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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへレビュー数89件
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嫌いな作家である。
が、何故かまた読んでしまう作家である。 この作品は各章が、「母性について」「母の手記」「娘の回想」という3人(?)の視点から語られる3つのショートストーリーを1セットに、計6章+終章という構成で成り立っている。 従って、表題の通り 母と娘の話である。 そうして登場する人物は、この2人に纏わる近しいヒト、主に家族と呼ばれるヒトのみである。 ここには、巷の小説でよく登場してくる異常者や偏執狂、殺人鬼が出てくる訳ではないしホラー的な作品でもない。 登場人物それぞれが、聖人君子とまではいかないまでも、それほど異常でも特別変わっているわけでは無い。 にも関わらず、これが同じ時を過ごし同じものを見聞きした母と娘との話か!というくらいに食い違うのである。 些細な思い込みやスレ違い、食い違い広がり深まって行く到達点がこうなるのかと、薄ら寒くさえある。 特筆すべきは、母の実母の存在か。 ある意味彼女のみは聖人かもしれない。が、その聖人性が関わるすべての人に悪影響を及ぼしており、ある意味では 良い人であるが故に 逆に言えば悪魔的でさえある。 どちらにしても、相も変わらず 人に対する悪意に満ち満ちた作品である。 では何故読んでしまうのかといえば、他人事として「まだましか」と思える期待を持って読み始め、その期待を裏切らない安心感と、 「他人の不幸は蜜の味」、それだけの為に読んでいるのかもしれない。 了 |
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この作家の作品を読むのは何冊目になるんだろう。
作品間で登場人物が繋がったりすることが多いから、デビュー作より順番に読んできています。 で、なにはともあれ面白い!!! いつもながら プロット、伏線、スピード感、リアリティー、何をとっても秀逸。 今回の作品は 『グラスホッパー』の続編という位置づけだったこともあり、再度さらっと読み直してから 本作を読み始めたので、導入から非常に流れよく合流できる。 そうして、続編の予想通り登場人物もしっかり重なっており、それがまた楽し。 伊坂の登場人物は正義と悪がはっきりしていていて、潔いのが特徴。 最後は正義が勝つというある意味ヒーローモノ的な作品が多いのだが、この度のヒーロー役は犯罪組織に属し殺し屋を稼業をされている方とその関係者御一行様。 対するヒール役には、小生意気で頭の切れる中学生のクソガキを持ってきているちぐはぐさが、もう うまいとしか言いようがない。 この殺し屋たちと、クソガキのやり取りがテンポよく、それが東北新幹線の東京⇒盛岡間の一種密室で行われていることから、ミステリーチックなところもあり、2度美味しいという感じです。 あと、度々登場する「機関車トーマス」とウォルター・ウルフは気になります。 特にトーマスファンがこの作品を読んだら、堪らないんじゃないだろうかなぁと。 とにかく、ピカレスク作品として1行目から楽しめる作品まちがいなしの傑作です。 了 |
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傑作の『虐殺器官』に続き、2冊目となる。
前作同様に、はじめのうちは 非常に読みづらい。理解にも苦しむところもあり、また1行目から 何故かパソコンの機械語になっており、腰が引ける。 が、第三章くらいから、急に世界が見え、ストーリーも動き出した時には、もう一気読み。 有無を言わさぬ展開に圧倒される。 物語の設定は近未来で、21世紀初頭に起こった「大災渦」から数十年後の話し。 その時代、一種生命を最大限尊重する世の中が構築されてるなかで、すべての人間がチップを埋め込まれ健康状態から始まり生活すべてが管理され、例えばアルコールやカフェイン、タバコはもとより、健康に害を及ぼすとされているものが廃止されている様に、とにかく人命は個人のものというよりは社会の財産であるという認識が定着している。 