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(短編集)
雪が降る
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雪が降るの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.47pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全50件 1~20 1/3ページ
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3冊ある短編集の最初のもの。著者の没後に編まれた最後の『遊戯』以外は、発表順になっていないので、著者の思惑があるのだろうが、ここでは、それにこだわらないことにする。映画でもそうだが、長篇と違って短篇は、色んな要素を試すことができる。作家の持っているグラデーションのなかから任意に掛け合わせることができるのではないだろうか。そうだとすれば、最初の短編集というのは、作家が独自の持ち味を開発してゆく過程が読み取れるのではないかと思う。 その意味では、「トマト」が最も興味深いかもしれない。彼の長篇とはまったく異なるとも、あるいはエッセンスとも言えるからだ。これは、一種のメルヘンか。安部公房的でもあるが、いっそ詩といってしまってもいいような気がする。主人公の男は、ある日、歩行者天国で少女から声をかけられる。彼によると、<理性を麻痺させる><人をひきこむ酩酊の響きが声ににじんでいた>という。彼女は自分を“人魚”だというのだ。男が案内したレストランで、彼女はシンガポール・スリングとトマトをまるごと2個注文した。人魚の世界からはるばるわざわざトマトを食べに来た美少女だ。しかも、とんでもなく口が悪い。<あなたってパーのうえにクソ真面目>などと宣う。しかも、<新しい経験って、だいたいむごたらしく悲惨>だから、<むごたらしい>顔をしていたあなたに声をかけたなどと。ここでのトマトは、マグリットのリンゴや梶井基次郎の檸檬などを連想させもするが、諧謔とユーモアによって、さらに鮮烈に炸裂している。 一番古い「銀の塩」には、すでに作者の特徴が見え隠れしている。主人公の自堕落な性格と、引きずらねばならない過去からの逃亡、それに該博な知識に裏打ちされた推理力(洞察力)、それらが相まって、どうしようもないダメ男の目の覚めるような精悍な横顔を垣間見せる。それから、ここでは稲垣里美という気の強い才色兼備な女性が出てくる。それに、これまた異能者ともいえる主人公の相棒。しかし、ここでその男はデッカ出身者だ。それから、冴えたタイトル。本作も、<星は、神様が塩を銀にかえて空に撒いたもの>というバングラデシュの言い伝えに由来しているらしい。 次の「ダリアの夏」は、この人の原点のひとつか。いわば純文学のレプリカ。 真壁隆志(32)が配送業務で尋ねた家の<庭一面、見わたすかぎり>のダリアが植えられていた。そこでは、60すぎの男が、<花殺し>と称して金属バットを思い切り振って花弁を散らしている。<こういう無礼な花どもはやっつけにゃいかん>とつぶやきながら。彼は男優のなれの果て。そして、同居人は、これも女優のなれの果ての篠崎由利(38)と10歳くらいの野球少年・章一。<砂漠の商人が水筒をかたむけるよう>にしてビールを飲む女。<遠い山あいにある夜の沼のような目>。この目は、10年前に隆志が暮らしたことのある恭子の目と似ていた。彼女も、どこか<ゆがみ>があった。また、隆志は高校時代、野球のエースでもあった。過去に引きずられる人々の怨念にみちた日常。そこから脱け出すための処方はない。ここでのポエジーの中心は空虚でしかない。 表題作の次に新しい「紅の樹」もこの人の原点のひとつだろうか。こちらは、任侠もののレプリカか。 とはいうものの、藤原伊織ワールドはここでも確実に息づいている。父・邦正が病死することで2年前、堀江組は解散に追い込まれた。秦野組の預かりになった息子の堀江徹(23)。世話係についた若頭補佐の遠山昌彦(40前)。幼女・宮川舞とその母・田島幸枝(30)。苗字が異なるのは、舞が幸枝の離婚を知らないからだ。これら訳ありの人々が織りなす世間の“裏”ドラマだ。これに企業社会という“表”を掛け合わせることで、長篇『てのひらの闇』に大化けすることになる。 「台風」は、どこか、つげ義春の劇画を想わせるほの暗い話だ。営業一課長をしている吉井卓也の社内で社員同士の殺傷事件が起きた。そのことから、吉井は彼が13歳の時に父・洋造が経営する玉突き屋で起きた事件を想い起こす。不登校児だった彼は、ある日、10歳年上の兵藤泉と店で出会う。青年に、久しぶりに学校へ行ったら教師の誤解から殴打されたこと。原因は友人の所業にあったが、そのことは教師には黙っていたことを話すと、卓也くんは<台風みたいな大風のなかにいたって、いつも胸をはってる。頭をあげて歩いていける>と褒められた。玉突き屋を手伝っている高校を出たばかりの明子をめぐって、青年とあこぎな商売をやっている男がひと悶着あって、兵藤は懲役刑を受けることになる。明子は青年と愛し合っていた…。サラリーマンの吉井が家を出る時に背後から声をかけた人物が誰かわかって、ほんのり光が差し込むラストが効いている。 表題作が、やはりひとつの完成を見せている。<重油の表面にどろりと浮かび出たような目ざめ>を繰り返す<冷めたスープみたいに濁った目>の中年男が、<真剣な光が宿る目>の少年に促されるようにして、少年の母との過去と対峙する話。 四十代の志村秀明は、少年・道夫の父・高橋一幸とは同じ職場で無二の親友だった。その親友と少年の母となる陽子を争ったことがあった。それも、志村の大阪転勤が機縁となって、親友に譲る結果となる。4年前偶然、志村と陽子は再会。その時、陽子は今度雪が降って再会したら志村と一緒になりたいと宣言した。その2週間後の「雪が降る」日、志村は約束のバーへ行ったが、陽子は交通事故死していた。 <人はすこしずつおとなになるんじゃなくて、いっぺんにおとなになってしまう>と悟ったゆえの決心だった。「空白の疾走」を突然知った女の決断だった。そのことを18歳の少年が突きつけてきた匕首のような問いに答えるかたちで自問するように紐解いていく中年男の清新なふる舞いがみるみる雪の上の足跡を消してゆく。 | ||||
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クールでハードボイルド。ロマンチストでもある。返す返すも、伊織さんの夭折を惜しみます。 | ||||
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やはり、表題の「雪が降る」がおもしろい | ||||
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期待以上に綺麗でした | ||||
