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七つの仮面
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七つの仮面の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全20件 1~20 1/1ページ
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バラエティ豊かと言えば聞こえが良いが、金田一耕助もの短編の寄せ集め。どの作もそれなりに楽しめたが、金田一耕助が名推理で事件を解決した、と言う印象はほとんどなかった。彼が好人物であるのは良く伝わってきたが、謎解きミステリーとしては物足りなさを感じた。 | ||||
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<最後の短篇作「蝙蝠男」の感想のみ。ネタバレ注意> 乱歩的な題名に反して、横溝作品に頻繁に登場する水商売やストリッパーの女でもなく、大学受験を控えた健全な女子高生視点ではじまるのがおもしろい。 ただし事件の真相は頂けない。 「むろん由紀子が見ていることがちゃんと計算に入っていた」(P.241)犯人によって、窓辺の蝙蝠男の凶行は演じられたというのだが、まるで意味をなしていない……。 当然その理由は犯行現場を偽装することで、主犯坂崎のアリバイ作り+当局の目をローズマリーから遠ざけることにあったが、由紀子が警察に届け出るかどうかはまったく水物である。現に警察に届け出る事はなく、一週間ほど悩んだ末に金田一耕助に相談を持ちかけたわけだ。 しかもその間に当局の捜査がローズマリー近辺に及んだようにも見えず、手間をかけた工作などする必要はなかった……。【注1】 金田一耕助シリーズの前後関係はややこしくて、あくまで自分調べの中でだが、短篇では本作が最後の作品である。 その最後がコレかというのは、ファンとしては残念であることは正直否めない。 しかし、後日晴れて合格した由紀子に耕助がK.K.の刻印のある腕時計をプレゼントする〆は、なんかこう感無量であるw 【注1】由紀子父子が金田一耕助ではなく、警察に届けていれば、まんまと犯人たちの思惑通りに進んだかもしれないが、耕助と警視庁はじめ所轄との関係はべったりだから、いずれ彼の耳にも届いたかなw 付け加えて、耕助が聞いた由紀子の証言から犯人逮捕の間にも、かなりの飛躍があるようにも思う。 | ||||
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本作品は表題作「七つの仮面」ほか、「猫館」「雌蛭」「日時計の中の女」「猟奇の始末書」「蝙蝠男」「薔薇の別荘」の計7篇を収めた横溝正史の短篇集。すべての作品に名探偵・金田一耕助が登場する。横溝の作品集としては後期に編まれたもので、雑誌に発表されたあと単行本に収録されていなかった作品ばかりが集められており、内容はバラエティに富んでいる。 ●七つの仮面 まずは表題作「七つの仮面」から。昭和22年2月雑誌「東京」に掲載された「聖女の首」が原形であり、金田一耕助シリーズとして改稿したうえで、昭和31年8月「講談倶楽部」に発表された作品である。 今では娼婦になり下がり、殺人犯の烙印まで押された美沙。かつての彼女は気品に満ち、ミッション・スクールで「聖女」と呼ばれるにふさわしい時期もあった。だが、醜い上級生の山内りん子に迫られて結んだ忌まわしい関係が、彼女の一生を狂わせる。 銀座の高級喫茶「ベラミ」でウエイトレスとして働きはじめた美沙。彼女の清らかな美しさに多くの男たちが夢中になるなか、美沙が選んだのは江口万蔵という中年の彫刻家だった。彼と爛れた肉体関係を結びつつ、美沙は他の男たちに対しては「聖女の仮面」をかぶったまま、群がる男達を値踏みし続けていた。そこへ昔の関係を取り戻そうと執拗に付きまとうりん子も加わり、やがてあの恐ろしい事件が起きてしまう……。 本作は、全編を通して美沙の視点による回想という形を取っており、金田一耕助の登場するシーンは終盤のごくわずかのみとなっている。