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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数138件
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2018年、フォーサイス80歳の長編小説。天才ハッカーを見出したイギリスの老スパイが敵対国のシステムを次々に破壊していく国際謀略小説である。
アメリカ国家安全保障局のシステムに何者かが侵入した。激怒したアメリカはイギリスの田舎町に住む犯人を特定し、英国特殊部隊に逮捕、引き渡しを要求する。しかし、英国首相の安全保障アドバイザーであるウェストンは、犯人がアスペルガー障害を持つ18歳の若者だ太ことから、米国に引き渡して厳罰にするより、彼の天才を利用することを英米の首脳に提案する。フォックスと名付けられた天才ハッカーはウェストンの指示の下、ロシア、イラン、北朝鮮などを相手にしたサイバー攻撃「トロイ作戦」をスタートした。 実在の人物、現実に起きた事件を想起させるストーリーで、生々しい国際情勢と情報戦の実態がリアリティたっぷりに描かれている。しかしいかんせん、よくできたノンフィクションを読まされているようで、ストーリーは面白いのだが、それを膨らませる物語性がなく、ワクワクするような感動はない。 現代のスパイ活動の一端を知るには格好の作品だが、そこだけで終わっているのが残念。 |
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「彼女のいない飛行機」、「黒い睡蓮」に続くフレンチ本格謎解きミステリーである。
27年前に父親の故郷・コルシカ島でのバカンス中に交通事故で父、母、兄を亡くし一人残されたクロチルドは、自分の娘に祖父母の悲劇を伝えるために夫、娘を連れてコルシカ島を訪れた。すると、滞在先のバンガローに一通の手紙が届き、そこにはまぎれもなく母の筆跡で「あなたの姿を見たい」と書かれており、母とクロチルドしか知らないはずの事柄が書かれていた。事故で死んだはずの母は生きているのか? 亡くなったのなら、この手紙は誰が、どんな意図で寄こしたのか? 謎にとりつかれたクロチルドは当時の事情を知る人々を訪ね、調べ始めたのだが、身辺にはさらに不可解なことが頻発し、謎は深まるばかりだった…。 27年前の事故の真相、現在の母の生死という大きな二つの謎が密接に絡み合う複雑怪奇なストーリーが、27年前はクロチルドの秘密日記、現在はクロチルドの語りで展開される。その中に、コルシカ島独自の文化の明と暗、若者たちの恋愛、大人の恋と不倫などがちりばめられている。よく言えば単純な謎解きだけではないきらびやかな物語だが、意表を突く謎解きの部分も含めて緊迫感に欠けるものとなっているのが残念。 第一作「彼女のいない飛行機」が傑作だっただけに、作品ごとにガッカリ度合いが高まっているのが惜しい。 |
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傑作「流」はこの小説に結実した!、というセールストークに見事に騙された。
これは家族の物語であり、作家の自己確認の物語である。読者にとって面白いかと言えば、何とも言えない。 ストーリーはそれなりに面白いのだが、読むことで何かが得られたという感覚はなかった。 |
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アメリカでは大ベストセラー作家と言われるコーベンの2020年の作品。70歳を超える女性刑事弁護士が、謎多き天才調査員とともに失踪した女子高校生を探すうちに予想外の秘密を暴いてしまう、サスペンス・ミステリーである。
冠番組を持つ売れっ子刑事弁護士のヘスターは孫息子のマシュウから「同級生でいじめられっ子のナオミが姿を消したので探して欲しい」と頼まれる。ヘスターは亡き息子の親友で調査員のワイルドに協力を依頼する。ワイルドは34年前に森の中で一人で暮らしていたところを発見されたという特異な過去を持っており、いまだに社会になじまず、森の中で孤立した生活を続けていた。個性が強すぎる二人だが、力を合わせることで誰もが想像もしなかった真相にたどり着くのだった。 主要な二人をはじめ、登場する人物がそれぞれかなりなキャラクターの持ち主で、人数が多く関係が錯綜する割には読みやすい。ただ物語の肝になるのが何なのか? いじめ、SNSの闇、性差別、DNA検査、親子・家族の在り方などなど、背景になる要素、エピソードが多すぎてストーリーの骨格がぼやけてしまっている。最後の問題解決方法も、イマイチ納得しずらい。一言でいえば、まとまりの悪さが残念というしかない。 |
