海辺のカフカ

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評判

海辺のカフカの評価:

3.76/5点 レビュー 521件。 D ランク

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平均点3.76pt

Amazonレビュー一覧

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全571件 341〜360 18/29ページ
No.231
(4pt)

〜 寓話と象徴の謎かけに満ちた、想像膨らむ良作。 〜

2000年以降、村上 春樹さんにとっては初めての長編小説作品。
15歳の少年が訳あって家出をし、見知らぬ土地へ向かっていくとの、
基調となる筋立ては、決して奇をてらったものではないし、むしろその
平易な文体と相まって、非常にオーソドックスな印象を受ける。
その物語自体を純粋に楽しむこともできるだろうし、それで物足りない
人は、作品の中に込められた沢山の寓話性と象徴的な出来事から、
答えのない謎かけに、自分なりの想像を巡らすこともできる作品。
全体のトーンが、静かでありながらも何か不穏な空気に満ちている
こともあり、特定の感情を刺激されるかもしれない。僕自身も、一度
体調が思わしくない時には、途中で読むのを止めたことがある。
また、主人公のカフカ少年もさることながら、個人的には脇役として
登場する登場人物の中で、「大島さん」と「ナカタさん」が何を言わんと
しているのか、上巻を読み終わった今でも考えている。
大島さんは、攻殻機動隊のアオイ君を連想させる引用マシーンで、
物語全体の枠組みを形作っていく「語り部」の役割を果たしている。
その手法は、松岡 正剛さんの著作なども彷彿とさせる。
ナカタさんについては、村上さんがずっと書き続けている「失われた」
「損なわれた」ある種のイノセントさの象徴かもしれないが、それも
また作中のある段階で再度「失われた」ように感じられる。
作品の中でも、実際にギリシア神話の引用が多数見られるが、
例えば近親愛・近親憎悪といった原初的なものが多く描かれて
おり、好き嫌いは別として一人ひとりに語りかけるものはあると思う。
▼ 本 文 引 用
ナカタさん、ここはとてもとても暴力的な世界です。誰も暴力から
逃れることはできません。(171)
痛みというのは個別的なもので、そのあとには個別的な傷口が
残る。(384)
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.230
(4pt)

中々面白いと思います。

相変わらず内省的で感傷的で自己愛に満ちた主人公(=村上春樹本人??)が紡ぎ出す、自己発見の物語ですが、非常に面白いと思います。主人公の愛の行方、その結末は近親相姦的で非常に胸くそ悪い感じではあるのですが、あえてその禁断の部分に踏み込んでみせたぜよ!って主張を感じて逆に潔し、って感じですね。村上作品群の中でも中々面白いと思います。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.229
(5pt)

海辺のカフカ。面白いです。

「あの頃は何も考えなくてよかった、と彼は思った。ただそのまんま生きていればよかったんだ。生きている限り、俺はなにものかだった。自然にそうなっていたんだ。でもいつのまにかそうではなくなってしまった。生きることによって、俺はなにものでもなくなってしまった。そいつは変な話だよな。人っていうのは生きるために生まれてくるんじゃないか。そうだろう?それなのに、生きれば生きるほど俺は中身を失っていって、ただの空っぽな人間になっていったみたいだ。」
個性的で、読み始めたら止まらず、読後にいろいろなものを残す作品を名作と呼んでいいとすると、この小説はその条件を満たしている。
テーマは普遍的で、ヒントやモチーフはいろいろなところから借用されている。ギリシャ神話だったり、シェークスピアだったり、それ以外の西洋文学作品であったり、日本の古典であったり、著者自身の過去の作品であったり。
田村カフカ少年がその一部になる図書館という舞台は、様々な思い出や知識の基本を支える記憶が存在する場所として象徴的。一方、もう一方の重要人物のナカタさんにはそれがほとんど無く読むこともできない存在として対比される。現実と異次元の混在。効果的に配置された小道具。よく考えられた個性の登場人物たち。性や暴力といった人間の基本的な欲求もその存在と不可分なものとして絡み合う。音楽。そして、多少のユーモアと皮肉。メタファー。変わっているのに必ずしも意外ではない展開。
たぶん、世界で一番タフな15歳になる旅は、多くの読者に対しても一筋縄ではいかないタフな時間を与えてくれる。変わった小説だが、なかなか面白かった。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.228
(5pt)

