苦役列車

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評判

苦役列車の評価:

3.84/5点 レビュー 276件。 C ランク

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平均点3.84pt

Amazonレビュー一覧

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未読の方はご注意ください

全554件 261〜280 14/28ページ
No.294
(5pt)

書けそうで書けない私小説

表題作の「苦役列車」もいいですが、併録の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」がなかなか凄いです。

冴えない中年男の身辺雑記に付き合わせられるのかと思ったら、文学賞の話が絡んできて、
いつの間にか引き込まれ、つまり欲求をかきたてられ、
誰も知らない昔の文学者の話を我が身のように聞かされた後に
身につまされるようなオチが待っています。

「苦役列車」はアルバイト生活の経験のある自分でも、このくらいは書けるんじゃないかと思わせられる親しみの持てる作風ですが、
「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は正直なところ、読み終わって真っ青になってしまいました。才能です。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.293
(5pt)

痛快な性エネルギーの昇華

中卒が芥川受賞!

話題先行につられて、読みました。
著者いわく「稚拙」そのものだという文体も
とても中卒とは思えない人物、背景の描写がされていました。

自己開示の一手法として私小説を書く作家が多い中、
西村氏ほど小説を書くことを愛してやまない人は
少ないのではないでしょうか?

思うに酒と風俗と同等もしくはそれ以上の情熱を
掛けるものを見つけた人間にとって
学歴の有無などまったく問題にしない。

新たな生き証人の誕生に拍手を送ります。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.292
(1pt)

中途半端な悪

ひたすら自堕落な生活を描いた私小説。

悪を気取って実は小心者であり、また、家賃を踏み倒すとか、友達に借りた金を返さないとか、家族にたかるとか、スケールの小さい悪で、ただの迷惑な生活破綻者の暮らしぶりを描かれても少しも共感するところはない。

悪というなら、世の中の仕組に異議申立するくらいの気概でやれよ。

それでいて、プライドだけは異常に高いというのも反感しか覚えない。

そうした人間としての欠点も、それゆえにすばらしい芸術作品を生み出しているなら納得できるが、小説の出来もそれほどでもない、とすると、読んでいて不快になるだけである。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.291
(1pt)

ここまで落ちぶれる?もう読まない。

同年代の作者なので時代背景も分かり共感できる部分も多いが、
昭和初期を連想させる文体や漢字、そしてなにより中卒で酒好き、風俗好き
孤独で無気力、読んでいて暗くなりました。
芥川賞の受賞作を読んだのは初めてでしたが、たぶんもう読まないでしょう。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.290
(5pt)

なぜか素晴らしい!

「文学は毒である」という言葉を思い出させてくれます。「きことわ」と同時読みしていましたが、こちらのほうをどうしても先に読み終えたくなりました。

わずか11歳の時、父親の犯罪が元で主人公の人生は決まってしまったようなもの・・・なんて・・・悲し過ぎます。なのに、読後感はカラリとしていて読者を暗い気持にさせません。

19歳の悲惨な日常を描いていますが、自分の青春期にも主人公と似たような部分がたくさんありました。そういった所がとても共感を呼ぶのだと思います。

あまりにも過酷な「苦役列車」。賞を受賞した時の西村さんの言葉・・・圧倒的な私小説であると共に、一種の痛快感さえ覚えます。

なぜか素晴らしい!
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.289
(1pt)

