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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数424件
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私立百合ヶ原高校に残る「ユリコ様伝説」。それはユリコの名を持つものは不可思議な加護を受け、校内で圧倒的な権力を握れるというものだった。しかし、ユリコ様に選ばれる者は一人だけでその他の者は不幸が訪れるという・・・。図らずもユリコ様候補の一人になった矢坂百合子は途方に暮れるが、ユリコの死が段々と近づいてきていた・・・。 学園を舞台に理不尽な状況下に巻き込まれる様はホラーっ気を取り除いたAnotherといった形。ロジックと後半の真相は文句なしだが学生同士の会話の表現に難あり。 |
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野中杏、十七歳、結婚詐欺師に育てられた子供、騙された女性・ユキエと500万を持って逃避行中。 人を騙して得た金で育った私の下に騙された女が現れた。今まで育ててくれた詐欺師の叔父には感謝している、それでも目の前の女に「お返し」がしたいと思った。この旅は報復?それとも罪滅ぼし?年齢、価値観も違う凸凹の私達が目指すは幻の百合!! 結婚詐欺師を育ての親に持つ女子高生・野中杏とその詐欺師に騙された30代女性ユキエの二人が500万円を持って夏の旅路をスタートするところから物語は始まります。常識に囚われないイケイケな杏、それに押し切られる形で巻き込まれた引っ込み思案のキヨエ、年齢は勿論価値観も正反対の二人は時に補い合い、時に衝突しながら無計画な道を進んでいきます。女性心理を中心に描いているがきっと男性でも共感できる部分がたくさんある。そして旅の終焉には吹っ切れた爽やかさが感じれることでしょう。 |
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妻が習い事を始めた。近所の前衛芸術家に弟子入りしたというのだ。 翌日、理解を示さない私の前に出された夕飯は数切れの刺身だった。ペットの熱帯魚の水槽の中では骨と内臓が剥き出しになった姿で魚が泳いでいる・・・ 小林泰三氏の短編集。年代がバラバラでかつ描き下ろしが二点。ホラーあり、バイオレンスあり、SFあり、書き口もかなり違う。 |
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ミステリ作家の西野冴子は旧友の亜美からタケルという恋人を紹介されるがどうも好きになれない。彼の過去の周りに見え隠れする殺人の影、そして冴子は自身に向けられた何者かの計画を自覚し始める。Mの女の意味とは一体・・・。 タケルという軽薄な男、その背後にチラつく白石唯という女、ノンフィクション作家・泉堂莉奈、そしてミステリー作家・西野冴子、誰が何のために仕掛けた計画なのか?Mの女の「M」とは何を意味するのか?破綻ギリギリの物語はこれでは完結せず。 |
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音更風゛はとあるミステリー作家一家のメイド。ある日、一族の中で殺人の計画が立てられていることを盗み聞いてしまう。その計画を立てているのはミステリープランナーなる男・豺!! 音更風゛は一族内の殺人を未然に阻止するためにその男に偽装殺人の計画を持ちかけるが・・・。 犯罪を防ぐべく犯人には殺しの成功を偽装し被害者には身代わりの死体を用意する。そして本当に必要なのか?本格ミステリのお約束の伏線も用意した。誰も死なない殺人計画、第一夜にて崩壊!? ミステリには伏線は付き物だがそれは作者が読者へ向けての都合だ。しかし本作は伏線を作中の人物が用意してくれてるのだ、なにせ全ての計画は予め決まっているのだから。ってわざわざ計画がばれるような伏線を用意する必要ないじゃん!!とメイドはツッコむがどうやらミステリープランナーとして本格ミステリのお約束は守って計画は練らないといけないらしい。そんな特殊設定の館殺人に加えて、メイドの音更風゛が強烈なキャラをしている。ミステリフリークスとしてかなりの推理能力を携えてるのだが謎の好奇心で計画をかき乱してしまう。名前もどこかふざけている。点々は決して誤字ではないのだ。 コメディタッチで描かれる「本格ミステリ」を計画した「本格ミステリ」。 |
