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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数271件
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カー三作目。
これまで「皇帝の~」「緑の~」とカーらしくないといわれる作品を選択していましたので、「らしい作品」は初めてになります。 前知識としては「密室」「オカルト」があり、二階堂黎人の「人狼城の恐怖」っぽいのを想像していましたが・・・ 正直想像していたものとはかなり異なりました。 しかしカーの魅力が存分に味わえる作品とのレビューが多く、以後カーの作品を読む時は「これがカーの魅力」と言う事を前提に読んでみたいと思います。 「連続殺人事件」というタイトルは作品の内容に合っていないように思え、正直このようなありきたりなタイトルである事が勿体無い気がしています。 英語タイトルには「自殺」と明記されているわけですから・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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ガリレオシリーズの長編2作目。
「献身」の次は「救済」 両作共に、犯人のキャラがかなり突出している倒叙型で、ハウダニットを楽しむ作品。 「献身」も「救済」も意味的には「相手のために~」というどこか似た意味合いを持っています。そして主語は何れも犯人。 この作品の場合、ラストにタイトルの意味が分かる凝った作りになっていますが、これを「救済」と言っていいのか若干腑に落ちない感じはします。 また「聖女」とは「神聖な事績を成し遂げた女性」または「慈愛に満ちた女性」という意味があるようですが、これは犯人のイメージとはかなり違いますね。 でもやはり長編がいいですね。 内海、草薙が異なる方向から事件を追いますが、何れも事件解決に大活躍。 湯川以上に存在感がありました。この作品の見所の一つでもあります。この展開はやはり長編でしか読めないですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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リーダビリティの高さはデビュー作からして健在です。
しかも「競馬(生産)界」という、興味のない人間には全く縁遠い世界を舞台としながらも、(恐らく)無知な読み手を置いてけぼりにはしていない。 主人公の女性がズブの競馬素人という設定がうまく機能しているように思います。 その一方で、競馬好きとされる人達に対しても、くどくて鬱陶しい記述にはなっていないです。 私はオグリキャップの時代からの競馬ファンでその方面には相当明るいですが全くその辺りのストレスを感じること無く読めました。 真相の方も競馬ファンなら容易に想像がつくといったモノでもありませんし、最後の二転三転も読み応えがありました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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この作品では「お客様相談室」となっているリストラ部屋だが、今のご時世どこの会社にもそのような部署やそういう扱いを受けている社員さんが山のようにいるはずである。
自分のキャリアが無視され畑違いの部署に配属、嫌になって自分から辞めると言い出すように仕向ける。 会社も(辞めさせようと)必死、でもこっちはもっと必死だわな。大人の責任ってもんがある。会社の思惑なんて知ったこっちゃない。 我慢して、新天地でこつこつと或いは懸命に取り組んだとしてもフィードバックゼロ。つまり社内における存在価値ゼロ。やってられない。 まぁ実際のところ辞めたら負け(20代は除く)だけどそれじゃ物語にならない。 「会社や仕事なんかのために死ぬな」 勿論そうだけど、そんな上手くそして格好良くはいかないよ。 実際リアリティはないんだけど、上手くコメディドラマ風にまとめてそこまで現実と乖離してるようには感じさせないですね。 経営陣の時代錯誤も甚だしいマヌケなところなんて、どこの企業でも同じでしょう。この作品のような同族会社なんて特にね。 半沢直樹の場合は、東大、早稲田、慶応卒で尚且つその中の競争に勝ち残ったものにしか行き着けない世界での話だけど、この作品の場合はサラリーマンなら大半の人間が遅かれ早かれ経験できますよ。脅しじゃないよ。 おでんの具の喩え話は面白かったなぁ。 主役になりたいのか脇役に徹するのが向いているのか。 人間誰しも適材適所、または得意分野ってもんがある。 見栄や欲より「やりたい事」 結局そういう選択をした奴の方が人生成功してる気がする。 こういう事をしっかり考えた上で就職活動ってやるべきなんですけどね。 学生の時って気づかないんだよねー。 辛い思いをしているサラリーマン諸氏へ。 神の御加護があらんことを。負けるな!!ファイト!! |
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【ネタバレかも!?】
(3件の連絡あり)[?]