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フランスのディクスン・カーとして知られる(知らなかったが)アルテの1994年の作品。幽霊や怪人が登場する密室事件を名推理で解き明かす、名探偵・ツイスト博士シリーズの一作である。
ロンドン警視庁のハースト警部とツイスト博士のもとに「毎日、不審な手紙を届ける奇妙な仕事を頼まれた」という失業者と、「暗号のような言葉を残して美女が消えた」という青年が相談に来た。どちらも「しゃがれ声の男」が登場することに気づいたツイスト博士は調査に乗り出し、しゃがれ声の男からの電話でロンドン郊外の小さな村の無人の屋敷に導かれた。そこは5年前に偏屈な老人が孤独死した屋敷で、幽霊が出るとの噂があり、屋内には無数の古靴が並べられていた。しかも室内には埋葬されたはずの元住人の死体があった。ドアも窓も内側から施錠され、積み重なった5年分の埃はどこも乱れていなかった。死体は空中を飛んで来たのか? 幾重にも重なる密室の謎を、ツイスト博士は「哲学的思考」で解いていく…。 ありえないような動機と手段の犯罪で、本格謎解きミステリーのファンにはおススメできるが、現在の社会性が強いミステリーを読んできている読者には物足りないだろう。読者を選ぶ作品である。 |
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懸賞金ハンター「コルター・ショウ」シリーズの第2弾。ショウが単身、山の中に孤立したカルト教団の研修施設に潜入し、教祖の悪辣なたくらみを暴くアクション・サスペンスである。
悪の集団の秘密を暴き、カルトに囚われた人々を救出するとともにサバイバリストだった父に教え込まれたスキルをフルに発揮してピンチを乗り切り、無事に帰ってくるというスーパーヒーローもののパターン。背景となるのがワシントン州の奥の山地という点ではC.J.ボックスのジョー・ピケット・シリーズを思い起こさせるが、あれほど自然の雄大さや美しさに依拠した作品ではない。自然環境はあくまでもショウのサバイバル能力を引き立てるための舞台と言える。ストーリー展開もどんでん返しも、ディーヴァー作品ならこう来るだろうという想定の範囲内で収まってしまっている。ストーリーのポイント・転換点があまりにもヒーローに都合よく進むのもちょっと白々しい印象である。 ディーヴァーのファンなら読んで損はないだろうが、ディーヴァー作品が初めてという方にはオススメしない、ぜひリンカーン・ライム・シリーズから読み始めていただきたい。 |
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2019年の書き下ろしなのに、まるで20年からの新型コロナ騒動を予知していたかのような内容に驚かされる。さらに、小説とイラスト(挿画というより劇画的な)との組み合わせも効果的で、いろいろな意味でインパクトがある作品だ。
ストーリーは、全編伊坂幸太郎ワールド。そのファンタジーが楽しめる人にオススメする。 |
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「暗殺者グレイマン」シリーズの第一作。最初から最後まで、徹底的に戦闘シーンにこだわったアクション・エンターテイメントである。
元CIAの極秘部門に属していたジェントリーは、よく分からない理由で解雇され、さらに「目撃しだい射殺」指令を出された。CIAの追跡を逃れてジェントリーはイギリスの民間警備会社と契約し、同社の暗殺を主とする闇の仕事を受けていた。その一つとしてナイジェリアの大臣を暗殺したことから命を狙われることになった。しかも、ジェントリーの命を狙うのは超高額な賞金を提示された、12の発展途上国の特殊部隊である。たった一人で100人を超える刺客に立ち向かうジェントリーの運命は…。 アクションもので主人公が超人的なのは当たり前だが、本作はちょっと度が過ぎる。使用する武器などは現実に基づいているのだがアクション、ストーリーともにリアリティがなく、まったくサスペンスがない。さらに、ヒーローの設定も矛盾だらけ。久々に無駄な読書時間を費やした。 武器マニア、サバゲーマニアなら楽しめるかもしれない。 |