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死刑が廃止された日本で唯一生存している死刑囚・麻倉玲一。海外生活の長さから彼への知識、先入観を持たないフリーライターの熊沢克也に彼の伝記を残す白羽の矢が立つ。麻倉の収容されている民間経営の刑務所は絶海の孤島にありレーザーの檻など最新の警備システムを用いて最低限の人員で管理されていた。しかし、そこの管理に携わる面々はどうやら麻倉と因縁があるようで・・・。 まずタイトルのインパクトに目を引くだろう、信頼できない語り手という物語の外側のメタフィクション的な用語が使われている。これは読者と視点を同じくし地の文も一人称視点の作品等で主人公の発言や思想がどこまで信用できるかといった考えなのだが本作には特に関係はない。視点はライターの熊沢であり、熊沢に語りかける麻倉の過去の話が脚色めいているということで信頼できない語り手と言ってるに過ぎず、故にこの用語の語感だけで興味を抱いているのなら少々ご思案頂きたい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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隔絶した世界は強固な繋がりへ。独創的な着眼点と圧倒される着地点、距離・時間・愛・倫理を現実から大きくジャンプした先に見える世界。伴名練さんのSF短編集、文句なしの傑作集だったな。 |
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最高で最良なノンフィクションのフィクションを。 あなたの人生の物語を主人公へと変えるフラッガーシステム。言動や行動のすべてがフラグとなりアニメのようなご都合主義をプレゼント。ひょんなことからそのシステムのモニターとなってしまった涼一は同級生の佐藤さんとの恋路を叶えるために紛争するが、些細なフラグがフラグを呼び佐藤さんの前に立ち塞がる数々の美少女たち。やがてシステムは感動の結末に向かって思いもよらない暴走を始める!! 上手いことが続きすぎると失敗フラグになるし、中々にフラグ立てというのは難しい。取り敢えず食パンをくわえて登校してみようか。 深夜アニメのご都合主義を再現するようなフラッガーシステムという世界観を舞台に主人公が意中の人へと邁進するさまを描く。しかしシステムが強すぎのか馬鹿なのか些細なフラグがまったく別の美少女を呼び寄せる。ご都合主義と理不尽は紙一重で佐藤さんとの距離は縮まるどころか離れていく。しかし主人公の立て続けたフラグと作者の仕込んだ伏線が後半に実を結び始める。コメディタッチで軽快な物語だが分量は多め。 |
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動画であげられた間取りの謎に後日談として新たな謎を取り込んだ解決編。会話形式でテンポよく進み、図解付きで分かりやすい間取りは謎解き小説としては小気味よいがホラーとしての側面は文章化に伴って失われてしまったな。怪しさという点は動画に大きく劣る。映画化に期待。 |
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“今世紀最強の霊媒師”はインチキ霊媒師!? 霊を祓う力を持たない男はハッタリと洞察力を駆使して事件を解決に導いていくが・・・? 那々木悠志郎シリーズで人気を博した阿泉先生の新たな霊×ミステリーものだ。 さて今回の主人公だがインチキ霊媒師だけあってちょっと胡散臭い、かつ善人とも言い難い性格をしている。渋々巻き込まれた末にその優秀な頭脳を用い霊を成仏へと導いていく。そんな彼にもどうやら秘密が色々とあるようでシリーズを通してどうやら明るみになっていく謎がありそうである。短編形式でライトな書き口でありさらっと読めた。 |
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人気漫画家である陣内龍二は妻・里美の交通事故死に悲観し作中のヒロインを勢いで殺してしまう。罵詈と誹謗ばかりのファンレターにまじり妻の死を予言していた手紙を見つける。その予言の主を探るうちに迫る殺意、一連の予言は本物なのか似非なのか最終章読者へ告げる真相とは...。 漫画家である陣内と漫画の熱狂的なファン・三橋との2視点で展開される。予言能力は本物なのか否か、物語の行方は思いもよらない方向に進んでいきます。Fragile、こわれものというタイトルが一体何を意味するのか、浦賀和宏氏やはり裏の裏をかいてくる。 |
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森に囲まれた施設で何不自由ない生活を送っていた老人サブロウは自分の過去に関する記憶が残っていないことに気付く。周りの老人たちも同じような状況であることを知ったサブロウは偶然にも自身の日記帳に脱出を促す何者かのメッセージを見つける。この施設が監獄である疑いを持ったサブロウは仲間を集め脱出を試みるが森の先にあった光景は想像を絶するものだった・・・。 長編として小林泰三氏の遺作となった作品。車椅子生活を送る老人たちが施設からの脱出を図るスリラー小説だ。そして本作はSF小説である。主人公のサブロウは20世紀生まれで100歳を迎えているのだが記憶の片隅には21世紀の記憶どころか22世紀の残像が残る。タイトルは「未来からの脱出」、本当の戦いは森を抜けた光景を見た後に始まる。 |
