海辺のカフカ

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海辺のカフカの評価:

3.76/5点 レビュー 521件。 D ランク

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平均点3.76pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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全571件 361〜380 19/29ページ
No.211
(1pt)

読む価値なし

過大評価されているこの作家の、愚作中の愚作である。このような子供だましのような作品が出版されること自体が不思議である。読むだけ時間の無駄としか言いようがない。具体点は、すでに悪い評価を与えているレビュアーの方々によって網羅されている。
カフカ少年の部分は、15歳の少年の視点から書かれているのだろうが、その言動が老人のそれであって失笑だ。ナカタの部分は、月並みな想像力の結晶のようなもので、そこらの漫画の域を出ていない。全般的に、やたらと説教臭く、そんなに説教したいのなら、小説など書かずに論文でも書いたほうがいいのではないかと思ってしまう。また、いたるところに作者の病的な心理状態がかいま見られ、そのナルシシズムに辟易する。
海外で評価が高いと聞くが、おそらく一部のマニアックな読者に評価されているのではないだろうか。とても日本文学を代表する作品として胸を張れるような作品ではない。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.210
(4pt)

21世紀に読む村上文学はここからでもいいかもしれない。

 いわゆる「アンチ村上春樹」と自称する人達がいます。私はそうではなく、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を頂点とした氏の青臭くも緻密な80年代の作品群を愛好して来ました。ですが一方、こんなのはマトモな文学じゃないとする意見にも内心少しだけ同調も出来たのです。いわば、“自閉症のハードボイルドごっこ”とも言えなくもない世界観はお世辞にも外向きではないですし(逆に言えば「何か」を共有できればとても親密になります)、作品強度を上げるための“非常に緻密な描写/文学や音楽に関する豊富な知識の引用/謎掛けと焦らしによる巧みなストーリー・テリング”は、賞賛に値すると同時に、冗長というか読者を“なんだか解らないけど解ったつもり”にさせるような危険も孕んでいます。そして、意味がありそうで無いようなもどかしさ... 自覚的に読書している人達はここで“ちょっと待った”をしたくなるかもしれません。
 さて、21世紀になって発表された本作。ここでは、今までとは少し異なる変化があります。さんざん謎掛けをしておいて、結局ろくに明かさず放り出すという手口はいつもと同じですが(笑:好意的に解釈すれば、読者に委ねるとなりますが)、その読後感は以前よりも解放感があります。閉塞感や諦観は少し後退して力強さが加わったか、と。生々しさを備え始めた性描写や振り切った残酷描写は、以前のイメージに対する挑戦とも受け取れます。それから、登場人物達の「顔」が見えるようになって来た事。ユーモラスな「ナカタさん」と星野青年のコンビは新鮮でした。その一方、主人公はまだ“のっぺらぼう”の印象が強い。しかも、家出をして目立たぬよう気をつけている少年の選んだ偽名が「カフカ」と言うのも... なんでもメタファーで切り抜けるのは少し苦しいような気もします。
 そして、本作では自我/孤独/死(及び死後の世界)と言った従来からのテーマに加えて、一種相反するとも言える(疑似も含めた)家族=愛というものが大きく取り上げられています。そこでも、男女愛とオーヴァーラップする母子愛という表出がユニークです(この場合、前者は互いに一方通行になっていたというのが私の解釈です。もちろん、そうでないかもしれません(笑))。一方、皆さんはあまり触れていませんが、父性を媒介にしたもう一つの流れも興味深いです。この辺りの意図が明確なので、単なる謎解き(遊び)に終わらない手応えがあるのかな、と思います。
 総じて作者の苦闘が垣間見える作品と思いました。ある部分は見事に成功していて新しい境地も開拓し、ある部分は不完全なまま放置されているようです。ですが、この作家がそういった自分自身を見せ始めた事に私は期待―そして、希望を感じました。なので、アンチの人にもオススメかもしれません。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.209
(3pt)