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古典部シリーズ第三弾となるはずであった作品らしい。
この事は読了後に知ったわけですが、なる程序盤は古典部シリーズそのものですし、登場人物のキャラもかなりかぶってますよね。 古典部シリーズにしても小市民シリーズにしても、この作者の「日常の謎」モノが、私には少々軽すぎて「7点の壁」がありました。 この作品が、これまで読んだ作品と違うと感じるのは、その背景にユーゴスラビア紛争がある事が大きいのかもしれません。 多民族国家であるユーゴスラビアを構成する(5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を有する)6つの共和国の内、マーヤの祖国はどこかが最大の謎解きテーマになります。 伏線を拾い集めそれを推理するスタイルがこれまでの作品にないミステリらしさがあって好きですね。 無論謎解きだけではなくて、作品全体を通したテーマがあるのですが、 何事にも打ち込むことのなかった視点人物となる男性が本気になって円の外の世界に目を向けるようになる姿であるとか、この年齢にありがちな「自分は万能」という幻想が崩壊していく様子が描かれていたりします。 登場人物達の年齢に則したテーマといえ好意的というか感情移入しやすい描写ができているように思いました。 視点人物の男性を中心とした二人の女性との淡い恋心というか想いのすれ違いも描かれています。 この作品に恋愛描写など必要ないと思いますが、二人の女性の対応が非常に大人であり、作品をピリッと引き締めていますね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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御手洗シリーズの最初の短篇集である。
「挨拶」とあるように、このシリーズ主人公である御手洗潔のキャラ補間の役割を果たす作品といえます。 この作品を読んでいるかいないかで、このシリーズの楽しみ方の幅に差が出てくる様に思えます。 例えば、御手洗と石岡がコーヒーを飲まない理由なんかがそうですね。 即ち、御手洗シリーズファンであれば読んでおくべき作品と言えるのではないでしょうか。 4本の短篇が収録された短編集ですが、暗号あり、読者への挑戦状あり、ほろっとさせる作品もありとなかなか楽しめます。 個人的に好きなのは「数字錠」かな。 この「数字錠」の存在だけで星1つ増量。 そういうレベル。 「疾走する死者」はその大掛かりな仕掛けから最も御大らしい作品と言えますが、後の作品に似たトリックを使用した作品がありますね。 個人的に短篇集は読み応えを感じる事ができないので好きではないのですが、この4本は比較的内容が濃いです。 |
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子供向けレーベルとして発刊されるもノベライズされたという事で大人でも楽しめる作品という事なのだろう。
小中学生向けにしてはかなり内容が残酷で推奨できる書物でないことは確か。 それに最後真相が明らかになってもまず「はぁ?」だろう。小中学生にこの面白さが伝わるとは到底思えない。 「エッチな事」という表現。さすがに作者も気を使ったのか、そこは子供向けレーベルらしい。 殺害トリックなどに主眼が置かれた作品ではないと思いますが、それ自体はトリックと呼べるシロモノではないです。 麻耶雄嵩らしい作品、まぁプチ麻耶雄嵩ですが、それでも子供には残酷で難しく、大人にはやはり物足りない、そんな作品かなと思います。 探偵役が言う事が必ずしも正しいという保証はないというのが「隻眼の少女」であり、その対極にあたるのがメルカトル鮎シリーズ。 「不可謬にして無謬」なメルさんに相当するのが、この作品における鈴木太郎。 「神様なんているわけ無いじゃん」などという余計な邪推はこの作品には不要なはず。というかしてはいけないと思う。 神様の存在なんて信じる必要はないけど、鈴木太郎を仮にメルカトル鮎の幼少期の姿だと思って読めばいいのだ。 何の抵抗もなくすんなり受け入れられる。麻耶作品に絶対神はいるのだ。 麻耶雄嵩の作品が初めてだという人には出きっこないけど・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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古典部シリーズの短篇集。
過去のシリーズ作品と時系列が前後していたので最初戸惑いましたが、どうやら古典部の最初の一年間を扱っている模様。 ただ一話完結の短篇集とはいえ、この作品は過去のシリーズ3作を読み終えてから読んだ方がいいですね。 何故なら、過去3作品において十分に表現できていなかった人間関係、特に奉太郎のえるに対する気持ちの変化を上手く補完する役割を果たしていると思えるからです。 見どころはやはり前作「クドリャフカの順番」のその後の物語となる後半の3作品かな。 作品タイトルにもなっている最終話「遠まわりする雛」の、「遠まわり」そして「雛」ってのに、えるの現状と未来、それに対する彼女の思いや考え方がよく込められている気がします。 遠回しで明確な描写はないとはいえ、えるの奉太郎に対する気持ちが表面化してきているように感じました。 女性にしかできない愛情表現ですね。男性がこれやると顰蹙を買いそうです。 一方、奉太郎のえるに対する気持ちは読み手にも明確にされました。 ラストの二人のやりとり「寒くなってきたな」「いいえ。もう春です」 まだまだ二人はズレているようですが、ただ、やはりと言うか、えるが一歩先を進んでいるようですねぇ。 相変わらず推理の対象となる謎は地味であり、ミステリ的にはイマイチです。 まぁ地味な謎を長々とやられるよりは、今作のような短篇集の方がいいかな。 ただ次回作への期待は持てる終わり方でした。勿論恋愛ものとしてですが・・・ |