その世の中で、管理されていないのが脳、つまり意識のみ。 で、この管理に反発する少女たちが 唯一の自由として自殺を企てるも失敗するところが序章となり、その後彼女たちを中心に物語は進んでいく。 完全なプロットのもと、今回のテーマは管理社会と生命。 近未来小説でよくあるロボット支配であるとか、宇宙人がという奇想天外なものではない。 生命を最重要視される社会にとって、ヒトが生きるとはとはなんなのか、意識や意志=感情や思考が失くなった時に果たしてヒトは生きていると言えるのであろうかという重厚なテーマが繰り広げられる。 とはいえ、なにも医学的、精神学的見地に偏っているわけではない。そこには、科学技術や戦争等の紛争や、政治などを絡み合わせた内容になっている。 また一見柔らかそうに感じられる表題も、考え抜かれたうえでの命名であることがおいおいわかってくるし、非常に読みづらい元凶のコンピューターの機械語が所々に挿っている理由などもキッチリと意味がなしている。 とにかく、すべてが考え抜かれた、SFであり、ミステリーでもあり、青春小説とも言える傑作である。 了 |
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この作家の作品は、以前 『夜は短し~』と『有頂天家族』以来の久しぶりとなる。
その時には、巷で絶賛の『夜~』は理解が出来ず 続いて『有頂天~』では全く合わずに途中で断念したことから、この作家の作品はもう読むまいと思っていた。 今回なぜにこの森見作品に手を出したかというと、単に表題が気になったから。 個人的に、岡本太郎は 大のお気に入りなのである。 もともと京都の町屋で生まれ育ち、少なからず作品の主人公同様 「塔」には親近感はあった。子供の頃の太郎のイメージは、「芸術は爆発だ~」と喚いている変わったおっさんくらいしかなかったのだが、その後 抽象というものに対する知識がわずかながら増えて 彼の作品、特に「塔」に接した時に、ピカソに通じる 彼の天才性に衝撃を受けた記憶がある。 そんなこんなで、ほぼ表題だけで 久しぶりにこの作品に手を出した訳である。 読み始めて感じたのは、以前に比べ比較的入り込みやすかった。 内容としてはなんの事もない、青年がモテず振られた理由を、うまく回らない人生を自己弁護し現実逃避するために頭の中で「妄想」を繰り返す。 ただ その「妄想」レベルが、頻度もレベルも半端なく、言えばその妄想活劇だけで最後まで突っ切つのである。 なので、ある意味ついて行くには疲れる。 テンポはあるのの、非常に読みづらく 遅々として進まない。 しかし、昔を思い出して、そうそうこんな事を考えていたという記憶とともに若さに圧倒されながら、無意味に最後まで突っ切るパワーは、この年代にしか書けないものかと。 何とはなしに、万城目学のデビュー作「鴨川ホルモー」を思い出し、彼も森見とほぼおんじような経歴かと、外からやって来て京都で学生として過ごすうちに、京都という伏魔殿に取り込まれしまったということか。 ハードカバーの帯に遠藤周作の名を見て、なるほど狐狸庵先生の随筆もこんな感じだったなあと、昔読み耽った事を思い出しながら、なぜか郷愁に耽ることのできる作品であった。 |
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この作家の作品は、いままでにも何度も手にしている。
なかでも、『家守奇譚』は極上の傑作で、それゆえに自然と期待値はあがる。 というわけで、ひさびさに梨木香歩作品に読み始めることにした。 彼女の作品はもともと、和風ファンタジー色が強く、それはこの作品でも同じである。 が少々異なるのは、和と洋が入り混じっていることであろうか。 あらすじとしては、双子の弟が死に、残った姉のことを両親は見て見ぬ振りをすることで、つらい現実から目を背けている家族、となる。 その様な孤独な生活の中、友人の祖父と仲良くなりいろいろと昔話を聞くなかで、近所にある洋館の裏庭の話を聞く。 あるときその友人の祖父が倒れたと聞き、自然と足がその洋館に向く。 自然と飛びがが開き 家屋のなかには、悠仁の祖父が語っていた異世界=裏庭と繋がっている大鏡を目にする。 その鏡は異世界への入口で、裏庭の世界に入り込み 少女は自分探しの旅を始める、という物語。 なれど、前半のテンポの悪さと、現実の世界と異世界の話の混同、主人公の少女、その母、祖母もまたその洋館とその住人に関わっており、それぞれの少女時代に纏わる話が混在するためか、非常にわかりづらく、それ故に物語の世界に入り込みづらい。 とはいえ、ファンタジーで物語に入り込めないのはある種致命的で、その面白みに欠ける作品となってしまっていた。 期待したがゆえに、残念な作品であった。 了 |
