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犬はどこだ
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犬はどこだの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.78pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全28件 21~28 2/2ページ
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『さよなら妖精』、『ボトルネック』、『古典部シリーズ』と読んできました。米澤作品初の大人が主人公の小説とのことで、期待と不安が半々で読み始めましたが、これが期待以上に面白かったです。 主人公の紺屋長一郎は東京での挫折を経て故郷へ帰るわけですが、想定外の依頼を不本意ながらも受け入れてしまうところ、押しかけ助手を雇う羽目になるあたり、どこか無気力な淡々とした性格設定は今までの米沢作品の主人公たちと共通していて既視感がありました。 しかしハンペーは意外。彼の語りが始まったときは驚きました。(今までになかったキャラなので) 探偵への憧れを熱く語り、行動力もある。ハンペーが行き当たりばったりに、でも案外うまく調査していく様子は楽しめました。 この二人の交互の語りで話は進んでいきます。最初は全く無関係に思われた依頼の調査結果をつき合わせて見えてきた事実、そしてその結末に待っていた真相とは…。 さくさく読めたわりに、やはり高校生が主人公ではないので事件はかなり重たいです。読み終えて一晩たって余計に怖くなってきました。恐怖感が後を引く…さすが米澤作品です。 | ||||
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青春ミステリの旗手との呼び声高い米澤らしい、なんとなく新しい、探偵小説。都会生活になじめなかった主人公が地元に戻り、犬探し専門の調査事務所を開く。しかしそこにやってきた依頼は、人探しと歴史調査だった。そこから始まる、意外なクライムサスペンス。 作品全体として、伏線のはりかたが巧い。読者にわかるように書くことで、登場人物がいつそれに気づくか、というハラハラドキドキである。 主人公の紺屋とハンペー、主観が交互に入れ替わる構成になっているのだが、ここに大きなヒミツや叙述トリックがあるのでわっ!と思いながら読んでいたがそうではなかった。この構成はそれぞれの登場人物が知っている情報が別だけども、読者は両方知ることができる。そのため読者自身は謎解きができるという仕組みのヤツである。それでいて、ちょっぴり意外な驚きの結末。最後は、米澤作品らしい終わり方であった。 | ||||
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2005年に出た単行本の文庫化。 犬探し専門でやっていこうと探偵業を始めたのに、なぜか陰惨な事件に巻き込まれてしまうというハードボイルド。 犬探しの小説家と思って読み始めたのに、いつまでたってもそんな話は出てこない。犬好きの私としては、不満の残る一冊であった。まったくタイトルのとおりだ。 それはともかく、ミステリとしては面白かった。古典部シリーズなんかより、ずっと良く出来ていると思う。ラストのドンデン返しも見事。一気にすべてのモヤモヤが解き明かされ、爽快だった。 シリーズ化の予定とのことなので、次作はぜひ犬の話を。 | ||||
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佐久良桐子(さくら とうこ)という失踪人を捜す羽目になった<私>こと紺屋長一郎(こうや ちょういちろう)。一方、小伏(こぶせ)町の古文書の由来を調べることになった<俺>こと半田平吉(はんだ へいきち)ことハンペー。本来、犬捜し専門の調査事務所「紺屋S&R」の所長と所員であるふたりの調査が、章ごとに、ほぼ交互に記述され、それぞれの調査の線が微妙にクロスしていくところ。気が利いていて、面白かったなあ。殊に、サブの事件かとばかり見えた古文書の解読調査の中に、意外や、メインの事件と思しき失踪人調査につながる鍵が潜んでいたところ。そこに、ひねりを利かせた洒落たプロットの妙を感じました。 登場人物ではこの人、探偵に強い憧れを抱いているハンペーのキャラがよかったですね。型にはまった調査をしていく紺屋に対して、無鉄砲で出たとこ勝負みたいな調査をしていく割にきちっと結果を出すハンペー。小気味がいいっていうかな、痛快な気分になりました。「俺って、しっかり、探偵してるぜい」みたいな満足感にハンペーが浸るところなんか、思わずくすりとさせられたりして。 『インシテミル』『ボトルネック』、そして本作品と読んできて、この作家のミステリは面白いなあと。眠っていた脳の回路が活性化されるみたいな。すっきりとして読みやすく、趣向を凝らした作品の妙味。注目していきたいミステリ作家のひとりになりました。 | ||||
