苦役列車

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苦役列車の評価:

3.84/5点 レビュー 276件。 C ランク

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全554件 281〜300 15/28ページ
No.274
(4pt)

社会の闇に嵌った主人公の行く末

この作品は日雇い労働者の、平凡な2人を中心に物語が進んでいくのですが、平凡とはいえ、作者は主人公とその友人・日下部を対照的に描いています。
 日下部は両親もしっかりいて、世間の評価的には、いたって普通な人間。日下部は何をするにしても平均的にでき、
世間の批判も受けずに、生きていけます。
 それに対して、主人公の父親は性犯罪者で母一人、子一人で、11歳で人生が終わったととらえ、自暴自棄に生きる人間です。
この主人公を作者は徹底的に救いようのない「陰」に貶めていく。世間という枠からはずれ、なおかつ、過去に固執して前を
向けれない人間の末路がどれほど哀れか。そこを作者は主人公を通して、描き出したように私は感じました。
しかもこれは今の日本社会のリアルな実態の一つでもあります。
 本来、父が性犯罪者という汚名を着せられたことが、人生を終わらせるほどの絶望的なことであるとは私には思えません。
 そこまで世間が冷たいものだとも思えないし。
 ただ、この主人公にとっては絶望的であったようです。
なぜなら、主人公は無縁社会の代表例ともいわれる人間で、幼いころから、地域のおじちゃん、おばちゃんも含めて、
なんらいい出会いをもっていなかったからです。親の教育環境も影響して、自信も失い、愛ももてず、友達もいない。
そんな孤独な人間が日本にはわんさかいるんだということが本書を通して伝わってきました。
 無縁社会は、確実に社会を陰に貶めていく。主人公が幼き日から誰か一人でも対等に、希望をもって話し合えるような人間がいればどれほど救われたののかな。そんなことを思わずにはいられない作品でした。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.273
(3pt)

これから、もっともっと

西村さんの小説初めて読みました!芥川賞がどのこうのって言われてますが、候補にならなければ手に取らなかった小説がいくつもあり、その中には素晴らしいものがいくつもあったので、やっぱり必要な賞だと思っています。父親のことも本格的にこれから書いていくとインタビューでおっしゃってましたし、これからもっともっと書いていかれると思います。はっきり言って、こんなものじゃないだろうという思いもありますので、これからに期待です。過去の著書を見ていないので何とも言えませんが、もっともっと壊れて、吐きだして、人間の黒い部分をもっと出してほしいです。でも、この方、お父さんの件で人生一変しただけであって、根底にある部分は優しく、文学少年ぽいし、悪ではないのでしょうね。どちらかというと癒し系?すっとぼけた部分があると思う。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.272
(3pt)

出口が見つからない感じがした。

とことん落ち込みたいときに読むとよいかもしれません。なんかだ出口がないままに終わってしまった印象です。すごくごつごつとした感じの文体であり、重苦しい。実際に、このような生活をしている人は多そうな気がします。アングラな横町のイメージで、昔の肉体労働者=立ち飲み屋(コップ酒)のイメージが浮かび、なんとも言えないやるせなさとコンプレックスの塊を投げつけられたような感じでした。(今は立ち飲み屋が割とお洒落となっている様子ですが…)常にトラブルの中に身を置き、イライラしている様子が伝わってきます。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.271
(1pt)

「男」への嫌悪感満載

勝手な感覚で失礼しますが、
元々の男性不振が、さらに男性嫌いにさせられました。
でも、きっとこれが「雄」の実態ですよね。
プライドとか見栄とか全部取り去った姿なんでしょうか。
いやぁ、とにかく読んでる間、
いや〜な気分が続き、最後に救いがあるかと思って
頑張りましたが、、、
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.270
(4pt)

一気に読めるが

一気に読めるが、女子供などにはきつい内容で共感がよべなそう
男性でも、ちょっと忌避感があるひとが多いような作品

私にはおもしろかった。でもこの作品を面白いっていうことが
ちょっと恥ずかしい人が多いかも知れない

まあドラマ化や映画化もするでしょうし、
そちらの方が楽しみかも

さっと読めるので周りで回し読みします。
こんなに話題になる本も珍しい。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.269
(4pt)

知的なろくでなし!