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初めて読む作家であり、非常に評判の良い作品だったので 期待して読み始めた。
ジャンルは、SF新本格というSF的要素を取り入れたプロットの組まれた推理小説とのこと。 ストーリーとしては、主人公があるタイミングになると、9度 同じ1日が繰り返されるという突拍子もないもので、確かにSFではある。 が、SF的要素は この同じ日を何度も繰り返す能力(?)があるというだけであり、それ以外はごくごく普通のストーリー。 とはいえ、主人公の意思で戻れるわけではなく たまにその周期に「落ち込んで」しまうだけである様に受身的な能力だし、その間の出来事も深夜12時にほぼリセットほされてしまうので、実質的にはほぼ無意味な繰り返しが生じる。 唯一リセットされないのが主人公の記憶だけで、彼の体験した記憶だけは残る。 確かにそれまでリセットされてしまえば、その事実を知る人が一人もいないことになり、小説として成り立たなくなる。また、この彼の8回の記憶のみがあることと、繰り返しの最中に主人公は行動を変えてもいいというルール(というよりはルールがないだけなのではあるが。。。)が、この作品のミソになっている。 そうして9回目(最終回)が、最後の正規の周回としてその日が最終として消えずに残り、やっと本当の次の日を迎えることになる。 ここで少々設定として面白いのは、なにをしてもいいということ。 よくSFタイムトラベルモノとかでは、歴史を変えてはいけないというがあるが、この作品では前向き、実験的にその中間の周回を使う点であり、この発想は奇抜であり感心する。 そういう設定の中で、殺人事件が起こる。 その原因を突き止め事件を阻止しようと、主人公はひとり 毎回条件を変更しながらに奮闘するのだが なかかなに思うように行かず、さあて上手く殺人を阻止できるでしょうか、という内容。 とはいえ、読んでいても入り込めない。 それはストーリーの突飛さに起因するところが大きいのかもしれないが、それよりかは読みづらいのである。表現力が稚拙で奥行がなく、情景が浮かんでこない。 あとこの9回の繰り返しも、主要な回だけ深掘りし大したことのない回は流すのではなく、毎回をひとつの章としてこれも平面的に語られる。 確かに毎回、なにかを変化させようとするので内容は異なるのだが、同じ日を9回もパターンを変えて繰り返す。 途中でいい加減にしつこくて、 飽きと嫌気がさしてくる。 というわけで、わたしとしては期待していた分 非常に残念な作品であり、がっかりな作品であった。 了 |
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読みづらい作品ではあった。
長いあいだ、買い置きしていたのは 表題からどうしても気が進ま無かった。 読み始め、30代の若者が書いた作品であろうとのことで、薄っぺらい内容か、それとも必死に背伸びして書いた、どちらにしても全く期待していなかった。が、途中でこの作家が若くして亡くなっているいることを知り、感傷も入った為か、斜に構えて読み始めたわたしの気持ちが変わり、素直な気持ちで物語に入り込めるようになった。 すると、この作家の奥深さが理解でき、感傷どころではない、のめり込んで読み始めていた。 ストーリーとしては、近未来の原爆が投下されたあとの近未来の地球。 そこでは徹底した管理社会が実現しており、ただしその徹底管理から漏れるジョン・ポールなる人物、彼が現れる所、テロが勃発することから、任務として彼を追いかける特殊部隊の暗殺者の主人公が、遭遇する様々な事態に対処しながら進んでいく。 そのなかに戦争、テロ、武器は言わずもがな、医学、心理、社会、経済、宗教を違う角度から眺め、その知識をほんとうにあっさりと書き流しながらも、所狭しと盛り込まれているため、読み進めるのには相当に時間がかかる反面、知的好奇心を掻き立てる やわらなか筆致が内容と対称的になっている。 静謐の中 この物語が閉じていくときに、ふと 『夭折の天才』という言葉が頭をよぎった。 了 |
