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海辺のカフカ



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【この小説が収録されている参考書籍】
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカの評価: 3.76/5点 レビュー 520件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全345件 301~320 16/18ページ
No.45:
(4pt)

文学のための文学、メタファーとしての文学(あくまでひとつの見方ですが)

 はっきり言って、かなり敷居の高い本だと思います。村上春樹の過去の本だけでなく、それ以外の多くの本を読んでいなければ、意味のよくわからないところがたくさんあります。なぜかといえば、この本は物語を追うだけでなく、作品を読み解く姿勢、およびその手腕を必要としているように思えるからです。歴史上の名作と呼ばれる本を読んだことのある人ならば、『読む』だけではたどり着けないところがあることを知っていると思います。僕もあまり本を読んでいるわけではないので、「?」をたくさん抱えながら読むことになりました。
 しかし、文章は読みやすく美しく、温度も歯ごたえも備えていて、読者に(この本があっている読者に)「?」の部分について考えさせる(あるいは物語の中で、その答えが示されるのを待たせる、探らせる)のに十分な役割を果たしたと思います。
 「本当に優れた本は頭ではなく心をひねらせる」といいますが、「海辺のカフカ」は僕にとっては「感覚」をひねらされる本です。というのもこの本では単語から文章へ、ではなく、単語から一気に物語全体へ、あるいは物語の存在そのものへと視点が飛躍されることがありました。それは言い換えると作品による作品そのものの相対化ですが、僕はそのたびにめまいを起こすような感覚を味わうことになりました。それが醍醐味でした。
 しっかりとした手ごたえがあるだけでなく、まだまだ追及の余地のある本だと思います。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
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No.44:
(5pt)

冗長性の回避

 この小説を理解することは非常に困難だと感じました。何を伝えたくて、何故このような話の展開をし、何故このような表現を用いるのだろうか、という疑問を持ちながら読み進めていきましたが、途中でやめました。
 というのも、村上春樹は他者によりよく伝わるような言葉を選択するのではなく、自分にとって適切な言葉を「過程」を越えて、つかみとって表現しているのだと感じたからです。つまり論理的に、緻密に構成されたストーリーというわけではなく感覚に依拠する側面が大きいのだと思いました。作中で、「象徴性と意味性はべつのものだからね。−−−芸術家とは、冗長性を回避する資格を持つ人々のことだ」という言葉がありますが、自分はこの小説自体にそのことを強く感じました。
 しかしながら、論理性の面でも現実と虚構が混同していく展開はあくまで自然で、村上春樹の文筆力のすごさを改めて感じました。
 歴史に残る作品であると思います。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.43:
(5pt)

とっても素敵

主人公が自分を損なわれてしまうなにかから必死に逃げる、とってもどドキドキして、上下巻を3日で読破してしまいました。とてもリアリストかとおもえばファンタジー、「お化け」みたいな具象なわかりやすい怖さもあるけれど、カラスと呼ばれる少年と主人公との、必死でとらわれたくないと逃げる描写は焦燥のような気持ちが一番怖かった。ひさしぶりに寝る間も惜しんで読みつくしたいとおもう本に出会いました。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.42:
(4pt)

何かを探す主人公が最後に見つけるものに注目したい。

 現実に必要なものがわからない。見えない。確信を持てない。そして主人公の「僕」は「ただなんとなくこうするべき」という感覚に沿って生活をし、まさに「喪失」を繰り返す。そうするうちにやっと現実に確信を持って必要と言えるものがみつかる。もちろん見える。そういう話。 「ユキ」と「僕」のやりとりは、特に中身としてたいした意味はなく、筆者が世に向けて言いたいことが書かれている。。。と思う。 本当に大事なところはどこか?それは最後の「ユミヨシさん」とのやりとり。心配だから何度も電話する。存在を確かめたくて一緒に寝る。本当に必要な人、大事な人の手は決して離してはいけない。それはどこかへ消えてしまう可能性があるものだから、といったところ。。。と思う。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
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No.41:
(4pt)

村上春樹氏の描く世界が好き。

相変わらず、村上氏のセンスってすごいと思う。物語に登場するアイテムのチョイスは絶妙でカッコいい。田舎的なものと、都会的なものとのバランスが個性的でオシャレ。また、決してお説教臭いメッセージなんて訴えかけることをしないのだけど、読んだ後に何か教育された気分になる。純文学と、エンターテイメント作品のいいとこ取りをしたような作風。村上春樹の小説は最強。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.40:
(5pt)

