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渇きの地
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渇きの地の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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過疎地の町で牧師が5人をいきなり銃殺してしまう衝撃の事件から1年後の後日談を取材に来た新聞記者が犯人は「なぜ、銃を撃ったのか?」という真実に迫っていきます。 オーストラリアといえば「ゴールドコースト」「グレートバリアリーフ」などの海岸沿いのリゾートが思い出されますがこの地は乾燥しきった砂漠に近い酷暑で痛めつけられます。 住民だけの秘め事は「豪州版横溝正史」の要素もありますし、旱魃、山火事、複雑な人間関係と閉塞感、出生の秘密、密通、交通事故、さらなる殺人、隠遁生活者、アルコールに溺れるホームレス、火事、大麻栽培と売買、サイコパスの未成年など「韓国ドラマ」を超越した出来事が襲いかかってきます。 さらに主人公にはガザで襲われたことでのトラウマが容赦なくのしかかってきますし、アフガニスタンでの戦争犯罪者捜査のために地元警察だけでなくオーストラリア保安情報機構の捜査官まで登場します。 これだけ大量の事実を突き出されたなかで主人公はどうやって謎解きをするのか?新書版2段組530Pの大著ですが、まさにハヤカワポケットミステリーの面目躍如といえる小説です。 | ||||
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川が干上がるオーストラリアのリバーセンドという街で、牧師が突然、銃で5人を殺害する事件が発生。その1年後にジャーナリストのマーティンが事件のその後を取材に訪れた。マーティンはそこで新たに発生する事件に巻き込まれながらも牧師の大量殺人の真相に迫る。ジャーナリストと警察と諜報機関が入り混じって、何が真実なのか分からなくなってくるのが、現実に起こっていることのようでリアルさが増している。登場人物や発生する事件が多いが、複雑すぎることもないし、著者が読者をリードしているかのように読みやすい。最初の牧師の事件の描写からラストまで中弛みせずに楽しんで読めた。 | ||||
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ポケミス創刊70周年記念として、6月連続で世界各国ミステリーの刊行が予定されている。第2弾が韓国、第3弾が中国である。この第1弾は英国推理作家協会賞受賞作というので、本を読み始めるまで、英国と思っていたのだが、本を読み終えて、杉江氏の解説を読んで、オーストラリアの作家と気づいた。ストーリーはほとんどすべてがオーストラリア内陸の小さな町で進行する。 本書はホワイダニットミステリー、彼はなぜ殺したかミステリーである。つまり、「牧師はなぜ突然銃を乱射して、地元住民の5人の男を殺したか」が、本書の謎である。ほかにもいろいろ謎が組み合わされているが、中心の謎はこれである。 私的感想 ◯導入はうまい。プロローグの乱射シーンの1年後に物語が始まり、この町に取材(悲惨事の後の町の様子の取材)に来た主人公の新聞記者マーティンは、たまたまブックカフェに入り、店長で、美人シングルマザーのマンディ(マンダレー)と出会う。運命の出会いである。マンディが「牧師を憎めない。牧師は私の命の恩人だ。あの日起きた出来事が起こるべくして起こったことのように思える」と言い出して、「牧師はなぜ突然銃を乱射して、地元住民の5人の男を殺したか」の物語が始まる。 ◯しかし、前半の前半は、不安を抱えながらの読書であった。理由は、こんなに分厚い(500頁)ポケミスを、小さな町の、犯人も犯行の様子もわかっている事件のホワイダニットだけで引っ張っていけるのかなかなか不安であったから。 ◯しかし、著者は児童性的虐待、ガザでの取材体験、マディの出自、密造酒、山火事、行方不明の若い女性のバックパッカー2人の暴行死体の発見、報道合戦、牧師の愛人の謎、牧師の過去の謎、オーストラリア保安機構の介入とどんどんストーリーを膨らませていき、退屈しない。特に、マーティンが、牧師が女性バックパッカーを殺していないことを証明しようとしたことがとんでもない展開になっていくのが興味深い。 後半の後半は組織的闇事業、暴走族も出てきて、さらににぎやか。ラストは、牧師の愛人問題、牧師の過去問題が一本の線となり、巧みに着地する。 ◯本書は新聞記者ミステリーのため、報道合戦ミステリーにもなっているのが面白い。真実の報道というより、面白おかしく、先入観に沿った途中経過報道が多く、戯画化のようにも読める。 ◯マーティンとマディのラブストーリーも楽しい。しかし、男女関係は一回だけのようで、その後はマーティンがマディを怒らせて、叩き出されて終わっている。後半は苦境のマディを救う白馬の騎士になるが・・。 ◯本書には、マーティンとマディの登場する続編と続々編があるそうです。 | ||||
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オーストラリアのスリラーと言えば、西オーストラリア、哀しみのアウトバックを舞台にした「55」(ジェイムズ・デラーギー 2019/12月)を思い出します。 今回は、リバーセンドという名の町で起きた殺人事件。セント・ジェイムズ教会の牧師、バイロン・スウィフトはいつもの景色の中、突然狩猟用ライフルを携えて現れ、町の住民たちを狙撃し始め、5人の男が命を落とすことになります。そして、バイロンは警官・ロビーによって射殺されてしまいます。 1年後、その後の町の様子を取材すべく主人公、新聞記者、マーティン・スカーズデンが送り込まれます。何故、牧師は凶悪な殺人者に変貌を遂げたのか?牧師、バイロンは社会貢献を行う町の人気者でありながら、事件の直前に「小児性愛者」として告発を受け、そのことがこの事件の"引鉄"になったと解釈されていました。本当にそうなのだろうか?マーティンは、町の住民を尋ね歩き、事件の詳細を調査していきます。一方、マーティンはなにゆえこの仕事に送り込まれたのか?彼はかつて中東のガザ地区にて取材していた時、テロに巻き込まれ、"PTSD"を負っていました。クールに事件を見添えるべき記者が当事者として事件に遭遇した時、彼のアイデンティティが脅かされてしまったのでしょう。 町に赴いてはじめて言葉を交わした女性、シングル・マザーのマンディ。その美しさ。美しさは揺らいだアイデンティティをより揺り動かします(笑)。渇きの地、リバーセンド。旱魃のため何日も雨が降らない町。「ブラックドッグ」という名のモーテル。発生する山火事、そして引き起こされるもう一つの事件。これ以上書いてしまってはいけない(笑)。 物語は、私のあるかないか、わずかながらの脳細胞を翻弄しながら、予測のつかない展開を繰り広げ、拡大、収縮を繰り返しつつ或る「真実」へと向かって時に詳細に、時にダイナミックにその翼を拡げていきます。その血潮そのものと血潮のように濃密な語り口。 もっと語っていたいと思わせるこの見事なスリラーは、おそらくこれからも好むと好まざるとに関わらず何度でも思い出すことになるのでしょう。より哀しみの深い「渇きの地」に向かって。 □「渇きの地 "Scrublands"」(クリス・ハマー 早川書房) 2023/9/21。 | ||||
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