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現在の事件と歴史の真実を並行して進めながら解決に導く構成はいつもながら。
現在の事件を並行させているのは 高木光琳のまねなのか、それとも歴史の真実を暴くストーリーだけでは、読み手を疲れさせたり、飽きさせる。その配慮のためなのか、単に職業作家として頁数を稼ぐためなのか、どちらにしても 歴史部分以外は余談でしかないので、本題にのみ焦点を合わせる。 今回のテーマは、天智天皇の死にまつわる歴史の前後に起こった史実と異なる事実を予想する作品となる。 このあたりの時代がテーマになると、物証となるものが文献以外に無いために 学者もその物証と歴史の流れの齟齬を埋めるのに四苦八苦しているであろうが、もしその物証なきこと イコール事実ではない、という言い切りが出来れば、向上心のない職業学書としては それほど楽な職業はない。 井沢はよくこの点を浮き彫り師にて、否定するのだが それでも切り崩せないのは それほどに抵抗勢力が強いということか。 日本の大学生が勉強しない理由の一つに、この現実性が伴わない学会全体を取り巻く排他主義があるのではないだろうか。 井沢の推理は、全てが彼個人のオリジナルではなく、大半が一般人の研究をかき集め、そこから新論を打ち立てる手法で、要は大部分がぱくりである。ただし、否定ではなく正しいと思えば堂々とパクり、そこからさらに昇華させるさまは、ある意味あっぱれである。 ということは、前おきはそこそこにして、本題にはいる。 当作は天智天皇の死にまつわる歴史の前後に起こった史実と異なる事実を予想する作品となる。 暗殺されたとする理論を打ちたて、そのなかで誰がなぜ殺したを追求していくなかで、兄弟寺の延暦寺と三井寺の確執、近江京から平城京から平安京への遷都理由、日本書紀・古事記の嘘、百人一首の第一番歌(天智作)が貧乏臭い訳、天皇陵が京都山科とぽつんと片田舎にある理由、当時の中国(唐)、韓国との外交関係(任那、新羅)、天皇の諱、諡(持統、継体など)、日本最大の池があった巨椋池の謎と、ひとつの嘘(天智の死)のほころびからどんどんと話を広げていくさまは圧巻とも言える。 メインテーマの暗殺の首謀者の結論部分が不明瞭でこじ付け感があったため、評価は低めしたものの、古代の息吹きが感じられる秀作であった。 了 |
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以前に読んだこの作家の作品「メルカトル~」は、兎に角 下品で胸糞の悪くなる作品で途中で放棄、二度とこの作家の作品を読むことはないと思っていたが、ひょんなきっかけからこの作品を手に取ってしまった。
読み進める上で前述の作品とは打って変わって、本格推理に変貌を遂げていた。 概要とすれば2部構成となっている。 第一部は、主人公で冴えない自殺を考えて鄙びた温泉宿に来た青年と隻眼の探偵少女が出会うところからスタート。 連続殺人事件に遭遇し いったんは解決を迎えるだけの話であるが、内容的にもなにかしっくりとせず、また文体筆致も読み進めづらく、面白くはない。 それが、第二部は突然18年後にぶっ飛ぶのだが、前部とすべてがガラリと変わる。 ストーリーとしては、18年前 事件解決後に自殺に失敗したものの記憶喪失になって別人と暮らしてきた主人公と新聞で事故死した名探偵となった隻眼の少女、という前提からはじまるのであるが、始めからは雰囲気がガラリと変わる。 郷愁もあり再び温泉に向かう主人公が出会うのは、瓜二つの隻眼の少女の娘。そこでまた事件が始まり。。。 後半はとにかくスピーディーで、過去と現在の問題が同時並行で進んでいく。そうして前半の違和感も徐々に払拭されていくのだが、これこそ本格推理という具合に、意識は犯人探しにやっきりになっている。 どんでん返しがあることが予測できるので、その伏線を意識して読み進めるも 結末は凌駕するはず。 奇を衒った様相は 正に現代版横溝正史で、あくまでレベルの高い本格推理小説と呼ぶにふさわしい、なっとくの1冊であった。 了 |
