■スポンサードリンク
ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数210件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
タイトルどうりの内容なので隠された真意を、どうドラマチックに見せるかが重要になるストーリーだと考える。その意味ではミステリとしてプロローグから中盤の展開、そしてクライマックスへと流れる話の持っていき方は
良く書かれている。伏線の張り方、登場人物の心情、裁判を起こしどう訴えるかなど丁寧に書かれていてわかりやすい。しかし、トータルで言えば後味の悪い話といえる。その問題をこういった切り口でみせ更に驚きの事実を白日の 元に曝すという手法は良いけれど主人公にとっても重い話だと思う。一件落着してもその事実は消えない、そのあとに引きずる重さは普通ではないだろう。良く考えれば主人公の行動も歪んでいるように見える。 他に解決の方法があるだろうと思ってしまう。読後に感じるそれらの事が自分としては残念といえる。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
洗練された文章で綴られた救いの無い話。意図は何だろう。暗い話と暗い人物。誰が救われたのか?理不尽な結末。医者の推測がそのとうりだとしても、それで主人公は救われたと云えるのか?
どうしたんだろう歌野晶午、愛読者を置いて何処に行くんだろうか。こんな話はちっとも面白くない。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ミステリのいろいろなガジェットを使った遊び心満載の快作。初めに登場人物一覧があり館の主の親族が21名。招待客が63名。使用人が29名。その他に5名。すべてに名前があり職業等が記載してあるのが笑ってしまう。
山から麓に下りる道にある橋が爆破され、外は暴風雨。電話線は切断されるしケータイは圏外。お約束の「閉鎖状況」で起きる連続殺人。さて、どんな料理が出されるのか興味津々で読み始める。 最初から名探偵が登場しメイドや何だかんだとオチャラケているようだけれど、中身はけっこう本格。すべての辻褄もキチンと合うように説明され齟齬はない。動機は是か非かと問われれば、そこを否定されたらそもそもこの話は 成立しない。何故100人かを突き詰めたフーダニットとハウダニット。自分としては面白かった。一読の価値はある。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
同時受賞の「密室の鎮魂歌」はプロットは面白いけど肝心のトリック部分が拍子抜けするぐらいのもので、読み終わった後はすぐに忘れ去る内容だった。この本も著者が19歳という若さでの受賞なので一抹の不安はあったが
内容的に興味があったので読んでみた。孤島、独特の風習、そして密室とそそる材料は揃っている。料理の腕はどうかと期待しながら読み進む。探偵が披露した推理が真犯人を欺くためのものであり、本当の真相はそのあと 明かされるという筋書きは目新しくはないけれど、密室のトリックを打ち破るためにはその方法が有効であるとする探偵のやり方は理解できる。時代背景に合った硬い文章で書かれているが著者の年齢からすると苦労した 事と思う。その硬い文章も物語の雰囲気作りに役立っており、登場人物たちの描写や会話などもしっかり描かれていて物語世界を構築している。肝心の犯行動機がイマイチ良く分からない点が致命的と思うが全体的に年齢を 越えた力量を見せてくれた作品だと思う。さて、二作目三作目と書き続けられるのだろうか、職業作家として書く気があるのか不明だけれどこの一冊だけでも世に残せたことは彼にとっては有意義なことでしょう。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
かなりコジツケ気味の殺し屋の犯行だけれど、都市伝説的な殺し屋を本気で追う売れないライターの主人公の設定が面白い。都合よくとんとん拍子に話が進み過ぎと思うが、いろいろな登場人物が交差して集約する構成は
中々上手い。と云うよりも文章がこなれていて新人らしからぬ筆致でスラスラ読ませるのはたいした者だ。笑い話しのような仕掛けで仕事をする殺し屋と深読みし過ぎの追うライターと友人達の行動が何となく納得させられるのも その文章の上手さだと思う。作中にも出てくる某映画のアイデアの一部を拝借したような展開があるが、おバカな話のようでいて最後まで読ませるパワーはある。しかし、登場人物で光っていたのはヤクザの松重ぐらいであとはイマイチな感じ なのが残念だ。安定した文章力でもっと登場人物に磨きをかけて、ちょっと破天荒な視点から生み出すストーリーに期待ができそうだ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