不思議な世界への扉が開きます

15歳の少年の家出。そこから物語の扉が開く。実はかなり不思議な話だ。最初は、現実的な話のように思える。それがすこしづつ、そうとは思われないエピソードが絡んで境界があいまいになってゆく。
主人公の少年。カラスと呼ばれる少年。ナカタさん。関係を示唆する2つの世界。中野区、山梨県、高松。細部の描写にこだわった平易な文体。神社、銀色の物体、猫、図書館、血、シューベルト、高知の森、ロードスター。
多くの謎と暗示。予感。効果的な小道具の配置。よく練られた写実的な表現力。静と動。細やかな心理描写。ありそうなこと、そうでないこと。いろいろなシーンが交差する。しかし、けして混沌とはしていない。そして、物語は少しづつ深みを増しながら展開する。
さくらさん、大島さん、佐伯さん、星野さん、ジョニー・ウォーカー。西洋の古典や近代文学からの引用。父が遺した予言。生霊。そして、海辺のカフカ。
読んでいて抵抗感や違和感は生じる。それも計算のうちかもしれない。とりあえず、この世界に身をゆだねてページをめくってゆけば、それなりに楽しめて、そしていつの間にかハマっている。個性的な作品だ。
厚さはあるようだが、活字は大きく、行間も広め。これを読むのに見た目ほどの時間はかからない。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.227
(4pt)

貴方の創造力は可か不可?

いちおう小説という形態ではあるが、読み手の創造力によって物語にもなれば単に某大な文字を見たに過ぎないともいえる厄介な作品である。前半はカフカとナカタさんの物語が交互に意図的に配置され、どこで接点が生まれるのか読者の興味を高まらせてゆくが、後半(下巻)は読者の創造と想像力によってどうにでも解釈してよい作品である。この作品を読んだ読者は現時点で「村上春樹」が意図している地点まで到達しようと思わなくてもよいのだと思う。カフカは読者其々の真相心理の闇の中に潜んでいるかもしれないし、そんなものは潜んでいない人もいるかもしれないからだ。それにしてもこの小説には行間を読み説く箇所が全くない。まるで映画を見ているかのように上巻から下巻まで読み進んでしまう。それだけ描写が詳細なのか内容が不可解なのか?「本を胸にあてて登場人物の心理を考え込む箇所がないんですけど春樹さん!」と思わず言いたくなってしまう。
しかしこの小説には意図的にか単なる諧謔か魅力的に作られた面白いキャラクターが多い。中日ドラゴンズフアンの「星野」青年。猫とは話せるが人間(おそらくスポーツ・ライター等の類であろう)とは話さない(話せないか)中田さん。大阪では行方不明になったままなのになぜか四国に現れたカーネル・サンダース等々。
とりあえずこの小説は一度肩の力を抜いてさっと読み終えて、いつか読者の心に響くものができた時にゆっくりと腰を据えて読めば良いの類の物ではないかと思う。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.226
(4pt)

15歳の少年はどこへいく

 15歳の少年、田村カフカ君はどこへいくのでしょうか?
 下巻では佐伯さん(42章で死んでしまうのは、意味があるのでしょうか)
 ナカタさんとキーマンが相次いで死んでしまいます。
 普通の人の理解を超える世界へと話は展開していきますが、これも15歳の
少年、思春期の少年の世界だからこその展開なのでしょう。
 思春期だった自分に戻ってみると、不可解な世界が少しわかるとおもいます。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.225
(4pt)

むずかしいかもしれないですね

 村上ワールドがわからないとむずかしいかもしれないですね
 田村少年の内面の世界とそれを取り巻く父や佐伯さん大島さん
 一方のキーマンであるナカタさんとホシノさん
 深く考えずに読み飛ばす感覚のほうが、15歳の主人公の理解に
つながるとおもいます。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.224
(4pt)

色んな謎に対しての読解力に限界を感じた

上で色んな謎がばら撒かれ、下で回収するということを期待していると全く肩透かしを食らう。
私自身の読み方だと「そこは解決するのにあそこは放り投げたまま??」という不思議さが残る本。
それぞれの読者の想像力と読解力が試される一冊。
象徴的なものがたくさんでてくるので、それぞれの人生経験によって読み方が変わってくると思う。
物語そのものは不思議な世界に包まれ面白いので楽しめるが私自身はまだまだ未熟なのか?の多い内容でした。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.223
(3pt)

白い怪物って何?