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『TENGU』、『GEQ』と読みつないできた作品と比較をすれば、小さくまとまった作品といえよう。
世界観、テーマ、科学的推論、どれもが小さい。 だからといって、この作品が即に駄作か、というとそうでもないのである。 プロローグの主人公を未知の生物目線にすることで、どのような生き物であれ 少なくともこの作品で何かが存在することを擦り込まれる。 というか、題名のとおり、初っ端に登場するのが 河童(カッパ)目線なのである。 だから、物語が始まる時には既に、未知の生物の存在は当たり前のこととして読み始めているのである。 そうして、人が襲われたときの警察の初動捜査が殺人事件であることを知っているわれわれ読者は、その組織で一匹狼の刑事や、フリーの記者、地元民が知らぬ間に協力して、突き止めようと立ち向かう。 紆余曲折の末、この怪物が 〇〇であることを突き止め・・・と続くのだが。 後半は、既に怪物の正体が明らかにされているのでたいした緊迫感はない。 が、ストーリー性以外でも 登場人物それぞれの成長やがあり、物語に引き込む力強さなど、単なる謎解き殺人ミステリーから一歩突っ込んだ作品で、十分に秀作といえよう。 了 |
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井沢元彦は、パクリ作家です。
ただただ、人の説を学説をひたすらにパクりまくる。 とはいえ、そのどれもが面白いのである。 当作は、歴史上の歌人 猿丸と歌聖 柿本人麻呂が同一人物である、という説を押しまくる。当説は作中でネタバレしているが、大昔に読んだ梅原猛の『水底の歌』が題材になっている。 なれど、主人公に折口信夫をおきながら、ところどころに金田一京助はじめ、東条英機や南方熊楠を配置させたり、百人一首と万葉集にいろは唄を混ぜるなど、興味を引き物語に引き込む手法は、ある意味本当の意味での小説家かもしれない。 無理にSF仕立てにしているところやミステリー調にしているところは頂けないが、そんな些事を消し去る暗号など、とにかく飽きさせない。 ふと思い出すのが、一時期のめり込んだ自称ハードボイルドの落合信彦なんかと同んなじ匂いで、ただただ楽しめる小説であった。 |
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やっと読み終わった、シンドかった!というのが、正直な感想。
おおまかなスジとしては、自殺した主人公が辿り着いた場所は、現世と天国の途中地点。 そこには既に、年齢も死んだ時代も異なる3人の先着者がいて4人チームで地上へ幽霊となって舞い戻り100人の自殺を止める事ができたら成仏させてあげると半ば強制的な神様ミッションに引きずり込まれる、つまらないストーリー。 こうして自殺しそうな人を思いとどまらせせる事を目的としたチームが結成され、その活動方針と目標が設定されて物語が動き出すのだが・・・。 主人公は自殺した幽霊4名で、彼らが相対するのは登場人物は自殺する直前の人たち。 自殺を考えるまで追い込まれるくらいだから並大抵ではなく、そんな彼らを説得するのだから 至る状況を理解しベストな説得方法を導き出していくといういろいろなケースはあれど、ストーリーの流れはパターン化されてい進む。文体や表現、4人の世代による異なる時代の流行語やジェネレーションギャップを会話に織り交ぜることで、全体的には軽い文体でコミカルにしているので、読みづらさはない。 そのなかで人が自殺を思い立つのには ひとつのバターンがあることを見出す。それは、 ①自分の心身/②人とのつながり/③経済力 このどれかひとつでも欠けた時、その状況によっては、人は究極、自殺という判断をする危険性があるということ。 