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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数538件
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3本の短編と1本の中編を収めた、ガリレオ・シリーズの8作目。期待通りに安心して楽しめる作品ぞろいである。
人気のシリーズも8冊目となると、以前、どこかで読んだことがあるような話も出てくるのだが、それぞれに新しい魅力が加えられていて飽きさせない。 例えば、旅行中などに乗り物内で読むには最適な一冊として、どなたにもオススメできる。 |
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英国SIS職員バーナード・サムソンシリーズの新展開三部作「フック、ライン、シンカー」の第二作である。
自らが所属するイギリス秘密情報局に追われる身となり、幼なじみのベルナーを頼ってベルリンに潜伏していたサムソンだったが、ロンドンに呼び戻され、新たな任務を命じられる。作戦の詳細を知らされないままドイツ、オーストリアに赴くと、なんとそこでは、サムソンとイギリスを裏切った元妻のフィオーナが待っていた。果たして、フィオーナは何を考えているのか? フィオーナは実は東に潜伏するスパイなのか? シリーズの全体を左右する、大きな転回点となるストーリーにあぜんとさせられる。もちろん、レン・デイトン作品なので派手なドンパチは無いが、秘密情報部という組織の恐さ、特にイギリスの同組織の冷淡非情さにぞくぞくさせられる、スリルとサスペンスに満ちた作品。本格スパイ小説ファンにはオススメだ。 |
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英国の新人作家のデビュー作。いきなりMWA賞候補になっただけあって、骨太で味わい深い法廷ミステリーである。
ロンドンの公園で8歳の男児が殺され、犯人として11歳の少年・セバスチャンが逮捕・起訴された。弁護を依頼されたダニエルはセバスチャンに11歳の頃の自分を重ね合わせ、心の底から少年を弁護したいと思う。同じ頃、ジャンキーの母親から施設に保護されていた11歳のダニエルを引き取り、後には養子にしてくれた里親のミニーが死亡したと知らされる。育ての親として感謝しながらも、ある出来事からミニーを恨み、連絡すら拒んでいたダニエルだったが、ミニーの死により否応無く過去を振り返ることになる。 孤独と絶望にとらわれた惨めな少年だった自分と、裕福ながらも問題の多い家庭で育てられた、脆くて壊れそうなセバスチャンとを二重写しにして、ダニエルは環境に左右される少年の心の闇を解き明かそうとする。少年が「悪いことをする」「罪を犯す」とき、その責任を負うべきは少年だけなのか? 法の正義が貫かれることと、社旗正義が実現されることは完全にイコールなのか? セバスチャンの裁判の進行とダニエルの回顧が交互に繰り返されながら進むストーリー展開が、非常に緊張感があってスリリング、新人とは思えない技巧が秀逸。静かだが力強い、読み応え十分の法廷ミステリーとして、多くの人にオススメできる。 |
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「疫病神」シリーズの第2作は、なんと北朝鮮を舞台にした、国際謀略小説顔負けのアクション超大作である。
それぞれの事情で同じ詐欺師を追い掛けることになった二宮と桑原は、北朝鮮に逃げ込んだ詐欺師を追って、観光ツアーにまぎれて平壌に飛んだ。しかし、徹底的に統制され監視される社会では自由に動けず、逃亡先は掴んだものの詐欺師を捕まえることはできなかった。大阪に帰った二人は、さまざまなコネを動員して、今度は中国国境から北朝鮮への密入国をはかる。厳しい寒さと想像を絶する貧しさに打ちのめされながらも詐欺師を見つけ出し、詐欺の実相を聞き出したのだが、北朝鮮からの脱出は命をかけた逃避行になった。 命からがら帰国した二人は、詐欺の落とし前をつけるべく、今度は詐欺師、ヤクザ、悪徳政治家たちと死闘を繰り広げることになる・・・。 自由奔放を絵に描いたような極道・桑原が、世界一の不自由国家・北朝鮮で大暴れする。それだけでも面白いのだが、さらに巨額詐欺事件を巡る悪者同士の駆け引きもプラスされて、最初から最後までゆるむところが無い。シリーズ最高傑作という惹句は嘘ではない。絶対のオススメ作だ。 |