お、おもしれえ・・・

毎度のことですが、村上春樹の小説を読むと、読中読後は春樹ワールドから抜け出せなくて、大変困る。普段は自分のことを「俺」と言うのに、突然「僕」と言ってみたりだとか、小難しい皮肉や蘊蓄をたれてみたり、無性にビールが飲みたくなったり、ピンボールのハイスコア競い合ってみたり(ちがうか)、あるいは日曜日にくすの木を眺めながらりんごを食べて過ごしてみたり。つまりはそういうことだ。…みたいな口調になったり。今回もどうやら、今までの村上小説と、根底部分はあまり変わらない。失われたもの、損なわれてしまったものは二度と戻らない。それらはすでに失われてしまったのだから。…みたいな口調になったり。ナカタさんをはじめとする登場人物達がとてもキュート。僕もウナギは好物であります。(村上小説の中では)とても解り易く、読み出したら止まらない、抜群のエンターテインメント小説。まだ読んでいないのなら、是非お読みなさい。大変良い読書体験ができますよ。
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4101001545
No.39:
(5pt)

identity crises

 少年は、記憶は大事なのかと問う。彼女は、場合によってはと答える。
 この場合の「記憶」とは、厳密に言えば、おそらく「思い出」と呼べるものであろう。例えば、私は甲歳の時に乙に初恋をしたが、その初恋は丙という結果になったという言説があった場合、それは「記憶」である。「思い出」とは、そのような言語に置換することが困難なもの、感覚的・感情的なものである(脳科学で言うところの「クオリア」のような)。一般的に表現するならば「甘酸っぱい」、自分が恋をしていると気付かないような感覚、事後的に分析して、あれは恋だったのだと理解するような感情(無論、それは私の表現ではあるが)。主人公にとっては、「思い出」は嫌悪の対象ではなかったのかもしれないが、好き嫌いを問わず「思い出」は、私を私として認識せしめる(因みに、大澤真幸は否定的な出来事は自己同一性の源泉となりやすいと書いている)。それは私以外の誰によっても代替不可能であり、私の固有性・唯一性を保障するからだ。彼女にとって自らの「思い出」が絶望的なものであっても、その「思い出」によって私は私としての自意識を獲得しているということを理解していたからこそ、彼女はその「思い出」の重たさにも拘わらず、冒頭の発言を行ったのであろう。
 この主題は『世界の終り』に通底するものである。否、現代文学のそれであるのかもしれない。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.38:
(4pt)

それはふわふわと軽く

賛否両論真っ二つな村上春樹氏ですが、私が氏の著書を読むのはこの作品が初めてです。最初の何章かは「あぁー失敗した!絶対読みきれない」と思ったのですが、ナカタさんが登場してから俄然面白くなりました。登場人物は皆、特徴的で風変わりであるけれどもどこか人間的で憎めない。会話表現も地の文も読んでいて苦痛ではなく、飽きさせない。このあたりが村上春樹氏人気の理由だろうな、とは思うのです。が、この物語には起承転結はありません。これっぽっちも。なので、読んでいると延々と足踏みさせられている気分に陥ることがあります。「前に進んでるの?」と誰かに聞きたくなるんです。そんなわけで星-1。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.37:
(5pt)

素晴らしいです!

 まず、一つ言いたいのが、村上春樹の小説はリアリストの人や、全てが理屈で説明できないと納得が出来ない人にはオススメできない、ということです。 村上氏の著作を批判する人は、必ず「思わせぶりなことを書いて気取っているだけだ」みたいな事を言いますが、不思議なことは不思議なこととして、そのまま楽しめる人間でないと、この人の小説を楽しむことはできないと思います。 私は、村上さんの本は全て読んでいますが、この『海辺のカフカ』は、『ねじまき鳥クロニクル』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』並みの、傑作小説だと思いました。 何度読んでも、別の側面が見えてくる、素晴らしい小説です。 キャラクターたちも、生き生きとしていて楽しいです。とくに、ナカタさんとホシノちゃんのコンビがユーモラスです。 難しい解釈なんかできなくても、十分楽しめると思います。 「少年カフカ」という作者とファンのメール集(ムック)もあわせてお読みになると、なお良いかも知れません。
海辺のカフカ (下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (下) (新潮文庫)より
4101001553
No.36:
(5pt)

とても面白かったです。

 まず、一つ言いたいのが、村上春樹の小説はリアリストの人や、全てが理屈で説明できないと納得が出来ない人にはオススメできない、ということです。 村上氏の著作を批判する人は、必ず「思わせぶりなことを書いて気取っているだけだ」みたいな事を言いますが、不思議なことは不思議なこととして、そのまま楽しめる人間でないと、この人の小説を楽しむことはできないと思います。 私は、村上さんの本は全て読んでいますが、この『海辺のカフカ』は、『ねじまき鳥クロニクル』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』並みの、傑作小説だと思いました。 何度読んでも、別の側面が見えてくる、素晴らしい小説です。 キャラクターたちも、生き生きとしていて楽しいです。とくに、ナカタさんとホシノちゃんのコンビがユーモラスです。 難しい解釈なんかできなくても、十分楽しめると思います。 「少年カフカ」という作者とファンのメール集(ムック)もあわせてお読みになると、なお良いかも知れません。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.35:
(5pt)