ただし、この判断は客観性のある確固としたものではなく 一種のうつ状態による判断なので、ほとんどの場合なんらかの外的要因があれば思いとどまらせる事が可能であり、その外的要因を当書では「人命救助隊」などとふざけた名前を付けているが、変えることが出来るのである。 スパイラル、というものがある。これは意思や行動とは別の力が作用することであるが、『正のスパイラル』にある時は、自分の持っている以上の力が発揮できる。よくノっているやツイている状態の時で、この波に乗れば物事がスムーズに優位に働きやすい。 が、いったん 『負のスパイラル』 に陥いってしまうと厄介で、自分の力以上の外因がかかるわけであるから、ある意味蟻地獄のようなもの。個人の力だけで脱出するのは非常に難しい。 作者は 自殺はすべては一時的な感情(うつ)状態によるもの考えて、その時に差し伸べられるものがあるかないかが実行に移すか否かの分岐点となる。その一時的な状態さえ越えて冷静になれれば、死に至るほどのことはない。その波が引くまで待てない人にでも、なんらかの外因(それがこの作品では救助隊として現れるのだが)があれば思いとどまらせることも可能であると訴えかけているのである。 「人命救助隊」などと銘打ったりして、作品全体をおちゃらけ軽くしていますが、当書の隠されたテーマは、『自殺抑止マニュアル』である。 もし暇であれば こころが健常な間に、自分のため 、自分のまわりにいる人の為に、一度は読んでおいた方が良いかもしれません。 ただし、当初はあくまでマニュアルなので、単なる読み物として楽しみは期待しないことです。 了 |
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まったくの期待はずれ。
ホラーは好きではないが ホラーというほどの怖さもなく 、SFチックであるが深みがなく、サバイバル性もそれほどでなく、ゲーム感覚といってもおもしろみもなく、バトルロワイヤル的なれどそれほどの殺し合いもなく、とにかく いろいろな要素がこれでもかと詰め込まれてはいるものの、すべてが中途半端。 以前に読んだ 『黒い家』、これは究極のホラーであった。 それ故か、期待値が高かった分、その失望も大きい。 内容は極めてシンプルでネタバレになるために書く事ができないが、目を覚ませば見たこともない奇妙な形をした岩山に挟まれた峡谷にいて・・・・という、小説ではよくよくある 「ここはどこ?わたしは誰?」的なスタートで、無理やりに読者を物語に引きずり込む。 そうして、やはりヒロインと出会い、敵とであい、知恵を使い、戦い、はてさてハッピーエンドになるのかバッドエンドなのか。 そうして、最後にタネ明かしをするというだけの、しつこいようだがありきたりのストーリーと使い古された肉付けがひたすらになされているだけの娯楽小説。 というわけで、わたしにとっては 残念ながら読む価値のない一冊だが、あまりこういったタイプの小説を読んでない方には、読みやすくスピード感も臨場感もあり、ストーリー性もそれなりにあるので楽しめるかも。 評価が分かれる作品ではあろう。 |
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湊かなえの作品には、1本の主柱と2つのパターンがある。
柱とは、人に対する悪意である。特に子供に対して相当の悪意がある。一般的に子供は真っ白で純粋でと考えるのが正しいとされる世の中に真っ向対立する珍しい作家である。 ただし、その部分に対してはわたしも 基本性悪説であり、それは子供においても全く同じであることから否定的ではない。 次に2つのパターンというと、 1つは全面的に悪意を放出する感情的作品であり、代表作としてはデビュー作の「告白」となろう。まぁひらすら感情的であり、ほとんどヒステリーを文書化したようなものであるが、このタイプ非常に珍しくもう笑えるレベルである。 もう1つは、なぜか作家として認められ、その余裕なのかそれともプライド、地位向上、なんなのかはわからないが、感情を抑え理性でもって作品に仕上げ様と体裁を整えた作品。 基本彼女はプロの作家ではない。しかし悪意を前面に出した時にはその感情が筆に乗り移り、生き生きとした勢いのある作品となることがある。 それが理性をもって書いた時、途端に勢いもプロットも内容も在り来りな作品となる。 