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「パズル・シリーズ」で有名な(実は、一作も読んでいないのだが)パトリック・クェンティンの1948年の作品。シリーズ全8作品のうち、ただ一作だけ未訳だったものが翻訳されたとのこと。他の作品を読んでいないので解説に頼ると、本作はシリーズ中では異色作になるらしい。
メキシコを観光中の主人公ピーター・ダルースは、20歳前後の美少女デボラと出会い、一緒に観光地に向かい同じホテルに泊まるが、翌日、デボラが殺された。犯人は、当時、同じホテルに泊まっていた4人のアメリカ人の誰かではないかと疑うのだが、確たる証拠が得られなかった。さらに、ピーターは誰かに狙われている気配を感じるのだが、その動機も犯人も特定できなかった。デボラを殺したのは誰か、なぜ自分が狙われるのか? 4人の全員が怪しく見えてきて疑心暗鬼に落ち入ったピーターは、孤独な戦いを強いられることになる。 犯人も犯行の動機も、推理が二転三転して、どんどん引き込まれていく。ストーリー展開も軽快で、軽いハードボイルドを読んでいるような快感があり、とても60年以上前に書かれた作品とは思えない。 シリーズを知っているかいないかに関係なく十分に楽しめて、思いがけない拾い物をしたようなお得感があった。古臭いと先入観を持たずに手に取ってみることをオススメしたい。 |
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マイクル・コナリーの22作目の長編で、リンカーン弁護士シリーズとしては第3作だが、悪の代理人として知られるリンカーン弁護士・ミッキー・ハラーが、今回は特別検察官として被告と弁護士をやり込めるという異色の設定。さらに、ハリー・ボッシュもダブル主役として重要な役割を果たすという豪華版である。
24年前の少女殺害事件で出された有罪判決が破棄されて、服役していた男ジェサップは再審を受けることになった。被害者のワンピースに付いていた精液が、最新のDNA鑑定によってジェサップとは別人のものと判明したのが、判決破棄の理由だった。再審にさいして、検事長はなんとハラーに特別検査官になるように依頼してきた。まったく勝ち目が無いと思われる裁判だったが、正義感にかられたハラーは、元妻のマギーと異母兄弟のハリー・ボッシュをチームに加えることを条件に、依頼を引き受けた。 圧倒的に不利な条件下でも、得意の法廷技術で奮闘するハラーを、ベテラン検事であるマギーがサポートし、さらにハリー・ボッシュが調査官として走り回って助け、ついには劇的なクライマックスを迎えることになる・・・。 ハラーを主役にした法廷ミステリーとしても、ハリーが主役の刑事ものとしても一級品。マイクル・コナリーの二大人気キャラクターが共演するのだから、面白くない訳が無い。普段、リーガル・ミステリーを敬遠している方にもオススメだ。 |
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「コリーニ事件」と「禁忌」の長編2作の間に書かれた3作品を収めた短編集である。「訳者あとがき」を含めても全93ページという薄さだが、3作品のいずれも強烈な個性を持っている上に、挿入されているタダジュンのイラストも効果的で、非常に強い印象を残す一冊になっている。
「パン屋の主人」、「ザイボルト」、「カールの降誕祭」の3作品とも、ひょっとした瞬間から人生がひっくり返ってしまった物語で、シーラッハの言を借りれば「私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです」という人生の不条理さを突きつけられた読者は、深く大きくため息をつくことになる。 人間につきまとうブラックな側面を描いたストーリーがお好きな方には、近年最高のクリスマスプレゼントとなるだろう。 |
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特捜部Qシリーズの第6弾。シリーズとして脂が乗り切った感じで、期待通りの面白さである。