いろいろな意味で面白いです

村上春樹さんの小説を読むのは初めてです。最近の話題性で、空港で何となく買いました。
表面上のストーリーがどうなっていくのか気になって、面白くて、どんどん読み進んでいきます。
それに織り交ぜて、あるいは、表裏一体のその裏側で、ナカタさんに代表される登場人物などを通した、多くの比喩的・暗示的な表現で、現実と非現実の境界線を超越して、人間の内面世界に深く入り込んでいきます。
そんな非現実的な話はただのおとぎ話だ!と言い切れない、人間にとって、現実の問題として、とても重要なことに触れようとしていると思いました。
村上春樹さんは、読者がそれをどこまで、どう読むのかと、チャレンジしていると思えてなりません。(まさか、あっかんベーはしていないでしょうが)
私自身、矛盾に満ちた読後感でびっくりしています。
娯楽をもたらす読み物としてとても面白いです。でも、その単純な面白さとは別のところで、深く心に響く表現がびっくりするほど沢山出てきました。
読者を俗な形で引き付ける、スピード感のある、ストーリーでありながら、非常に深い、いってみればややこしいナゾかけで、人間について考えさせる表現が交錯していています。
美しい小説とは思えないので評価は★三つですが、それ以上の余韻に満ちた読後感をもたらしました。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.208
(5pt)

個人的には傑作

評価が分かれるのも無理はないかな、と思う部分もありましたし、
明確な「答え」が提示されていないのにもやもやしたりもしましたが、
間違いなく傑作だと思いました。
ものすごく簡単に言ってしまえば、これはある少年の成長の物語。
だけど、とても切ない物語。それを魅力的に書き上げてくれています。
性的表現は露骨ですし、最終的によくわからないまま終わってしまった
ふしもありますが、そんなことはどうでもいいのです。
ただ切なく、それでも美しい話でした。
星野青年は第3の主人公です。
彼の考え方は私の考えにとても近いので、非常に身近に感じました。
彼が喫茶店で考えるシーンがとても好きです。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.207
(5pt)

語り得ないものを語るために

私は、このような長編小説を読むのは、久しぶりでした。
リアリティーのないストーリー。ファンタジーとも、SFとも言えないような世界。だけど、そのストーリーには、リアリティがある。
読み進むにつれ、リアリティーのないストーリーに、真のリアリティーを感じました。普段のコミュニケーションでは、通じることのできないような、複雑な深層心理を小説に表現していて納得させるからだと思いました。ふたつの大きなテーマを感じました。『暴力の意味』、そして『記憶と喪失』です。
それから「メタファー」という言葉がキーワードになっているのか?と、思うほど、よく、使われています。私は、これを読者に対するキーワードのように考えました。この小説は、私の心、そして読者の心のメタファーなんだと。
語り得ないものを語るために小説はあると言うのなら、村上春樹さんの小説は、まさしくそれだろうと、思いました。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.206
(4pt)

教養への暴力

非常に興味深い作品でした。小説は本来前提とする知識を懇切丁寧に提示しないものですが、この作品には詳細すぎる引用がつき、しかも著者の解釈まで述べています。こうして、必要とされる教養を提示し、主題部分に入ります。教養の導入では絶対に誤読を許さない姿勢があるのに対し、主題部分は筋こそ丁寧に解説してありますが、メタファーが一義的には思えず、感覚的に分かっても、言語で説明するのは困難です。教養主義者と共に小中生にも開かれたテキストですが、知識に頼らずどこまで読めるかが測られます。教養人と呼ばれる虚飾を暴力的に否定している大作です。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.205
(5pt)

聖人と使徒の物語と迷える若者の物語の合流点

 舞台が完全に四国に限定される下巻になっても、相変わらず少年の物語と老人の物語は、淡々と並行して交互に語られます。「ハイドン」などの共通項が、トランプゲームの神経衰弱のように配置され、ついに「入り口の石」を巡って、二つの話は合流します。しかし二人は結局出会うことはありません。
 そして読者は、著者から叩きつけられた挑戦状を意識するでしょう。ナカタ老人は一体何を象徴し、星野青年は一体何を代表しているのか。大島さんはなぜ登場しているのか。カフカ少年が高知の原野で見たものは…
 読者は数々の問いに対して、自分なりの答えを用意しなければならないでしょう。そうでなければ、この小説を読んだ意味はありません。中でも、ナカタ老人が象徴するものについての考察は必須課題かもしれません。
 二人の人間の「死」を経て、オイデップス王の場合とは異なり、最後に少年の「生」への前向きな決意で話は終わります。もう一つギリシャ神話と大きく違うのは、「姉」が介在することです。それとの関係性も含め、これからの少年の人生にあれこれ考えを巡らせることにしましょう。それは最後まで読み切った読者へのご褒美でもあります。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.204
(2pt)