そうして、当作は悲しいかな後者に含まれる。 過去から多くの作家が嫌というほどに書いてきた有名な事件(事象といった方がいいのか)の焼き直しとして、既に物語の中盤でその結論は目に見えている。そんな訳で、全く面白みのない作品ではあった。 ほんの少しだけ光明があるとすれば、最後に中途半端ながら悪意が残っていたことであろうか。湊かなえの作品には、1本の主柱と大きく2つのパターンに分かれる。 彼女の柱とは、人に対する悪意である。 特に子供に対して相当の悪意がある。一般的に子供は真っ白で純粋でと考えるのが正しいとされる世の中に真っ向対立する珍しい作家である。 ただし、その部分に対してはわたしも 基本性悪説であり、それは子供においても全く同じであることから否定的ではない、というよりはむしろこ気味良い。 次に2つのパターンはというと、 1つは全面的に悪意を放出する感情的作品であり、代表作としてはデビュー作の「告白」となろう。まぁひらすら感情的であり、ほとんどヒステリーを文書化したようなものであるが、このタイプ非常に珍しくもう笑えるレベルで、ある意味この抑制のない感情を書き連ねたものが作品としての体をなしている事は驚きである。 もう1つは、なぜか作家として認められ、その余裕なのかそれともプライド、地位向上、なんなのかはわからないが、感情を抑え理性でもって作品に仕上げ様と体裁を整えた作品群である。 ちょうど恋愛作家やミステリー作家が、晩年に歴史小説に手を出すのによく似ている。 どちらにしても彼女はプロの作家ではない。 しかし悪意を前面に出した時にはその感情が筆に乗り移り、生き生きとした勢いのある作品となることがある。 それが理性をもって書いた時、途端に勢いもプロットも内容も在り来りな駄作となってしまう。 そうして、当作は悲しいかな後者に含まれる。 物語は、過去から多くの作家が嫌というほどに書いてきた有名な事件(事象といった方がいいのか)の焼き直しとして、物語の中盤では既にその結末が目に見えている。そんな訳で、全く面白みのない作品ではあった。 ほんのわずか光明があるとすれば、パンドラの箱の希望の代わりに 湊かなえの「悪意」が残っていたことであろうか。 |
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まず題名に惹かれる。
第1章ですぐに、13時13分に発生するブラックホールによる時間の跳びが発生する、その時になにか大事故がおこればどのような影響が生じるかわからいから何もするなという首相官邸の会議風景からのスタートで SFなんだと理解し、東野圭吾がSFかぁとある意味驚くとともに、期待が募る。 と同時になにか不自然で、早々に文中の科学者の説明が、「何が起こるかわかない」としている時点で、少なくとも本格SFではあるまじき科学的な根拠を放棄して物語がスタートする。 場面が変わり気づけば人が誰も世界世界に取り残された主人公がその世界で生き残った人達と共になぜか壊滅していく東京でサバイバルしながら・・・という映画でよくあるストーリーになるのだが、なぜ彼らだけが生き残ったかという謎もそうそうで予想がつき、期待はそのなかで生じる人間模様。 主人公の兄がリーダーシップをとって生存の為に突き進むのだが、彼は頭が切れるのは当たり前で、清廉潔白で意志が強く将来を見据える展望も持つ、とはいえ人の意見を聞き入れらえる度量を持つ理想のリーダー像で、前半は順調に生存メンバーを引っ張って話しが進む。 のだが面白いのは後半以降。 なぜか彼の正しさがメンバー通じなくなってくる。それは、なにも彼が強硬なことを言ったわけでも、独裁的になるわけでもない。全くブレがない。 では何が?というと、周りの人間が変化するのである。要は彼に慣れてきて、個人的主張や感情をぶつけ始めるのである。とはいえ、彼も強くてブレない その掛け合いはさすが東野圭吾といいたくなる人間模様のあぶりだしで、人間の描写やスピード感は言うに及ばず、その表現力は秀逸である。 とはいえ、彼にも不得手な分野があるんだなぁというのが率直な感想で、無理してSFチックにした感は否めない作品であった。 |
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非常にダルイ作品である。
