんが、それを気にしなければコンピューターのベーシックな要素で物語が進むため、ネットワークやコンピューターの原理など初心者エンジニアの方にはそういう面でも楽しめそうです。 ウィルスは何故広まるのか、どこへ到達するのか、終盤の1つの解については現代のAIとの関りの考え方と違和感のない道を示しています。著者の先見性に驚かされました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2024年の本屋大賞超発掘本に選ばれたきっかけで読書。
1994年の作品であり、その年代を考えればやはり先駆け的存在の1つだと感じます。思い返せば90-00年代ごろこのネタが流行りました。そのままの単語が使われている映画も頭によぎるぐらいです。とはいえ本書のテーマが分かってしまっても先が気になる面白さの作品である事は間違いありませんでした。 読者はワープロで打たれた54個の文書ファイルを読み進めるという構成です。 複数名によって書かれた文書を読み進めるうちに奇妙な違和感が起きてきて、序盤は誰かの勘違い?こういう事なのでは?と思ったらそんなの想定済みですよと言わんばかりにその考えをボツにする展開が発生し、この作品はホラーなのか?SFなのか?一体これはどういう事なのだ?と先が気になる物語で楽しみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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メフィスト賞受賞の『線は、僕を描く』の続編。前作は必読。本作は完全に非ミステリの青春小説です。
前作同様、文章の表現力が凄まじく素晴らしい読書体験でした。 物語の好みとしては良い面と悪い面があり、ちょっと悩ましい方が強かったのが正直な気持ちです。 1作目はサクセスストーリーの展開でゴールが綺麗に決まっていた為、その続きとなる本書はどう始まるのだろうと手に取りました。あらすじにありますが序盤は主人公の苦悩が描かれたスタートでした。進路に悩み優柔不断な主人公の姿が描かれます。正直な気持ちとして、読んでいてあまり良い気持ちではありませんでした。ウジウジした主人公の姿を見て、一作目のあの姿はどこに行ったんだと思う次第。きっと1作目で盛り上がったゴールを描いたので、一度その雰囲気をリセットする為に主人公を逆境に立たせたんだろうという構成の都合を感じてしまった次第。1作目と2作目の物語の繋がりが弱く、急に逆境だったから変に感じたのかもしれません。その感覚だった為、終盤近くまではどんよりした気持ちを感じながらの読書でした。1作目のような水墨画での新しい知的好奇心は得づらく刺激を変える事が少ない為、読者は最初に得た気分のまま読み進めるんじゃないかなと思いました。 と、気になる事はありましたが、その苦悩が伝わるぐらい文章表現が巧い。関わる人のちょっとした全てを語らないセリフや想いなど、読書体験としては素晴らしかったです。好みと合わない点は多いのですが作品の水準はとても高いです。逆境からスタートである構成も相まって終盤の力強いシーンは圧巻でした。揮毫会や水墨画家達の大団円も見事で映像化が期待されます。 主人公の決断は好みと違うものだったり、ラストから感じる画家たちとの関係性もなんだかピンと来ないので、個人的には物語は1作目で完結な気持ちでした。 |
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まずは小言を。帯や宣伝コピーが意図しない内容で過剰です。
「反転」やら「伏線」やらそういうのを期待して読むと思っていたのと違うという感想になりますのでご注意を。 売る為とはいえ作品が不当な評価に繋がるので残念な気持ちになりました。作品に罪はないので評価はちゃんと別扱いです。 正しい作品のテーマをお伝えすると、本書は身体醜形障害という自分が醜いと思い込んでしまう精神障害を扱った青春ミステリです。SNSの誹謗中傷により自分がブスで醜いと思い込んで悩む姿が描かれています。アイドル活用やSNSや動画配信など、顔を出す活動の現代的な要素を絡めていきます。 物語は大御所ミステリ作家の遺稿を読むという作中作の構成であり、遺稿では何を伝えたいのかが読者に考えさせる謎となります。ミステリーとして上記のテーマをちゃんと絡めた内容であったのが見事でした。 帯で感じるような一発ネタの仕掛けを楽しむ作品ではなく、障害を含むルッキズムをテーマとして扱い、それがどのようなものかを読者に伝え、悩みや希望ある物語へ変化していきます。読後感は良く面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『僕が愛したすべての君へ』/『君を愛したひとりの僕へ』のスピンオフ作品。