同様の手法は「八つ墓村」「夜歩く」「三つ首塔」などに見られるもので、ミステリというよりもホラーの色が強く、最後に判明する七つの仮面の意味はなかなか衝撃的だった。 <登場人物> 美沙 … 手記を書いた娼婦。高級喫茶ベラミで働いていた。 山内りん子 … 美沙を熱愛し、邪な関係を結んだ醜い先輩。 江口万蔵 … 有名な彫刻家。美沙を聖女と呼び、仮面を作る。 中林良吉 … ベラミの客。美沙に恋する初心な若者。 伊東慎策 … ベラミの客。美沙の訪問後、窓から転落し死亡。 宮崎 … 伊東や金田一が住むフラットの管理人。 金田一耕助 … 伊東の転落に居合わせたモジャモジャ頭の探偵。 ●猫館 「猫館」は昭和38年8月「推理ストーリー」に発表されたもので、表題どおり事件現場に猫が登場する短篇。かつて写真館として利用され、いかがわしい噂がつきまとっていた「猫館」と呼ばれる古館で、女占い師のドクトル・ハマコが殺された。上半身裸でスカートだけを身につけた彼女の死体は、12匹の生きた猫と1匹の死んだ猫が取りまいていたという。 発見したのは山陽寺が経営する幼稚園の園児たち。幼稚園によく遊びに来る「猫館」の猫が血まみれになっているのを不思議に思い、園児たちが「猫館」に行ってみたところ、彼女の死体を見つけたのだとか。警視庁の等々力警部を訪ねていた金田一耕助は、否応なく事件に巻き込まれることになった……。 猫と死体という組み合わせ自体は面白いのだが、やや既視感がある点が残念。同じ題材なら「黒猫亭事件」や「迷路の花嫁」の方が好みだ。 <登場人物> ドクトル・ハマコ … 猫館に住む女占い師。死体で発見される。 辻本咲子 … ドクトル・ハマコの家の婆や。行方不明。 佐藤阿津子 … ドクトル・ハマコの内弟子。行方不明。 糟谷天民 … 山陽幼稚園の園長。山陽寺の住職でもある。 松崎喜美子 … 山陽幼稚園の保母。戦災孤児。 佐伯幸造 … 保守党の領袖。ドクトル・ハマコの身元引受人。 古谷磯吉 … 猫館の元の持主。戦後は怪しいクラブを経営。 上条恒樹 … 裏の崖の上にアトリエを持つ画家。 上条冴子 … 恒樹の亡妻。長くノイローゼに悩んでいた。 日比野警部補 … 谷中署の捜査主任。 浜中刑事 … 谷中署の若い刑事。 遠藤刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の部下。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 遠藤刑事に誘われ、奇妙な現場を訪れた探偵。 ●雌蛭 「雌蛭」は昭和35年9月「別冊週刊大衆」に発表された短篇。ある晩、金田一耕助は緊迫した様子の女から電話で不思議な依頼を受けた。今すぐ渋谷のS町にある「聚楽荘」という高級アパートに行き、4階8号室に忘れてきたハンドバッグを取ってきて欲しいというのである。 名前を明かさない相手を訝しみつつも、女の懇願に負けた金田一は依頼を受けることにした。人目につかぬよう変装した金田一は、ハイヤーで「聚楽荘」アパートに向かい、指示どおり電話ボックスに置かれていた鍵を使って部屋へと入り込んだ。そこで彼が発見したのは、硫酸で顔と下腹部を焼け爛れさせた男女の死体だった……。 金田一がトレードマークの羽織袴を脱ぎ、アロハにハンチング帽、べっこう縁眼鏡で変装する姿が印象的な本作。導入部こそ目新しいがトリック自体はよくあるタイプのもので、意外性はあまり感じられない。 しかし、金田一をサポートする助手として、多門六平太という前科者が登場するのは面白かった。同じ年に書かれた「支那扇の女」の多門修と恐らく同一人物であり、多門がなぜ金田一に心酔するようになったのか本作では詳しく語られている。また、多門修は「扉の影の女」に再登場するので、併せて読むのも楽しいだろう。 <登場人物> 立花慎二 … 流行作家。濃硫酸で顔を焼かれた死体で見つかる。 立花昌子 … 慎二と共に顔を焼かれた死体として発見された妻。 梅本繁子 … 昌子の妹。慎二の遺産相続人。 河野健太 … バー「ユリシーズ」のバーテン。昌子と愛人関係。 田辺泰子 … 慎二の別れた妻。昌子の学校友達だった。 多門六平太 … キャバレーの用心棒。金田一の助手を務める。 