要点は閉鎖的な環境の村にある温泉宿から脱出する話で二人の視点でストーリーが進む構成。そして部屋にあったケータイからの男の話を半信半疑で聞きながら、男の誘導に乗って村の外に逃げる過程が描かれている。
つまり、誰の話が信用できるのか?という事と村からの脱出は成功するかという緊迫感を読むものに見せる物語だ。生き神様にされるという村の因習を話すケータイの謎の男。急に村に現れた元カレの男。不可抗力でケガを させた温泉宿の番頭のこともあり、また祭りの夜と云う事もあって大勢の村人が主人公を探して村中を徘徊する状況で、いったい誰を信用することができるのか。そんなスリリングな展開の中主人公を助けるものが唯一部屋にあった持ち主不明のケ ータイでそのケータイもバッテリーが残り半分という設定になっている。さて、ここまで見ると話の骨子は面白そうと感じる。でも二人の視点で進む物語構成のバランスが悪いように思う。愛子のアクションシーンにページを割きすぎだし しよりのキャラクターにも魅力が無い。シチュエーションは面白いのだからもう少しストーリーを煮詰めれば良かったのにと思ってしまう。ラストも取ってつけたような印象で感じ悪い。 著者には悪いがブックオフで100円で買って読んだ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
|
||||
---|---|---|---|---|
単行本で上・下巻に分かれているボリュームだけれど、途中退屈することなく読み終えた。それは作者の筆の確かさ、上手さ所以の賜物だろう。映画「パルプ・フィクション」のように時系列をシャッフルした書き方と
あり得たであろう現実を虚構として主人公(もと直木賞を取った作家)が小説風に書き綴った内容が交互に読者に示されるからだ。ワザとシャッフルしているので通して読めばそう意外でも何でもない出来事もミステリアスな 事のように思えてくる。読み進むに従ってあった事実と主人公が書くあり得たであろう事実(虚構)が交差する面白さ。そこがこの本の狙いでありウリになっている。タイトルの意味もそこにある。会話文が長いというかきめ細かく綴っているのでページ数が増えていると云えるが、その部分がこの作家の面白さを表わすところでもあるように思う。吹き出したり、ポルノ風に興奮したりいろいろな面を見せながら物語の進行を追っていく読ませ方は上手い。 結局二月二十八日には何があったのか、消えた人物は何処に行ったのか、偽札はどうしたのか、いろいろな夢を見せてくれる物語だった。初めて読んだ作家だけれど文章の上手さが際立っている印象だ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
相変わらずのクワコーの大学准教授生活ぶりだ。文芸部の面々も新たなメンバーを加えてさらに異質な部活となっている。日本一の下流大学たらちね国際大学を舞台にしたクワコーのダメ生活ぶりと遭遇する不思議な事件が抱腹絶倒のユーモアを交えて描かれている。著者は現在近畿大学文芸学部教授で2012から芥川賞の選考委員を務めている。その確かな文章力と的確な語彙を使った美しい日本語とも言える物語の中で、文芸部の連中や他の大学生たちが話す若者言葉がまったくそのままに書かれていてそのギャップからも爆笑を誘うことになっている。よくもまあ観察しているなと思うほどにいまどきの若者が話す言葉が次々と多少の誇張を持って描かれ吹き出してしまう。そしてその文芸部の連中に振り回されるクワコーのしみったれた大学准教授とは思えない哀れな日常生活が笑いのベースになっている。謎を解く探偵役のジンジンこと神野仁美も相変わらずのホームレス生活で、クワコーや彼らの食事風景やらが食リポのように面白可笑しく描かれているところも楽しい。
コテコテの本格ミステリにちょっと疲れたらこの爆笑ミステリにコリをほぐされるのも良いと思う。効能は絶大とおススメできる。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