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大ヒットしたドラマ「半沢直樹」は、元銀行マン原作という事で、全てとは言いませんが銀行の「黒い」部分に間してはリアリティを感じながら拝聴していました。
この作品は、テレビ畑に籍を置いていた作者が、数字至上主義のテレビ局に対して一石を投じる作品になっています。 やっぱり内部告発って感じで面白いです。 汚職に関するタレコミのテープを数回見ただけで「使える」と確信しテレビで流してしまった女編集者。 「使える」とは数字が狙えるという事だろう。裏付けもろくに取らず明らかなスタンドプレイ。 内容が内容だけに、何かあった時どうなるかは大人なら分かりそうなもの。 それでも私なら出来ると思えるその自信。正直大嫌いなタイプだ。自業自得だよ。 それにしても、女編集者が好きに作成した映像がプロデューサーの了承を得ず電波に乗ってしまうという・・・ 結果を出しているんで誰も文句が言えないって事?それとも「報道の自由」ってヤツですか? ある程度分かってはいたものの、マスコミの傍若無人っぷりに怒りすら覚えました。 一番問題なのは、それを鵜呑みにしてしまう我々視聴者の浅はかさなのかも知れませんけど・・・ 結末としては、発端となった事件の解決がなされておらず、刺身のツマみたいな扱いで終わっている点が少々消化不良を感じさせますが、作者の主眼はそんなとこにはなかったのでしょう。 数字に取り憑かれた人間の末路、壊れていく過程の描写がある意味恐ろしかったです。 良質のサスペンス。 |
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物語の時代背景として、女性の社会的地位が低かった時代というのがあります。
謎を追うのは、探偵でも刑事でもなくそんな普通の女性です。 彼女には人脈も情報収集力もないはずで、贔屓目に見ても推理とは言えないはずが、難題とも言える核心に徐々に近づいていくという・・・ それでいて最後犯人が真相を告白しない訳ですから、彼女の推理はぴったしカンカンだったって事なんでしょう。 納得出来ないという意見が多いのも頷けます。 でもこの作品は、戦後アメリカの占領下において逞しく生き抜いてきた日本人女性の悲哀を描いた作品だと思います。 そんな女達の物語なんだからこれでいいんですよ。探偵や刑事が割り込んできてよい物語ではないと思うんです。 重きが置かれるのはホワイダニットなのですから。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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予め犯人もその動機も明らかにされていますし、複雑な人間関係に関しても同様。
ミステリではなく人間ドラマだといえますね。 テーマはタイトルにもある通り「使命」 主人公、医師、看護婦、刑事そして犯人、皆それぞれ使命を持ち、それを信じ、それを遂行するために懸命に行動する。 東野作品にしては、プロットにヒネリがないですが、テーマを考えるとそんな必要はないかも知れないですね。徹底したブロ意識の描写です。 人間ドラマを象徴しているのが、犯人が選択した最後の行動。 小説としての面白味よりも人間味を感じさせた作者の徹底ぶりに感心させられました。 犯人に同情した読者も多かったのではとも思えます。 ただ、爆弾事件という事で展開にスピード感がある分か、作品テーマの割に重厚感を感じられなかったのが難点。 また、東野氏の人間ドラマにしては、中途半端に読後感がいいのも物足りなさを感じてしまう原因かも。 あと、最後主人公夕紀の少し歪んだ「使命」が氷解されるのですが・・・ こんな事があった後でも、私なら母親と医師を祝福し迎え入れる事は出来ないだろうと思いました。 多分圧倒的少数派なのかも知れないが・・・ |
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相変わらず複雑なプロットだが、他の作品のような「こねくり回しすぎだろ」という印象はないです。
この作品の主人公は、探偵法月綸太郎というよりも、被害者の父親である山倉史朗という人物であると言っていいでしょう。 タイトルにある「一」は、一人称叙述形式の「一」であり、山倉史朗の一人称視点で語られます。 単なる誘拐事件ではなく、その裏には山倉史朗を中心とした複雑な人間模様が背景としてあります。 その複雑な人間関係、少なくとも山倉史朗本人には初めっから全て分かっています。 読者には物語の進行に従い徐々に明らかになっていきますが、それにより何故山倉史朗がこれ程までに必死なのかも分かってきます。 登場人物は多くはないのですが、その殆どの人物を一度は容疑者へと浮かび上がらせるプロット、そして殆どの登場人物が不幸になるという悲劇、そして最終的に山倉史朗にとっては最も悲惨であろうと思われる結末が待ち構えてちます。これぞ「悲劇」 その山倉史朗の視点で語られる物語は全編緊迫感に満ちています。引き込まれます。 いつものような、綸太郎の悶々とした苦悩、二転三転の推理に付き合わされイライラする事がありません。テンポもいいです。 山倉史朗以外の視点で語られたなら、こんな緊迫感は絶対に生まれていませんからね。 というか、この作品は法月綸太郎シリーズですが、倫太郎がいなくても十分良質の誘拐モノとして成り立っています。寧ろ邪魔かも。 でも皮肉な事に、個人的にこの作者の作品では一番かな。 |
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