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商う狼



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【この小説が収録されている参考書籍】
商う狼 (新潮文庫 な 107-2)

商う狼の評価: 3.82/5点 レビュー 11件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.82pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(5pt)

Good!!
商う狼 (新潮文庫 な 107-2)Amazon書評・レビュー:商う狼 (新潮文庫 な 107-2)より
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No.6:
(4pt)

颯爽とした主人公。

天保年間に江戸の商人をまとめ幕府の役も得たが、幕政の変化によって失脚させられた、謎の多い杉本茂十郎を主人公とした時代・経済小説。主人公が颯爽としている。権力は持っているけれど金はない武士と、金はあるけれど政治に動かされる商人の対比が浮き彫りになる。
 解説で本郷和人が「実は歴史研究者の大半は数字(教科でいうと数学)が苦手なために文学部に進み、そこで歴史学に出会って研究作業に従事している。……数字で構成される経済はさっぱり、という人が多い」と書いていて笑った。
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No.5:
(5pt)

財、政、官の距離感

良く調べて書かれている小説。財界と政界、官界の距離感の微妙さは今でも変わらないのではないか。
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No.4:
(5pt)

商人の誇りとは何か?私心を捨て去り理想を追い求めた男の鮮烈さ、怖さ、危うさを描いた傑作長編

作者である永井紗耶子の作品を読ませて頂くのはこれが初めて。商人が、それも江戸期の商人が主人公の物語という題材の物珍しさに惹かれて手に取った次第。

物語は老中首座に就いた水野忠邦の屋敷に老商人・堤弥三郎が招かれ「毛充狼とは何か?」と問い質される場面から始まる。問われた弥三郎は妖怪・毛充狼として江戸の市民に知らぬもの無しと言われながらある日突如姿を消した商人・杉本茂十郎について忠邦に語りながら二十数年前の、茂十郎の鮮烈な生き様を見せ付けられ続けた日々を思い出していく……

商人を主人公としていながら私心と呼べるものを捨て去った、あるいは失った男の姿を見せ付けられるとは本作を手に取る前には全く予想していなかった。およそ商人といったら利以外では動かず、常に算盤を弾き続けて出すものは舌でも嫌がるという私利私欲を煮詰めた様な存在と思い込んでいたから余計にその意外性は大きい。

「私心を捨てた商人」という題材も強烈ではあるのだけれども、この作家さんテクニックの方も一流。プロローグで一旦読者の意識を老いた弥三郎に着地させて、その上で彼がかつて見せ付けられた茂十郎の全盛期へとジャンプさせるのだから物語世界への誘い方が実にスマート。読者は本作では狂言回しを務める弥三郎の目を借りて茂十郎の鮮烈さを見せ付けられ続けるのだから堪らない。

物語は飛脚を用いた陸上輸送を商売とする茂十郎がその輸送費を荷主である商人に買い叩かれない様にした「飛脚定法」を御上に飲ませた事で江戸の大商人たちの組織「十組問屋」に呼びつけられ責め立てられる所から本編が始まる。弥三郎はそこで潰すぞと凄む大商人たちに「やれるものならやってみやがれ」と啖呵を切る茂十郎の強烈な個性を見せ付けられる。

当然、弥三郎の目を借りて物語を追っている読者もその鮮烈さに目を奪われるのだけれども序盤はこの茂十郎も家に帰れば子煩悩で愛妻家という一人の家庭人としての顔を見せる穏やかな雰囲気で進むのでどこかリラックスした気分で読み進められる。

ところが、物語が序盤を終える頃に起きる永代橋崩落と、茂十郎が愛する妻子を失うという大事件から物語は一気に疾走を始める。悲嘆に暮れた茂十郎がその反動の様に御上が建て替えの資金を渋る橋を架け替える為に落ちぶれていた上方からの輸送組織である菱垣廻船を立て直し、その余剰金を運用する三橋会所を立ち上げて自らその頭取に収まり、永代橋をはじめとした老朽化した橋の架け替えまで一気に押し進めていく様はまさにブルドーザー。

これだけなら茂十郎は辣腕の商人でしか無いのだけれども、物語はその疾走が暴走へと変容していく様を追っている。「商人とは天下に資するもの」という茂十郎の理想は封建社会である幕藩体制の中では明らかに異質で相容れない部分を抱えている訳で、公権力を牛耳る武家社会と真っ向から対立していく事に。

