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タカタソン さんのレビュー一覧

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レビュー数19

全19件 1~19 1/1ページ

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No.19: 8人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

熱く痺れて1番

究極の警察小説と謳われている本作。当然ながら読む前からハ-ドルが相当高く上がっているなか、読後の感想は、放心状態というか、こんなに熱く痺れて、すげぇ本だと思ってしまいました。

まず何と言っても登場人物一人一人の描写がリアルで印象的でちょっとしか登場しなくても、まるでそこに居るように息遣いが感じられるほど生きていて、また主人公の三上はヤバいです。
警察小説でありながら、主人公は事件を追う刑事ではなく、マスコミ対応の広報官であり、それが俯瞰的な事件の見方や警察内の動き、情報公開の質など、全く新しい。
それに加え、主人公三上は美人妻との子ども、その子が自分に似てしまった為の顔面コンプレックスで家出をしてしまい、その捜索に警察の力に頼ってしまった事から上司のキャリアの手駒にされ、家庭では家出した娘を心配する妻との会話、その主人公が置かれている立場があまりに読んでてつらく、これは以上は読めないって思ってしまいました。
それでも、仕事を全うする主人公三上と、題名でもある昭和64年の事件「64」とD県警の置かれた状況、そして新たな事件と、中盤以降は怒涛のような立て続けの展開の中にある緊張感と思わず目頭が熱くなる展開で止まりません。

クライマックスもほんのそこいらの警察小説にあるような展開・仕掛けとは訳がちがって、全てはそこに繋げる為の序章だと思ってしまうぐらいに、感銘を受ける。

数ある警察小説のなかで、これだけの視点で描かれたものは読んだが事がなく、究極かどうかはわからないが、今1番に薦める警察小説であるのは間違いない。




64(ロクヨン) 上 (文春文庫)
横山秀夫64(ロクヨン) についてのレビュー
No.18: 7人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

驚愕の快作スリラ-

この手のミステリ-が国内でも評判が高いのは意外な気がする。結果的に残虐で悲惨なところがあり、ただやはりこれだけの振り切れたスト-リ-展開は他になくそこが衝撃的で驚愕をもたらし、どうしても人に薦めたくなる。こういうミステリ-が評価されるのは、なかなかのもんだと思う。

題名にある通り、女アレックスの物語であり、三部構成で誘拐・監禁から始まるのだが、これが部ごとに全く違うスト-リ-展開とアレックスの見え方が変わり、特に2部の終わりは物語を一刀両断する締め方に驚く。
最後に事件の真相とアレックスが分かるのだが、はたして読み手はアレックスに何を思うのか、これだけ主人公に対する印象や感情が引っ繰り返させるのは感動すらする。

心が引き裂かれそうな話ではあるが、事件を追う背が小学生なみの刑事のカミ-ユ(なんか、この名前も日本人には馴染みがある?)のちょっとした正義が救いになっている。
アレックスの為に泣くのか。
その女アレックス (文春文庫)
ピエール・ルメートルその女アレックス についてのレビュー
No.17: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

完全に期待を超えていた

ピルグリムは全3巻で1・2・3とあるが、これは1つの物語を上・中・下と分けているだけなので、ピルグリム1の評価といっても物語の序盤1/3の評価となるので非常に難しいが、正直期待以上で驚きです。

物語は元諜報員の主人公の一人称の語りで進む。引退した主人公が再度ひとりで諜報をする事になったのか、また主人公が追う相手「サラセン」の生い立ちから野望、テロ計画の進行が語られ、お互い名前をすてた同士の追う者と追われる者の1対1の物語。追う相手の「サラセン」の人物造形が非常よく、また中東の話でもあるので、まさに今の旬といえるかもしれない。信じるモノの為に、また正す為に命をかけ、守り、果たす事が正義なのか、またその為に残虐になれるのか、読む手が止まりません。

1を読み終えた後、まだ残り2巻ある事が本当に幸福に感じる1巻です。
ピルグリム〔1〕 名前のない男たち (ハヤカワ文庫 NV ヘ)
テリー・ヘイズピルグリム についてのレビュー
No.16: 9人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