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「エリカ&パトリック事件簿」シリーズが人気のスウェーデン女性作家の新シリーズ第1作。夫にないがしろにされた挙句に裏切られた女性が立ち上がって反撃する、激情サスペンスである。
不幸な過去を故郷に置き去りにしてストックホルムに出てきたフェイは名門大学で出会った青年・ヤックと結婚し、夫が起こした事業が大成功をおさめて富も名誉も得て、豪華マンションで娘と3人で他人がうらやむ生活を送っていた。しかし、結婚生活は自分を殺してひたすら夫に服従するばかりで、心の底にはむなしさを抱え込んでいた。フェイの苦悩も知らずヤックは浮気をし、バレると開き直って離婚を言い出した。財産分与もなく追い出されたフェイは怒りに燃え、徹底的な復讐を誓った。そして三年、自分の事業で成功したフェイはヤックを破滅させるために周到な計画を立案し、実行に移すのだった…。 夫に裏切られた妻の復讐劇であり、また社会的に抑圧された女性の反撃であり、さらに都会の勝ち組の皮相的な生き方を皮肉った辛辣なコメディでもある。それにプラスされるのが大胆なセクシーシーンで、まさにハーレクイン的エンターテイメントである。 「エリカ&パトリック事件簿」のファンにはちょっと物足りない作品で、2時間完結ミステリードラマのファンにしかおススメしない。 |
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8作品を収めたSF短編集。タイトルだけで「杉村三郎」系の作品かと思って読んだら、まるで違っていた。
作品のテーマは現代性、社会性があるものなのだが、いかんせんSFには興味も親しみもないため、真価を味わうことができなかった。 SFファン以外にはおススメしない。 |
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2015年から20年にかけて「小説新潮」に連載された長編小説。偶然見つけた古文書に書かれたドイツ浪漫派の作家・音楽家であるホフマンの謎を解明する、ビブリオミステリーである。
上下二段組みで680ページ、しかも最後の60ページほどは袋とじという凝った装丁の大作で、物語も19世紀初頭の作家・音楽家であるホフマンにまつわる謎と、古文書を読み解く現代の関係者たちの謎とが重なり合って展開されるという複雑な構成。しかも、19世紀のドイツ浪漫派、ホフマンの諸作の話が半分ほどを占めているので、そうしたジャンルに知識が無いものにとってはひたすら退屈。また、現代の登場人物たちのドラマもかなりご都合主義でちょっと白ける。 ドイツ浪漫派やホフマンに興味や知識がある方以外にはオススメしない。 |
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伊坂幸太郎の10冊目の長編小説。猫が喋り、鼠が交渉する世界で起きた戦争と国家支配と住民の不思議な物語である。
妻に浮気された40歳の公務員が船で釣りに出て遭難し、気が付いたら体を縛り付けられており、しかも胸の上に乗っかった猫が「ちょっと話を聞いてくれ」と語りかけて来た。その話は、猫が住む国で起きた戦争と敗戦と占領と国民の間に伝わる伝説の兵士たちの物語だった。 現実とパラレルに出現する異世界で現実の世界を反映しためるくめくようなファンタジーが展開するという、伊坂幸太郎お得意の世界の話である。そこの部分を楽しめるか否かが、本作への評価の分岐点であり、個人的にはどっぷりと浸り込むことは出来なかった。 ファンタジックな物語で現実世界を照射するという伊坂ワールドが好きな人にはオススメする。 |
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これまでお目にかかったことが無かったニュージーランド発のミステリー。しかも、車椅子の素人探偵が未解決事件の謎を追ってアクション・シーンを展開するという珍しいことばかりの作品である。