茂十郎から妻子を奪った永代橋崩落には寛政期から化政期にかけて幕府の権力を牛耳った人物・徳川治済が絡んでいる事が作中の描写で匂わされているのだけれども、茂十郎の暴走は逆立ちしても抗い様がない絶対権力を相手にした復讐の様にも思えてくる。

絶対権力者が贅沢に溺れ、天下万民を顧みずに商人たちもその権力に阿れば金の流れが滞り社会が衰退していくというのは今の衰退する一方の日本を見ていれば火を見るよりも明らかなのだけれども、茂十郎は封建社会においてなお「それならば公儀は忠を尽くすに値しない」と言い切ってしまうのである。

作中で弥三郎はそんな茂十郎の在り様を見せ付けられて不安を抱くのだけれども、読者もまたこの茂十郎の「私心の無さ」が途中から怖くなってくる。そう、自分を守ろうとせず理想に向かって突き進む人物と言うのは怖いのである。なんせ守る物を持たないから幾らでも鮮烈に振る舞えるのだけれども、恐れ知らず過ぎて傍で見ている方が怖いし、危うさも感じる。

やがて、そんな茂十郎の理想と「商人の誇り」を追い求めた疾走は絶対権力の、時代の壁にぶち当たるのだけどもその散りざまが哀し過ぎる。この茂十郎という男はひょっとしたらどこかで自分が潰される事を望んでいたのでは無いか、破滅願望に取り憑かれていたのではないかとそんな事すら思ってしまう。

商人という題材を用いながら理想家の疾走と破滅を描いた物語を読まされるとは全くもって予想できなかったのだけれども、盟友である弥三郎の目を通じて見せ付けられたその鮮烈かつ危うい一生が読者の心に刻みつけられる様な作品であった。
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No.3:
(4pt)

或る時代の江戸商人の特異性

一般通念としての江戸商人の在り方と異なる特殊な時代が有った事を知り大変興味深く読みました。
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No.2:
(5pt)

江戸を「生きる」

ただの商人の栄枯盛衰を書いたわけじゃない、
時代劇で見るとどうしても脇役になりがちな商人がここまで力強く描かれていたとは⋯
それも癒着と悪徳商人としての立ち位置になりがちな豪商、杉本茂十郎と町年寄、樽屋。
だがこの二人は純粋に江戸を生き、一人でも多くの人を困窮から救おうとしていただけだった。
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No.1:
(5pt)

理想を追い求めた男の、達成と転落

痛快活劇としても楽しめるが、
ひとりの男の転落激、悲劇としても見ることができる。
江戸時代の話ではあるが、
そのテーマは『金と幸福』についてであり、
現代日本にも通じる小説として読むことができる。
多層的な物語で、読後、とても深い余韻がありました。

主人公は杉本茂十郎という人物ですが、
語り手は堤弥三郎という男。
茂十郎は自分の理想にしたがって、
世のしきたりを打ち破ることのできる豪胆な男ですが、
弥三郎は自分の受け継いだ店を守ることで手一杯の、
ごくごく普通の商人として描かれます(とても優秀な人なんですけどね)。

現代日本にもありがちなことですが、
当時の江戸商人のあいだにも、
「なんとなくそれが決まりになっているだけで、
 誰の幸福にも寄与しないルール」
というものが多数存在したのだそうです。
商人である茂十郎は、このルールを、
誰にとっても幸せな形になるものに変えていこうとして奔走します。
その結果に、彼は三橋会所というものを設立します。
この三橋会所の設立までを描いた、中盤までの茂十郎の活躍は痛快そのもの!
当初は茂十郎に反発を覚えていたものの、
次第に彼に感化されていく弥三郎の気持ちに、
読者も同化してしまうこと必至でしょう。

とはいえこれは歴史小説。
実在した男、杉本茂十郎の最期は決まっています。
彼は1809年に三橋会所を設立。
その後もうひとつの会所を設立し権勢を極めますが、
1819年には失脚。その後の消息は不明。
物語も中盤を過ぎるころ、
これまで痛快活劇の主人公であった茂十郎に、現実の影が忍び寄りはじめます。

一時は隆盛を極めた男、茂十郎を追い落としたものの正体は、なんだったのでしょう。
これは人によって、それぞれ見解が分かれるところだと思います。
彼がどんな顛末で身を持ち崩していったのかについては、
実際にお読みになって、その目で見ていただくのが良いかと。
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