唐沢警部補 … 渋谷署の捜査主任。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 奇妙な依頼の電話を受け、変装して出かける。 ●日時計の中の女 「日時計の中の女」は昭和37年8月「別冊週刊漫画TIMES」に発表された短篇で、金田一はほとんど活躍しない。最近ベストセラー作家となった田代裕三は、高級住宅地である成城で広大な屋敷を購入した。庭に大きな日時計があるその家の前の持ち主は、自動車事故で亡くなった神保晴久という画家で、敷地内に建てたアトリエに愛人を連れ込んでいたという。 田代裕三が急に売れっ子になったことで戸惑う妻の啓子は、神保晴久と愛人の噂を耳にし、夫もまた同じようなことをするのではないかと危惧する。裕三のいとこで服飾店を経営する松並可南子は、大金をかけて家を改築する計画だと話す啓子から、自分に対するあらぬ誤解を感じていた。 そんな折、庭の大きな日時計の下からミイラ化した女の死体が出てきてしまう。犯人と思われる神保晴久はすでに死亡しており、事件は終わったかと思われたのだが、やがて啓子は何者かに命を狙われていると訴え始める。誰も彼女の話を信じなかったが、数日後アトリエで女性の絞殺死体が発見されたのだった……。 ミステリというよりはサイコサスペンスという方がしっくりくる本作。事件が起きるまでが長く、解決部分が妙にあっさりしているのが気になるところ。金田一も事件の解説をするだけで、すべての謎が明らかにされないため消化不良な印象を持った。 <登場人物> 田代裕三 … 人気作家。大きな日時計のある成城の屋敷を購入。 田代啓子 … 裕三の妻。金田一に殺人が起きそうだと相談する。 堀晶子 … 啓子の妹。姉は被害妄想狂なのだと金田一に告げる。 松並可南子 … 裕三のいとこ。服飾店を経営するデザイナー。 神保晴久 … 交通事故で亡くなった画家。屋敷の前の持主。 神保鶴代 … 晴久の妻。浮気に腹を立てていた。 須藤珠子 … 神保の愛人。日時計の中から遺体で発見される。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 他の事件に忙殺され、失態を演ずる私立探偵。 ●猟奇の始末書 「猟奇の始末書」は昭和37年8月「推理ストーリー」に発表された短篇で、金田一がまたも旅行先で事件にまきこまれる話。その日、金田一耕助は白浜海岸にある洋画家・三井参吾の別荘に遊びに来ていた。金田一にとって中学時代の先輩である参吾は、昨年妻を亡くしたばかりだった。 別荘にはバルコニーがあり、参吾は望遠鏡で「人魚の洞窟」と呼ばれる入り江をのぞき見していた。昨日も若いアベックが洞窟に入り込んでいたので、悪戯心を起こし西洋の弓で脅かしたと聞き、参吾のことを心配する金田一だったが、今日になってボートで洞窟を漂う女の死体が見つかってしまう。しかも被害者は参吾が馴染みにしていたホステスの堀口タマキで、その胸には例の弓から射られたと思しき矢が刺さっていた。 同じナイトクラブのホステスである酒巻潤子は、タマキは参吾に誘われて別荘に来たというが、参吾はタマキを招待した覚えはないし、ここ数日タマキとは会ってないという。はたしていったい誰が、どのような目的でタマキを殺したのだろうか……。 この短篇集の中では一番ミステリの要素を満たしている作品なのだが、金田一がみすみす犯人を逃がしてしまう結末がいただけない。切ない結末は金田一耕助らしいといえばらしいのだが、最後の殺人は防ぐことができたと思うだけに残念だった。 <登場人物> 三井参吾 … 白浜海岸に別荘を持つ洋画家。金田一の先輩。 三井可奈 … 参吾の亡くなった妻。娘はアメリカ留学中。 堀口タマキ … 参吾が通っていたナイトクラブのホステス。 酒巻潤子 … 堀口タマキの同僚。 小坂達三 … 私立大学の助教授。三井や金田一とは同窓。 小坂一枝 … 達三の妻。子供はいない。 山本新一 … 三井参吾の絵の弟子。 恭子 … 新一のガールフレンド。 お喜美 … 三井家のお手伝い。 小磯警部補 … まだ若い捜査主任。 金田一耕助 … 先輩である三井の別荘に遊びに来ていた探偵。 ●蝙蝠男 「蝙蝠男」は昭和39年5月「推理ストーリー」に発表された短篇で、女子高生が主人公の一風変わった作品。