今回、特捜部Qに持ち込まれたのは、デンマークの離島で17年前に起きた少女ひき逃げ事件である。物証も証言も乏しく、ひき逃げとして処理されたのだが、殺人事件だと信じて17年間捜査を続けてきた地元警官が退官を迎えるため、マーク警部に捜査の引き継ぎを訴え得てきた。マークが断ると警官は恨み節を残して拳銃自殺してしまったため、特捜部Qは否応無く捜査に巻き込まれることになる・・・。 事件の背景となるのが、家族の崩壊や精神世界、ヒーリングなど動きが乏しいため、犯罪の動機や捜査プロセスなどは、はっきり言ってシリーズ中最下位と言わざるを得ない。それでも面白く読めるのは、カール、アサド、ローセを中心とするレギュラー陣の関係がさまざまに変化して飽きさせないから。さらに、これまで明らかにされてこなかったメンバーの過去が徐々に明らかになって行くような伏線も張られており、今後がますます楽しみになってくる。 ぜひ、第1作から順に読んでいくようオススメしたい。 |
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疫病神シリーズの第三作。企業と警察の癒着をネタに大金を‘’つまむ”べく、暴力団幹部・桑原と建設コンサルタント・二宮の疫病神コンビが大暴れする、傑作エンターテイメントである。
桑原の指示で、新興運送会社が奈良県警の警官のために設けた接待麻雀に参加して小遣い稼ぎをした二宮は、翌日、奈良県警の刑事の訪問を受ける。県警では、運送会社と警官の癒着についての内部監察が始まっているらく、しかも、運送会社の裏金は何十億という巨額だというウワサ。その裏金の横取りを目論む桑原は、二宮を巻き込んで癒着の実態解明とゆすりのネタを求めて、地元大阪から沖縄までを駆け巡り暴走することになる。 運送会社と警察と暴力団、政治家が絡み合ったキャンダル、あの佐川急便事件を下敷きにした作品で、今回も根っからの武闘派・桑原が縦横無尽に大活躍。どこまでも引きずり込まれて行くお人好しの二宮との掛け合い漫才も絶好調。シリーズとして脂がのってきている作品だが、事件の構成やストーリー展開がしっかりしているので、シリーズの途中から(本作から)読み始めたとしても十分に満足できること間違い無し。 エンターテイメント作品好きの方には、絶対のオススメだ。 |
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黒川博行の代表的なシリーズである「疫病神シリーズ」の第一作。経済ヤクザの世界を生き生きと描いた、躍動感あふれる傑作エンターテイメントである。
建設コンサルタントを自称する二宮は、建設工事現場のトラブルを裏で解決するために工事業者とヤクザをつなぐ「サバキ」を本業にしているが、折からの不景気でしょぼくれていた。ある日、自分が手がけた「サバキ」がキャンセルされるという事態が起き、暴力団幹部・桑原と面識を得た。知り合いから依頼された産廃施設に関する仕事でヤクザに痛め付けられた二宮は、ヤクザの正体を探るために桑原の助けを得ようとしたのだが、それは、とんでもない疫病神を背負うことになるのであった。 産廃処理施設の用地確保を巡る産廃業者、地権者、建設会社の駆け引きに、金のにおいを嗅ぎ付けた暴力団が絡んできて、物語は複雑かつスピーディーに展開する。しかも、登場人物が全員、一癖も二癖もある古狸ぞろいで、この化かし合いが面白い。さらに、主役の二人ともキャラが濃く、ポンポンと飛び交う関西弁の会話は「オモロい!」の一言。古き良き任侠ものではない、経済ヤクザを描いた劇画を読むようで、すっきりした読後感が味わえる。「とにかく面白い小説を読みたい」という人には、オススメだ。 |
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佐々木譲が得意とする警察小説の最新作。従来のものとはひと味違う、アメリカンっぽい(?)クライムノベルと呼びたいエンターテイメント作品である。
大井署地域課の巡査・波多野は上司の門司とともに、人質を取って逃げる殺人犯をパトカーで追跡し、倉庫内に追い詰めるが、犯人に反撃されて負傷し、拳銃を奪われてしまう。絶体絶命のとき、上司の指示に反して駆けつけた同期の巡査・松本によって命を救われた。 それから7年後、蒲田の暴力団幹部が射殺され、車に放置されているのが発見された。蒲田署刑事課に異動していた波多野は、また上司となった門司と組んで、暴力団同士の抗争と考えられる事件では脇筋となる地元の半グレの聞き込みに投入された。捜査を進めるうちに、事件とは別の犯罪の臭いを嗅ぎ付けた二人は、じりじりと半グレ集団を追い詰めて行く。 一方、順調に出世して警視庁捜査一課に異動していた松本巡査部長は、捜査一課の管理官に呼び出されて密命をくだされた。それは、蒲田の事件が単純な暴力団絡みの事案ではなく、他の事件とともに「警察関係者による私刑ではないか」という重大な疑惑の解明だった。 ひとつの事件を巡る二つの捜査が交差したり、離れたり、なかなか真相が明らかにされず、読者は謎解きにどんどん引き込まれていく。さらに、事件関係者たちの別の犯罪もきちんと描かれていて、こちらも見逃せない。単なる事件捜査だけではない、さまざまな楽しみを秘めた極上のエンターテイメントとして、警察小説ファンはもちろん、多くのミステリーファンにオススメしたい。 |