別の並行世界を描いた作品であり、SFやミステリ成分は特になく物語の補完的位置づけです。 3作品を通して一番印象に残り良かったポイントは、別の並行世界の幸せを描いた事だと思いました。 世の中にこの手の作品は豊富にありますが、これ系の愛読者には隠しテーマが存在します。それは並行世界の恋愛もの作品もしくは恋愛アドベンチャーゲームにおいて、選ばれなかった側はどうなるのかという事です。作品によっては選ばれなかった側の不幸を描いたり、メタ要素で読者やプレイヤーを悩ませる作品の方が世に多い中、全てをハッピーエンドのように描いているのは中々の特徴的な要素だと思いました。著者の優しさかと感じます。 小説2作品と映画も観てから本書を読みました。描かれなかった所を優しい雰囲気で補間された内容です。新たな展開というのは無いのでシリーズ作品が気に入った人向けの作品。本書だけや最初に読むのはオススメしません。 3作どれも面白く物語を堪能しました。良かったです。 |
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本書はあらすじや帯に書かれている通り、内容や展開の情報を伝える事が禁止されている作品。その為それ以外の所で感想をお伝えです。
まず本書はマニア向けの作品です。 ミステリをある程度読み慣れており、普通の謎では満足できず、新しい刺激を求めている人向け。話の整合性や多少展開がおかしくても気にせず、とにかく変なものが読みたい人に刺さります。一方、ミステリはあまり読んでいなくて普段は一般文芸をたしなみ、なんだか話題になっているからと著者の事を知らずに本書をいきなり手に取るような方には印象が悪い作品になるので要注意です。 本書を手に取った切っ掛けは『2024年度 本格ミステリベスト10』にて1位になった事からです。このランキングは一般文芸以上にミステリに重きが置かれるランキングです。著者の前作の『名探偵のいけにえ』に続いて1位な訳です。これは気になります。『名探偵のいけにえ』は白井智之作品の中では少し著者成分がマイルドで一般の方にも楽しめるような整ったミステリでした。続く本書はどういう傾向になったのかなと思いながらの読書でしたが、それは早々にいつもの白井智之作品と感じた次第(笑)。むしろ前作で抑圧されていたんじゃないかと思うぐらい、本書では大爆発しています。倫理感が欠如しており、ミステリの為なら何でも活用してしまおうという意気込みをとても感じた作品でした。※誉め言葉です。 万人には薦められないのですが、個性的なものが体験できる記憶に残る一冊でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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児童書向けの本格ミステリ。
子供達にミステリを読ませたい。推理を楽しんでもらいたい。そういうコンセプトの作品です。その思いに対する作品の品質はとても高いものでした。 扱うミステリは学校のプールに放たれた大量の金魚の謎。誰が何のために?というもので、小学生の3人組がこの謎に挑みます。 登場人物達のやりとりや、学校内での出来事が最後の謎解きに向けての手掛かりとして活用されています。本書には『読者への挑戦』があり、ちゃんと謎解きの推理が楽しめる作りになっているのが見事でした。 読み終わってみれば無駄がないエピソードで作られており、手がかりの散りばめ方がとてもうまく、児童に読ませる謎解き本としての完成度は高いものでした。他、表紙の主人公が海外ミステリを読んでおり、その作品紹介が巻末に掲載されています。この巻末紹介で次の読書へ繋げようとするなど、ミステリの読者層を広げようとする気持ちをとても感じました。イラストも豊富で絵柄はとても可愛いです。本書のイラストとデザイン力はとても高い為、手に取りやすいでしょう。この作品によって小学生読者が増えると良いなと思いました。 ~~~ さて、以下は点数とは関係ない、個人的に気になる所です。 推理をする作品としての問題と解答はよかったのですが、問題自体の魅力が弱いのが難点に感じました。児童向けという事を理由に軽い謎では読後の心に残る作品にはなり辛いです。簡単な問題を解いたようなお話なので、シリーズとしてもっと続きが読みたい!という気持ちにはならなかったのが正直な気持ち。何か作品を象徴するぐらいのインパクトがあれば良いなと思いました。 小学校内の部活動のような設定について。 ミステリクラブとして学校の中に自由に使える部室がある設定ですが、小学校でこの設定は違和感です。中学生の部活動なら納得ですが、この設定は奇妙に映りました。もともと中学生のお話から小学校向けへと変わってしまったのでしょうか。あと、たまたまだと思いますがこの設定は青崎有吾の『体育館の殺人』という有名所と被ってしまっています。探偵役の名前も"天馬"で同じなので気になりました。 値段設定について。 これは版元の悩みになりますが、子供にミステリを楽しませたい気持ちは分かりますが、値段設定が1,210円(税込)というのは悩ましい価格設定です。講談社青い鳥文庫、角川つばさ文庫、集英社みらい文庫などの700-800円代の子供の為の価格設定を考えると、本書はちょっと商売っ気があります。児童書ミステリは他にも手ごろな価格で存在する中、本書がどこまで広がるのか気になる次第。可愛く今風なデザインにして本屋大賞にノミネートされるなど作品作りと営業販促は強そうなので本書がどのような立ち位置に行くのか今後の展開に興味を持った次第でした。 |