サラリと読めます。でもだからといって薄っぺらい内容のどうってことないミステリとは思いません。まぁ多分にそれは氏のファンである部分が大きく作用している所為と思いますが。しかし、ガチガチの本格的なハードボイルドスタイルの本を読むよりはこの方が楽しめる、自分としてはそのように感じました。相変わらず登場するキャラクターの魅力と会話の楽しさ、そして嫌味の無い人間的な身上やモノへの価値観の公平さ。金持ちが集まるパーティには一着だけ持っている上等なスーツを着ていく、趣味の問題ではないようするに、そういった防具なのだ。こういった言葉がとても気持ち良い。全てがこういった調子で語られる氏の価値観がとても好きだ。先に二作目の暗闇・キッス・それだけでを読んだので主人公の頸城悦夫という探偵の過去や人となりも把握していたので還って読み易かった。周りの取り巻く人物たちとの距離や温度などもここからスタートしているので違う意味で楽しめた。ラストはチョッピリセンチメンタルだけれど探偵にはこれが丁度良いと思う。
二作書かれた、次も期待して良いのだろう。楽しみにしている。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
横溝正史+初期の島田荘司といった味付けのミステリ。機会的なトリックって良く考えるものだと感心するが名探偵が解説するところはやや苦しいといった印象。この人の特徴とも云える一件落着と思ってもさらに意外な事実が暴露される
二度びっくりの構図は今作も健在。神話的な言い伝えや土地に伝わる不思議な現象、お約束の双子の姉妹など盛りだくさんの内容で読者を煙に撒く作者のサービス精神の旺盛さには敬意を表する。惜しむらくは名探偵の創造がイマイチなところ。 もう少し魅力のある人物を作り上げて欲しいと思う。ちょっと狙いすぎて破天荒なキャラクターを登場させる作品があるけれど、そっちの方向には行かずにもう少し個性的で魅力的な人物を創造してもらいたいと思う。あまり自分で名探偵と云うような人物設定はどうかなと思う。手を変え品を変え物事を複雑にして読者を引っ張り最後に探偵が鮮やかな推理を披露して一件落着。安心して読める王道のミステリ展開であるこの人の作品は面白いと思うので次も読んでみようと思う。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
本音がズバズバと書かれ人間の胸の内、心の中の本当の思いなど赤裸々に語る主人公のモノローグなど辛口の人間批評に溢れたお話である。これを読んでどう受け止めるのか、人それぞれだろう。
著者のメッセージはどこにあるのか理解に苦しむ人もいるかも知れない。しょせん皮一枚。だがそれが大きく作用する現実もある。きれいごとではすまない現実がある。心の美しさは初対面では解からない。 指標となるのは外見だろう。こざっぱりした服装で場にあった物腰で穏やかに話す人。こんな人は無条件で好ましいと受け止める。そんな人間の感情を左右する皮一枚を徹底的に突き詰めた本音の女の言葉で綴られた 物語である。シビアでシニカルな中でラストはありきたりの恋愛ドラマのような姿を見せて幕が下りるのも面白い。是か非か本音満載の生き方のバイブルといえなくも無い。形を変えたイソップ童話だ。 自分が女だったら、躊躇せず和子の生き方を推す。幸せか不幸かそれは二次的なものだ。どうせ人はみな死に塵となる。どう生きたか、だ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
著者の工学部建築学科卒というフィールドを生かしたミステリだ。名古屋が舞台であるビルの建築中で起きる殺人事件だが、死体消失と目撃した人影も密室内で消えるというトリックで読者を引っ張る展開だ。
著者の持つ学識を充分に使ったトリックで確かにこれまで例の無いトリックだろう。つまり死体消失についてだが。だが、全体を見渡せばそのストーリーにはどうも無理を感じてしまう。意図も動機も理解できない。 話の流れが偏っている。トリックありきのストーリーだからだろう。人間を描くよりも本格としてトリック重視で書くといっているが、それにしても人の心の内が作者の都合で決まるのは勝手すぎると思う。 しかし、セメントもコンクリートもモルタルも良く解かっていなかった自分にしてみればこのプチ知識は勉強になった。ビル建設についての工法、工程などこれまで知らなかったことがいろいろと知れて面白かったので そういった面からは読んで良かったといえる。しかし、自分の得意分野から外れたところでどれだけ書けるかが作家としての資質を問われる事になるわけで、その意味ではこの後の作品が真価を問われることになるので 鮎川哲也賞の名に恥じない作品を出して欲しい。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
久しぶりの東野圭吾の本。本格ミステリを好んで読んでいる者にとっては、やはり彼の本は通俗小説のように映る。殺人事件は一件。殺された老人の孫が知り合った男と二人して老人の周囲の不可解さを追求していくストーリー。
