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芋虫
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芋虫の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全58件 41~58 3/3ページ
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江戸川乱歩の短編小説集。 その一話目に掲載されているのが、この「芋虫」という小説である。 表紙絵から想像出来るように、四股を失った軍人とその妻の話。 まさに「おどろおどろしい」という表現しか思い付かない。僅か数十ページしか無い小説である。にも関わらず、これほど人間の狂気と世間の冷徹さと、戦争の無常さを同時に味わえる(というより、味わわされる)小説は無いのではないか。まさに脳みそを打ち砕かれたかのような衝撃を覚えた。 特に妻の狂気の描写が圧倒的である。「どうせ架空の話だから」という考えは粉々に吹き飛び、人間の心の奥底にあるどろどろとした真っ黒な光をまざまざと見せ付けられる。恐怖を感じさせながらも好奇心をそそる表現が洗練されているため、読み進むうちにいつの間にか世界に引きずり込まれ、自分自身がまさにこの夫婦の絶望と虚しさの淵に立たされてしまう。「目を背けたいけど見ずにはいられない」。そういう表現がぴったりな作品と言えるだろう。 本屋で試しに軽い気持ちで立ち読みしたのだが、読み終えた後は気が滅入ってしまった。クラシックが流れる優雅で明るい店内とは対照的に、自分は真っ暗な井戸の中に佇んでいるような恐怖。そう言った感覚を味わわされる強烈な内容である。 是非とも大人に読んでもらいたい小説である。ホラーとしての完成度は元より、巨匠の緻密で繊細な表現力に圧倒されることだろう。 | ||||
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寺島しのぶさんの演技の凄さに加えて、映像もストーリーも衝撃的で 戦争に対する批判よりも、人間の恐ろしさを映画「キャタピラー」から強烈に感じてしまいました。 犯罪ではない行為での恐ろしさ、人間のやることのおぞましさ、 無残な外面でも内面はある意味ピュアな夫、五体満足の外面でも内面がいびつな妻。 未消化だったため、何か理解の糸口を原作に求めて本書を手にした。 映画よりも本書の方が酷い…。 この世界観を演じられるのは、世界中で寺島さんしかいない。そして演じ切っていた。 なんだか映画のレビューっぽいですが「人間」に圧倒されています。 こんなことを思いつく江戸川乱歩、作画できる丸尾末広氏、映像化に挑む若松監督、 本書内で登場する親戚や元上官の人間像にも。 「戦争」は遠い存在なので忘れないために様々な形で伝え続けられる必要があると思いますが、 身近な「介護」でも同じ人間が行っていると思うと…。まだ未消化です。 | ||||
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映画「キャタピラー」の予習として、読んでみました。 原作乱歩の「芋虫」を読んだ時と同じく、「ゆるして」「ゆるす」に究極の愛を感じました。 自分がいなくなる事で、あんな酷い仕打ちをした妻を自由にさせてあげるなんて…。 結局妻を愛していたんでしょうね。 | ||||
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私が初めて乱歩の芋虫を読んだ時は、『芋虫』になった夫の姿を化け物としか想像できませんでした。かつて人間であった『芋虫』、としか思えなかったのです。丸尾氏が描いた夫は、確かに人間でした。ああ、こんなにも彼は人間らしかったのか。そう思わせてくれました。とても切ない物語です。 | ||||
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乱歩の原作は若いときに繰り返し読んだ。両手、両足、声を失って戻ってきた傷病兵の夫を、妻が哀れむよりも「いたぶる」小説であることは良く覚えているが、これは丸尾氏自身の脚色による、丸尾版「芋虫」である。 乱歩の原作は時代も時代であり、直接的なセックス描写はされておらず、読者の想像力に任されていたと記憶するが、丸尾版はまさに、そのものずばりで、性的に夫をなぶり者にする。 最近、寺島しのぶがベルリン映画祭で「コクーン」なる映画で最優秀女優賞をとったが、映画は乱歩の原作ではなく丸尾版を下地にしたものと思われる。 丸尾版の「芋虫」に期待はしていたが、読後感は後味がよくない。 | ||||