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音楽教室を舞台としたスパイもの。主人公は音楽著作権連盟の職員。教室での状況を調べるべく上司の命令により潜入していく流れ。
スパイ小説としての立ち位置は、戦略や頭脳を描く作品ではなく、スパイとなった主人公の苦悩や成長を描く作品となります。 物語は実在した音楽教室著作権裁判をモチーフにしている内容であり、音楽教室から使用楽曲の著作権料を徴収を示した出来事は数年前ニュースになりましたので記憶に新しい出来事です。それぞれの名称を微妙にずらして書かれていますのでわかる人にはわかる内容です。 主人公が若手の社員で上司の指示に従いスパイになるというバランス感覚が良かったです。 まだ会社に染まり切っておらず、多くの悩みを抱え、社会と自身の葛藤を抱えており、考え方や行動も若さゆえの動きとして描かれていました。明かせない素性や幼少のトラウマなど心が深海の闇に染まっている姿が描かれているのもよいですし、人や音楽との出会いにより気持ちが揺れ動く様子も良かったです。 音楽小説ですが演奏シーンがまったく描かれずスキップされているのが印象的でした。そこが描きたい所ではないという事でしょう。 著作権についてのそれぞれの正義の考え、会社としての考え、個人としての考え、なかなかと拾うポイントが多く楽しみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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世の中のレビューに多くある通り、後半までは凄く面白くて夢中で楽しい読書でした。
その分、期待させておいての結末が非常に物足りなさを感じたというのが正直な気持ちです。 文庫版の著者あとがきにて、本書は悲劇と喜劇を描いたとありました。 登場人物達は悪い人達ばかりで、悪い方向へ人生が転落していく悲劇の物語は抜群に面白かったです。社会問題を描きつつも暗くなり過ぎない雰囲気のバランスが巧く、とても読み易い読書でした。群像劇として複数視点の物語を楽しみ、物語が交差していく楽しみもあります。ただほんと最後の最後の喜劇としての描き方が好みに合わなかった次第でした。喜劇が悪いわけではなく雰囲気の描き方がどうも馴染めなくて読後感が残念な気持ちでした。ほんと最後だけが悩ましい所で、作品は面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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ドローンを用いた災害救助小説。
障害者×災害救助×ドローンを用いつつ、「無理」という言葉の重みや前向きな行動に光を灯すような作品でした。面白かったです。 物語の舞台は地下に建設された障害者支援都市。ITを用いたインフラが整う空間で、目が見えない・耳が聞こえないと言った人々が暮らしやすい都市開発が行われている場所。そこで巨大地震が発生し「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障害をもった人が取り残されてしまったという災害救助の作品です。どこにいるか声が出せないのでわからない、呼びかけても聞こえない、地下に閉じ込められている為見つけても目が見えないで出口へ誘導もできないという救助が不可能状況です。 さて最初に小言を言いますが本書の宣伝方法について。 帯や書店ポップやSNSにて「どんでん返し」「2度読みミステリー」と言った言葉でその手の読者を釣ろうとPRしていますがそういう作品ではないです。誤解を与えますし、それを期待して読むとまったく関係ないので不当な評価を得てしまう事でしょう。版元の宣伝方法には正直疑問です。発売前後の世の中のレビューはそういう感想が溢れていますが、そういう宣伝活動がされたんだなと察してしまう次第でして悪い印象ですね。作品に罪はないのでちょっと思う次第でした。 改めますが本書は災害救助の物語でミステリー要素は極小。そしてもう一つのテーマが主人公の内面に存在する「無理」という言葉。「無理だと思ったらそこが限界」という言葉に捕らわれた主人公の物語です。