村上春樹氏の小説は初読ですが…

村上氏の小説はこの「海辺のカフカ」が初めてなのですが、
冒頭からの独特の文章と編成に少し戸惑いました。
別々のお話が代わる代わる進んでいく形式には読み進めて慣れましたが、
田村カフカ側のお話がどうも読みづらい感じがしました。
「例えば〜」と長々語られる別作品についての文章は
正直、あまり読む気が起こりません…。
所々の性描写もストレートすぎてあまり自分の肌には合わないように感じました。
一方でナカタさん側の進行は淡々としていて読みやすく、和みました。
(猫の心臓のくだりは他の方も仰るように、少々気分が悪くなりましたが…^^;)
村上氏の作品は良い評価も多いので、
一度触れてみる機会が出来てとてもよかったと思います。
ですが、今後また作品を読みたいかと問われると…微妙です。
読書経験の少ない若者の意見ですが、少しでも参考になればと思います。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.203
(5pt)

東京都中野区野方から始まる物語

 こういった作品に「謎解き」を期待するのは不謹慎なことかもしれません。当然、明確な答えなどは著者は用意していないでしょう。しかしそんな抑制も効かなくなるほど、細かな情景描写や心理描写がもどかしく感じられ、先へ読み進みたくなる作品です。
 物語は、唯一「東京都中野区野方」を共通点とする、少年と老人の話が全く無関係に並行して語られ、上巻の最後でようやく関連を持ち始めます。
 この2人のまわりに、さまざまな人物が行き来します。その中には、かなり浮世離れした人物が何人かいます。いわくありげな人たちの前史も明らかにされ、一幅の絵と、一編の曲に収斂していきます。
 老人と少年がどういう形で出会うのか。あるいは出会わないのか。出会うとしたら、それはやはり瀬戸内海の向こうなのか。少年は母と姉にも会うのか。そして、父の予言どおりの展開になるのか。なぜ、老人は猫との会話能力を失ってしまったのか。少年と老人のどちらが罪を犯したのか。・・・などなど。
 そして最大の謎は、戦時中に小学生たちを襲った「事故」でしょうか。・・・下巻に進まないわけにはいきませんね。
 もちろんストーリー展開を離れたところで、じっくりと心理描写などを味わうこともできます。多感な15歳の家出少年の揺れる心と大胆な行動。実社会とほとんど無関係に生きている老人の純粋無垢な心と、実社会のただ中にいる人たちとの珍妙なやりとり。そして、ときに前触れもなく起こる超常現象の数々。
 そして大島さんをはじめ、脇を固める人物たちの短くも印象的なせりふも、読者をうならせずにはおきません。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.202
(5pt)

海辺のカフカ下巻

すべてがつながっていく後半。多分一日で読んでしまうくらい、おもしろい
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.201
(5pt)

海辺のカフカ

タフな15歳の不思議な魅力にひかれる。まだつながらない登場人物にもひかれていきます
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.200
(4pt)

ついに母子関係がテーマに

 村上春樹の他の主要作と同じように、下巻からは一気に筆のギアが上がり、2つの世界が一つへと収斂されていき、メタファーのオンパレードとなる。この相も変らぬ手法についてはマンネリという批判は避けられないだろうが、ついつい読み進める気にさせるのが村上春樹の筆力の凄いところだと思う。
 また、本書は、これまで村上春樹が不思議と取り上げてこなかった母子関係に迫っている。本書に限らず村上春樹の多くの小説は少年が内面と外界との葛藤から自我を形成していく物語だと思うが、本書ではその過程で実は一番クリティカルな母子関係を中心に据えている点で、意欲的だと思った。このためもあってか、村上春樹のほかの作品よりも一層内省的な作品に仕上がっている。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.199
(3pt)

ストーリー・テリングの天才

 私は村上春樹のファンではないが、彼の主著はほとんど読んでいる。彼の小説はどれも、主人公の性格、モチーフ、文体といった点で類似しているが、この小説もその例外ではない。ファンは、また村上春樹ワールドに帰ってきたという感覚を抱くだろうが、アンチは、また同じパターンかよ、と感じるだろう。
 