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原作は、当時乱歩の知り合いの芸妓衆が「おもしろいけど、ごはんがいただけない」とこぼし、 妻が「気持ちわるい」と言い、お上からは発禁処分となったいわくつき。 また映画「キャタピラー」によって映像化されたタイミングの良さもありますし、 ぜひ多くの方に手に取っていただきたい問題作です。 読後感の悪さは他のどんなエログロの追随を許さないレベル、 であるのに、なぜか読み返してしまう強烈な画力。 そして、何でもないときに、ふと妻の心情を慮って考え込んでしまう深みを持つ作品です。 丸尾末広が好きかどうかという問題ではなく(いや、ほんとはそこはとても重要なのだが) 当代の文化人たる気概を持つ方には、血反吐吐いても一読をお薦めしたいと思います。 | ||||
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想像はしていたがこれほどまでに直球のエログロを見たのは初めてだった。 戦争で手足をなくした夫と、それを献身的に支える貞淑な妻。その裏の顔は色欲に耽り快楽を貪る怠惰で排他的な愛欲地獄の毎日だった・・・。 四肢をなくした夫との激しいSEX描写(フリークス嗜好というんでしょうか)は毒々しいまでにひとつの一枚絵のような美しさも感じられる。 バナナの件は賛否両論あるようですが、あまり違和感なく読めました。もともとがアレな作品なのでこれ位してもちょうどいいかなと。 オカルト好きなら読んで損のない「芋虫」に仕上がっています。 | ||||
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いつか起きてしまうであろうと、うしろめたい震えのなかで漠然と予感されていた、惨劇・テロル・交通事故。そして、それが紛れもない事件として、眼前で起きてしまった刹那の、戦慄・既視感・落胆。 <いやはや、これは、なんと懐かしくも、おぞましい光景だろう!> 丸尾末広が、江戸川乱歩『パノラマ島綺譚』を漫画化したと知ったとき、そしてそれを実際に読み終えたときに、僕が感じたのは、まさしくそうしたテロルをめぐる既視感に似た何かであった。 思えば、丸尾末広・江戸川乱歩という二人の才能の公式なコラボレーション、その実現が、ここまで引き延ばされてきたという事実に、むしろ驚くべきなのかもしれない。 だが、それは起こってしまった。 『パノラマ島綺譚』は手塚治虫文化賞受賞作として世に紹介されている。それはとりもなおさず、作品が丸尾によるものとしては極めて穏当なものであったということでもある。その受賞をうけての本作、題材に選ばれたのは、あの『芋虫』だった。もはや穏当に済む筈がない。挑発は終わっていなかったのだ。 丸尾末広と江戸川乱歩という二人の妖怪をめぐって、依然「事件」の異臭はたちこめている。 (遠い未来の読者は、丸尾と乱歩を、ジョン・テニエルとルイス・キャロルのような親密性において読んでいるかもしれない……言い過ぎだろうか?) | ||||
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大好きな丸尾先生の最新作。 しかし…表紙をみた時、買う勇気がなかなかいるなと思いました。発売日から何ヵ月たったことやら。やっと買えました。戦争の悲惨さ、生きること。最後はとても悲しい終わり方でした。涙がでました。買って損はありません。 | ||||
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淫靡で妖しくて、それでいて美しい世界… やはり丸尾末広という人は、読者の期待を裏切りません。この話を、他の誰が画にする事が出来るだろうか…手も足も、声も視界さえも失った夫の「許す」という伝言には、胸が締め付けられる思いでした。くだらない作品が蔓延る昨今、いろんな人達に丸尾末広の作品を読んでもらいたい… | ||||
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《乱歩は好きで丸尾末広の作品はあまり好きではない人の評価です》 私自身は、絵も含めて丸尾末広の漫画の素晴らしさを認めつつも好みではない。しかし彼の漫画は好きとか嫌いとかを超えた強烈な個性があるのは事実だ。彼のフォロワー的な漫画家も多くいるが誰も丸尾を超えることができていないように思う。 この作品を書店で見かけたときにまず感じたのは、“はまりすぎ”・・・、ということだった。正直購入意欲は涌かなかった。しかし、乱歩のあの「芋虫」がどう描かれているのだろう、読んでみたい、という欲求は抑えきれず結局購入するに至った。 読み終わっての感想は二点。 一点は、やはり丸尾末広という漫画家は素晴らしいということだ。自分が乱歩の小説を読みながら想像していたとおり(さすがにバナナは想像もつかなかったが・・・)の世界が描かれていた。ただ、「芋虫」に限らず乱歩の文章は映像的なので読み手もそこに書かれている状景を想像することが容易ではある。 もう一点は、一点目で素晴らしいと書いた理由がそのまま裏返しの評価にもつながったということだ。つまり、あまりにも、はまりすぎていて、逆に物足りないというおかしな思いを抱いたことだ。例えば、自分の好きなバンドでも、そのバンドが他人の曲をカバーしたとき、そのカバーバージョンがあまりにもオリジナルに忠実だったとき、そのカバーに新しい発見を得ることもなく、なんとなくつまらない。うまく表現できないが、そんな思いを抱いてしまった。 こうして、丸尾末広がビジュアル化してみると、戦時中にこの作品を発表(その後反戦小説という理由で発禁)した江戸川乱歩の凄さが改めて感じられた。 | ||||