障害者のできる・できない。救助のできる・できない。難しい局面やそこでのあきらめない気持ちなど考え方がとても読ませられました。 欲をいうと災害小説なのでもっと緊迫した状況やパニック感が欲しかったです。遠隔でドローンを用いて救助する人達の視点なので読者は安全地帯から見守る読書となります。その為危機感が描き辛いのでドキドキ感が弱くなってしまう。救助小説のラストは緊迫感や絶望感が深いほどエンディングの開放感が輝くのですが、それが本書は弱い為ちょっと物足りなさを得ました。 広告に釣られて予想と違う作品でしたが、「無理」の言葉の考え方には得るものがありましたし読後感も良い作品で面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2023年度の日本推理作家協会賞受賞作。
異なる登場人物達のエピソードが平行して進む群像劇。 それぞれの物語が社会的なテーマを扱っており、読み進めて行く事で社会問題を知る流れとなっています。 扱う物語が人によっては心苦しい物語の読書となる為、好みが分れる作品。ただそういった心苦しい複数の物語を群像劇として絡み合わせて作られた本書のドラマは圧巻でした。率直な感想はよくこういう物語を思いついて描けるなという小説家の凄さを感じた次第です。 暗いテーマなのですが先が気になり目が離せない読書。作品の面白さとして☆8。個人的な好みとして-1という事でこの点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作はYoutube配信で話題になり動画で視聴。小説として読むのは今作が初めてです。
書店でとても盛り上がっていたので手に取りました。前作のようなちょっとした仕掛け本程度の内容だろうと期待はしていなかったのですが、読み終わってみるとミステリの仕掛けを豊富に練りこんだ作品で驚きました。 前作『変な家』は間取りから家の謎に迫る物語であり、本作も同じ傾向を感じさせる"絵"から読み解く謎解き物語となります。 ただこれはほんの序盤の導入だけで、その後は絵を用いながら奇妙な物語が展開されます。面白い所は読者の興味を惹きつける語りや構成。複雑ではない物語だけどなんかおかしいバランスがとても良く、スラスラと読めて先が気になる読書でした。一方あえて悪い表現で本書をとらえると小説としての中身が軽く、文章で表現するのではなく絵や挿絵で補完した小説とも言えてしまいます。ですので人により何を評価するかで好みが分かれるかと思いました。個人的には物語が面白く読めましたし、多くの読者がミステリを味わえる作品という事でとてもアリに感じました。 表紙とタイトルをもっと硬派な社会派ミステリの装丁にすると中身もそのような印象を受けるぐらいちゃんとミステリをしていました。面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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昨年の乱歩賞作家の2作目。前作が好みだったので手に取りました。
表紙の雰囲気が似ていますが、前作とは違うお話なので本書単体で楽しめます。 今回の物語の序盤は孤島を舞台にした倒叙ミステリ。 復讐計画を企てる犯人視点。ただし自分の意図しない殺人事件が発生。別の殺人者がいる状況。さらには第2、第3の殺人が起き、被害者は決まって前の殺人の第一発見者が襲われる――。というミステリ。 90年代の新本格模様をとても感じた序盤でした。孤島の連続殺人でワクワクしながらの読書。第一発見者が決まって襲われるという問題も面白く、ミステリとして古き良き要素を入れつつ、現代的なテーマも盛り込んだ作品となっております。 事件を魅せつつも本書で感じたのは人の業(カルマ)を感じました。業なんて単語は本書には出てきていないのですが、善悪の行いによって未来の自分へ廻るという物語を感じた次第。タイトルにある、ちぎれた鎖はこういう悪しき連鎖を断ち切り希望を見出す光を意味している気がしました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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江戸川乱歩賞受賞の『北緯43度のコールドケース』に続くシリーズ2作目。