読むに耐えない。

私小説という型の小説は、もともと嫌いだったのだが、暇潰しに書店に寄って、たまたま目についたので立読みさせていただいたのが、苦役列車なる私小説であるが、そもそも何故、私小説を忌み嫌う私が、そんな物を手に取り読んでしまったかかというと「芥川賞」は銘の物だという固定観念に縛られていた故に読んでしまったのではあるが、そんなことは一私人のこと、どうでもよいのである。ともかく私は私小説が嫌いだ。というのも、その小説が作者の想像の産物であるのではなくて、単に自分の犯した汚辱を他人に見せつけるような、自らの愚行の成れの果てであるような小説だからで、読んでいてかなり気が滅入るのだ。この苦役列車も、気を滅入らせる、劣悪な小説である。読者に己の体験に共感してもらいたいのか、自己救済目的か、或いはそれ意外に何かしらの思わくがあって書いたのだろうが、愚行を愚行とも思えない人間、恥を恥とも思えない人間が、たとえ、文章を書くのが巧くとも、小説など書いてもらいたくないと思うし、書いたことで得られるものは何もなくて、よしんば読者からの軽蔑の目で見られても仕方ないのである。また、もし本人が己の恥を自覚していてその上で私小説を書くとすれば、その作者は本当に野蛮な人間であることは間違いないのである。もっとも小説を書くのは各人の自由で、それが愚かな私小説という形式をとっていても同じことであり、その書いた私小説で金を稼ぐのも、またその人の自由であるし、当然その私小説の読者になるのも自由である。無論、読者を責める気は全くないが、私がもし、その作者を責めたり非難しても、その責める、非難する自由はあるが、どうすることも出来なくて労力の無駄である。また、私は文学者などではないので、批判する必要もないから、批判するのは止めておく。ただ私は、この小説を読んで怒り心頭に発したのだ。なので最後になるが云っておきたいことがある、私小説を書く人間のその貧しい精神には全く私は共感できないということを。私小説は、読まないと決めたのにもかかわらず、この苦役列車を読んでしまったことを今まさに恥ている。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.288
(4pt)

身体感覚で本作品の世界観は共有できてしまう

まあ,こういう作品はいつでもありではあるのですが,特に今はこういう時代ですので不幸にもしっくりきてしまいます。その昔,『なんとなく、クリスタル』ってな作品は読んでいて不快になりましたが,この作品にはそういう感情を抱かないでいられます。身体感覚で本作品の世界観は共有できてしまうんですね。ロクに食べるお金がなくても風俗に通うための資金は積み立てるなんてのが実にリアルでいいです。犯罪者にならないまでも,社会にはどうしてもはみ出しちゃう人が出るんですね。いつでも中心を明確にしたり強化するには周縁が必要で,その周縁にももちろん人間らしい営みやすったもんだがあるわけなんですね。一緒に芥川賞を受賞した朝吹さんとともに西村さんの今後も楽しみですねえ。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.287
(4pt)

リアルに切実

今の時代にこの小説はあきらかに異色を放つ存在でしょう。

現代、確実に社会問題となっている貧困層の暮らしを描いているが上から目線でなく確実にその中に身を置いている当事者の生の声で語られている。

この実体験による切実さに心打たれない人はいないでしょう。

正直、自分と近い世代で特に手もつけられないひどい不良だったわけでもないのに教師に放っておかれ、進路相談どころか就職の相談も全くされず中卒になってしまったという身の上に驚きを隠せませんでした。

当時は学園ドラマ全盛期で結構熱血教師も多く、進路指導は徹底して行われていたように思えたのですがひどい話です。

かつて「ライ麦畑で捕まえて」主人公のホールデンがライ麦畑で遊んでいる子供達が崖っぷちから落っこちそうなのを捕まえるため見守るそんな大人になりたいといっていましたが
過保護のいきすぎで大人になってさえライ麦畑に閉じ込められているのではないかというような人間が多い今の世の中でそれを止める大人もいないまま、本当に崖から落ちてしまった人間がいたとは・・・・。

ただ、その切実さもやりきれなさも正面きってまっ正直に語られているのにこの作者の強さを感じました。
そのせいか共感できる部分が多く不思議と悲惨な感じがしないのがこの作品の魅力でもある様な気がしました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.286
(3pt)

ただの私小説じゃあない

この人文章がうまい。芥川賞作家にこういう言い方も失礼だが、ぐんぐんひきこまれるうまさを感じられた。文学界の対談にものっていたが、すべての表現に効果を期待しているとのこと。納得。私小説というのはとかく露悪的な面が強いジャンルでもあるとは思うが、わざと悪い面を体感的に気持ち悪さとして読者に伝えることに執心しているのではないか?と勘ぐってみた。というのも、読後感としては、ある意味最悪だったからだ。あとで思い返して「これも計算だったのでは?」と思った次第。やや物事を裏面からみる単純化された観点があるものの、それもまた一つのキャラとして考えれば納得がいく。