ニュージーランド最南端の小さな町の人里離れたコテージに引っ越して来たフィン。ビジネスでは成功していたものの精神のバランスを崩し、酒に溺れた末に交通事故を起こして車椅子生活になり、すべて投げ出して移住して来たのだった。住み始めて間もなく、隣りの農場を訪れたフィンは、そこで出会った三兄弟・ゾイル家に強い違和感を覚える。さらに、フィンが住み始めたコテージの前の持ち主の女性の娘と夫が26年前に相次いで行方不明になり、しかも娘の骨の一部がゾイル家の敷地から発見されていたことを知り、事件を調べてみようとする。ゾイル家の三兄弟は取り調べを受けたものの起訴されることは無く、事件は未解決のままなのだが、フィンは三兄弟の犯行だと確信する。決定的な証拠が見つからない事件に焦燥を深めていたフィンは、今度は三兄弟から脅迫されるようになった。 ニュージーランド南端の荒涼とした風景をバックグラウンドに、不気味な登場人物、独特の文化的背景から生まれる人間関係が重苦しいドラマを展開する。さらに主人公が人生に絶望した車椅子生活者という点もどんよりした雰囲気を強めている。謎解きミステリーとしては一定のレベルに達しているのだが、周辺エピソードがあちこちに飛んでストーリー展開が遅いのが難点。珍しいニュージーランドの文化、自然、社会風俗の面白さはあるもののミステリーとしての面白さが削られる結果となっている。 謎解きミステリー、サスペンス作品のファンにオススメする。 |
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大傑作「模倣犯」から9年後、事件で主要人物だったライター・前畑滋子が再び難事件の謎を解く、真相解明ミステリーである。
事件から9年を経てライターとして再起し始めた前畑滋子のもとに、12歳の息子を交通事故で亡くした母親が訪ねて来て「息子には超能力があったのではないか。真実を知りたい」と依頼された。子を思う母の真摯さにほだされた滋子が、超能力の現れだという遺された絵を手がかりに調査を進めると、16年前に殺害され自宅の床下に埋められていたという少女殺害事件に遭遇した。娘の殺害を自供した土井崎夫妻は、なぜ娘を殺したのか、なぜそれを16年間に渡って隠し続けてきたのか? 二人の子供の死を巡り、物語は家族の愛憎、死の受容、そして再起への苦闘という壮大なテーマのドラマへ広がって行く。 事件の真相解明のプロセス、事件の背景となる状況の説得力は力強く、謎解きミステリーとして極めてハイレベルである。しかしいかんせん、事件発覚のポイントが12歳の子供の超能力(サイコメトラー)というのが、何とも残念。さらに、滋子が事件の真相を確信したのも超能力の存在を信じたからというのも、ファンタジー的で納得できなかった。それでも、最後まで引きつける物語としての魅力を失っていないのはさすがである。 「模倣犯」を読んでいてもいなくても楽しめる。超能力、サイコメトラーなどに関心がある人にはオススメだ。 |
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2018年に発表された書き下ろし長編。双子のテレポーテーションという、ちょっと微妙な裏技をメインにした勧善懲悪ミステリーである。
すぐに暴力を振るうクズの父親と自分の身を守るのに精一杯の母親の家で虐待されている双子の兄弟。兄の優我は勉強ができる論理派、弟の風我は運動が得意な直情派という性格の違いはあるが外見はそっくりで、本人たちも二人で一つと考えていたのだが、ある年の誕生日に二人が瞬間移動して入れ替わることに気が付いた。しかも、年に一回、誕生日の日に二時間おきに入れ替わるのだ。虐待される日々の苦しさを乗り越えるために、二人はこの特殊な出来事を利用することを考えた。そして青年となった時、因縁の父親と対決することになる。 親子間の虐待がメインで、さらに学校でのいじめや嗜虐的なサイコなど、暗くて陰惨なエピソードが多く、いつもの伊坂作品のようなふわっとしたストーリー展開が無い。読み通すのが辛くなる作品である。それでも、邪悪なものを許さない基本姿勢と人のトランスポーテーションというファンタジーで、最後まで飽きさせない。 積極的にオススメする要素は少ないが、伊坂幸太郎ファンなら読んで損は無いと言える。 |
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ジョー・ピケット・シリーズの第9作(邦訳は8作目)。今回は、ジョーが猟区管理官としてより法執行機関の一員として派手な追跡アクションを繰り広げるアクション小説である。
