■スポンサードリンク
りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数424件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「オペラ座館」。かつて金田一一最初の事件として登場した忌まわしき館に再びファントムの影が・・・。 やっぱりいいな金田一一シリーズは。オペラ座三部作の二番目でノベルスの一作目。 最近なんか種明かしされても分からないトリックも多い中でトリックを図解してくれるのは助かる。読者への挑戦の前のちょっとした仕掛けがいいな。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
宝石強盗を終え山道を走る一台の車。土砂崩れに会い車は大破、メンバー六人のうちの一人が命を落としてしまう。近くの民家で急場を凌ごうとするがそこに住む住人は殺人を厭わない頭のおかしい連中たち。宝石の在り処と脱出方法を模索していくうちに宝石強盗たちは奇妙な違和感を覚える。 「俺たちは五人だった。今は、六人いる」 宝石強盗のうちに紛れた六人怪異の正体を探るという非常にそそられる内容。とは裏腹に読者側から怪異が誰かを論理的に推理することは出来ないと思われる。全体的に見るとホラーにかなり振られた作品で粗筋を読んで推理小説を期待するとかなり損。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
那々木悠志郎に指名され担当編集になった久瀬古都美は彼が初めて邂逅した怪異についての原稿を受け取る。その原稿は呪いの木の下に写真を埋めることによって呼び出される「崩れ顔の女」を小学生の篠宮悟と作家・那々木悠志郎が追っていく物語だった。読み進めるうちに久瀬の周りにも現れる崩れ顔の女・・・。担当編集に指名され、この原稿を渡された真意とは・・・? 那々木悠志郎シリーズ第三弾、先生が初めて遭遇した怪異の原稿という作中作とそれを読み進める担当編集者の二つのパートで物語は進んでいく。やがて現実世界に原稿の中の怪異の影が見え始めるという不可思議な展開、怪異の道理を知れば現象の正体も見破れる。今回も秀逸 なホラーミステリでした。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「アルキメデス」という言葉を残して死んでいった女子高生・美雪。彼女の死の真相を握る級友たちは大人たちの追及を嘲笑うようにかわしていく。クラスメートの弁当に紛れた毒、ある男の失踪、いずれの事件にも柳生という生徒が関わっているようだが・・・。 昭和47年の学園を舞台に若者の未成熟な友情と世間への反抗を示した青春推理小説。 1972年の江戸川乱歩賞、高校を舞台に人の死の真相を扱った青春ミステリーの先駆けといえる作品ですね。とはいえその青春は現代とはとても似つかないような内容となっています。解説に「青春悪漢小説」と述べられている通り、この作品に出てくる高校生たちはアウトローで小生意気で大人への敬意を知らぬ未成熟な若者です。当時はSNSは勿論、携帯の普及もない時代なので若者たちのストレスや主張は直接的な言動や行動によって示すしかないのでしょう。それが正解なのか不正解なのはさて置き、おそろしく行動的で危なっかしい青年たちが事件の中心陣取っています。一方で追及する側の大人たちはというと極一部を除き、まともな大人たちなのでさらに青年たちの生意気さを際立たせています。 物語の謎が氷解した後に残る若者たちへの印象は「分からない」、「理解できない」という意見が多いと思います。それは作中の刑事もそう感じている通り作者も納得づくの計算、本作はそんな得体の知れぬような不安定な若者像をあえて表現していると感じます。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「あの、失礼ですけど、アヤコさんではないですか?」 見知らぬ女性にそう話しかけられた香奈子。由子と名乗る相手はどこかおかしい・・・。まるで人格が複数あるような・・・。 同じ頃、大学生の根本は引きこもりの妹・亜矢子の異常行動を目撃する。話し掛けた妹の口調は昔のそれとはまるで違っていた。まるで人格が複数あるような・・・。 多重人格をテーマに、香奈子と根本の2人の視点で物語は進む。やがて2人の周りで殺人事件が起こり目の前の多重人格者?に疑いの目を向ける。 タグにイヤミスとある通り、絶望的に救いのない話になっている。ミステリーであり、当然謎解きや伏線もしっかり張られてるのだが、それ以上にグロテスクで悲惨な描写が目立つ作品になっている。真相が明らかになったことで心が晴れたり、前に進めた人が皆無な作品も珍しい。人を選ぶ作品なのは間違いない。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