しかし、いろんな人物が登場していろんな角度からひとつひとつの謎を解いていくと黄色いアサガオに繋がっていくようになっている。この辺の構成というか物語の作り方はベテランらしい上手さで読者を魅了する。 謎の中心が自然界に存在しない黄色いアサガオという設定が良い。だから自分も興味を惹かれて読んでみたわけで。ファンには申し訳ないが他の作品には興味が湧かない。 でも、この作品はベテランらしい筆致で安心して読めるがどうもテレビの2時間ドラマのような印象も持ってしまう。それは謎解き以外の部分の人間関係にいろいろと盛り込む所為だろう。 こういったスタイルを好む人が大多数だろうけれど、「読み易い文章と人間ドラマの面白さプラス謎解き」のミステリは自分は今は距離を置きたい。 ただ、この本は面白かった。それは黄色いアサガオの着想の良さに尽きるけれど・・・。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ミステリとしての謎解きの楽しさはあまり感じられない。警察小説とキャプションがついているのは多分正解だろう。国の違いは文化の違いで警察官としての規範もかなり職業的で、日本の感覚からすると
だいぶズレているようだけれど、他の国の実情が知れるのはこういった機会でなければ余り無いので面白く感じる。真相はどこにあるのか、読者を引っ張っていくエピソードの数々は複雑に絡み合っているようで 捜査に当たる刑事コンビも中々先に進めない。むしろ脇役的な感じで登場したアメリーという少女が探り出した真実の欠片が読者に示されて刑事コンビがその後を追うという展開で読者の気を揉ませる書き方をしている。 村人等彼の周りにいる人間はすべて敵のような状況のなかで彼女が調べ始める11年前の事件の話は並行して読者に知らされるが、逮捕され刑に服し事件は解決した形になっていることに警察は積極的には動かないのは 何処も同じで、彼女が邪魔になった人間の意志で彼女が失踪してから本格的に刑事コンビが動き出すまでが少し長い。物語り世界の周りの淵を色々な登場人物のエピソードで見せていくやり方は有効だけれど、これもまた 念が入りすぎていてページ数が多いのはこのためだ。複雑に絡み合った糸が解れていくと悪意を持った人間が浮かび上がってくるわけだが、そこを単純にしていないところがこの作者の良いところなのかも知れない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
旧友に頼まれコインロッカーから取り出したスーツケースには裸の少年が入っていた。ニーナ・ボーウ、看護師でこの物語の主人公。病院で意識を取戻したシギータ。脳震盪と左前腕の骨折。ほとんど酒を飲まないのに意識不明になるほど
飲んで階段から落ちたと説明されるが血中アルコール濃度の高さがその話を裏付けていた。そして息子ミカエルが居ないことに気づく。この二人の行動がストーリーを広がらせる二つの軸となって物語りは進む。スーツケースを開けたら子供が入っていた。普通この展開なら何故 警察に届けない?不自然だろうとツッコミが入るところだ。しかし、キチンとニーナの行動原理が説明されているので違和感はない。もちろん国による事情などの違いなどもそのひとつの要因として書かれている。 そして旧友の死体発見。コインロッカー付近で見た大男。ニーナの方を見て睨みつけていた正体不明の大男。子供は何故スーツケースに?子供を追うシギータ、子供を連れて逃げるニーナ。劇的に急展開が続くような書き方ではないけれど じっくり書き込まれたストーリーは眼が離せない。真相はさほど意外性などは薄いだろうけれど、登場人物たちの心理的な内面もセレブといえる男と底辺に生きる男の思惑などが絡み合うところがクライマックスに生きており、丹念な書き方が この物語を構築するすべてにおいて成功していると思う。ラストの面白さも良いと思う。ホッとさせてニヤリとさせるラストは次回作への序章だろう。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
先に選評を読んでしまった。ここを先に読むと妙な先入観を持って読んでしまうので気をつけていたのだがうっかり読んでしまった。
ほとんどのレビューにあるとおり、選評にもあったように伊坂幸太郎のイミテーションと感じてしまう。内容、ストーリー展開、登場人物、会話、すべてがそうだ。 ただ、素人がまったくのゼロからこれだけの物語を作り上げた、その努力と云うか感性と云うかセンスは評価できると思う。 文体が有名作家に似ているとはいってもその読みやすさは心地よい。 会話も決まっていてツボにはまる人には気持ちよく読めることだろう。 しかし、やはり小説は自分の言葉で書かなくてはいけないと云うことだ。 いろんな本を読んで引き出しを多く持つことは重要だけれど、自分の言葉で物語を書かなければ誰も読んでくれない。 そう再認識した一冊だった。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