自分をとことん暴いて、さらけだして、「どうだ、俺ほどどん底はそういないだろう!」
作者は意気がっているが、ここまで開き直り自分を客観視できるのは、きちんとした知性が必要だ。

事実、自分と正反対の日下部を敵対視するのでなく親しくなりたい、対等になりたいという主人公がなんだか愛おしい。
まっとうな生活はできないけど、まっとうに暮らす人間にも少しは敬意みたいな感情を持っている。

どん底の生活をしても、何処からか薄日が差してくる。精神の根っこは病んでいない。
これがバブル時期の若き日を書いたという所が「私小説」なんだが、昨今の社会状況を思うとリアルだ。

この作者は人を動かす術を心得ている、と感じた。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.268
(1pt)

どうなんだろー??もっと書けるんじゃないか?な?

3回読みました。春秋の全文掲載で読みました。まず、苦役列車って題名は、なんなんだろー?僕には意味不明。賞受賞の報道やナンカで、西村さんの写真を拝見したとき、お!しばらくぶりに(いい?顔をしたモノ書きがデテキタゾ・・なんか、ナカガミの様に怒った顔をシテイルゾ・・期待大・・早速・読むよ・・・・)とばかりに楽しみにしていたのに。西村さんとほぼ同年代です。私は、昭和39年の生まれです。んん、あの、これを読んでいてくださる方で、同年代の方?どうでしょう?こんな私小説って何なんでしょうか?僕らの時代の19歳?どんな仕事でも、ありました。たしかに西村さんの様な仕事もありましたし、5,500円が?いいギャラなのか?低い?ギャラなのか覚えていませんが、西村さんの書くこの苦役列車の環境が、私にはどうしても(苦役?)に感じないのです。高等学校へ進まなかった?大学での教育を受けてない?安いアパートに住み(トイレも共同)汚くて不衛生?・・・当たり前でした。大きなお金を援助してもらっていた友人達も僕の周りには、沢山いましたし、彼ら彼女達は、小奇麗なマンションに住んでいました。が?しかし、それは、親の環境ですよね、自分の働きや才能?じゃなかったハズですよね。金が?なかったから、なんとかしようとイロイロ頑張ったり、人間関係を円滑にするべく努力したり、上司に可愛がってもらいたくてイヤイヤお世辞を云ったり。ワードプロセッサが発売されたり、CPが身近になってきたり、携帯電話が必需品になったり、日常のトヤカクに我慢できなくなり全てをヤリナオシテミタリ・・・当たり前ですよね。なんで?苦労?なんですか?なんかこの書き手のこの書き方で苦労?みたいなモノを感じてしまう今のご時世って何ナんだろう?直木賞って、何だ?西村さん?こんな事かいて?僕たちの様な大人になった人間って?もっとやらなきゃならない事が山積してるぜ!何で寝てるんだよイツマデモ!子供達が世界中で苦しんでいたり、国をツカサドル奴らの無能も正さなきゃならないし・手伝うべきだし!近所の老人が路で倒れてたりするし・小学生が変質者に追われているし・なんか!おい!何?寝ぼけてるんだ・・西村さん?そんな事40も過ぎて書き、仕事にするなんて!わかんないよ!ワケわかんないよ。。受賞時写真を今、ヨクヨクみたら、なんかフヤケタ顔だ、怒って無かったよ。。残念。直木賞を選ぶ先生方も、ダメ。。。だめだ。。。。。。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.267
(5pt)

文章力がすごい

彼の文章の素晴らしさ、語彙の豊富さは、ちょっと真似のできない熟成されたレベルだと感じる。

話の筋自体はすごく単純だ。
しかし著者のいう苦役とは何も港湾荷役の仕事自体を指しているのでは無いのは明らかである。

普通の人なら脱出することがそれほど困難でもないにもかかわらず、
自らの生い立ちやそれによる狷介で攻撃的な、それなのにプライドが高い性格などの要因が作用して、
そこから脱することのできない貫多の現在の境遇そのものを指している。
だから何も大きなことは起こらないし、淡々とダメな日常生活が続く。
しかしこれこそがこの作品のキモだと思う。