悲惨な事件で死んだはずのエイプリルからシェリダンにメールが届いた。危険の状況にいるので電話は出来ない、メールだけで連絡するというエイプリルだったが、何とか見つけ出したいと願うジョー家族が調べてみると、エイプリルの行く先々で謎めいた殺人事件が起きており、エイプリルは犯人たちと行動をともにしているのではないかと思われた。無事にエイプリルを助け出すために、ジョーはシェリダンを伴ってエイプリルを探しに出かけ、さらには逃亡中のネイトの助けを借り、犯人たちを追跡する・・・。 エイプリルと犯人たちのパートとジョーたちのパートが交互に展開されるので、犯行の動機、社会的背景の深掘りではなく、犯人を追いつめるアクションが物語の中心になっている。さらには、死んだ少女が甦ってくるというあざとい技も使ってあり、犯人たちの犯行動機も粗雑だし、猟区管理官という特殊性を生かしたエピソードも少なく、いつものシリーズ作品とはテイストが異なっている。 ジョー一家の家族関係に大きな変化が訪れるという意味では、シリーズ読者には必読。それ以上でも以下でもない。 |
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限られた相手だけから仕事を受ける美貌の私立探偵・上水流涼子を主人公にした連作短編集。ヒロインの美貌と助手の知力で、訳ありの依頼人からの難題を次々に解決して行く、エンターテイメント作品である。
5作品それぞれにテーマは異なるものの、意表をつくアイデアと行動力ですいすいと問題を解決して行く様は痛快である。ただ、ストーリー展開の面白さだけの作品で、背景や動機などに対する深みはないため、全体に印象が軽い。 旅のお供として、空港や駅、車中で読むのには最適である。 |
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日本初紹介のアメリカ人作家のデビュー短編集。O.ヘンリー短編賞を受賞した作品を含む全10作品である。
どれも非常に凝った構成で、文章を理解し、ストーリーを追いかけるだけで非常に疲れる。エンターテイメント要素はほとんどなく、現代アメリカ文学の一側面を知りたい人以外には向かない気がした。 |
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シリーズ累計250万部突破とうたう「マスカレード・シリーズ」の第3弾。一作目に続く、刑事とホテルマン(実際はホテルウーマン)のコンビが主役の犯人探しミステリーである。
匿名の通報から始まった一人暮らしの若い女性殺害事件。警視庁捜査一課の新田刑事たちが担当になったのは、捜査本部に「犯人がホテルコルテシア東京で大晦日に開かれる仮装パーティに現われる」という密告状が届いたため、第一作で潜入捜査で実績を挙げた新田たちが再びホテルに潜入することになったのだった。現在はホテル・コンシェルジュとして活躍している山岸を始めとするホテル側スタッフの協力を取り付けた捜査陣だったが、参加者全員が仮装しているなかで、どうやって犯人を見つけ出すのか、顧客のプライバシーに神経を使うホテル側とトラブルを起こしながらも、じりじりと犯人に迫って行くのだった。 女性殺害事件は連続殺人だったのではないか、犯人と密告者の関係は何なのか、仮装パーティーを舞台にしたのはなぜか、など、ミステリー作品としての本筋はいくつかあるものの、本作品ではコンシェルジュ・川岸の働きぶりがメインとなっていて、ミステリーとしての印象が薄められている。さらに、殺害動機、事件の様態や背景などが最後に関係者の告白でまとめて説明されるという、ちょっと雑なというか、興趣を削ぐ構成になっているのが残念。東野圭吾というより、一発屋ミステリー作家みたいで白ける。 シリーズ中で一番出来が悪い作品だが、謎解きよりホテルという舞台の裏側を見てみたいという人にはオススメできる。 |
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吉田修一のデビュー作「最後の息子」のその後をファンタジーのような、リアルなような浮遊する世界観で描いた連作短編集。途中に挿入されているモノクロ写真が示唆するようにカルチャー雑誌のエッセイのような心地よさと冷たさを持った物語である。
吉田修一ファンならぜひ、というほどの作品ではない。 |
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