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2015年5月に亡くなったルース・レンデルの久しぶりの新刊。約20年前、1996年の作品だが古さは全く感じさせない、最初から最後までルース・レンデルの世界が展開される傑作サスペンスである。
30代前半で大人しくて慎ましやかな性格のメアリは、骨髄移植のドナーになったことを同棲中の恋人に責められ、暴力を振るわれたことから別居し、リージェンツ・パーク近くの知人の留守宅を預かるために引っ越した。新生活とともに自分を変えようと決心したメアリは、骨髄を提供した相手であるレオに会い、まるで自分の分身のような彼に心引かれ、結婚を決意する。 同じ頃、リージェンツ・パークではホームレス連続殺人事件が発生し、街には不安な雰囲気が漂っていた。リージェンツ・パークでは、妻と二人の子供を事故で一度に失い人生に絶望してホームレス生活を始めたローマン、富裕層の犬の散歩代行で身を立てる元執事の老人ビーン、暴力を売って麻薬を買うジャンキーの若者ホブの3人も、それぞれに鬱屈を抱えながら行き来し、人生が交差することになっていた・・・。 主人公はメアリで、メアリとレオの関係がメインストーリーなのだが、他に3人の人物と1つの事件が重要なサブストーリーを構成し、それぞれが関係し合った複雑で厚みのある物語となっている。ホームレス連続殺人事件の謎解きも面白いのだが、それ以上に、社会派心理サスペンスとして完成度が高く、レンデルファンにはもちろん、社会派ミステリーファンには絶対のオススメだ。 |
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アイスランドのベストセラー、エーレンデュル捜査官シリーズの邦訳第3弾(シリーズとしては5作目)である。
クリスマスシーズンを目前にして賑わう高級ホテルの地下で、サンタクロースの衣装を着たドアマンが殺されていた。周囲との付き合いを避け、ホテルの地下の倉庫に隠れるように住んでいた孤独な50男のドアマンは、なぜ殺されたのか? 捜査に非協力的なホテル側と軋轢を起こしながら捜査を進めたエーレンデュルは、被害者が子供のとき、将来を嘱望されたボーイソプラノ歌手だったことを知る。さらに、たった2枚(2種類)だけ制作された彼のレコードが、レアアイテムとして蒐集家の間で高額で取引されているという。事件の背景は、金銭なのか? 殺人事件の捜査をメインストーリーとしながら、エーレンデュル自身の過去、薬物依存から抜け出すために苦しんでいる娘との関係、女性との付き合いに臆病なエーレンデュルの葛藤などが存在感のあるサイドストーリーとして展開され、単なる謎解きではない、読み応えのある社会派ミステリーとして完成度が高い。 北欧ミステリーファンには、文句無しにオススメだ。 |
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黒川博行の「疫病神シリーズ」の第5弾。直木賞受賞作である。
暴力団絡みの仕事で細々と食いつないでいる建設コンサルタント・二宮は、本物の極道で疫病神の桑原に引きずり込まれて、映画の出資金詐欺犯を追い掛けることになった。この詐欺犯は煮ても焼いても食えない爺で、ヤクザの懐から金を盗んでトンズラしようと大阪から香港、マカオ、今治と逃げ回り、さすがの疫病神・桑原もなかなか爺に落とし前を付けさせることが出来なかった。しかも、この詐欺の裏側には、桑原が所属する組織の上部団体のヤクザが絡んでいた。持ち前の喧嘩の強さと悪知恵で突っ走る桑原との腐れ縁を断ち切れない二宮は、いやいやながら体を張って金を回収しようとした・・・。 暴力や義理人情より経済原則で動く現代ヤクザの世界を見事に描いた、一級品のエンターテイメントである。ストーリー展開のスピード、登場人物のキャラの多彩さ、会話の面白さを兼ね備えており、低調なヤクザ映画の世界に旋風を巻き起こすために、ぜひ映画化してもらいたい作品である。オススメです。 |
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1962年に発表された、マーガレット・ミラーの最高傑作と呼ばれる作品の新訳版。私立探偵小説的な要素と心理ミステリーが合体した独特の味わいがあり、古さを感じさせない傑作である。