誰かに何かを伝えたくなる

ここ最近で印象に残った面白い小説は何かと聞かれれば本作を推かもしれない。それぐらい面白かったし、何より読んでてこれほど良く考えられてるなぁと感じるのもそうそうない。

物語は、傭兵がコンゴのジャングル奥地である民族グル-プ殲滅のミッションと日本での薬学学生の父親の謎と残されたメッセ-ジにより製薬していく話が交互に展開していく。前半の傭兵パートはサバイバルホラ-といった感じで、民族グル-プ殲滅と未知なる生物発見時は即射殺というミッションにドキドキ。中盤以降は、そういう展開になっていくの?と若干テンションは下がるものの、日本での製薬パートとのバランスで読む手を止められず。

人知を超えた存在と、一国の為、または世界の為の判断が合衆国大統領という構図はキモで、判断が最高責任者のちょっとした人格によっても方向づけられる様は、変にリアル感があり、怖さがある。

また今作は、歴史的な解釈により賛否両論がすごいが、そんなにのめり込まず客観的に読めば日本人の自虐だったりアメリカへの感情だったり、特に気にはならなかった。逆に、いつも日本人は正しく優等生で、大統領は世界を救うヒ-ロ-みたいな作品や映画は腐るほどあるわけだから、多少逆の表現があっても良いと思うけど。

評価が1点か10点の極端な作品は、世にも珍しいわけだから是非読んでみてください。最高に面白いのにメッセ-ジ性は高いです。
ジェノサイド
高野和明ジェノサイド についてのレビュー
No.15: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

衝撃的な経済ミステリ-小説の大傑作

面白すぎて、読み止められませんでした。一気読み。

経済小説って敬遠されがちだが、池井戸氏(「オレたちバブル入行組」とか「下町ロケット」とか)のおかげでだいぶ敷居が下がっていると思うので、是非その面白さに衝撃を受けてほしい。経済小説というよりも人間ドラマであるしミステリ-でもある。

題目でもあるとおり、潰れそうな会社の買収による再生によって利益をあげるハゲタカビジネスの話だが、ニュ-ス等での伝え方の問題もあるが恐らくあまり良いイメ-ジは無いと思う。ただ本作を読めば、必ずしもそうではない事が分かる。一族で放漫経営して湯水のように自分の欲に金を使い、破綻寸前になった会社を救おうと思いますか?

また色んな立場の登場人物が出てきて、こぎみ良いテンポで展開し、自己中な経営者にイライラし、買収出来るのかハラハラし、会社を建て直せるのかドキドキし、銀行の身勝手にモヤモヤし、最高の1冊でした。

ハゲタカ〈上〉
真山仁ハゲタカ についてのレビュー
No.14: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

重ねるごとに奥深く

誰にでも、誰が何と言おうとこの作品だけはってあると思うが、自分にとってはこのシリ-ズがまさしくそれで、それ以前まで推理小説しか読んで無かった自分がこのシリ-ズで色んなジャンルの小説があり、楽しさがある事を教えてくれた。

今作は記念すべき10作目であり、区切りというか節目作。警官を殺すと予告した出所したばかりの大男を追っているうちに別の事件にも顔を突っ込んでいく鮫島。偏見だろうが構わないが、ホント無駄な言いまわしも無く必要限の言葉でこれだけ緊張感と興奮を味わえるのは感動。

また、テ-マが本題でもある通り「絆」で、色んな人間関係の繋がりの物語が悲しくも突き刺さる。全てのエピソードに結論が出なくてもいいと思う。あくまで「絆」の物語であるから。

絆回廊 新宿鮫Ⅹ
大沢在昌絆回廊 新宿鮫Ⅹ についてのレビュー
No.13: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

かっけええ

決して日本では難しい戦争国しか書けない兵隊・スナイパ-・暗殺者モノ等の中において、本作は間違い無くトップクラスの面白さ。

主人公は海兵を退役した老人でライフルを愛する元凄腕スナイパ-のボブ。まず彼が国を震撼させるような大統領暗殺事件の犯人にされるのだが、この騙され方、騙す理由がすごい。元々暗殺阻止の為に、スナイパ-としての視点から犯人像を想定し逮捕に協力するのだが、まるでケネディ暗殺みたいに緻密な作戦計算で、罠にハマったと分かった後は当然知る者として命を狙われる。なぜ彼が選らばれたのか、なぜその計画が必要だったのかは後々分かるが、良く考えられている。