受験勉強で深夜まで起きていた原田由紀子は、向かいに建つ「日月荘」の窓に目を奪われる。その部屋のカーテンに、蝙蝠のように羽根を広げて立つ男が、髪を振り乱した女に襲いかかる姿が映っていたのだ。 あれは夢だったのか、それとも殺人を目撃してしまったのだろうかと怯える由紀子だったが、その部屋の住人であるストリッパーのリリー梅本は死体で発見される。しかし、死体があったのは「日月荘」ではなく、赤坂にあるナイトクラブ「ローズマリー」の楽屋で、衣装トランクに詰め込まれた状態で見つかったのだった……。 導入部分はなかなか面白いのだが、この事件で使われるトリックは女子高生に目撃されることを前提としている点に難がある。肝心の金田一の推理も「なぜこのふたりに眼をつけたのか、それは金田一耕助のみが知る秘密となった」と投げやりに真相を明かしており、ミステリとして問題があるだろう。 <登場人物> 原田由紀子 … 受験勉強中の学生。日月荘の窓に蝙蝠男を目撃。 小川豊子 … 日月荘から由紀子と同じ高校に通う少女。 リリー梅本 … ストリッパー。トランク詰めの刺殺死体が届く。 坂崎卓造 … ナイトクラブの支配人。リリーのパトロン。 波野圭市 … 宝飾店ナミノの主人。リリーのパトロン。 吉野隆吉 … 上原産業の重役。リリーのパトロン。 白井克子 … 有名な服飾デザイナー。日月荘の住人。 田畑警部補 … 表町署の捜査主任。 波川警部補 … 碑文谷署の捜査主任。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 近所のアパートに住むモジャモジャ頭の名探偵。 ●薔薇の別荘 「薔薇の別荘」は昭和33年6月から9月まで「時の窓」に連載された作品。長編かと思うほど設定が凝っており、登場人物もかなり多いのだが、まとめ方が強引で中途半端な印象を受ける。 キャバレー経営などで成功した戦後の女傑・吉村鶴子は、ある日親族全員を集めて話をするといい出し、鎌倉にある「薔薇の別荘」に13人の客を招待した。鶴子の目的は明らかにされていなかったが、なぜか彼女は秘書の堀口三枝子にも出席するよう命じ、また招待客には顧問弁護士の鍋井や私立探偵の金田一耕助も含まれていた。 ところが主客全員が別荘に揃っても、肝心の鶴子がなかなか姿を現さない。不審に思い自室まで彼女を迎えに行った三枝子と、鶴子の甥である加藤朝彦は、密室の中で死体となった鶴子を発見する。同じ頃、庭では児玉健という不審な男が捕らえられていた。戦災孤児のその男は「影の人」からの不思議な手紙により、この屋敷へと招かれていたのである……。 児玉健を「薔薇の別荘」に招きよせる手紙のくだりなどは「女王蜂」を彷彿とさせる本作。最初は長篇と銘うって4回掲載されたようだが、「女王蜂」と似すぎてしまって途中でやる気を失ってしまったのだろうか。横溝正史が描き出す遺産相続がらみの話は好きなだけに、長篇のプロットのようになってしまっているのが残念だ。 <登場人物> 吉村鶴子 … キャバレー経営などで成功した女傑。体が不自由。 吉村兼次 … 鶴子の亡夫。浅草にあった洋酒問屋吉村家の養子。 戸田辰蔵 … 兼次の兄。鶴子の仕送りで生活している老人。 戸田やす子 … 辰蔵の妻。 古川幸子 … 兼次の上の姉。欲深そうな肥えた女。 古川達吉 … 幸子の夫。元陸軍大尉。戦後はヤミ商売を行う。 川辺千代子 … 兼次の下の姉。人がよさそうな印象を与える。 川辺良介 … 千代子の夫。達磨大師。ヤミ商売に手を出す。 加藤朝彦 … 鶴子の甥。どこか狡そうな印象を隠し切れない。 浅井みゆき … 鶴子の姪。叔父兼次の親戚を軽蔑している。 堀口三枝子 … 自殺後、鶴子に引き取られ付き添いとなる。 堀口一義 … 三枝子の父。東京大空襲で死亡。妾が多数いた。 堀口節子 … 一義の正妻。頑として離婚せず、過労により病死。 杉本隆吉 … 鶴子の腹心の部下。キャバレーのマネージャー。 小森峯子 … 戦前から鶴子に仕えている。薔薇の別荘の管理人。 杢衛じいや … 薔薇の世話をするために雇われている庭番。 鍋井賢蔵 … 鶴子の顧問弁護士。 児玉健 … 戦災孤児。不思議な招待状を受け取る。 児玉浜吉 … 健の養父。しがない叩き大工。大空襲で死亡。 児玉浅江 … 健の養母。同じく江東方面の大空襲で死亡。 藤尾警部補 … 所轄警察から駆け付けた捜査主任。 金田一耕助 … 薔薇の別荘に招待された有名な私立探偵。 | ||||