つまり、淡々としたダメな日常的なストーリーだからこそ、
著者の豊富な語彙力や文章力によって読者を一気に引き込む。

何も発想力だけが小説じゃない。
小説に華々しさや荒々しさなどのアイディアだけを求める人こそ偏ってはいないか。

未来や過去を行き来するような未来的な話も小説なら、
こういう古臭くて何もできないダメ人間のくすぶった話だって小説だと僕は思う。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.266
(5pt)

旺盛な食欲

もう読んで何日か経つのだけれども、天丼をかきこんで、
そばのつゆを最後の一滴まで飲み込んで、やっと人心地つく、
という食いっぷりが忘れられない。
思い出してはニヤニヤしてしまう。

労働で汗を流した後の飯のうまさは、やっぱり格別だよな
と肉体労働のバイトをしていたころを思い出した。(港湾労働ではなく物流系だけど)
三ツ矢サイダーも美味そうなんだよな。

星4ってとこだけど、ご祝儀も兼ねて、星5で。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.265
(4pt)

その存在が他人を救う

小説、ましてや純文学とは無縁の私ですら、この「苦役列車」は面白くスラスラと読めてしまった。同じ平成という時代を生きる一人のダメ男として、似たようなコンプレックスや願望を持ち、似たような行為をする主人公、北町貫多に素直に共感する所が多かったからだろう。一方で著者の西村賢太氏がインタビューで「自分よりダメな人間がいると思ってもらえれば・・・」と語っていた通りに、「いくら私がダメ人間とはいえ北町貫多よりは余程ましだ」という上から目線で安心して、半分面白がりながら「ほんとにこいつ(北町貫多)はしょうがないなー」と他人事のように読めた事もあるだろう。
 もう一つの小説「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、文学賞というものを散々コケにして、文学賞を欲しがる作家を俗物扱いしながら、実は北町貫多自身が誰よりも文学賞を欲している一番の俗物だったということを恥も外聞もなく告白している。
 このような読みやすい(「読みやすい」というのは西村氏の優れた技量による)純文学の私小説作家の存在は貴重である。読者が抱えている他人に対する卑俗なコンプレックス、嫉妬、妬み、厭らしさなどを吸収し、その代わりにカタルシス、自己の存在の安心感というものを読者に与えてくれるからだ。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.264
(2pt)

「創り込み」が足らない〜もし現代社会情勢が無ければ.....

受賞後のインタビューによると、本作の内容は「9割方、自身の体験談」だと言う。私小説に一生を捧げる意志を標榜している作者らしい言説だが、その姿勢も上述の回答もファイクだとの印象を受けた。元より、身辺に起こった出来事をそのまま綴るだけでは文学足り得ず、何らかの創り込みが必要であるが、本作の特徴は以下の点にあると思う。

(1) 「主人公貫多=作者」のように見えて、作者は貫多を突き放し戯画化している。貫多の行動・心理描写を通じて笑いを取っている感もある。
(2) ワザと昭和初期の私小説作家のような文体・言葉遣いをして、それらしい雰囲気を醸し出す一方、親しい事を「intimateな」等と貫多に似合わない表現をして、読者に妙な違和感を抱かせている。
(3) 貫多の置かれている状況を、就職難・雇用不安と言った現代社会情勢に合わせている。ともすると、貫多の身の上に共感を覚える読者もいるかもしれない。あるいは、貫多に対し優越感を抱く読者もいるかもしれない。
(4) 貫多に対比する人物として日下部というスノッブな男を配し、二人の距離間を「友人めいた関係→反目関係」として描き、貫多の孤立性(孤高ではないだろう)を浮き彫りにしている。

作品のテーマとしては(3), (4)が主で、日常がどんなに困難でも人はそれなりに生きて行かねばならない、という趣旨だと思う。だが、貫多の性格・行動は常識の範囲内であり、ピカレスク小説という程に日常を逸脱している訳ではない。(3)の現代社会情勢が無ければ注目さえ受けなかった作品なのではないか。その意味で、「創り込み」が足らないように映った。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.263
(4pt)

汗の匂いと熱気を

正直、作者の経歴に興味を持ち読みたくなった本だった。
もう一方の文学一家に育ちきっと何の不自由もなく育った「お嬢様」作家とかことごとく違った作品だ。
ある意味殺人と同じくらい忌み嫌われている「性犯罪」を犯した父を持ち、母からも愛を受ける事なく育った作者のただひねくれた性格から
起こった出来事なのだからそれこそ「自己責任」の一言で終わるものかも知れない。
しかし、作家として「書きたい」という思いと「作品」の中には熱すぎる熱気と汗と泥臭さがドン!と読む側に伝わってくる。
その臭さがまったく嫌な感じがしなかったのが不思議だった。
また次の「作品」を読みたいと思わせる十分な「作品」だと思う。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.262
(4pt)