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とある事情のため、職を辞した25歳の青年・紺屋長一郎が 犬専門(!)の調査事務所〈紺屋S&R〉を開き、再起をはかろうとする物語。 (ちなみに〈S&R〉とは〈サーチ&レスキュー〉のことです。) 著者の作品としては、はじめて成人が主人公を務めます。 人物造形や設定、文体は樋口有介氏の諸作を彷彿と させますが、よりドライで現代的な雰囲気です。 本作において大きなテーマとなるのは、ネットという 環境下で増幅され、連鎖していく人の悪意です。 現代においては、第三者であったつもりが、いつのまにか 当事者にされ、理不尽な暴力にさらされる可能性がある―― という現実の酷薄さに、今更ながら戦慄をおぼえさせられます。 もっとも、何事にも「闇」があれば「光」もあり。 本作では、ネットの「善」の象徴として、紺屋のチャット仲間・GENが登場します。 紺屋にとってGENは直接の面識こそないものの、あらゆる相談に親身に応じてくれる存在。 そもそも紺屋S&Rも、彼(彼女?)のアドバイスをきっかけにはじめたものです。 こうしたGENの人物造形は、著者の〈古典部〉シリーズに登場する折木供恵と通底 しており、作中に直接姿は見せないけれども極めて重大な示唆をもたらす存在 ――いわば〈彼岸の人〉として形象化されているといえるでしょう。 本作はシリーズもので、続刊も予定されていますが、上記の事情から、 今後GENが作中に姿をあらわす可能性はほとんどないといえます。 しかし私としては、実は紺屋とGENが過去に面識があって……という展開も おもしろいかなあ、などと妄想を逞しくしてみたりもしていますw ともあれ、シリーズ第2作『流されないで(仮)』の刊行が待ち遠しいです。 | ||||
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犬探し専門ではじめた探偵のもとに「失踪人の捜索」と「古文書の解読」の依頼が。最初はあまりやる気ではなかったが、弟子入り(?)してきたハンペーとともに分担して仕事をするうち、二つの事件は奇妙にリンクし始めて・・・。 だがこの二人、お互いにお互いの事件をほとんど報告しないため、リンクしている事に気づいていないところが面白い。軽快なタッチで書かれているためスラスラ読めるが、後半は前半の陽気さというか脱力感が一変する。ネタバレになるので書けないが、前半のなんでもないように書かれている些細なことが、後半で一気に繋がっていく。全く無駄のない前半の伏線の張り方に脱帽です。 ラストは下手なホラーよりもかなり怖い。どういう風に怖いかはぜひ読んで確かめてほしいですね。 | ||||
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最近自分の中で人気急上昇中の米澤穂信の文庫最新作です。 今までの米澤作品は主人公が中学生・高校生・大学生くらいの割合と若い層で、内容的にも青春小説といっていいほどの瑞々しさが全編に漂っていました。それが、本作はソフトとはいえ「探偵」が主人公のハードボイルドですからがらりと路線が違います。まぁ、「犬探し」を主体にした探偵事務所をひらこうとしているあたり、普通のハードボイルドではないですが、それでも、ある意味、米澤んさの本では主人公が学生でないというだけでも大きな路線変更です。 また内容の方も、二つの関係なさそうな事件(まぁ、これは探偵助手がしっかりしていれば最初から一つの事件として認識されるわけですが)が一つに重なっていく展開であるとか、一冊で一冊の長編であるとか、彼にしてはいろいろと新機軸を試しておられます。 結果としては、それが成功しており、個人的にはこの路線でも(青春小説はそれはそれでまた書き続けて欲しい)たくさんの小説を書いて欲しいなと思いました。 ストーリーは、主人公の紺屋一郎が探偵事務所を開設するところから始まります。彼は、犬探し専門の探偵事務所を開いたつもりだったのですが、広告をうったりする前に、知り合いからの紹介の依頼が「失踪した女性の捜索」「村に伝わる古文書の由来調査」という全く別のものになってしまいつつも成り行きでそれを受け入れます。主人公の紺屋は、社会生活からドロップアウトしてしまった自分の社会復帰のために始めた探偵稼業なので、それほどこだわりがないのです。しかし、この二つの事件が思いの他シリアスな展開となっていき、最期の最期には米澤さん得意の大推理が始まり、予想外のどんでん返しのある本格ミステリとなっています。 感触は丁寧に作り込まれたお菓子のようですが、中身はけっこう本格。ちょっと違いますが、方向的には、北村薫とか加納朋子とかああいう感じの丁寧なミステリ作品です。 | ||||
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▼STORY 銀行員の職を辞し、東京から故郷の八保市に戻った二十五歳の青年、 紺屋長一郎は、犬探し専門の調査事務所〈紺屋S&R〉を開設する。 しかし、そんな彼のところに舞い込んできた 依頼は、失踪人捜しと古文書の解読だった。 それでも、高校の後輩で押しかけ助手になった半田平吉とともに、 調査を開始した紺屋だったが、次第に二つの依頼に奇妙な接点が現れて……。 ▼EXPLANATION 私立探偵小説において〈失踪〉はメインモチーフです。 本作に限らず、多くの作品が失踪人調査の依頼を受ける 場面から始まっています。 そして、探偵が失踪人の行方を追うなかで、 彼らが失踪せざるを得なかった状況が浮き彫りになり、 そこに現代社会の歪みや不条理が映し出されていくのです。 紺屋も、自分と同じく、傷ついて東京から出戻った失踪人、 佐久良桐子に対し、シンパシーを抱くようになるのですが……。 終盤、巧妙に張り巡らされていた伏線が回収されることで、 物語が鮮やかなツイストを見せ、事件の構図が反転する 展開は、圧巻です。 そして、現代において、ただ「普通」であることが、 いかに困難であるかを改めて痛感させられます。 それでも、今回の仕事によって「再起」は果たした紺屋。 戦慄すべき結末ではあるものの、彼が最後にもらす、 落語の下げのような述懐には、意外なしたたかさも 含まれているように感じるのです。 | ||||
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