■スポンサードリンク
梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数271件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
正直「あれっ!?」って思えます。
高野和明さんって事で手にしたこの本でしたが、もしかして新境地??って思える程、美しい物語でした。 坂上仁志さんという方との共著だったんですね。ストーリーは坂上さんの方? ミステリ色は薄くて、寧ろ恋愛小説って言ってしまってもよいでしょう。 主人公は、他人の夢の中に入る事ができる女性心理カウンセラー、ファンタジーな世界観です。 相手の(夢の中を覗かれる)男性が刑事さんってのも理にかなってるのかもしれません。 私の夢なんて覗き見された日にゃ、嫁なんか発狂しそうですもんね。「離婚よ~」ってな感じに・・・ 冗談はさておき、この作品にいたく感動したのは、こういう超能力的な力を扱っていながら、リアリティの枠を外さずに描き切っている点です。 たまには、こんな作品もいいなぁって心から思えるあったかい作品。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
折原一さんといえば叙述トリック。
勿論筋は通っています。よくもまぁこんなプロットを思いついたものだと感心させられます。 なのに、さほど驚け無いのは何故だろう。 上手く説明できないのですが「立体的じゃない」気がするんですよね。 隠蔽されている事実は複数あるのですが、どれも同列で絡み合っていない。 隠蔽された事実を補強するための隠蔽とか、そういう構成になっていない。 また伏線とおぼしき記述もなかったような気がしています。 「複雑なのに不親切」って事だと思うんですが、例えば「十角館」なんかだと、その時点で「あっ!やられた」て気付くじゃないですか。 この作品にはそれがないんですよ。 全てを出し惜しみし過ぎているが故に、種明かしに読者が追従していけない。 読み終えて、何だったんだろうって色々調べて整理して初めて「あ~凄いじゃん」っていう。 個人的に、こういうのってどうなのって思います。 凄い作品だとは思いますが、「十角館」「ハサミ」「殺戮」「慟哭」辺りとは、同列の評価はできないって感じです。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
シリーズ前作「さよならドビュッシー」と比べるとミステリ色はほぼ皆無で音楽色を前面に打ち出しています。
というか、最早音楽青春小説と言ってしまっていいかもしれません。 主人公のヴァイオリンへの情熱と成長を楽しむ作品だと言えますが、何せ音大生という事で価値観やらが世間一般とは少し乖離している危険性をはらんでいます。 しかし、主人公は才能こそあれ金欠という現実的な苦悩を抱えており一般にも非常に感情移入しやすい設定になっています。 そんな彼に、音楽の素晴らしさ、そして演奏する事の喜び、高見を目指して奮闘する音大生が抱える苦悩とその実情を代弁させています。 「このミス」のための「さよなら~」であり、作者が本当に描きたかったのはこれだったのかなという印象です。 ミステリーの部分に関しては、殺人事件が起こる訳でもなく、楽器消失の謎を明らかにするという程度のものなので、フーダニットというよりホワイダニット。 犯人が施したトリックも最早トリックと呼べるものでもなく「何故」の部分で読者を驚かせるしくみになっていますね。 このシリーズには、探偵役として岬さんが登場しますが、この作品に関しては、主人公である晶にその大部分を委ねた方が美しかったような気がします。 わたしは「さよなら~」より、こちらの方が好きですね。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
扱われる作品テーマといい、それをここまで広げて描き切ることといい、これぞ宮部みゆきという作品。
模倣犯のような疲れるような長さもない、火車と違ってそれなりに話に起伏があって退屈さを感じない。 ならこれがベストかと聞かれるとノーなのだ。やっぱ模倣犯や火車の方がいいのだ。 何故だろう?不思議だ。宮部みゆきの社会派作品は、読了時にどっぷり疲れていないと読んだ気がしないのかも知れない。 現代社会の毒を上手く描いています。 人間の持つ怒りや嫉妬、不安、不満、孤独や憎しみなどなど、そんな「暗」の部分の根深さ、恐ろしさ。 誰しもが身に覚えのあるそんな感情の爆発が産む恐怖、そんな「名もなき毒」を誰しもが持っているという事なのだろう。 原田いずみのようなモンスターは確かにいますね。特に最近の若い世代に多い気がします。(ゴメンネ、若い人) 携帯やゲーム機の普及といった時代背景も大いに影響しているようには思いますが、我々親世代にも責任の一端はあると感じています。 「普通に生きることが立派」この言葉、かなりグッと来ましたね。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
タイトルの意味を考えると、作中にもあった「人間誰しも平等ではない」ってな感じの事が作品テーマなのかなとも思えるのですが、