芥川賞受賞を言祝ぐ

本書には、芥川賞受賞で話題になった表題作ほか1篇が収録されている。その「苦役列車」の方は、まずまず期待していた通りのおもしろさであった。こぢんまりとはしているが、最後にやはり藤澤清造の名が出てくるところなど、演出もうまく利いていて、小説として体よくまとめられていると思った。また、わずか40頁ほどの「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の方もなかなかよい。古本を買うシーンが出てきて、こういうのは古本好きにはたまらない。主人公が買う本がまたシブくて、唸ってしまった。

さて、西村賢太の魅力は、何といっても自分の言葉を持っているところにあると思う。この作家にしか使えない言葉があるのだ。あまり馴染みのない語彙や言い回しがそこには多く含まれ、辟易する読者もいるかもしれないが、作家の固有性はまずその言葉にこそ表象されるものである。それらは何も奇を衒って使われているのではなく、長い年月をかけて熟成させ血肉化してきた言葉なのだ。他に名を挙げれば、野坂昭如、車谷長吉、町田康なども同列に並べることができるかもしれない。私はこういう作家たちを大切に読んでいきたいと思う。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.261
(3pt)

強烈なにおい

土埃、泥、汗、体臭と”ぬめり”を強烈に感じるような小説。
難を言えば、文体は、ところどころ古めかしい言葉を用いて、ダラダラと妙に長い一文が続く。
男っぽい、力強い言葉を使い、猛々しいかと思うと「おそば」「お菜」など、不意に丁寧な言葉で表現されるので、少しとまどった。
性犯罪加害者の父親を持つ青年、貫多が主人公。
貫多が、やがて親しくなるのは、学生アルバイトの日下部。
初めは、貫多が優越感を持って付き合うが、やがてあることがきっかけで逆転が起きる。
この心理描写と展開はわかりやすい。
誰もが、こういう心理状態に陥ることがあるからだ。
このねじれた心は、加害者を親に持つ青年だけが持つ特有の感情ではない。
誰もが、今まで自分の方が優れているという思い上がった気持ちがあれば、真実を知り、相手の方が恵まれている、優れていると感じた時、プライドが傷ついた時のダメージは大きい。
友情が、ひがみ、ねたみ、劣等感、憎悪に切り替わる時の反動はすさまじく、負のエネルギーが爆発する。
貫多は「どうしようもない男、哀れな男」でもある。
だが、この世の中、誰もがどうしようもない人間であり、悲しみを抱えていると思う。
その事に気付いているか、気付いていないだけの差なのかもしれない。
人生自体が、苦役とも言える。
日下部達に毒舌を吐きながらも、自分自身にも唾を吐いている事を自覚している悲しさが、こちらにも伝わってきた。
格差社会、持って生まれた運命、甘っちょろい生き方への、憤りの挑戦状とも感じられる。
文体は粗いし、好みは分かれると思う。
特に若い女性には、苦手な部類に入りそうな作品。
だが、メッセージは力強い。
性表現が露骨で荒々しく、独特の古い言い回しも多いので、どちらかと言えば、男性向けの小説だと思う。
★は3・5
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.260
(4pt)

そこはかとなく感じられる「おかしみ」

芥川賞を受賞作をいち早く読むという習慣もなく、『KAGEROU』のような
話題作にもまったく食指が動かない私のような人間でも、授賞式の記者会見で著者
を初めて知って以来、読まざるを得ない気持ちになった。この著者は小説を書か
ざるを得ない人だということが直感的に伝わってきたから。

私小説であるというその内容は、罪なき罰を背負った青年の、孤独と不満と諦念
の入り混じった塩辛い日常を淡々と描いたものである。もちまえの過剰な自意識
がこの青年にことさらに卑屈な態度をとらせ、せっかくできた友人も遠ざかって
いく。かといって青年は一念発起するわけでもなく、凶悪犯罪に走るでもなく、
自分を罵ったり、他人を妬んだり、もうどうでもよくなったりしつつ、日雇いの
仕事と居酒屋と風俗店のループから出ることなく日々過ぎていく。