楽しさ満載のエンターテーメント小説

15歳の家出少年田村カフカの父との葛藤そして母親探しのお話が一つの軸となり、猫と話ができる老人ナカタさんとその偶然の道連れ星野君のいわばロードムービーをもう一つの軸としてストーリーはテンポよく展開し、ときには現実的に、ときにはおとぎ話的に進んでいきます。登場する人物はみな魅力的で、とくにとんでもないことに巻き込まれることになったトラックの運転手、星野君のキャラクターには、心引かれるものがあります。これに加えて、戦時中に発生した小学生の集団失神事件というエピソードが物語にミステリアスな雰囲気を加えています。私もデビューの頃からのファン(熱烈的とは言えませんが)ですが、昔の作品といちいち比べてたらキリがないとおもいます。一気に読ませる力こそ作家のすばらしさではないでしょうか。主人公が最初に出会ってエロチックな想像をしてしまうさくらという女の子の出番がちょっと少ないのが残念でしたね。
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4101001545
No.34:
(4pt)

なんかちょっと説教じみてて…

 読んでいるとものすごく息苦しい。 相変わらずの登場人物の語る禅問答っぷりは、言葉を正しく理解されないもどかしさから来るものなのだろうか。それについてあれこれと考え、思いをめぐらすことがこの著者の本を読む読者の楽しみのひとつであるのだけれど、作品中に執拗に繰り返される「観念に対する責務」は、安易にそういう思いにふけるわれわれに対しての、著者からの厳しい視線が向けられる。 メタファー、解釈、夢、想像、簡単に言ってくれるようだけれど、それらにお前らは本当に責任をもって接しているのか?そうじゃないなら、軽々しく口にしないでくれたまえ、諸君。   そんなところだろうか?そんなん言うんだったら、始めっから物語をそんな語り口にしないほうがいいんじゃない?って気もしちゃいますが。 ってなことで、なんか読むのに結構疲れましたけど、何でそんなことにそこまでこだわるわけ?って不思議になるくらいいつも一生懸命にメッセージを発してくるその姿に、毎度ホントに感動させられるのも事実。
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4101001545
No.33:
(4pt)

結論のない小説

生きるとは、絵を見ていれば分かるという。しかしながら、絵を見てどうするのであろうか?記憶に生きるのであろうか?タフな少年の旅は、さまざまなストーリーとクロスしながら、模様を織っていく。しかし、完成されたものは、愛なのか?答えがよく分からない。個性的なキャラクターが登場しているのでその会話など楽しめるところは多く読みやすい。
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4101001553
No.32:
(5pt)

好きな本だ。

熱中して読んでいたら夜中の3時になっていた。電気を消した暗闇の中で考えた。15歳って一体何だろう…?もし目の前に15歳の自分が現れたら?外見は変わっても中身はずっと変わらない「わたし」のままだと思っていた。でも、目の前に15歳の自分が現れたら(そう想像したら)やっぱり決定的に何かが違っていた。そこには今はもう無くしてしまった何かが確実にあった。そしてそれは悲しいことにすごく大事なことだったのだ。目の前に15歳の自分が現れたら私は心の中でこう叫ぶと思う。「ごめんね。わたしはあなたの思っているような大人にならなかったよ」そんな叫びは彼女に届くはずも無く、15歳の私はただ眩しく笑うだろう。寝る前になんてことを考えさせてくれるんだ?この本は。下巻を読み終わった時には一体どんなことになるやら…。
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4101001545
No.31:
(4pt)

初めての村上春樹

恥ずかしながら初めて著者の作品を読んだ。最初の取っ掛かりが難解に感じたが、後はすっかり引き込まれた。細かいディテールがしっかり書かれているけど大事なところは?なところも多かったと思う。村上春樹ってこういうものなのかな?という読後感です。面白かったけど謎が謎のままで終わったところもあったし。現実の少年は(大人も?)この本の主人公はほどしっかりしてないしもっとわけ分からないけどはっとさせられるくらい脆くて危うい点は読んでいてドキドキした。個人的にはナカタさんやホシノくんのサイドストーリーにも引き込まれた。小難しいと敬遠してたところもあったけど他の作品も買ってみようと思う。
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4101001545
No.30:
(4pt)