1作目は読書必須。主人公の背景、警察組織での人間関係など前作を踏まえた深みがでてくる内容となっております。 世の中多くの警察小説がありますが、本作によって他とは違う警察小説の特徴が表れたと感じました。 一番に感じるのは"女性のキャリア"のテーマが根幹に感じます。1作目、2作目、両方とも通じてます。 博士号を持つ主人公。教授や研究者を目指すのではなく警察になった背景。男性社会での女性の立場。作品内に一本の筋としてしっかり入っており、伝えたい想いをとても感じました。ミステリーの描き方についても事件が主体ではなく、人を描く肉付けとして事件を加えているという印象でした。はっきりとした特徴が見えるので他の警察小説とは違う新鮮な感じでとても面白い読書でした。 面白い作品なのですが、一言で売り文句になるような言葉が見つからないのがもどかしいです。"警察小説"、"女性のキャリアもの"が良いと言っても読者へ響かないでしょう。勝手な解釈ですが、読者へ分かりやすいPRワードとして、爆弾や数学という言葉で印象付けを狙ったのかなと感じました。タイトル『数学の女王』については巧いワードではなかったのではと感じる所でして、ここだけが勿体ないかなと思いました。学長を強烈に印象付けすると効果でそうですが。。。詳しくはネタバレ側で。 シリーズ作品として今後も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ2作目は『ポセイドン・アドベンチャー』のオマージュ作品となる豪華客船を舞台としたパニック小説。
1作目未読でも本書単体で楽しめます。相変わらずの面白さでありました。 ただ期待し過ぎてしまったからなのか、1作目が素晴らしかったからなのか、やっている事は前作と同じような展開な為に新しい刺激があまり感じられなかったのが正直な気持ちです。 登場人物達の役割、悪い人、現場に詳しい人、男女、年配の方、といった配役の設計が前回と似ています。船長や国会議員の上の存在が原因となる事故模様。テンプレート感が良い意味では安心して楽しめるのですが、悪い意味では同じものを読んだ感覚となってしまう次第。 事故原因となった船長や議員についても、私欲や自己保身による理不尽な内容なので読んでいて気分が悪かったです。前作の『炎の塔』では経営者側のバックグラウンドや役割がちゃんと描かれていたので、それぞれがちゃんと仕事をしている上での事故という多少の納得があったのですが、今作はそれが感じられなかったので理不尽な気持ちになる読書となった次第。ただこれは著者あとがきにある海難事故における事例が示す通り理不尽なものをあえて描いているのかもしれません。 台風接近の海洋事故の脱出もので主人公は消防士。という条件で本書が描かれたのは中々凄いなと感じました。消防士が主人公なら敵は炎となりますが、台風で大雨のシチュエーションな訳で火事の見せ所が描き辛いのです。そんなわけで船内の救護活動や迷路のような脱出劇、炎が生まれる小道具など、作り方の面白さの方が目に留まりました。定期的に船の中で起きている物語だと忘れさせないように、船内が傾いている状況が描かれたり、群像劇として外の台風や海洋の様子を描いたりなど、小説家の巧さを感じます。 前作からの期待値が高すぎてしまった故の感想となってしまいましたが面白さは確かです。三部作ということで次巻も楽しみです。 |
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いじめ、サイコパス、自殺教唆を用いながらの歪んた恋を描いた作品。
MW文庫なので読者ターゲットは中高生。ここの世代にとても刺さりそうな作品だと感じました。 そして本書の面白い所は、深読み系の作品である事。考察が好きな人は尚良し。 読書後に実はこういう話だったのではないか?と深読みさせるように作られています。その為、読んだ人同士で感想を言い合ったり、中高生なら学校で友達に紹介し合うでしょうし、SNSでそれぞれの解釈や感想が広がる面白さを感じました。 この手が好きだったとしても、扱う内容がいじめや自殺なのでその内容の陰鬱さで好みが分れる事でしょう。私自身もこの点は好みではないです。深読みしてまで読み返したくなる内容ではないのが難点。ただ作品作りとしては面白く、所々ハッとさせられるセリフなど著者の想いが感じられるのも良かったです。 どう解釈したかはネタバレで。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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白骨死体と共に埋められていた600万もの価値がある将棋の名駒。何故埋められたのか。白骨死体は誰なのか。将棋の駒を手がかりに事件の行方を追う。という始まり。