 私は村上春樹はストーリー・テリングの天才だと思うが、本書でも村上は天才振りを発揮している。ここまで読ませてくれる作家は少ない。他方で、本書が文学として捉えられることには若干違和感を感じてしまう。村上文学の「文学」たる所以は、その象徴性にあると思うのだが、この小説は彼の他の作品に比べると象徴性の点でやや陳腐である。下巻がどのような展開を見せるのか楽しみ。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.198
(3pt)

無駄の多い作品

一言で表すなら、無駄に長い。
無駄な面が多いと思う。 読んでいて深みがあまりないから、すらすら読んでいくことができなかった。確かに物語がひとつに収縮していくのは面白いんだけど、二つのストーリーを一つのものにまとめるための調整のために長さや描写の濃さに制限がでていたんだと思う。
でもこんな作品でも引き込まれるところはあって、後のところは結構つまらなかった。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.197
(5pt)

海辺のカフカ[上]

このタイトルは良く聞いた事があったんですが、名作になる理由がわかります。ちょこちょこナカタさんについての過去のレポートがあったんですが、あの辺は流し読みでも問題ないと思います
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.196
(5pt)

喪失の果てに残された希望

上巻で、凄まじい勢いで展開し、拡大し、膨れ上がった世界観は、やっぱり物凄い勢いで、急速に集約していきます。
登場人物たちはそれぞれ、自力で自分の宿命に決着をつける。
宿命を完全に消化する人、新しい運命を切り開く人、新しい運命を引き継ぐ人、みんなそれぞれ、帰るべき場所に帰っていきます。
漠然とした世界観を「メタファー」の一言で片付けているように捉える人が居るのも理解できます。
この作品に対して、「理解できない」「意味がわからない」という感想を持つ事は、ある意味当たり前で、ごく普通の感覚だと思います。
ただ、この作品は(というか、村上春樹の全ての作品通じて言える事ですが)、抽象の元になっている具象を敢えて明確にしない事で、最終的な解釈を読者に委ねているんですよね。きっと。
敢えて答えの余地を残す事によって、読者ひとりひとりが、それぞれ違う解釈や感想を抱く事が狙いなのだと、私は勝手に思ってます。
そしてそれは、決して読み手側に何かを押し付けようとしない、書き手側の優しさの現れのように思えます。
私は、自分自身が、この作品を理解し切れているとは到底思えません。
それでも、「世界の全てはメタファーだ」という大島さんの台詞は、私の中で凄く強く生きていて、何度も何度もこれに救われた気がします。
元々、人間の脳(或いは心)=フロイトの精神分析の構図を分解し、物語という時系列で再構築したものが村上春樹の作品であって。
海辺のカフカは、村上作品の中で最も、人間の精神構造とか魂、意識や意志のような、観念的な方向に迫った作品だと思います。
村上春樹自身も、この作品で新しい視座を切り開き、拡張している。だからこそ、読み手にもそれが伝わり、新しい何かが切り開かれる感覚を覚えます。
村上春樹の長編は、絶望と喪失の果てに、僅かだけど確実な希望が残る、という展開がお決まりだけど、この作品の果てに残される希望は、ちょっと他作品とは種類が違う気がします。
読むたびに、脳が浄化されるような気がするのは、私の勘違いかなぁ。
とりあえず私は、この作品が、村上春樹という日本が世界に誇る作家の持つ一番新しい能力の集約だと思っています。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.195
(5pt)

ぼくはアンチ村上春樹でしたが、この作品は紛れもない傑作です

全ての物語、全ての登場人物は、かつて分けられた自分自身を探す旅を続けます。本作はその旅の物語です。
シェイクスピアが随所に散りばめられていたり、カフカ少年が図書館で読む本が、夏目漱石だったり千夜一夜物語であったり、読者の目を欺く仕掛けがたっぷりと仕掛けられています。
でも、そんなイコンはこの小説の中であまり枢要な存在ではありません。
プラトン「饗宴」をモチーフにしていることがわかれば、この作品の持つ言葉の力や構成やキャラクターに対してその計算され尽くした言葉の選択に驚かされます。
これまでの、他者を見下し、関係を構築することを拒否し、希薄な人間関係の中で、自らの内面にも無関心な、「落ち着かない」などという意味のない言葉でしか感情を表現できない村上春樹の作品とは全く異質な、というより正反対なアプローチの本作に対しては、従来のこうした表層的な言葉の羅列が好きな読者からすれば裏切りにも近い受け止め方をしたのもよくわかります。レビューの評価が割れていることがそのことをよく表していると思います。
しかし、本作は傑作です。
素晴らしい。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.194
(5pt)