主人公が国でも有名な殺人者になり、生きている事で狙われる事になった後が本領発揮。あの手、この手で追い詰められるが、その一歩も二歩も上手を行く主人公ボブがカッコよすぎる。老兵であっても、女を愛し、堕落したFBI捜査官を助手に特殊部隊相手に闘いを挑む。

最後のオチまで気が利いてて10点つけてもいいくらいだが、ライフルに関する愛着だけは理解できない。というか日本人であればそこは理解してはいけない気がするので-1点。
極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)
スティーヴン・ハンター極大射程 についてのレビュー
No.12:
(9pt)

事実が創作を上回る

この著者はノンフィクション作家であるが読めばそんな事どうでもいい。実際に存在する山野井夫婦の過酷な登山と夫婦愛に時間を忘れる。自分は山に登らないが、「なぜ山に登るのか」って有名な問いかけの答えがこの本にあると思う。ただ、単に登山が好きで誰も登った事が無い山や壁を登りたいというその想いが、著者の特徴なのか淡々と書かれていて、過酷な状況であろうと生きる事を諦めず、凍傷で手足の指を失おうとも好きな山に登って失ったんだからって前向きに考えるこの夫婦に感動。

特にこの奥さんは凄い。手の指を全部失って、足の指もほとんどなくなっても前向き。しかもトップクライマ-。無欲なこの夫婦に乾杯。
凍 (新潮文庫)
沢木耕太郎 についてのレビュー
No.11: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

心に突き刺す生・性。

この小説を読んだのは実は2回目で、やはり面白いし警察小説であるが恋愛小説でもあり、この時代の弱い女性・子育て主婦の立場を訴えている。RIKOシリ-ズは元々、性別を超えた恋愛の形がキ-ワ-ドとしてあり、今作でも単純な形ではなく複雑な要因の中で存在させている。(そのひとつの形が小説「聖なる黒夜」として存在しており、これもとんでもない傑作で10点評価を付けてます。)

この小説はとても単純な表現で表せない。登場人物もヤクザ、薬漬けの売春婦、被害者主婦と関係を持つ刑事、不倫で未婚の母の主人公だったり。ただ人の本質、欲望・ねたみ・性・叫びが描かれていてが描写で理解できない部分もあると思う。それでも、乗り越えるだけの超越した登場人物やスト-リ-展開は他に類を見ない。

それと書かれた時代背景もあるとは思うが、著者の母性に関する子育ては女だけの事ではないという叫びが聞こえた。
聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫)
柴田よしき聖母の深き淵 についてのレビュー
No.10: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

美味救魂

見出しは、自分がよく行く書店で飾られていた著者サインの言葉。

殺し屋専門のダイナ-(軽食レストラン?)で巻き起こるウェイトレスとなった主人公カナコと殺し屋達とのエピソ-ドはどれも秀逸で最高。

すべては、そのレストラン内だけで起こる話で究極のハンバ-ガ-と思い出食を作るコックのボンベロとその美食を求めて集う超個性的な殺し屋と巻き込まれるカナコ。

残酷な描写はあるが、それを乗り越える殺し屋達の魅力がまるでマンガを読んでいるようで、それでいて殺し屋達の宿命がまた悲しくも読ませる。
殺し屋は、それぞれ得意技を持っていて、(たとえば爆弾とか玩具とか毒とか)物語が進み、新しい殺し屋が登場するたびに楽しみになる。

究極の料理と殺し屋とミスマッチさがインパクトを増大させ、忘れられない作品になった。

本書を読んだ後、どの殺し屋が好きだった?と聞きあえるのも特徴かもしれない。

([ひ]2-1)ダイナー (ポプラ文庫 日本文学)
平山夢明ダイナー についてのレビュー
No.9: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