とても惹きこまれた読書で一気読みでした。 ただ正直な気持ちとして、終盤に関しては物足りなさで終わった読後感でした。 あらすじにある何故高価な駒が死体と共に埋められたのかという謎は終盤まで明されず、途中何度か読者に考えさせる演出がある為、そこにすごい仕掛けでもあるのかなと期待をさせるのですが、そういうものではなかったので物足りなく感じた次第。 とはいえ重厚な人間ドラマとしてはとても堪能しました。将棋の事がわからないでも本書は大丈夫です。 またあえて変わった視点で本書の構造を見ると、将棋の駒が主人公であり、駒(美術品)を取り巻く人や歴史を読者に感じさせる美術ミステリ模様をも感じました。 点数の好みとしては、重苦しく悲劇で嫌な気持ちになる事が多かった為この点数で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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剣持麗子シリーズ2作目。
本書からでも問題ないですが、面白さは前作同様なので1作目から読書推奨です。 主人公は新キャラの美馬玉子。前作の主人公の剣持麗子は同じ事務所の先輩の立ち位置でした。 タイトルにある倒産をテーマとした事件。 転職の度に元いた会社が倒産する経理の女性が存在しており、何か不正行為が行われているのではないかという始まり。倒産の連続から『連続殺(法人)事件』と表現したり、リストラを『首切り事件』と表したりと経営話の中で表現するセンスが面白い。ミステリーを装っていますが、本書から受ける印象は弁護士のお仕事小説。キャラクターも魅力的であり、ドラマを見ているような面白さでした。 新キャラ美馬玉子の視点にする事で弁護士の依頼の調査を何も分からない読者に近づけているのが巧いなと思いました。前作の剣持麗子は完璧で最強過ぎて読者が置いてけぼりになっていましたが今回はそんなことありません。さらに剣持麗子が本当に困った時の頼れる先輩として描かれており、異なる表現で魅力を伝えているのが凄いと感じます。 弁護士事務所の人々や世の中の背後に存在する悪意など、シリーズものとしての魅力が増やされた一冊でした。今後も楽しみです。 |
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学園ラブコメ×本格ミステリ。
2巻目が2022年度の本格ミステリベスト10で紹介されていたのがきっかけで興味が沸きました。まずは1巻目の本書を読書。 見た目や雰囲気から読書前はライトノベル特有のキャラものかなと感じていたのですが、本書はしっかりと推理と謎解きのミステリでした。 本書の特徴は事件の犯人が先にわかってしまう事。ただし何故そうなのか過程がわからないという系統のミステリです。 この系統のジャンル名がわからないので他作品で補足しますと、麻耶雄嵩『神様ゲーム』や森川智喜『スノーホワイト』を感じる内容でした。決定事項となる解答が先にあり、何故そうなのかを推理する構造です。 表紙の女の子、明神凛音は学園内のトラブルの犯人が解ってしまう能力者。人に説明ができず理解してもらえない彼女。そこに弁護士志望の男子生徒が彼女を理解し学園内のトラブルを解決していくという流れ。 まずミステリとして面白い所は答えを見つける流れではなく、彼女が無意識化でどのように推理したのかを推測する構造。神様の啓示のように突然答えを知るのではなく、彼女が無意識化で拾っている情報を元に推理が行われている為、彼女がどんな行動をしていたのか、そしてそこで何を見たのかが推理の手がかりとなるわけです。一風変わった推理模様が楽しめました。 学園ものとしては読書していて気持ちが良い雰囲気が良かったです。陰鬱な事件模様はありません。読んでいて学園青春模様が楽しめました。男子生徒のまっすぐな志が好感。弁護士は依頼人を信じ代弁するという想いがよく描かれており、ヒロインとの関り方がミステリとしてもラブコメとしてもよい距離感で好みでした。表紙絵や挿絵もラブコメとしてのヒロインが印象的に引き立ってて好みです。 まずは1巻目という事でこの先の物語に期待です。 |
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昆虫に絡めたミステリの連作短編集。
個人的に昆虫に馴染みがなかったので食指が動かなかったのですが、推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した作品である事から興味を持って手に取りました。 シリーズ2作目である事を読後に知りましたが、本書から読んで問題ありません。 それぞれの短編はどれもハズレがなく面白い物語。派手なミステリではなく、昆虫の生態や特性と人間模様が巧く絡められた内容であり、驚きではなく巧いなぁと染み渡るような上質なミステリの作りを感じた次第。 さらに短編の配置が巧く、物語を読み進むにつれて探偵役の魞沢泉の人間味が感じられるのがよかったです。最初はとぼけている弱弱しいというか印象に残らないようなキャラだったのが、徐々に最終話に行くにつれて内面に宿している想いを感じられるようになりました。 昆虫に興味がなくても楽しめる、非常に質の高い文学的なミステリでした。 |
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