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表題作をはじめ7つの短編が収められている。残念なのは、竜頭蛇尾の印象を受ける作品が多いということだ。せっかく横溝正史らしい複雑な人間関係を用意しながら、結局それが生かされずに終わる。『猫館』『猟奇の始末書』『薔薇の別荘』などがそうである。 その中でも面白かったのは『薔薇の別荘』だろうか。ここに出てくる密室トリックは心理の盲点をついていて、大いに唸った。また短編らしいシンプルさがよい、という意味では『蝙蝠男』も挙げておきたい。 『蝙蝠男』には女子高生が出てきて、なかなかグッとくる言葉づかいをするのだが、実はこれは横溝正史の隠れた「味」だと思う。それを堪能するなら、表題作の『七つの仮面』に尽きる。「いやよ、いやよ、お姉さまの意地悪! それじゃ美沙をひとりぼっちで寝かせる気……? 美沙、怖くて、怖くて、泣いてしまうわ」。こんなセリフ、往年の木村進にしか似合わない。素晴らしい。 | ||||
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それなりに面白かったです。 | ||||
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本シリーズを最初の一冊から読み始め,14冊目に突入した.どの一冊も楽しいので,シリーズの途中で切れることなく,読み続けている. 本作品には表題作を含め,7編の作品が載せられている.どの作品が面白いかは人によるだろうが,私自身は表題作の『七つの仮面』と『猫館』『日時計の中の女』が楽しめた. 読み終えるとともに,次の15作目を注文した.本作品は読みやすい短編集なので,これまでは知らなかったけど今から横溝正史さんの世界観を楽しんでみたいという人にもお勧めです. | ||||
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女性の独白から始まるのが新鮮でした。 | ||||
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なし | ||||
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good | ||||
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百合展開の「七つの仮面」、金田一の女子高生との交流が楽しめる「蝙蝠男」、金田一が同窓生とサマーリゾートで交流する「猟奇の始末書」、金田一がスリリングな依頼を受ける「雌蛭」、冒険の中に紛れてもよい「日時計の中の女」とバラエティ豊かである。残念なのは「猫館」「薔薇の別荘」の二作。「猫館」は雰囲気が良くて、名作「黒猫亭事件」に匹敵する作品になる可能性があったと思われる。「薔薇の別荘」は長編並みに多くの人物を登場させながら、シチュエーションに合った謎やトリックが用いられておらず、あっけない幕切れとなってしまう。広げた風呂敷に合った解決に至ってていない。 横溝正史は短編を増補改訂し、中長編として再構成することが多かった。本来は再構成するつもりで出版を控えていた短編を後に出版社かき集めて、一冊の本にしたものではないかと思える。つまり残念な作品集であるといえるのだが、当時それだけ金田一物が希求されていたということだろう。この流れはやがて「金田一耕助の帰還」「金田一耕助の新冒険」を産むことになるので、ファンとしては愛すべき短編集なのではあるまいか。 | ||||