暗くて後味の悪い小説を予想していたが、意外にも、その独特な文章からは「お
かしみ」が滲みでていて、深刻になりすぎないよう絶妙にコントロールされてい
る。語り口を変えれば、「未来を閉ざされ、友も恋人もなく、単純労働で日銭を
稼ぐ毎日」という設定のこの物語も、随所で笑えるドラマやマンガにさえなるよ
うな気がした。その「おかしみ」は、この本に収録されている短編、「落ちぶれ
て袖に涙のふりかかる」でも存分に発揮されている。著者は、尊敬してやまない
藤澤清造の作風を「滑稽だけど悲惨味もある」と評しているが、この小説は、
「悲惨だけど滑稽味もある」ふうに仕上がっている。私小説が日記や自伝と違う
のは、自分の人生や経験なりをあくまで第三者的に見て、読者目線で構成しなお
し、悲惨さなり滑稽さなりで入念に味付けをしているところだろう。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.259
(3pt)

私小説である迫力と、おぞましい付き纏われ感が残る

性犯罪者の父親を持つ人間の私小説であるということを知っていて読むと、より物凄さを感じます。主人公の貫多に対しては、「こういう人間とは付き合いたくない」という感情が湧きます。友人の借金も返せず、家賃も踏み倒すとんでもない人物で、「それでも憎めないところ」というものが全く存在しない、おぞましさというか、嫌な付き纏われ感が残ります。その次に、絶望感とか、寂寥感とか、無力感とか、そういったことを感じさせます。貫多のような人間を切り捨てる訳にもいかず(少なくとも表面的には)、国政を担っていかなければならない政治家や官僚というのは何なんだろうとも思います。

私にとって小説というのは、主人公が一連の人との繋がりなどを通じて、何らかの形で「成長」することに、その価値というか、読む楽しさを見出すものだと思っており、それからすると、本書は本当に全く異質な衝撃的な作品であり、ずっと気持ち悪さが残っています。それだけ、文学的にはレベルの高い作品というか、受賞には値する作品ということになるのでしょう。

こういう作品もあるということです。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.258
(5pt)

悲しいときに元気がでる

辛い体験をユーモラスに書いてあって、読んでて元気になった。とても良かった。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.257
(4pt)

人間の欲求の果てに

西村さんの私小説を読み、肉体労働者の方たちが訴えるような社会主義・左翼的発言がないことから、このひとは私小説を書くにふさわしい方なのだと思いました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.256
(3pt)

「苦役」と言うには軽すぎる

「話題の本」を読むのはほぼ初めて。
どれだけ重いテーマが…と期待して読み始めると、裏切られる。
非常に軽い。テーマも軽いし、読後感も軽い。

つまらないわけではない。読んで損はない。
「中卒+日雇い」というまったく違う世界の19歳の日常に、「なるほど、こういう生き方もあるんだ。ふーん」くらいの感想は得られる。

しかし、まったく共感はできない。境遇が違いすぎる。
その割には、主人公の背負うものが軽すぎるし、あまりにも低俗な「酒、タバコ、風俗」の生き方に感情移入さえもできない。

出張中の時間つぶしには良かったので後悔はない。
しかし、これで芥川賞はちょっと…。

自宅に戻り「人間失格」を開き、その格差のあまりの大きさに愕然とする。

「文学」というものが、現在の日本では切実な存在ではなく、せいぜい「やや高尚な暇つぶし」程度の位置付けということなんだろう、と自分を納得させるしかない。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.255
(2pt)

「商品の説明」に決定的な誤記が…

作品云々よりもまず、「商品の説明」の誤字を指摘したい。(誰か早く直してほしい)

内容(「BOOK」データベースより)
友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。…(2011年2月12日現在)

主人公の名前は「貫太」ではなくて「貫多」では!?

レビューを書く人が登場人物の名前を書き間違えてるのはさらっと読み過ごすのですが、「商品の説明」で登場人物(しかも主人公!)の名前を間違えたまま放置されているのは、見過ごせないなぁ。著者にも失礼ではないかと…。

(レビューを書く気にはなれないので、今日はここまで)
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842