タックとタカチが初めて会った去年のクリスマスイブ、ボアン先輩に振り回されるまま行われたプレゼント交換、一人の女性が身を投げたその日から一年後に再び身を投げたのは僕らの友人だった。 クリスマスイブの日に起こった3つの身投げの真相を今回はタカチメインで探求していく。前作は酒を交えたかなり軽いミステリーだったのに対して、本作は家族関係の醜さをタカチの過去にも触れながら解き進める非常に重いミステリーになっている。ボアン先輩とウサコには常に笑っていてほしいものである。時候を意識したけどクリスマスに読むような本じゃなかったね、甘いケーキでも相殺できないくらいビターな結末なので。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
タックたち一行が迷い込んだ山荘にはベッドと冷蔵庫だけ!? そして冷蔵庫には96本の缶ビールが!! 安楽椅子ミステリを謳いながら地べたで酒飲んで推理してる。内容としてはバカミスや短編の域を出ないテーマ性であり、キャラクターの掛け合いを楽しむことが前提か。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
信州で暮らす久喜家に起きる二つの異変。一つ目は先代の墓が何者かによって傷付けられていたこと。二つ目は戦時中に書かれた大伯父の日記が突然届けられたこと。日記に込められた生への執着、密林で見かけた火喰鳥に関する謎の記述。故人の遺志が現実を侵食し始めた・・・。 なぜか統合された横溝正史ミステリ&ホラー大賞の令和2年大賞作。話の引き込みはものすごく良かった。日記に書かれたヒクイドリを巡る記述から、やがて現実にヒクイドリの影が見えてくる恐ろしさは素晴らしい。一方でミステリー要素はや薄めで謎解きらしい謎解きはあまりない。明らかに異質な存在に対して巻き込まれ抵抗していく主人公たちを描くパニックSFの要素の方が強く感じられた。 勿論終盤でこの物語に仕掛けられた裏の様相が提示はされるのだが、中々飲み込みにくい内容だった。ヒクイドリというモチーフの不気味さが最高だっただけに残念。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
アメリカ留学を前日に控えた箱入り娘のハコちゃん、送別会から自宅に帰ると見知らぬ女性の死体が!? このままでは念願の海外留学がおじゃんになってしまう!! 禁断の死体遺棄計画は思いもよらない結末に。 匠千暁、最初の事件。
後に匠千暁シリーズとなる西澤保彦の看板作の第一長編ですね。タックやタカチの学生時代のお話、同じキャンパスグループ内の箱入り娘のハコちゃんのフロリダ留学前日家に帰ると見知らぬ死体が!そして禁断の死体遺棄、まさかの主人公たち普通に犯罪者である。しかし事件は想像を超える幻惑さを見せ、警察でも捜査は難航。ここに酔いどれ探偵・タックの降臨。 シリーズ恒例というか、西澤保彦ではよく出てくる酒を回しながらの推理合戦ものです。今回は結構事件の当事者ですから酒飲んでる場合じゃないかもしれないんですけどね。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
1913年、イギリスからオーストラリア帰着した船内に取り残されていた少女。身元不明の少女はネルと名付けられ家族に恵まれ大切に育てられたが、21歳の誕生日に遂に自分の出生を知る事になる。希望に満ちた眼は孤独に塗られ、彼女は一人自分を知るための旅に出る・・・。 時は変わって2005年、ネルの孫娘のカサンドラはネルが残したコーンウォールのお屋敷の存在を告げられる。1975年、ネルは何を知り、何を以てその屋敷を購入したのか、孫娘に託した謎解きの鍵はネルとともに船内に残されていた一冊の御伽噺集に・・。 第三回翻訳ミステリー大賞に恥じない濃密な物語でしたね。元が古い作品ではないし、翻訳も現代的な表現寄りで海外古典にありがちな読み難さは少ない。勿論西洋を舞台にしたお洒落な情景は損なわれてはいない。章立ては1900年から2005年の時代を細かく行き来し、各章で人物の視点も変わるので人物の年齢や関係性の把握には時間がかかってくる。流石に登場人物欄か相関図は欲しかった。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
メルカトル鮎シリーズの短編集。
傲岸不遜の銘探偵参る。今回のメルも凄かった!!性格の傲慢さに加え、世界がメルの為に動いていく。事件が起きるから探偵が来るんじゃない、探偵が居るから事件が起きるんだ。そして、それが銘探偵ともなると超飛躍し、事件も犯人も手掛かりも全ては探偵が事件を解決するために存在する。全てはメルが招いている。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
