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出口のない海
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出口のない海の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.21pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全95件 81~95 5/5ページ
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人間魚雷「回天」をご存知だろうか。特攻隊といえば空、海の特攻隊の認知度は空のそれには程遠いだろう。しかし海には「回天」という特攻兵器が存在したのだった。 「回天」とは、人間を歯車のひとつとして組み込む、約15mの一人乗り人間魚雷。脱出装置のない自爆兵器。皆に見送られて乗り込む時に、生きて自分の葬式を見せつけられる鉄の棺桶・・・・・ 本書の主人公は甲子園優勝投手・並木。大学野球では故障のため再起を図っていた。彼とその仲間の群像がさわやかなだけに、戦争に巻き込まれていく姿が殊に悲惨にうつる。 つい少し前まで青春の只中にいた青年が特攻兵になった時、どのように死と向かい合うのか想像もつかない。ひとつの事例がここに提示されている。「国のため」だけでは折り合いがつかず、「自分から死ぬためには理由がいる」としてそれを模索していた並木。その答えに思い至るまでの彼の心を推し量ると、胸が詰まりそうになる。むろん、極限下における感情の変化のありようが並木やその他の人物のとおりなのかそうでないのか実際はわからない。きれいに作り過ぎと思える箇所や、もっと掘り下げてほしいと感じた部分もある。だが「回天」を知り、戦争に翻弄された若者の存在を知る意味は大きい。この悲惨さ、無念さ。ぜひ読んでいただきたい。 著者の端正な短編ミステリーはもちろんすばらしいが、筆の力を他のいろいろなテーマにも振り向けてほしい。そう思った一冊でもあった。 | ||||
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横山秀夫といえば、今をときめく警察小説の第一人者である。 ’02年『半落ち』が「このミステリーがすごい!」国内編で第1位となり大ブレイク。その後も出す作品はほとんど「このミス」ランキングの常連で、いまや日本のミステリー界をリードする存在である。 そんな著者が、ミステリー作家として世に出る以前に、本書の元になる作品を書いていた。’96年発表の『出口のない海---人間魚雷回天特攻作戦の悲劇』である。この本は作画を『語り継がれる戦争の記憶』などのコミックを描いた三枝義浩が担当したマガジン・ノベルズ・ドキュメントと呼ばれるコミックスだったようである。本書はその全面改稿版だそうだ。 甲子園の優勝投手、並木浩二は、大学入学後、ヒジの故障を克服すべく、<魔球>の完成にすべてをかけていた。しかし、時代は並木の夢を、大きな黒いうねりの中にのみこんで、翻弄する・・・。太平洋戦争が始まったのだ。戦局の悪化による「学徒出陣」で海軍に入り、やがて “回天”特攻隊に志願する並木。そこで彼を待ちうけていたのは、真っ暗な“出口のない海”だった・・・。 戦争という過酷な状況下にあって、そのうえ、「国を、愛する人を、家族を守る」ために人の命そのものが武器である“回天”特攻隊員という‘先のない’運命にありながらも、<魔球>の完成を最後まであきらめない並木の姿は感動的である。戦争を「ああいう時代だった。時代が悪かったから仕方がない」だけでは済まされないものを感じた。 終戦から数十年経ったが、当時の記憶も記録も決して風化してはならない。 著者は’95年にも広島の原爆をモチーフにした感動のノンフィクション、『平和の芽---語りつぐ原爆・沼田鈴子ものがたり』を著しており、この時期の著者が反戦・平和への祈りに傾倒していたことがうかがえる。 本書によって読者は、ミステリー作家としてブレイクする以前の、横山秀夫の原点を垣間見ることができる。 | ||||
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私は、ずっと前から、この本を探していました。私は海軍兵学校にいったことがあります。魚雷に乗って、家族のため、自分の愛する人のために、私と変わらない、年齢の若者達は死んでいきました・・。限りの少ない酸素、自分の命をも滅ぼす爆薬を積み、自分のしている事は正しいという思いだけを胸に、孤独な暗闇で、一人で待つ死へのカウントダウン。私が男だったら、特攻隊だったら、同じ思いなのか?私は今死んでも後悔のない人生を送っているのか?だから決めてんです、死ぬ時は人のために死にたい、だから、私は、直接人の役に立つ職業につこうと決めました。この小説が一生懸命生きなきゃいけないことを教えてくれた。感謝しています。 | ||||
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教育と集団心理の怖さがある。1人では冷静に考えることができていても、どれだけ将来への夢を持っていてもそれを許さない環境がある。閉塞された世界、出口のない海。今の日本は、その不安が薄れているが、同時に人の気持ちを考えることも薄くなってきている。自己中心型世界。いろいろな考え方を持つためにも一読をお勧めする。 | ||||