リノですっからかんになったアマチュアギャンブラーのクインは、カリフォルニアの海岸に向かう途中の山中で友達の車から放り出され、30人ほどが集団生活を送っている「塔」という新興宗教施設に助けを求めた。そこで彼は、「祝福の修道女」から「パトリック・オゴーマンという男性を探して欲しい」という依頼を受け、チコーテという小さな街を訪ねるが、オゴーマンは5年前に謎の死を遂げていた。オゴーマンは自殺なのか、殺されたのか。さらに、「祝福の修道女」は、なぜオゴーマンを探すのか。素人探偵クインは関係者の証言だけを頼りに、真相を探ることになる。 主人公は私立探偵ではあるが決してハードボイルドではなく、ストーリーは緩やかに展開される。また、舞台のひとつが世間から隔絶された新興宗教施設で、そこに暮らす人々は独特の生活観を持っていてクインの常識とズレている点も、物語全体にもやっとした雰囲気を醸し出す要素となっている。だが、オゴーマンの死の真相が明かされるプロセスは見事な心理ミステリーとなっていて、ミラーファンの期待を裏切らない。オススメです。 |
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ミステリー史上最高齢のヒーローとして衝撃のデビューを果たした「バック・シャッツ」が帰ってきた。シリーズ第2作は、88歳のバックが78歳の伝説の銀行強盗と対決するという傑作ハードボイルド・ミステリーである。
前作での負傷が原因で自宅住まいが難しくなり、妻ローズとともに介護付き住宅に移り住んだバックのもとを、かつての仇敵である銀行強盗のイライジャが訪れ「何者かに命を狙われているので助けてくれ」と言う。44年前に「今度会う時は殺してやる」と言って別れた奴が助けを求めるとは、一体どうしたことか。何かを企んでいるに違いないと思うし、歩行器無しでは歩けない状態なのだが、好奇心に勝てないバックはイライジャの依頼を引き受けることにした。とりあえず、イライジャを警官に引き会わせて保護しようとするのだが、途中で武装グループに襲撃されバックは負傷し、イライジャは誘拐されてしまった・・・。 2009年時点での襲撃・誘拐事件と44年前の銀行強盗という2つのストーリーが交互に展開され、最後に因縁の二人の対決が訪れるという構成でハードボイルド・ミステリーとしてのレベルが高い。さらに、二人の主役がユダヤ人で、ストーリーの背景に根深い人種差別が潜んでいる点も物語に深みを与えている。 87歳で初期認知症のタフガイという奇抜な設定で驚かせた作品の続編だけに、2作目以降に面白い展開が出来るのだろうかと心配したのだが、期待以上の面白さだった。ぜひ、1作目から読むことをオススメしたい。 |
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オスロ警察の警部ハリー・ホーレ・シリーズの第4作。日本では第3作、第7作、第1作に続く翻訳出版である。
オスロ市内の中心部にある銀行が襲われ、犯人は女性行員一人を射殺し、金を奪って逃走した。現場には何も手がかりが残されておらず、プロの犯行だと思われた。本来は強盗部の担当だが、殺人事件でもあるため捜査チームに加わったハリーだったが、捜査が行き詰まったため、新人刑事ベアーテと二人で独自の捜査を進めることになる。ところが、必死の警察をあざ笑うかのように次々と銀行が襲われた。 そんなある日、ハリーは昔のガールフレンド・アンナに誘われて彼女の自宅を訪ね、翌朝、前夜の記憶が無い状態で目覚めた。しかも、新たな死体発見現場に呼び出されてみると、そこはアンナの自宅だった。アンナの死は拳銃自殺と判断されたが、疑問を持ったハリーは真相を探り始める。だが、何の成果も上げられないでいるうちに、ハリーは容疑者として追われることになる・・。 連続銀行強盗とアンナの死、二つの事件捜査が並行して進む構成で、それぞれの話が、それだけでもひとつの作品として成立するほど良く出来ているので非常に読み応えがある。さらに、第3作から続いているハリーの相棒刑事の死を巡る物語も見え隠れして(第5作で完結とのこと)、最初から最後まで意外性に満ちた、緊張感あふれるストーリーが展開されて飽きることが無い。 本格警察小説であり、社会派サスペンスであり、人間心理の複雑さを見事に描いた心理小説でもあり、どなたにもオススメできる傑作エンターテイメントだ。 |