読んだ感じでは、最先端技術に頼り切りの現代社会へのアンチテーゼな気がしました。 タイトルとテーマが合っていないのではという違和感を感じずにおれません。 そして、どちらが主眼だったとしても、何れにしても主張として「弱い」気がしましたね。 題材は面白いと思います。 先見の明のある作者の事ですから、DNA登録なんてリアリティがありますし、まるでノンフィクションであるかのように読めます。 読み始めは、先が知りたくてページをめくる手が止まらないのです。 しかし読了後に読み応えは余り感じないという・・・ この作者の作品によくある傾向なのですが、外れじゃない、でも当たりじゃないっていう一冊。 導入部で読者をグッと引き付けるのですが、謎解きの部分が物足りない・・・って感じです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ユニークなタイトルと装丁から容易に想像できるように文体は軽く、テンポもよくリーダビリティも高い。
しかし、扱っているテーマは重く、作品としての骨格は意外としっかりしています。 刑法39条を扱う作品にしては、やや軽い印象は拭えませんが・・・ また終盤のどんでん返しの連続と、ミステリーとしての構成も非常に練れているように思います。 しかし、何故か中盤以降バイオレンスになってしまっている。 正直我慢できなかった。作者の狙いが全く理解できなかった。何の効果があったのだろうかと疑問に思う。 ここでマイナス3ポイントです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
0章をほぼ物語全体の真ん中に配置、44章から始まり、カウントダウンがゼロに達した時に悲劇とも言うべき事件が起こります。
前半に事件が発生するまでの経緯、後半に被害者側の原因追求・糾弾という構成になっています。 事件が発生するまでの経緯は「風が吹けば桶屋が儲かる」テイスト。 そこに、日常誰もが犯しているであろう些細なモラル・マナー違反を、ドミノ倒しの如く絡み合わせています。 まぁ殆どが「可能性の低い因果関係を無理矢理つなげて出来たこじつけの理論・言いぐさ」なのですが・・・ やや冗長でしょうか。 もう少し登場人物を減らしたところで、作者の言わんとする事は十分伝わったと思いますが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
勧善懲悪モノで面白いのですが、私はこの作品の続編である「オレたち花のバブル組」を先に読んでいました。
ネタバレがある訳ではないので、どちらを先に読んでも不都合はないのですが、 もし順序通り、この「入行組」を先に読んでいたなら、「面白かった!!是非続編も読みたい」となったと思います。 やはり続編の方が、敵は巨悪で影響力も広範囲、手口も凝っており、主人公・半沢にとってはより強大な障壁となります。 今作の敵には、多少人間味を感じる事も出来ましたし、この程度なら結構いるレベルの悪だったかなと思います。 それなら、最後の半沢の要求の方がよっぽどえげつないです。 本作単品の評価とは無関係にせねばなりませんが、やはり続編を読んだ後で読むと物足りないですね。 この作品では、入行前の就活風景から描かれています。 その狭き門っぷりはかなりのものなのですが、個人的には、この入行前の熾烈な競争をもっと読みたかったなぁ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
阪急電車今津線を舞台にした連作短編集で、各章のタイトルは駅名になっており、10ページ程度の長さで非常に読みやすくなっています。
誰もが、電車の中で一度は見た事のあるような、また勝手に観察して勝手に想像していそうな、そんな些細な出来事をベースにしていて、それが各章数珠つなぎにリンクしています。 伊坂幸太郎さんの作品によく見る手法ですが、普遍的である分、そこに必然性や共感を感じる事ができました。 物語を動かすのが女性ばかりだなと思っていたら作者は女性なんですね。 まぁ確かに男性は、事なかれ主義というか、見て見ぬふりする人が多そうですもんね。 中々リアリティがあるように思いました。 また、行きの電車で描かれた出来事が、戻りの電車で進行しているのが面白いですね。 主人公達は全て前向きな人物ばかりだったので、それは進展・成長した形で戻ってきます。 ストレスを感じる事なく読めますね。 当然なんですが、乗客一人一人に物語があるんだと実感しました。 ミステリ要素は皆無ですが、たまにはこういう作品もいいですね。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
作者の真骨頂とも言える理系ネタものであり、クローン技術がテーマになっています。
20年も前の作品であり、当時と比べて現在では既に絵空事ではなくなっているのですが、これを賞味期限切れなどと評価するのはおかしいだろう。 この作品は、技術的な部分をどうこう言っているのではなく、進歩する科学・医療に対する、人間の倫理や尊厳といったものを主眼としています。 そして、そのタブーに足を踏み入れてしまった者達の葛藤や苦悩が描かれた作品です。 鞠子と双葉という二人の女性が主人公で、章毎に交互に登場する構成になっています。 視点の切り替わりは、非常に先が気になるタイミングに設定されており、読み手の「読む意欲」を掻き立て非常に効果的です。 二人は、お互いにその存在を知る事なく、それぞれがそれぞれの方法で真相に近づいていきます。 真相に対する近づき度合いもその時時で両者異なるのですが、それだけでなく、ワンステップ先に進めるための手掛かりも二人で異なっているのです。 違った切り口からのトライが、交互に描かれるのです。 おかげで、読み手には全く息をつく暇がありません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|