マイクロソフト日本法人元社長の成毛真(無類の読書家)が勧めていたのがきっかけで読んだ。
初めての村上春樹であったが、読者を引き込む技はさすがだと思った。読書を楽しむ本としては悪くない。
何かしらのメッセージを持ってはいるが、白い怪物に代表される突飛な部分が
二流のおとぎ話風な印象を与え、強烈に心に突き刺さるほどではない。
名作には、作家の魂の底から滲み出るものを感じるが、
この本は、読み手や、その評判を意識し過ぎという感じがする。
ほかの村上春樹作品を読んでみたいとは思わなかった。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.222
(4pt)

良くも悪くも独り歩き

要は、村上春樹さんの創る作品が好きかどうかなんですよね。クセがあるのは事実です。村上春樹さんはもともとそういう方ですし、一般的な小説と比べたら、なんだこれと思う様な表現もかなーりあります。一見逃げのようにも見える、はっきりとしたもののないストーリーや人物、なんとも言えない読後感。人物描写にしたって、普通の小説には考えられないような表現のオンパレードですよ。なんかもう、気持ち悪いぐらいの変態的な描写もあります。
と、まあ「村上ワールド」とも言われるように、良くも悪くも独特なので、とにかく一回読んでみた方がいいでしょう。レビューを見るぐらいなら、図書館に足を運ぶとか、買ってみるとか、すべきです。こういう超前進的な、いわゆるアーティスト思考の作品は、内容がどうのこうの言っても、及ばないんですよ。あまりにも突飛しすぎているから、結局は自分の目で判断するしか無いんです。それで自分の中でウケたら良し。ウケなかったら処分するなり何なりと、ってところです。
どちらにせよ現代小説を語る上では、やっぱり外せない存在ですし、読書が趣味というお方は、一度は触れてみては如何でしょう?そんなに高い買い物でもありませんしね。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.221
(3pt)

面白くないと思いながら最後まで読んだ

村上春樹の本はこれが始めて。有名作家の著作物は呼んでおかなきゃ名と言う気持ちで、タイトルだけは知っていたこの文庫本を買ったが、読んでいて実に退屈極まりないと感じた。上下2冊同時に買ったものだから、途中でやめるのももったいないと思ったので我慢して最後まで読んだが、結局、面白いと言う印象はもてなかった。しかし、妙に印象に残る場面が多く、面白くないと思った小説でこのように文章の内容が印象に残ったことは過去に無く、これが村上春樹の力なのかなと。もう一度呼んでみようと言う期には今のところならないが、印象に残った不思議な感覚。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.220
(5pt)

あらゆる要素の詰まった傑作

SF 青春 家族 思春期 バイオレンス 全ての要素を盛り込んで物語が一気に流れていく。
素晴らしいのめり方をさせてくれる傑作です。
それぞれの人間に語らせる言葉のひとつひとつが自己への対話を促すような気さえする。
本の分厚さをものともしない、読み終わりたくない面白さです。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.219
(5pt)

少年の父殺しの話

この作品はとても構成をしっかりと考えて書かれている。
本質的には一人の少年が父親を殺して(あるいは乗り越えて)心理的に成長する話を
カフカ少年とナカタさんの2つのストーリーを平行して語ることにより、再構成する
表現方法をとっている。
カフカでは、少年の内面を丁寧に描き心の成長を描いている。一人称で語られるのはそのためで
、内面の複雑さを強調できるようにするためかもしれない。また、ナカタさんでは実際の事実を
無機質にたんたんと描写している。暴力や外的なかかわりなどを。ナカタさんに心がないと作中で
表現がなされたのも、物語の外的な部分を担っていたからだ。
つまり、ひとつの事件を分解して再構成している小説ということだ。より、事象を丁寧に描写するため
ではないかと思った。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.218
(2pt)