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七つの仮面 猫館 雌蛭 日時計の中の女 猟奇の始末書 蝙蝠男 薔薇の別荘 ハイブリッド型総合書店「honto」で電子書籍版コミックス『金田一幸助シリーズ 悪魔が来りて笛を吹く』に収録された、JET女史自身は友人に「こんなマイナーな作品選ぶかね」と言われた「雌蛭」に登場するアドベンチュラーな青年・多門六平太が気に入り、原作小説を読みたくなって収録されている本書を購入した。自ら「アドベンチュラー」と称するだけあってスリルを好む性癖が法から逸脱してしまい複数の前科を持つに至ったが、それが祟って殺人事件に巻き込まれて危うく冤罪で投獄されそうになったのを金田一に救われ手伝ってくれないかと言われて以降は法に触れるような衝動は霧散したらしい。 家宅侵入・犯人隠匿・証拠隠滅etcを犯す依頼を引き受けてしまい、金田一がハンチング帽・アロハシャツ・鼈甲縁眼鏡を着用して変装した。しかし、貧相と評されて少々傷ついた様子があったが、自業自得というものだろう。本来なら、逮捕されても文句が言えないのだから。それにしても勝手に入籍できる隙だらけの時代ゆえに、雌蛭のようなと評される真性のサディストである悪女・梅本昌子に無理やりに結婚させられた挙げ句、派出婦をして働いていた元妻にして最愛の女性・田辺泰子とのやすらげる家庭を求めて元の鞘に戻ろうとした流行作家・立花慎二は惨殺されたが、昌子は妹・繁子まで殺して彼女に成りすましていたのだ。 | ||||
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説明通りの商品で楽しく拝読できました。どうも有難うございました。 | ||||
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表題作ほか全七編を収録した短篇集。いずれも作者の活動後期に雑誌発表された もので、すべてに金田一が登場する。ポオ作品にも通じる怪奇性と耽美性が感じられ、 昭和30年代の時代背景と相まって、妖しい空気感が特徴。不純な男女関係や痴情の 果てが事件の遠因になっているもの、女の魔性を描いているものが多く、また唐突に 結末を迎える作品も目立つ。推理作品と呼べるのは『猟奇の始末書』と『薔薇の別荘』 くらいで、他の『七つの仮面』『猫館』『雌蛭』『日時計の中の女』『蝙蝠男』は意外性を 演出しているもののサスペンス的要素が濃く、金田一が登場する必然性はないような 気もするが、営業上も彼が登場するしないでは作品の価値も違ってくるのでその辺は。 妙に心に残ったのが『薔薇の別荘』である。雑誌に四回に分載された33年の作品で、 最後に金田一がトリックを見破る推理作品であるが、その結末に至るまでの人生の めぐり合わせ、家系の秘密、恩讐の宥和といったドラマに心打たれるものがあった。 戦後の女傑と呼ばれたマダムに深い同情と尊敬を捧げずにいられないのである。 | ||||
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この作品で、角川文庫の横溝正史作品は完全制覇となった。 金田一耕助が活躍する七編が収められた短編集である。いずれの短編もドロドロした男女の関係が事件を引き起こし、飄然と登場する金田一耕助が事件を解決する。長編となると、さらに家の因習やらが入り混じり、ドロドロのおどろしい展開となるのだが、短編となると意外にあっさりしたものである。 昭和初期を舞台にした探偵小説。何よりも金田一耕助の人物像が良い。 中学時代に金田一耕助シリーズが映画化やドラマ化されると欠かさず観ていた。その頃から横溝正史の作品を読み始めたと記憶している。大半の作品は高校時代までに読み終えていたのだが、何故かこの作品だけは未読だった。 | ||||
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表題「7つの仮面」の他6作品集録されています。 いずれも短編集で、ページ数が少ない為か内容は濃くありません。 さらっと読めるものばかりで、印象は残念ながら薄いですね、、、 「七つの仮面」犯人の語り部で物語は進みます。自惚れから地獄へ。金田一さんの最後に放つセリフが犯人のとどめとなります。”君は怖いね・・・” 「猫館」意外な人が犯人でしかも3人も殺めます。猫の血を紛らわせる事で捜査を混乱させます。 「雌蛭」”蛭のような女だ”と金田一さんを不愉快にさせた事件。確かに犯人の心境理解しがたい。金田一さん変装します。 「日時計の中の女」被害妄想から生まれた殺人。ちょっと無理があるかなと思われます。 「猟奇の始末書」二本の矢がポイント。あっさりしたトリックです 「蝙蝠男」大学受験を控えた少女の告白が金田一さんを推理へと導きます。しかし保護者がいると人なっつこさも遠慮するようです。 「薔薇の別荘」密室殺人のトリックは面白く、血縁関係の結末は犬神さん家にも少し似てるかなと。 | ||||