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「戦争」は日本にもあった確かな事実。しかし今まで「戦争」は教科書の中の話、教科書で触れることしかない現実味の薄い、何が本当で何が虚実か判断できない過去の出来事のような気すらしていました。そして敢えて「戦争」のことには踏み込まないでいた。私はそんな世代です。だから横山氏の作品は好きですが、本書が「戦争」について書かれた本だと知っていたら正直、避けてしまったかもしれません。しかし、一気に読んでしまいました。剛原の志願に反対していた並木が学徒出陣によって軍人になり、紆余曲折、葛藤しながらも人間魚雷「回天」に乗り込む。夢を諦めなかった並木がなぜ「回天」に志願し、出撃を望むまでの心境になったのか。読みながら、悲しくて切なくてたまらなかったのです。なのに、最後まで読まずにはいられませんでした。読後、これをきっかけに戦争についてきちんと知ろうという気になりました。 | ||||
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早咲きの人生と挫折の境遇で、次の活路を見出すために模索を続けた主人公:並木の生き様に多くの学びがありました。また、友情・恋・家族を大切にする姿には、深く考えされられる課題が少なくは無かった。 回天は変化球の回転とも捉え、その完成こそ次の活路であったのでしょう。 後ずさりの出来ない「出口のない海」への決意。友人の申告書の記入をカンニング、自分も二重○の決意。しかし、自分が二重○をしたときには、友人はグルグルっと消してしまっていた。この件はユーモア溢れているが、いっそう「出口のない海」に深刻さ補完する。 末期は、言うまでも無い。副旋律にあるボレロの話こそこそ、並木の命の姿の形容に他ならない。 | ||||
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本作はまずミステリーではないため、読み始めて戸惑う方もおられるでしょう。しかしそこはやはり横山秀夫、単純なドンパチものの戦争小説でもありません。どんなテーマでも「人間」を書かせたら横山氏は一流です。正直、本作の主人公は優等生すぎて感情移入し辛い感はありましたが、それでも殺伐とした戦争の中で夢を追い続ける主人公に涙せずにはいられないでしょう。決して多くはないページ数でこれだけのヒューマンドラマを展開できる才能はやはり尋常ではありません。寂寥感、怒り、恐怖、安堵、悦び、様々な感情を揺さぶられます。エンディングも極めて清々しく好感が持てます。 | ||||
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軍隊物を読んでいて一番頭にくるのが粛清だとか修正だとかもっともらしい名の下に、暴力を振るう人格も教養もない職業軍人。「陛下」、「上官の命令」、「お国の為」の名の下に、言われもない暴力を振るわれ、逃げることも出来ず、不本意ながら「愛する家族や友人や恋人のために」を心の支えに死んでいった若き人々を思うと、涙なくして読めなかった。憲法9条、靖国参拝についていろいろ言われているが、この作品を読みながらこれらの問題を考えると、この国の軍隊は、真に国を守るための心ある軍隊であってほしいと願い、今の生活があの戦争なくしてはもたらせなかったとしたら、彼らに哀悼の意を表して何が悪いと聴きたくなる。横山氏の警察ものとは違う作風の作品だが、あの若者たちが不条理に死に追いやられた無念さをそれなりに表現しているのではないだろうか。「半落ち」の最後にも涙したが、「出口のない海」の涙はそれとは違うものだったような気がする。 | ||||
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警察モノで虜になりそれ以外も最近よく読んでます。が、クラーマーズ・ハイ同様長編の横山先生の作品は数度読まなければ心の細かい描写が時系列的につかみにくいと感じてます。もちろんそこらへんの作家の長編によくある退屈さは無いのですが、やはり短編のぐいぐい相手を落としていく、身内の矛盾を突いていく等の心理描写のほうが切れ味良く万人好みかも知れません。最近の作品に無い横山先生のもので警察組織モノでない趣向で読みたい方にはお勧めかも。 | ||||
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大学野球の青年が突如戦争の波に巻き込まれ、人間魚雷に乗せられることになった。戦争の悲惨さや理不尽さはいろんな書物に書かれていますが、この小説に出てくる「回天」という存在は知りませんでした。主人公が何のために死ぬのかということに迷い、結論めいたことが最後に述べられます。そして最期のときはタイトルの「出口のない海」で。。オチは書けませんね。ヾ('▽`;)ゝ良い小説だと思いますよ。 | ||||