解決編なきファンタジーポルノ

はやり,というか,案の定,というか,前半でばら撒いた伏線,例えば.
少年時代のナカタさんに何が起こったのか,
僕の記憶がなくなっている間に何があったのか,
そういう謎がまったく回収されず放り出された形で結末を迎える.
思わせぶりな謎を提示して,あとはセックスシーンのオンパレード.
これを称してブンガクと呼ぶのかもしれないが,
前半の期待感に比べると少々不消化感の残る読後感.
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.217
(5pt)

少年と老人のミステリアスな冒険

家出したナイーブな少年と
奇妙な事故に巻き込まれて不思議な力を身につけた老人の
両面から語られるストーリー.
読んでいると全体に視野が狭く世界感に広がり感じられないが
両者とも社会的には弱者であり
そういう目線を意識しているのかもしれない.
計算づくだとすれば高度な表現力である.
前半は少年の内面の描写と老人の半生の説明に多くを費やし
なかなかストーリーが進まないが
ある事件からストーリーは急展開し
2人の運命が接近し始める.
下巻に待ち受ける結末に期待が高まる.
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.216
(2pt)

???

物語が進むうちに主題が、「世界の不条理」から、いつの間にか、「内面の問題」にすりかわってない?なんか、TV版エヴァと同じ様な、肩透かしを喰らった感じこれがセカイ系ってやつですか?あと、物語の中の社会問題の扱い方に、引き付けられる物がないなぁ
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.215
(5pt)

ナカタさんとホシノくん

村上春樹『海辺のカフカ』上下巻、新潮文庫
久々に読み返してみました。2002年に刊行されて、すぐに購入して読んだように記憶しているから、ぼくが20歳か21歳の時です。ずいぶんと前のことのようにも感じるし、つい最近のことでもあるようにも感じます。
記憶というのはやはり不確かなもので、まるで新しい物語を読むかのように楽しむことができました。なんとも燃費の良い話です。もちろん大枠としては「読んだことのある物語」なのですが。
次に読み返すのは、きっとぼくが30代の半ばくらいにさしかかったころだろうか。楽しみだな。
はじめに読んだ時にも(たしか)感じたことだと思うのですが、ナカタさんとホシノ青年というふたりのキャラクターは、もちろんぼくにとってはということですが、村上作品における傑出した登場人物であるように思います。佐伯さんや大島さんのような深み(かげ)は感じられませんが、それを補って余りある魅力がふたりにはあるように思います。何と言えば適切かわかりませんが、広がりみたいなものが。
なにはともあれ、次は『少年カフカ』を読もう。実を言えば、今回『海辺のカフカ』を読み返したのも、この『少年カフカ』(村上さんと読者とのやり取りを記録したマガジン)を読むためのものだったのです。ああ楽しみだ。みなさんどのように『海辺のカフカ』を読んだのだろう?
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.214
(5pt)

死と記憶と存在,あるいは夢との戯れ

 この小説は大人の童話です。あまり理詰めで読むと裏切られます。ありそうでもなんでもない【―実際には,このような時空の捩れは存在すると私自身は信じていますが―】,荒唐無稽なファンタジーです。しかし,死を悼む気持ちを持っている人ならば,結論部分は納得できるでしょう。ただし,結論部分は死者から生きる者に向けた素晴らしいメッセージです。
 ところで,私は比較的熱心な村上春樹の小説の読者ですが,この物語の手法は,けっこう手が込んでいます。村上春樹にしては珍しく,精緻に筋を組み立ててから書いています。その点が新鮮でしたね。酷評もわからなくはないのですが,読む価値は大いにあります。他の小説以上に頁を繰りたいという気持ちが湧いてきます。というわけで,星は五つ星です。
(ここからは作者への注文。長野県で起きた集団睡眠事件前後の硬質な文章―たとえば,担任教師の手紙や軍関係の報告書の文章―がもたらす緊張感という手法を作品の要所要所に利用して欲しかった。後半はスピード感と詩的な隠喩に満ち満ちていて,それはそれで悪くはないのだが,もう少し,息の長い散文の魅力を表出して欲しかった。人物像の形容が中途半端な気分にさせられたのが,佐伯さんと星野くん。これは,想像力の貧困とこちらが指摘されそうだが,映像的なイメージが湧かない。もう少し書き込んで欲しいところ。徳島,高松の街の描写も余計な情報だから省いたのだろうが,星野くんの目を通じて,もう少し欲しい。リアリティー描写と夢幻世界の描写は必ずしも二律背反ではないのではないか・・。春樹君,生意気な事を申し上げてすまない。)
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.213
(1pt)