メルカトル鮎シリーズの短編集。 犯人当てに興じた作品としながら、犯人をぼかしたまま終わるアンチミステリーである。 突拍子もない帰結がなんとも楽しい。 美袋君が毎度の如く危険な目に当っているのだが、美袋君は探偵役以上に強い存在なので安心安心。 むしろアンチミステリーよろしく、探偵役の方が危険なポジションにいることが多いのだ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「ノゾミくん、こっちにおいで」 海のそばでのおまじない、中高生で広がる都市伝説。 願いを叶えてもらったはずの生徒が屋上から身を投げる。 のぞみ君に殺されるとメッセージを残して・・・。 ノゾミ君に願いを託す都市伝説が反転しノゾミ君に襲われてしまう。 生徒を失ってしまった高校教師が都市伝説の端緒を探していくストーリー。 率直な感想をいうと、登場人物の誰も好きになれなかった。 主人公側の教師にしろ、巻き込まれた生徒にしろ、捜査する刑事にしろ、どうもステレオタイプな人間に醜さが乗っかていて中途半端に嫌な人物なのだ。 完全に嫌な人物なら死んでしまってスッキリすることもあるし、更生に傾けば感動や同情も一入なのだが中途半端ゆえにどんな結末を迎えてもいまいちしっくりこない。 終盤に攻勢する点ではミステリー要素もあるが推理できる点は少ないので、論理を重視しないホラーを許容できる人向けの作品だ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
私立吏塚高校の屋上で葉群という男性生徒の遺体が見つかる。遺体には墜落死の痕跡があり、犯人が屋上から落とした後で再度持ち上げたという疑惑が出るか・・・。最も疑わしい校舎に残っていた人物から無罪証明を依頼される「吏塚の名探偵」。喉を煙で焼きながらハードボイルド風の意妙な学園ミステリ開演。
後に遠海事件を書く詠坂雄二のデビュー作。事件としては死体が持ち上げられた以外は平凡、殺されてもおかしくない学生が屋上から突き落とされた。打って変わってあまりに異質すぎる登場人物達、煙草で喉を焼く「吏塚の名探偵」、「情報屋」、愛と体を切り売りする「売春生徒」、等身大の青春から大きく離れたリアリティの薄い設定になっている。それでハードボイルド調の物語を展開するのだからびっくりだ、この湿ったドロッとした感じを高校生で出すのだからすごいな。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
最愛の妻に先立たれ、娘とも離れ離れで暮らす大学講師・松嶋。 冴えない日々の中で訪れた逆転の転機、とある物故作家の未発表原稿譲りたいと持ち掛けられる。 しかしその条件は50年前に自殺した彼の死の真相を暴けというものだった・・・。 600頁の内200頁ほどが自殺した作家・佐脇の手記になっている。これがかなり古い文体で書かれている為に慣れていないと中々飲み込めないと思う。 そしていざ調査に乗り出した主人公の前には見えざる悪意が・・・、正体の掴めぬ文献の提供者の前に物語はミステリアスさを増していく。 あまり家族愛とかをテーマをにした作品は好みませんがこれは主人公の成長譚として非常に気持ちいものがあった。 たまには殺人が起きないのも宜しい。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
故・小林泰三氏の未収録短編集。短編としてはベリーショートで330頁で10個も収められている。SF、ホラーに収まりきらない作者の魅力がつまっている。 「玩具」 えらいことになった。目の前に瀕死の友人がいる。望みを叶えるあの存在、てぃーきーらいらい。 「侵略の時」 朝何気なく始まった日常の崩壊、妻が朝食に出してきたのは生の豚肉だった。見た目は変わらずとも常識のなくなった周りの人々。人類の侵略を「酔歩する男」を彷彿とさせるような独特の価値観で描いたSF。 「食用人」 なんで食用じゃないものをわざわざ食べるのか。食用ではないカエルやイノシシを食べたがる人の神経が信じられない。こんなに美味しい食用の人間がいるのに。食用の人間が認められた世界で初めて訪れた人間の活け造り専門店、生きながら解体されてくその肉片に私は何を想う。 「サロゲート・マザー」 遺伝的に繋がりのない子を産む。産みの親と育ての親、どちらが本当の親で愛情や責任は何処へ行くのか。お金の為の代理出産に悩む夫婦のお話は終盤とんでもない様相を・・・。論理の前に価値観がある。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「突然のメッセージで驚かれたことと思います。」 Facebookで綴られる完全往復書簡体小説。 まぁ地の文が無い本自体は珍しくないですし、どうせならもっとネット上のやり取りを感じさせるような書き方にすればよかったのにと思う。 なんか手紙でのやり取りと遜色ない。 まぁ二時間弱で読めるような内容ですし、気になるならとりあえず読んでみてよということで。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
自身と同じ容姿、行動を取るもう一つの存在「バイロケーション」。 いつの間にか顕れ、そして消えていく自分のコピーを目の当たりにし恐怖に怯える主人公・忍。 突然訪れた日常の破綻に手を差し伸べてきたのは同じくバイロケーションに悩まされる人達で組織された「会、彼らはバイロケーションの存在の抹消を目指していた。 自身とは別の二重存在をテーマにしたSF小説であるとともに、不気味な存在を示したホラー小説である。 そして「会」という謎の存在、彼らはバイロケーションに対して志同じはずなのだが・・・? SF、ホラー、ミステリどれをとっても面白い傑作。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|