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「暃」 一連の自殺者の躰に残された文字はJISコード5A73で表される出所不明の幽霊文字だった。読みや使用法の存在しないその文字が事件の鍵を握るとして刑事たちは様々な解釈を試みる。 自殺者はさらに連鎖し5人目の被害者が出た。自殺者の周りに出没していた怪しいヘッドフォンの男、その人物はあまりにも意外な人物で・・・。 幽霊文字という解釈自由の正解の無い多重解決。構成は自殺する前の自殺者の目線と事件を追う警察の目線の2つ。なぜ彼らは自殺してしまったのか、幽霊文字は誰が何のために付けたのか、最終章「始末」にて詠坂雄二とある人物によってこの作品の真の真相が明かされる。まぁ流石異端児らしい終わり方でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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刀城言耶シリーズの短編集。表題作の魔偶の如き齎すものは女性編集者との出会いの事件で面白い発想だったな。
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「最後のページをめくるまで」 そのタイトル通り最期まで油断ならないような作品集だ。どんでん返しのようなラスト数行でひっくり返るような緻密な伏線回収は無いが終盤にさしかかるとともに裏の真実が1ページずつめくれてくような展開は良かった。 |
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旅人は巡る。 崩壊した世界で目の当たりにする小さなコミュニティ、そこでは新たな文明・規律がまた始まろうとしている。 6つの町を巡り最期の町で彼女が告げる人類の犯したタブーと繁栄への希望。 旅人の正体とは一体・・・。
気軽に読もうと思って手に取ったら凄く哲学的な作品だった。人類が一度崩壊した世界で既存の文明は一度リセットされている。各地を巡る旅人はそれぞれの町で独自のコミュニティに触れていく。旅人は表紙の女の子で物凄く淡白で口数も少ない。頽廃した世界も相俟って作品の印象は白だとか灰とか感じられる。派手だったり艶だったり彩りのようなものが作品の世界観からも文体からも除かれている。 しかし最期の町で彼女が見た光景、伝えたかった事、それだけが未来に繋がる光のような色を持っているように思える。 |
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「ここにあるんは全部、忌物なんや。」 怪異に追われる女子中学生・由羽希が助けを求めた先は「遺仏寺」ならぬ「忌物寺」。お祓いの代償として怪談の文字起こしを手伝うはめになるが、その怪談話は床に散らばったある忌物に纏わるものだった・・・。物語の中で一体何が怨念の籠もった忌物だったのか?そして由羽希の感じる怪異の正体とは? 怪談内で何が災いを引き起こした忌物だったのかを当てるホラーミステリー。故に犯人や動機などは深く考慮しないので物語としては不完全な終わり方をする。それは由羽希自身も指摘することなのだが、怪談とはそうゆうものなのだと一蹴されてしまう。分からないから怖いのだと。 怪異譚としては怖さもあるし、何より忌物当てという斬新さに惹かれる部分もあったが主人公・由羽希にまつわる話については消化不良。 |
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突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモリーを挿し込めれば。 これは未来の犯罪の物語。 小林泰三氏の「記憶」をテーマにしたSF作品。 第一部にて人類が記憶能力を失った様子をパニック小説のように描いている。あくまで失ったのは「大忘却」以降の記憶能力で機械の操作などの手続き記憶やそれまでの人生での記憶は保持されていた。実際過去の記憶を完全に失っても言葉は話せるんだから本当に不思議である。ほとんどの人類が行動しては忘れてを繰り返す中、少しづつであるがこの驚異に立ち向かうものがいた。やがて人類は外部に取り付けたメモリーに記憶を蓄積することによって従来の生活を取り戻していく。 第二部から物語が始まったと言って良い。メモリーという擬似的記憶装置にて新たな復活を遂げた人類とそれに併発する未来の犯罪の物語だ。今まで肉体に付従してきた記憶という概念が完全に肉体から切り離されたのである。しかしメモリー=命といって良いのになぜそんなに剥き出しで取外し可能なのだろう?普通誰にも見せなくないでしょ。 小林氏らしいブラックなオチの付くSF、気に入ったら記憶破断者もおすすめだ。 |
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