うまく化けきれていない狸みたいな

内容は深い。視点も相変わらず先を行っている。作者の文章力、構成力はずば抜けているから読み応えもある。でも、肝心の作品自体にオリジナリティがない。折衷主義に逃げていると言ってもいい。どこかで見たことのある展開。あふれかえる引用とオマージュ。
同じことサリンジャーが行ってなかったっけ?この言い回しはまるでブローティガンだなぁ…などなど。
別にそれが悪いというわけではないけど、春樹の場合、いつも引用が有機的に物語と結びついていないから、単なる情報の寄せ集めに見えてしまう。そのような作品からは、知識を香水のように振りまいた文化人の自意識しか感じられない。先人たちの功績を器用に盗んで、うまく消化して、それを「自己完結的に」混ぜ合わせているに過ぎない。そしてそのようなオムニバス的な物語が評価されてしまうということは、これからの文学のことを考えると非常に残念なことだと思う。
異質な人々との邂逅や不可解な謎。日常を揺さぶるそれらのファクターはすべて均等に薄められ、あるいは適度に誇張されて「エンターテイメント」として物語の世界にたち現れる。それを捏造とは言わないが、なんとなくシステマティックでよそよそしい感じがするのは、描写が淡々とし過ぎて生々しさが感じられないから。そして悲劇のファムファタールは主人公と交わり、搾取されて、人形のように「美しく」生き絶える。それがまた女性のナルシシズムをくすぐるのだ。まるで秀才の答案用紙のように、悲劇さえもきちんと整えられたこの物語は、素晴らしいと同時になんともいえない虚無感も抱かせる。
また、いつものように、登場人物が饒舌だ。そしてその口調もやけに「説明的」でわざとらしい。物語を読むと言うより、なにかの授業を受けているような気がする。登場人物を説明的な口調にしてしまうことで、本来のコミュニケーションのもつ自然さ、素朴さが失われてしまっている。それにやたらと読者を啓蒙するようなセリフが多いのもなんだか説教されてるみたいで不快だ。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.212
(4pt)

良質の問題集(だだし解答無し)

 自分自身を見つけられず、影を引きずったように生きている人たちの物語を
通じて、人間として生きていることの意味を問いかけている本でした。
 答えは提示されていません。答えが無いためスッキリしない感じもします。
登場人物が悩みや苦しみ、迷いを背負った人たちなので、暗い感じもします。
 それでも、人間として生きていることの意味を、たまには自問してみる価値
があると思われる方にはお勧めです。
 生の意味だけでなく、日常の生活、勉強や仕事に明け暮れる毎日の中で、あ
まり考える機会が少ない友情、血縁、愛情などの基本的な問題も考えさせてく
れます。
 佐伯さん、星野青年などの登場人物はそれぞれ異なる答えを持っており、カ
フカ少年がたどり着く境地も他の登場人物とは異なっています。どれが正解か
明示的な示唆さえありません。解答の付いていない問題集を買ったような物で
すので、イライラする人もいると思います。
 ミステリー小説のように謎が解決することもありません。空から魚が降って
くるような怪現象が起きても原因について合理的な説明や解明が無いままだっ
たりします。他にも理不尽な現象が現実世界に起こりますが、その原因に対す
る合理的な説明はありません。
 解答や説明がが無いと落ち着かない人にはこの本は無理かもしれません。お
まけに、登場人物が影を引きずっているので、トーンも暗いです。
 それでも、良質の問いかけをしてくれる良い本です。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545