話しの筋としても、友人がヤクザに騙されて、多くの借金を背負わされて、その保証人とし友人を巻き込んで、二人して考えついた返済方法が偽札作りで。。。という安易で面白みのない筋書き。 まず、偽造するにも ヤクザへの返済でっていう追い込まれの状況は使い古された小説の定番で、発想が貧相でまた寂しすぎて笑えもしない。 そのうえ、内容はというと、兎にも角にもひたすら偽札造り説明に終始。 一生懸命調べて覚えたんだろうなぁ、という事は理解できる。 確かにどんな製造業にも独特の特殊技術やノウハウはある。その製造物が当作では『お金』という、一般性とは隔絶された特殊物であることに、目の付け所はよい。 とはいえ 誰も現実に偽札作りをしたいとは思ってないし、その専門家になりたいと思って小説など読んでいるわけではないから、事細かな説明など不要なのである。 それにも関わらずに、その追求姿勢には目を見張るものはあるも、覚えたての知識を全て書くことがリアリティの追求、と大きなハキチガエているようにしか思えない。 そうそう小学生の夏休みの研究発表みたいな感じで。 読者が読みたいのはあくまでプロの作家の書いた小説である。その中で、確かにリアリティは大切である。ただしそれは、ちらっと垣間見えるところに、この作家調べ尽くしているな、という喜びを見つけのが愉しみなのであってその程度のいい。 当作を読んだとき、昔に読んだ『白鯨』という海外文学作品を思い出した。 非常に長い作品であある。概要は 昔悪魔の鯨モビーディックに足を食いちぎられた船長エイハブが数年後に復讐に向かう、という惹きつけられるストーリーなのだが、このメインストーリーは最後の数十ページだけで、それまでの数百ページはひたすら鯨の生態に終始するという駄作である。(作者はメルヴィル) 要は、専門的な内容を深堀りするには、普通以上の作家としての技量がなけれそれは単に覚えた知識のお披露目会さながらの押し付け感となるのである。 最後の100ページくらいはそれなりに楽しめるも、それまで要した400ページは作家の自己満足と言ってよいであろう意味で、この作品はひらたすらにダルイ作品である。 。 |
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日本の叙述レトリックの代表的作品ということで期待し過ぎた為か、思いのほかガッカリ。
2人の女性がハサミを刺されて殺害される未解決事件の犯人ハサミ男が、次のターゲットに狙いを付けて殺害タイミングを謀っているところから物語はスタートする。 が、殺人を予定した日に ターゲットが現れずに探しに出たところで、ハサミを刺されて殺されている被害者を発見することになり 第一発見者としての立場になってしまい、という流れで話は進んでいく。 なので特に後半からのどんでん返しはお約束通り、張り巡らされた伏線もも後半にはきっちりと収束しプロットも完璧ではあるのだが、悲しいかな当作品は既に15年以上も前の作品で既に様々なレトリックが巷に氾濫しつくしている現在で、少々古臭い感は拭えない。 さらに言えば、こじつけや無理矢理感もあり、とはいえ犯人へと導く伏線があからさま過ぎて途中で犯人が分かってしまう様な表現も数箇所あり、そういった意味で完成度に甘さも見られる。 ここ最近の日本の小説のレベルは飛躍的に進歩し、既に海外の作品を読んでも楽しめないくらいの高みへと昇っている。なかでも推理小説での技術躍進は著しく、それを顕著に指し示している作品なのではないだろうか。 |
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結構期待して読み始めたんだが、なんとなく物語に入り込みづらく、が故に間に何冊かの本を挟んで読んだために前後関係もあやふやになり、全く入り込めなく最後は読み流すことになった。とはいえ、全体に薄っぺらく感じられたのは読み方の問題だったのか、作品の問題だったのか、次回作で判断しよう。内容は刑事もの殺人事で、パターン的な金、恨み、混乱、それなりのドンデンはあるものの、対して真新しい発想も無かった。
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