子供にはちょっと…

まず、この本は小・中学生にはおすすめできないですね。この本は性的な表現が多すぎると思います。それもかなり直接的に。僕は17歳の高校生なのですが、とても友達に勧めることはできません。小学生が読んだらどう感じるんだろうか?内容も難しく、哲学の用語や聞いたこともないようなカタカナ語が大量に出てきます。でも一度読み始めるとやめられない感じがしました。かなりこの小説に入り込んでしまいました。きっとこれがこの本の魅力なんだと思います。
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4101001545
No.29:
(4pt)

ノルウェーの森ほど

引き込まれませんでした。細かい描写が、いちいち引っかかって、途中で読むのを止めようかと思いました。でも人に借りて読み始めたので、頑張って最後まで読みました。おかげで、自分の価値観がわかって良かったです。なぜ感情移入できないのか。この違和感は何だ?と考えるうちに、変な感想ですが、自分の、物事や人に対する捉え方が客観的に見えてきました。そんな気持ちにさせてくれた数少ない1冊です。
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4101001545
No.28:
(5pt)

村上春樹の世界の楽しさおもしろさの入門書

村上春樹さんの長編は大抵読みましたが、これから彼の世界に入りたい、知りたいと言う方にはこの本は特にお奨めです。この本はストーリー性や状況設定が明確だし、カーネルサンダースさんやジョニーウォーカーさんが登場したりと現実世界との接点を強く意識した設定がなされていて、まず「訪問しやすいおうち」という感じです。この本を手始めに彼の世界の魅力を堪能してください。蛇足だけれど彼の本にはキースジャレットのピアノが良く合います。試してみてください。
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4101001545
No.27:
(4pt)

タフじゃなきゃね

 かなりムカシから、著書の本は殆ど読んでますが、若いときはいいのですが、オトナになり、現実生活が厳しさでいっぱいの今、あえて避けていました。 村上氏の本、エッセイじゃなく小説のほうを読むとつくづく暗い気持ちになってしまいます。 暗い、というのが適切でなければ、寒々しいというか、ひとりぼっち感がいや増すというか、、。 他の皆さんはどうかわかりませんが、私は精神的に落ち着いているときに読むようにしています。 落ち込んでいるときに読むと、本気で、どっぷりと、つくづくと、哀しくなってしまうから。(何がどう、と問われれば困りますが。) 今回、あえて久々にこの本を手に取ったのは、中国で今村上氏の本がはやっているという報道を眼にしたので、アメリカはわかりますが、なぜ中国?というのが気になったので。 世界中の人が、みな、寄る辺の無い気持ちをどこかにかかえているのですかね。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545
No.26:
(5pt)

海辺のカフカ

 村上春樹は面白い。大概において刺激的だし感動的だ。優しい気持ちにさせてくれるし、静かに力づけてもくれる。ここ数年は、インタビュー、ルポルタージュ、短編集などが相次いただけに、「海辺のカフカ」の濃厚な村上テイストには、ある種の懐かしさをおぼえながらすっかり引き込まれた。
 懐かしさとは、登場人物達が忘れ物を探し出そうと過去に捕ら‾‾われ続けているからでもあり、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出させるからでもあり、そんな風に、物語は一見過去に向かっているようだがそうでは無い。未来のために過去を清算しようとする登場人物達にも懐かしさは漂っている。
 絶妙な語り口で展開する物語には、生と性、死と暴力が深く立ちこめている。緻密な構成、洒落た設定、不思議な人物達に気の効いた台詞、スノビズムもペダンティズムも健在。過去の村上作品を集大成するモチーフも網羅されている。そうした春樹的特徴を十二分に備えながら、しかし、世界への違和感や、居場所の無さに途方にくれるしかなかった過去の登場人物達とは明らかに一線を画した「海辺のカフカ」の登場人物達。感情は押さえられる一方で軽妙さが増している。より平易な言葉によってやさしく分りやすくなった表現に、人を喰ったような大胆さと、心の底の微かな思いに柔らかな光を当てる繊細さとが鮮やかに立ち上がる。
「風の歌を聴け」からこのかた、村上春樹が何を受け取り、何を育んできたきたか。オームと阪神淡路の震災を抱え込んだ挙げ句の、到達点とも新たな出発点とも見える「海辺のカフカ」の強さと美しさ。
 世界一タフな15歳を目指した少年はどうなったか。何と何と、優しくなれなければ生きていかれぬと思い定め、足取りも確かな一歩を踏み出すのだ。訳書も多い村上春樹、いつかチャンドラーに手をつけないかと、思わず夢想するのだった。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海辺のカフカ (上) (新潮文庫)より
4101001545

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