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一般誌で実現するとは思えなかった江戸川乱歩さんの問題作、まさかの漫画化です。 丸尾末広さんはこの作品を漫画化する為にこの職業に就いたかの様に適任。 内容は、元も子もない描写がひたすら続きます。重度の障害を負って戦場から戻ってきた夫の有様は小説や映画「ジョニーは戦争へ行った」よりもはるかに生々しく、言葉を失います。 特にバナナを寄こせと妻の前で駄々を捏ね、四肢の無い身で寝床から跳ね上がるシーンは鬼気迫る物が有りました。 しかし単なる変態嗜虐物の様に見えて人間の弱さ、哀切さもしっかりと描かれております。傑作です。 丸尾末広さんには既に20数年前、本原作のシチュエーションに近親相姦と身分格差を加えた怪作「腐った夜 エディプスの黒い鳥(短編集「夢のQ-SAKU」収録」)という短編も有り、そちらもお薦めです。 但しお子様にはお薦め出来ません。 | ||||
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前著「パノラマ島奇譚」も素晴らしい作品でしたが、 今回は乱歩最大の問題作「芋虫」とあって、さらに淫靡でおぞましい世界が再現されています。 直接的な表現も多いですが、エログロは丸尾氏の真骨頂といえるでしょう。 あと、ハードカバーになったので、本を手に取った時の質感が上がっています。 | ||||
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『芋虫』を読み終わった時は、しばらくぼんやりしていました。頭を殴られたような衝撃です。本当によかった。 こんなに短いのに、こんなに胸をえぐる作品も珍しい。 面白いと単純に言ってしまうよりは、何かが突き刺さったようなと表現する方が正しい気がする。 夫と妻の微妙な力関係。優越と憐憫。愛憎入り混じる感情。 思わず背筋がぞくりとする「情」というかなんというか。 とにかく、まともな小説じゃない。(もちろん、好い意味で) どくどくと脈打つドロドロした人間同士のぶつかり合いを思いきり見せつけられた。 間違いなく、素晴らしい作品だと思う。 | ||||
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これぞ、乱歩の世界。彼の嗜好と世界はここに極まれり。彼の創造した世界を思う存分浴びれます。 | ||||
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江戸川乱歩というと、小学校の時の少年探偵団シリーズにはまり、そういったどこか娯楽的なイメージを持っていました。しかし、この芋虫をはじめとしたいくつかの短編は人間の奥深い闇の部分を鋭く抉り出す文学作品です。恐ろしくもはっとさせられる。この芋虫は一番の傑作だと思います。 | ||||
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短編であり主人公も少なく、夫と妻のやり取りがより鮮明に感じる。手足のない、耳も聞こえない、口も利けない夫の面倒―自分がもしそういう立場にあれば、恐らく気が狂いそうな状況である。現実は冷静に描かれている割に、夫と妻の精神世界はとても劇的に、そしてぎゅっと凝縮して描かれているような気がする。この小説の最後の部分で、夫が妻に「ユルス」という言葉を投げかけたのが、とても印象的に心に残った。ストーリの最後の後味ははっきり言って良くはなかったが、まるで映像のように迫ってくる衝撃的なイメージが、いつまでも頭に焼き付いて離れない小説だ。筋(プロット)よりも、乱歩の描く精神世界をより感じてほしい。 | ||||
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江戸川乱歩の短編の中でも傑作だと思う。 傷痍軍人とその妻の話。傷痍軍人は奇跡的に助かったが、四肢を失い喉を失い、自力で動くことも意志を伝えることもできない。妻はそんな夫を何くれとなく面倒を見ており、妻の鑑と評判である。妻の愛がそんな身体になった夫を見捨てないのだと思われている。 しかし、実際に二人の間を繋ぐのは、愛情ではなく世間の目の圧迫と妻のうちに潜む嗜虐性だった。自分の一挙手一投足に怯えた目を向けるしかできない夫を虐げることが妻に暗い愉悦を与えているのだ。 人間の残虐性をテーマにしたかに思われる作品はラストで思わぬ展開を見せる。読後になんとも言いがたい味が残ること請け合いだ。 江戸川乱歩って深い! と思わせてくれる作品。 | ||||
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