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この本に収められた作品は、全て角川文庫が初収録で、この本以外では、読むことができません。刊行当時、マニアには朗報でしたが、ブームが起こらなければ、そのまま、埋もれていた作品群だと思われます。 表題作品の「七つの仮面」には原型があります。元々は、ノンシリーズの「聖女の首」であったものが、金田一ものに改稿された作品です。 「「りん子」や「密室殺人」は、あとで書き加えられた部分です。そのため、作品の焦点がボヤけ、作品レベルが落ちています。 「聖女の首」は長らく幻の作品となっていましたが、最近になって、出版芸術社の短編集『聖女の首』に収録されました。 興味のある方は是非読み比べて見て下さい。 | ||||
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◆「七つの仮面」 純粋可憐で聖女とも呼ばれていた美沙が、娼婦に転落 するまでの顛末を彼女の一人称の語りで描いた物語。 《倒叙ミステリ》の形式ではあるのですが、美沙にアブノーマルな偏愛を向ける 醜女・りん子が一種のサイコパス的存在感を発揮しているため、物語の展開が どうなっていくか、予断を許さないものとなっています。 また、作中の密室トリック自体は、ピンと紐を使用した初歩的なものですが、殺人犯が 思いもしなかった不測な要素が加わることで、一気に不可能興味が高められています。 タイトルがなぜ「七つの仮面」なのかも読了後には納得でき、 それを踏まえた結末の描写も、陰惨ではあるものの洒落ています。 ▼付記 米澤穂信さんは、本作が好きではあるものの、 〈文体の不徹底〉を残念に思っていたそうです。 なら自分で書いてみようということで中篇ミステリを書かれました。 ぜひ、本作と併せて読んでみてください。 ・「玉野五十鈴の誉れ」(『儚い羊たちの祝宴』所収) | ||||
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「七つの仮面」「猫館」「雌蛭」「日時計の中の女」「猟奇の始末書」「蝙蝠男」「薔薇の別荘」の7編が収められている。 いずれも金田一耕助の活躍する物語。あまり面白い作品はなかった。トリックではなく、プロットで楽しませるタイプの話が多いのだが、それにしては枚数が少なすぎ、不満が残った。 表題作のモチーフは面白い。 | ||||
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表題になっている七つの仮面は、一番初めに置かれている作品の題名ですが、何と暗示的な・・・と読み終わった後に感慨深くなりました。 この本は短編集で、依頼されたもののうちでも比較的に単純な事件を扱っています。 長編では金田一がどっぷり事件に浸かっていて、日常の?営業中の?金田一が語られることはあまりありませんが、事件が小規模なだけに、そんな金田一の横顔を覗くことができる一冊です。 特に、金田一の変装なんかは見所(読み所?)の一つだと思います。 気の張る長編の合間に一服するには丁度良い本だと思います。 | ||||
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全7話ですが、1話毎が短い為か、金田一耕助が目立って謎解きをしたという印象が余りないです。獄門島や八墓村のように一話/一冊の作品をまず読む方がいいかもしれません。 | ||||
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