希少すぎる! 山岳アクションの超傑作

山岳冒険小説自体、なかなか数が無いのにホントに面白いとなると数えるくらいしか無いかもしれない。
この本は間違いなくその面白いと言える1冊。

山岳冒険アクションではホワイトアウト(真保 祐一著)が有名だが、ホワイトアウトが面白いと思った方は、間違いなく本作も面白いと思うはず。

ただ、本作は初めから山でのアクションバリバリという訳ではなく、主人公の幼少期、警察のSP期、そこで主人公の生い立ちや波瀾を含んで山岳警備隊期に流れ込んでいき、読むのを止められないほどの手に汗握る興奮を味わえる。

また、山岳アクションだと普通、冬の山で寒さに凍えながら人間の限界を超えて生き抜くという展開が多いのだが、この本作は夏過ぎの9月で台風上陸時の山での話で、それを考えただけでも面白そうだと思いませんか?

山や山岳警備隊の厳しさ、そして主人公一人で戦い抜くというより、山岳警備隊の仲間との絆も熱く
読後感も良いので、是が非でも山岳アクションの傑作を読んでほしい。

ひとつ、残念なのは、本作はハルキ文庫から出版されているのだが、ぜんぜん書店に本が置いていない。
傑作なのにもったい無さ過ぎる。



狼は瞑らない (ハルキ文庫)
樋口明雄狼は瞑らない についてのレビュー
No.8: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

ディ-ヴァ-の最高傑作か?

リンカ-ンライムシリ-ズの2弾目。
1弾目のボ-ンコレクタ-とはおもむきが変わって初めは多少違和感を感じる。
それは、ボ-ンコレクタ-が連続殺人犯を微小な証拠を集め科学捜査で犯人を追い詰めていく話だったのに対して、2弾目のコフィンダンサ-は暗殺者から事件証言者を守ることと暗殺者のコフィンダンサ-を捕まえる話なので、展開が弱いかなって思ったけど、はい、大間違いでした。

暗殺者と主人公ライムの裏の裏まで読んで手を打つその計算高さ、緻密さの頭脳戦をここまで表現出来るのは他に類を見ないし、これほどの緊張感と興奮は言葉では言い表せないほどすばらしい。

また、傭兵のケイルがすばらしすぎる。その徹底したスナイパ-ぶりや内に秘めた上官でもある亡き父親との会話も、心情の変化もキャラが立ちすぎている。

前作同様に、展開が速くあっという間で、既に満足という次元でも更に最後にこれでもかっていう驚きのどんでん返しがあって、もう世界最高峰と言っていいでしょう。

コフィン・ダンサー〈上〉 (文春文庫)
No.7: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

本を読むことが楽しみの時間になる。

この3は2の直後から始まるので、少なくても2は読んでおいたほうがよいでしょう。
・・・というか、3を読む人は1・2を読んでハマった人だとは思いますが。

まず3部作と通して、それぞれ本ごとに観点の違う話・展開、キャラクタ-の魅力等クオリティの高さと
面白さは期待以上で、楽しい時間を堪能出来た。

3は特に面白く、主人公のリスベットが入院しているところから始まり、動けないリスベットに罪をなすりつけて精神病院に送りつけようとする公安組織と助けようとする主人公ミカエル達の攻防が繰り広げられる。
また、別に盛り上げるエピソ-ドとしてミレニアムの編集長エリカが大手新聞社の編集長へ引き抜かれる話があって、色々な問題を抱えた中に、なぜかそこにリスベットが絡んでくる。
エリカはミカエルの友達(愛人)であって、それに嫉妬していたリスベットはどうするのか?