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大東亜戦争(第二次世界大戦)の時代を描いた作品で有るが、戦後派の人間(私も含めて)に、当時の状況を理解するのは極めて困難で有ろうと思われるが、少なくともアジアの国々の中で植民地・半植民地に成っていなかった唯一の国と言っても決して過言では無いであろう日本が、米国との戦闘以外に進むべき途が有ったのか否かは定かでは無いにしても、有色人種の存亡をかけた戦いで有った事は歴史的に見ても間違った見解では無いと言えると思う。明日という日が来ることに何の疑問も持たないで生きてきた人間に、突きつけられる「死」を前にして、青年は生きることの意味と死することの意味を必死に探そうとする。読んでいて青年の胸中察するにあまりあるものが有る。今、日本は再び戦力を保持し海外での戦闘行為に走ろうとしている様に思えて成らない。歴史は繰り返すと言うけれど、悲惨な戦争で、この様な前途有る若者を犠牲にする事が二度と有ってはならないと思いながら読みました。 | ||||
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警察小説からはなれ、作者がどの様な作品を描くのか?期待と不安を持って読み始めた。最初の80ページぐらいは後悔した。しかし、「回天」と「美奈子」が出てきてからは、物語に引き込まれ、息つく暇もなく最後まで読むこととなった。「特殊兵器」とは名ばかりの兵器に乗り込み、「負けることが分かっている」戦争に立ち向かう。その世界観には圧倒された。しかし、たとえば作者の他の作品と比較した場合どうだろうか?「クライマーズ・ハイ」より感動するだろうか?また、戦争小説としてみた場合、たとえば「終戦のローレライ」を超える迫力をもち、メッセージを伝えているだろうか?私にとって、いずれも「ノー」であった。よい作品だとは思うが、友人にすすめたくなるほどの作品ではなかった。 | ||||
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学徒出陣や人間魚雷「回天」について知っていた。この本も、話の中身はある程度予想はついていた。にも関わらず、大きく心を揺さぶられた。好きな競技をやれずに、戦争で亡くなった若者達。彼らはどれほど無念だったろう。先日のアテネ五輪が示すように、スポーツはいつでも人々の楽しみなのに。ただ、これは何も昔の話だけではない。東京・ロンドン五輪は戦争で中止となった。それから約40年経ってモスクワ・ロサンゼルス五輪では参加国ボイコットが起きた。どちらも政治的理由が、選手を縛りつけた。「敵性競技」と言われ、沢村栄治や影浦将といったスター選手が戦場で亡くなり、窮地に陥ったプロ野球。戦後広く人気を集めたものの、現在は危急存亡の状態にある。こういう時こそ、思い出すべき想いがあるのでないか。本書を読んで、そう感じる。文章はとても読みやすく、読み終えた後に清々しさが残る。1つ不満を挙げると、それはこの本の題名。本文とはそぐわない気がした。 | ||||
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天を回らし、戦局の逆転を図る。名付けて回天である。甲子園の優勝投手が大学野球で肘の故障に泣き、魔球を作って復帰を目指すが、戦時下の特殊な条件下で、史上最悪の特攻兵器である人間魚雷の「回天」に乗るストーリー。事件ものや刑事物が多い横山秀夫さんの小説の中では、異色のストーリーだと思う。学徒出陣の心象風景や戦時下での大学野球、回天隊の軍隊生活など読み所満載です。4つ星なのは新作だと思ったら、1996年発表の作品の改稿版であることと小説のタイトルの「出口のない海」が、今ひとつピンとこない点です。しかし、神風特攻隊だけでなく、神潮とも呼ばれた最悪な特攻兵器があったことを認知できて嬉しかった。 | ||||
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さすがは横山先生、ご自身が常に締め切りに追われていらっしゃるだけあって瀬戸際の人間の描き方が相変わらずウマイ。抜群の知名度を振りかざし、昔の作品のリニューアルで小銭を稼ぐおつもりか? なーんて毒づく気持ちで購入するも、結局は横山節にフツウに感動!(反省も) 人間魚雷・・・海の特攻兵器「回天」・・・『出口のない海』。戦争の悲痛さがタイトルからも滲み出ている。『二十四の瞳』が愛読書である横山先生の描かれた戦争小説。徹底的な取材によって安易な泣かせ芸に走ることを巧みに回避しております。 「俺はな回天を伝えるために死のうと思う」 特攻による確実な死を前に、主人公の並木は自分の死の意味をそう見定めるのです。これがこの作品のすべてです。リアリティの面からいえば、人は死を前にそこまで悟れるのか。或いは、ただ「お母ちゃん」と叫びながら死んでいく方が説得力があるじゃないか。そんな反論もあるかもしれません。だけど、事実はそうであったとしても、戦争を知らない世代は「死んでいった人々の声をこのように聞き取る努力」をする必要があるのではないでしょうか。 満点でもいいんですが、甲子園の優勝光景の華やかさなどをもう少し書き込むとコントラストが一層鮮やかになる気がするので、さらなる期待を込めて4点。あと余談ですが横山先生の奥ゆかしい恋愛観はこの時代だとものすごくマッチすることを再確認した次第です(笑) | ||||
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