基本的にミステリの世界に性的な事柄を入れたストーリー展開にして欲しくない。「イニシエーション・ラブ」もそうだけど、あのようなラブシーンは必要ない。あの部分をカットしてもストーリーは充分成立する。なのにあの描写、著者の
意図が掴めない。動機の問題で男女間のもつれとしての要因とした書き方は充分納得できる。しかし、金田一耕助のベッドシーンなど読みたくない。そう云うことです。福祉施設で暮らす弱者を描くのは良いが、そこに性的な問題を絡めた ストーリー展開はどんなもんだろう。真犯人も気持ち悪いし女主人公の臨床心理士の対処方もいくら危機とはいえ気持ち悪い。監禁されたあの部屋での逃げ道がないのは分かるが、ちょっと他に手が無いのかと考えてしまう。 でも、読ませる力はある。引き込む文章力は認める。話す言葉が色で見えると云う共感覚保有者の青年が、少女の自殺は殺人だと云う話を半信半疑に受け止め、高校時代の同級生で警官になっている男と調べ始めるストーリーだ。 ここで良いのは安易な訳知り顔の妙に親切な協力者の設定にしなかったこと。女臨床心理士と考え方も生き方も違う人間に設定して、心理士としての彼女との言葉のやり取りのうちにまんまと協力させられる羽目になる彼、と云う事にしてあるのが良い。ご都合主義の100%彼女の言い分を信じ何でも協力する人物として登場してないところが好感を持てた。多いんだよねこういった無条件で主人公を助ける人物設定が。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
古い本で、翻訳ものでもあり内容はともかく本として読むのは退屈するのじゃないかと危惧したが、全然そんなことも無く普通に楽しめた。そんなに読みづらい翻訳文じゃなかったのが幸いだった。
内容はほとんどの人が知っている話で、ミステリが好きですと公言する人はこの本を知らないとは云えないほどの古典である。 西澤保彦の「聯愁殺」はこれが下地にして書かれているし、歌野晶午の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」もこれのアレンジだ。一貫してひとつの事件に対しての推理を披露するという流れだけでここまで綿密に書けるのは 凄いと単純に驚く。アンチミステリとしていても最後にはミステリのお約束をしっかり守ったオチが用意されているところも笑えるし、この着想の見事さが気の置けない友人などとミステリ談義の中でフト浮かび上がったのじゃないかと 想像したりして頬が緩む。 Aに送られた毒入りチョコレート。たまたまそばにいたBに譲ると、Bの妻Cが数を多く食べたせいで死亡する。犯人Xは誰か・・・。シンプルな設問でいろいろな推理が披露されるこの本。 今読んでも充分読み応えのあるミステリで、楽しみながら読み終えた。バークリー貴方は凄い。そしてミステリ界に残したその足跡は偉大だ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ジェフリー・ディーヴァーとくればリンカーン・ライムシリーズが思い起こされるが、これはそれより前の94年に出たものだ。サイコ・サスペンスと紹介されているがそれほど深くは無い。
ただ、読ませる筆力はこの本でもすでに確立されているようで、一ページ上下に組まれた文章が432ページもあるボリュームで、そう簡単に読み終えることはない。 普通これぐらいあると気を抜いて飛ばし読みをしたりするものだけれど、この本に限ってそうはしなかった。ストーリーを追いながらじっくり読んで楽しい時間を過ごした。飛ばし読みをしようと考えなかったし、そうはさせない作者の 上手さがあった。迫りくる嵐、分裂症の殺人犯が西へ向かう、それを追う訳ありの三人。各人をメインに据えた各章の動きと展開。証言した事件の秘密と姉妹の葛藤。 お約束の意外なラストの真相。 リンカーン・ライムシリーズは云ってみれば大向こうを唸らせる派手な演出のストーリーが身上だけれど、これはどちらかと云えば地味な内容とも云えるしストーリー展開も派手さはない。 派手な演出は迫り来る嵐といったところだけで、肝心なのは各人の心の動きでありそれらがキッチリ描かれていることが効果的に緊迫感を醸し出す結果になっていると思う。 追跡者の裏をかき西へ向かうルーべック。彼の後をじっくり読み進む時、読書の至福の時間を味わえることでしょう。 |
||||
|
||||
|