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この本は、表題作を含む短編集です。 おすすめポイントは、「テロリストのパラソル」の主人公がアル中になる前の話や「手のひらの闇」の原作になったと思われる作品が載っていること等々興味深い作品が6編が収録されています。 ただ、最近この本を検索しても品切れになっています。絶版になっていたら残念です。 | ||||
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「テロリストの・・・」が当時好みに合わず、ずっとあとの「蚊とんぼ・・・」がおもしろかったけど他の作品を読みあさるほどでもなく、ずいぶん時を経て何気なく入手したこの著者の3冊目がこの本でした。 渋い。どれもよかった。再読に耐える佳作揃いです。 | ||||
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Very nice | ||||
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ふーん、面白いとおもいました。主人公の描き方がかっこいいと思いました。タイトルはわすれたけど。 | ||||
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「台風」「雪が降る」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」の6編。 本のタイトルの「雪が降る」の評判につられて藤原伊織さんを初読みしました。 私は「紅の樹」が良かったです。ファンタジックな「トマト」以外は現実味のある筋建てで、ラストも容赦がありません。 ハッピーエンド好みの私にはすこし痛かったですが、「紅の樹」を長編にしたと言われる「てのひらの闇」も読んでみたいです。 | ||||
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やるせなさと淡い気持ちを思い出す。きっと幾つになっても私は読み返す。 | ||||
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迅速でした・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | ||||
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「雪が降る」は東京に単身赴任していたころに読んだから10年は経つ。 この間、最初に読んだとき、次は著者が亡くなったと聞いたとき、 そして再読したこの夏と、3回ともまったく同じように切なく、やるせない気持ちで涙した。 たぶん、またいつか思い出したように本棚から抜き出して読むことになると思う。 | ||||
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やるせない気持ちになるのですが、気持ちが萎えてしまう事はありません。 やはり藤原作品です。 | ||||
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6編の短編からなる1冊。 全部が推理物とか、殺人物かと思ったらそうではありませんでした。 ただ、1話目、2話目話はわりとシビアで、切ない結末の印象でした。 人間の、もの悲しさを、伊織さんが見事に表現されてる、そんなストーリーです。 そして、ほっと一息つける、そんな感じの‘トマト’→自分を人魚だという女性と、人間の男性の やりとりが、軽い感じで書かれていて、他のストーリーとの順番も考えてあるというか、 ほんとに、「ちょっとひといきついたかな」という感じでした。 この本の気に入ったところは、もうひとつ、‘あとがき’作品だけでなく、生前の伊織さんのことも 紹介されてて、彼の人生について深く知りたいと思っている私には、これも、「買って正解、読んで納得」。 …そんな本です。 | ||||
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藤原伊織さんというと、ハードボイルド、というイメージだったのですが、この本を読んで、幼い子供の一言一言に心が引かれました。 なので、収録された物語の中では、かっこよさの「雪が降る」に惹かれながら、私の中では、「紅の樹」がイチ押しです。 | ||||
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藤原伊織さんというと、ハードボイルド、というイメージだったのですが、この本を読んで、幼い子供の一言一言に心が引かれました。 なので、収録された物語の中では、かっこよさの「雪が降る」に惹かれながら、私の中では、「紅の樹」がイチ押しです。 | ||||
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「テロリストのパラソル」からのファンですが、この「雪が降る」は最も好きな作品です。 人間の感情や行動の底にあるものを読み易く、かつ無駄の無い文章で表現しており、 読んで損はないと思います。 読んだ後に貴方は何を感じ取るでしょうか。 勿論、他の作品も優秀作ですよ。 | ||||
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「テロリストのパラソル」からのファンですが、この「雪が降る」は最も好きな作品です。 人間の感情や行動の底にあるものを読み易く、かつ無駄の無い文章で表現しており、 読んで損はないと思います。 読んだ後に貴方は何を感じ取るでしょうか。 勿論、他の作品も優秀作ですよ。 | ||||
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なんと言っても表題作の「雪が降る」が秀逸だった。 忘れ得ぬ過去からの呼び声に似たメールによって明かされる、心の奥に残る傷の甘い痛み。 それを感傷に溺れることなく淡々と描き出し、最後には未来への希望をも感じさせる。 くたびれた中年男をこんなにも格好良く書ける作家は、藤原伊織をおいて他にはいないのでは ないだろうか。 だからこそ、作者の早すぎる逝去が悔やまれてならない。 切なさに満ちていながら、心震える温もりをも感じさせる短編集である。 | ||||
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なんと言っても表題作の「雪が降る」が秀逸だった。 忘れ得ぬ過去からの呼び声に似たメールによって明かされる、心の奥に残る傷の甘い痛み。 それを感傷に溺れることなく淡々と描き出し、最後には未来への希望をも感じさせる。 くたびれた中年男をこんなにも格好良く書ける作家は、藤原伊織をおいて他にはいないのでは ないだろうか。 だからこそ、作者の早すぎる逝去が悔やまれてならない。 切なさに満ちていながら、心震える温もりをも感じさせる短編集である。 | ||||
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