余韻。

村上春樹氏の本を初めて読みました。なんとも不思議。確かに性描写が非常に多いです、私は過激すぎるものは苦手な部類です。グロテスクな描写もあります。でも止められない。読みだとすと次へ次へと進んでしまう。不思議な力があるみたい。読み終えた後、数時間たっても余韻が抜けません。物語に入り過ぎてしまうので、出来るだけ家で読むようにしました。感じ方は人それぞれですので、やはり嫌いな方もいるでしょう。でも私は友人に勧めたくなりました。そして感想を聞きたくなりましたよ。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.193
(5pt)

おすすめです。

登場人物のキャラクター設定が、とても奇抜。まず、そういう設定を置いて書ききってしまう筆力に脱帽です。
15歳の田村カフカ少年の老成した感じ、大人顔負けの自己規制、行動力、判断力。そうなった背景があるにしろ、60歳を超えてるナカタさんが文字が読めず、会話のしかたも素朴で素直な感じ。この年齢とキャラの対比が面白い。
他の登場人物サイキさんや、大島さんの設定もかなり超個性的。
しかも、これらの主要な登場人物は皆、なんらかの問題や弱点を抱え、社会的には弱者の部類に入る。子供、老人、50過ぎの複雑な過去のある女性、ネタバレになるので書かないが、大島さんもそう。
しかもカーネル サンダース やジョニー ウオーカーまで出て来るので笑ってしまった。
これらはトリックスターとして書かれてる。
神話をベースにして、様々な古典を読み込みながら、宮崎駿の物の怪の世界じみたエンターテイメント性を付加してる。よーく、読むと、つじつまの会わないところや無理のあるところもあるけど、そこはそれ、読んで楽しむものですから。
身体感覚の扱い方、性への態度、音楽への視点、善悪の基準については、かなりはっきりした作者の視点が出てる。
そこに、はっきりとした「現代性」を感じる。
もりだくさんながら、優れたエンターテイメントなのですっと読める。
哲学や、神話学、心理学、音楽の知識の背景を持って深読みしようと思えばできるようにも構成されてるのは、さすが。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.192
(4pt)

「大人になること」よりも、「大人になった後」が読みたいんだよ。

 「15歳」の少年が大人になることをテーマにした小説。文字を無くした男、エディプス・コンプレックス(=「父殺し」)、夏目漱石論(「三四郎」と「坑夫」の比較論)など、その他色々な文学的モチーフが重ねられるつつも、メイン・モチーフとしては、残酷な「世界」「他者」と少年がいかに向き合うようになるかが、いつも通り内向的で非現実的なストーリーで語られる。
 明らかに、発表当時に不可解で血みどろな事件を色々と起こしていた「壊れる10代」をターゲットにして「大人になること」を一生懸命に語ろうとした作品なのだが、不幸なことにこの作品は実際に壊れている10代よりも、「大人になりきれない自分」に若干ナルシスティックな魅力を感じる20代〜40代の読み手に熱狂的に支持されたのだった。もちろん、そんな読み手達を相手にして「大人になること」を語る意義は十分にあるが、一番読んでほしい読者層に届かなかったことは、作者とこの作品の不幸な点だろうと思う。
 この「ブンガク的」で居心地の良い内向的世界が、本来「大人」であるべき年齢層の日本人に受ける状況は決して健康的ではない。(村上作品の効用の1つには、「大人であること」に疲れた大人達の癒し本としての効果がある。)そろそろ、僕らには「こんな時代に大人であること」を愚直に考えた文学作品が必要なのではないか。だって、村上春樹がトップランナーになってからこっち、僕らはもう20年くらい同じトラックの上をグルグル回ってるんだぜ。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545