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巻末の解説によると、本作品はディヴァインの著作としては2作目ながら本邦初訳だとか。1962年発表なので実に半世紀以上前の作品だが、まさに「トラディショナルな本格ミステリ」と呼ぶにふさわしい、風格を感じさせる作品である。
スコットランドの地方都市で診療所を経営する医師ターナーは、2ヶ月前に事故死した共同経営者のヘンダーソン医師が実は殺されたのではないかと告げられる。自分でも事故説に疑問を持っていたターナーは犯人探しに乗り出し、医師殺害の動機、機会、手段を持つ人物を絞り込んで行くのだが、周辺からはターナー本人とヘンダーソンの未亡人も犯人ではないかと疑われてしまう。さらに、ヘンダーソンの隠された秘密が明らかになり、重要な目撃者と思われた人物が殺害され、事態はますます混沌としてしまう・・・。 フーダニッドの王道を行く構成で、あっと驚くようなトリックや騙しの要素は皆無で、後から振り返れば犯人を指し示す情報は全て、物語の早い段階から読者に提示されている。それでもほとんどの読者は最後まで(ターナーが解説するまで)犯人の絞り込みができないだろう。それだけ登場人物のキャラクター設定が巧みで、読者をミスリードする技術が抜群に優れている。 半世紀の経過などまったく感じさせない傑作として、本格派ファンには絶対のオススメだ。 |
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イブ&ローク・シリーズの第34作。このシリーズ、これまで一度も読んだことが無かったのだが、作者のJ.D.ロブはロマンス小説の人気作家ノーラ・ロバーツの別名で、20年間に42冊という驚異的なハイペースで発表され続けているという。
本作は、12年前、イブが新人警官だったときに逮捕した連続少女暴行犯マックィーンが脱獄し、イブへの復習を仕掛けるというのがストーリーの本筋。さらに、イブの生い立ちに関わる因縁の街・ダラスが舞台となることで、忌まわしい過去から決別するための苦闘がサブストーリーとして物語に重みを加えている。 マックィーンの脅迫手段、捜査の進展、衝撃のクライマックスというスリリングなストーリー展開は抜群に面白く、警察小説として非常に高く評価できる。ただ、随所に出てくる「ロマンス小説」の味付けが、個人的には鼻について減点要素になった。 時間設定が2060年代ということで登場するさまざまなガジェットの名前や機能がちょっと特殊だったり、シリーズ物なので過去のエピソードが関連するシーンがあったりするのだが、読み進めるのに邪魔になることは無い。 ドライでクールなサスペンスが好みの方にはオススメできないが、ミステリーにもロマンチックな味わいが欲しい方にはオススメだ。 |
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シカゴの女性探偵V.I.ウォーショースキー・シリーズの16作目。前作「ナイト・ストーム」を越えるボリュームで読み応え満点の力作である。
親友のロティから「知り合いの女性ジュディを捜して、助けてやって」という依頼を受けたヴィクは、ジュディがいるはずの田舎町に出かけたが、銃殺された男の死体を発見しただけで、ジュディの姿はどこにもなかった。麻薬中毒でドラッグハウスを出入りするジュディに嫌悪感を抱くヴィクだったが、ロティのたっての願いでジュディの行方を探し始めた。すると、第二次世界大戦前のウィーンから始まるジュディとロティの祖先の悲しい歴史と、アメリカの原水爆開発、現代の最先端企業の誕生秘話が絡み合う、壮大な嘘と裏切りのドラマが見えて来た。 50代になっても少しも変わらない情熱で世の不正義に立ち向かうヴィクが今回相手にするのは、なんとテロ対策に躍起となっている国土安全保障省と巨大IT企業のタッグ。資力、権力、情報力など全てにおいて圧倒的な差がある難敵に対し、一歩も引かないヴィクの激闘が読者のハートを熱くする。それにしても、テロ対策の一言で基本的人権を全て無視する行政機関の横暴と、あらゆるネット情報を監視して個人情報を盗み取る巨大IT企業の図々しさには、ヴィクならずとも腸が煮えくり返る思いがするが、同じことが日本でも起きる可能性が高い(すでに起きている)ことを考えると、とてもアメリカのフィクションとして読み流すわけにはいかなかった。 とは言え、社会派エンターテイメントとしても一流の仕上がり。シリーズでおなじみの周辺人物&犬たちも健在で、読者の期待に応えてくれる。すでに完成しているという次作の登場が待ち遠しい。 |
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