ラ-ソンはこの3部作しか読めないので、是非堪能しましょう。
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 上
No.6: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

山岳冒険ミステリ-の究極作

地べたに這いつくばって顔をつけて臭いを嗅ぐ感覚。
こんなに臭いを感じ、心をえぐられる小説には出会ったことは無い。

こんなにも山を登るのが過酷で絶望なのかが、恐ろしい位に感じてしまう。
-40℃の世界で壁に張り付いて、指の感覚が麻痺し、幻聴が聞こえる世界が恐ろしいほど眼に前にある。

著者の情熱というかそんな生易しい表現ではなく、感性の爆発、書く殴った狂気は読む者を圧倒する。
神々の山嶺(上) (集英社文庫)
夢枕獏神々の山嶺 についてのレビュー
No.5: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

秋田マタギの男の生き様

どのくらいの人がマタギの事を知っているのだろうか。
自然の山の息吹、獣の鼓動、狩人の息遣い。
この小説で見事に体感できる。

また、主人公の富治の魅力ある生涯を描いており、マタギから坑夫と波乱万丈だ。
特に女の関係は当時の時代背景もわかり、富治と嫁なるイクとの関係はなかなか泣かせるエピソ-ド。

ひとつ不思議な事は、この小説を読み終える頃には秋田弁の会話が愛おしく、クマがなぜか可愛く思えてくるのはなぜだろうか。


邂逅の森 (文春文庫)
熊谷達也邂逅の森 についてのレビュー
No.4: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

超越した独特の世界観を堪能。

この小説はとても些細な小説だ。「静」の小説。
物語に大きな事件があるわけでもなく、独特の世界の中で小さい主人公がからくり人形を操ってチェスを指し、チェスを通して人の優しさ、怖さ、喜び、悲しみ、恋を知っていく物語。
表現が難しいが手で包み込むようなやさしくて小さい話で、読み終わった後、主人公を想い涙を流した。

いろんなジャンルの本を読み漁って、心が乾いている方には響く小説だろう。
しかし、小説に動きを求める方にはつまらなく感じるかもしれない。
それと世界観が独特で、得に主人公の造形が、見えすぎると引いてしまうかもしれない。

ただ、それでもこの小説のオリジナリティは滅多に出会えるものではなく、自分にとっては唯一無二の小説と言い切れる。
猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)
小川洋子猫を抱いて象と泳ぐ についてのレビュー
No.3: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
【ネタバレかも!?】 (3件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

最高に気持ちいい小説

企業小説っていうことで敬遠していたが、読んでみたら大間違い。
人間ドラマであって誰が読んでも絶対面白い。

主人公は、タイヤがはずれ子供連れの母親にあたり死なせてしまった中小企業の運送会社社長。
完璧な整備をしていた事で、大財閥系自動車メ-カ-のホープ自動車に不良部品の疑いを持ち、
戦いを挑む。

焦りに焦らされ、最後に得れる快感を是非。


▼以下、ネタバレ感想
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空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸潤空飛ぶタイヤ についてのレビュー
No.2: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

極みがここにある。

物語は冤罪(無実での誤認逮捕)という重いテ-マにある罪と罰。
ただ、物語は大物ヤクザが殺された事から始まり、その犯人探しのミステリ-との2重構造。

主人公はRIKOシリ-ズからの刑事の麻生とやくざの山内。
とんでもないペ-ジ数だが、次が気になる展開の上手さ、キャラクタ-の魅力は時間を忘れさせる。

圧倒的な登場人物の魅力と、ミステリ-・人間ドラマとしての重圧感はある意味極み。
男が女を、女が男を愛するだけでなく、人間に惚れ愛する事も重要なテ-マとしてある。
表現として同性愛描写があるが、必要な表現として受け入れるべき。

これを読まないのは勿体ない過ぎる。
間違いなく衝撃を受けるだろうし、その後の読書観を変え得る作品と言えよう。
聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫)
柴田よしき聖なる黒夜 についてのレビュー
No.1: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

秀逸の冒険小説

この小説と一緒にゴ-ルデンスランバ-(伊坂幸太郎著)、スプ-トニクの恋人(村上春樹著)を並行して読んでいたが、断トツで読み進み終えてしまった。
面白い。
あらすじを口で説明すると、ベタなアクション映画かと言われてしまう内容だが
じゃ何が面白いと感じさせるのかというと想像を掻き立てるすばらしい文章力に尽きる。
巻末の解説にもあるが話の構成、人物・状況表現が秀逸で次の展開を期待させる。
ページ数は多いが、読みやすいので読まれてない方にはぜひお勧めします。
自己ベスト10に入る小説です。
ホワイトアウト (新潮文庫)
真保裕一ホワイトアウト についてのレビュー