 蛇足ではあるが、同時受賞の「きことわ」に比べてとても読みやすく、かつ肉感的に迫る小説の醍醐味があるような気がした。私小説なので、表現の幅はともかく書かれるキャラの幅に限りがあるとは思うものの、人物自体の考えにバラエティがでてくるともっと面白いのではないかと愚考。いわば一連の作品が認識面での成長小説のようになっていければ今後もっと面白い展開がみられるのではないかと期待している。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.285
(3pt)

私にとって初の芥川賞作品でした

本書の著者である西村賢太氏は、芥川賞受賞作家としては異色な経歴の持ち主で、その個性的なキャラからも

ニュースや文芸誌でも注目を浴びました。私もそんな彼がいったいどういった作風を醸し出すのかとても興味が

湧き、手に取った次第。まったく内容としては華々しさも、ハッピーな展開もあったものじゃない。ただあるのは、

中卒であり、父親が性犯罪者であり、日雇いで日銭を稼ぐ人足のありのままの姿。

主人公がなにが凄いわけではない。こんな奴だったら今の日本にでもいくらでもいる。この本では、そんな彼らの生活態を

如実に描き、心情や葛藤を代弁している。…「世の中には、自分より駄目な奴はいる」そう感じたのなら、この本の投げかける

意味を十二分に汲んだことになるでしょう。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.284
(5pt)

すがすがしいwどこがダメ男なのかわからない

読後感はすがすがしいです
徹底したダメ男ぶりが・・・・とさんざんな紹介のされかたでしたけど
どこが ダメ男なんだろう???と首をかしげましたね
良い奴じゃないですか カンタ
ていうか ごく普通の善良な少年だと思いますよ
正直でほほえましいですね
誰だってあれくらいの妬みそねみはありますよ
彼女ほしいし 毒づいたり見栄をはったり 若者なら余計にそうですよね
カンタはそれを全部ば〜って出しちゃうし 正直っすよね
健全です
正直すぎて 毒が薄いくらいです
話の中で出てくる 専門学校生のほうが狡猾で小ずるくて小市民的で
要領だけよくって でもその一方でカンタのような 少年を見下しており
本当に典型的でありきたりな詰まらない常識人だと思います
私は断然 カンタの方が好きですね

性的な妄想も出てきて
その過激さに 性犯罪者の父親とのつながりを感じてゾッとするなんていう場面もありますが
あれくらい誰でも妄想してるでしょう?私的には物足りないくらいです^^:
19歳ならもっとグロい事考えていてもおかしくはないと思いましたね

ただ ラストが少し気に入りませんでした
友達を失って またひとりぼっちになったけど
私小説家のコピーをポケットに無造作に突っ込んでいるという一文
これはいらないでしょ
最底辺みたいだけど じつはインテリなんだ〜おれ 小説家めざしてるんだ〜〜
そんなニュアンスがあって ちょっと興ざめでしたね
最後までひとりぼっちでいいと思いました
徹底的に一人ぼっちになってほしかったですね
あんな平凡な小市民とは混じりようのない「ダメ男」→無垢な少年であってほしいわけですね
余計な一言だったように思います

しかし文章は上手いですね
この文章でなかったら もっと下品で通俗的でありきたりの話になりそうですよね
文章でもってるところは大きいと思います
ところどころ出てくる 日常生活では耳にすることのない熟語の使用については
どうなんだろう?と思いますが もっと普通の熟語でもいいような気がしましたが
どこまでもずらずら続いていく文章が、ダラダラしたカンタの生活を象徴しているうようで小説の内容とよくあっていたと思いました

しかし
「最底辺」
世の中の最底辺に暮らす人
その人をどうとらえるか
これは
漫画「リアル」なんかでもとりくんでいるテーマだと思うんですが
経済的な最底辺=人格的な最底辺ではないですよね
逆に言うと
世の中で「富裕層」と言われる人たちが 人間的にも「富裕」な人なのかどうか
という事でもあると思うんですよね
先生とよばれるほどの馬鹿でなし って言葉もありますが
富裕層とよばれるほど貧しくはない
最底辺とよばれるほどの余裕なし
みたいなね
「富裕」と呼ばれるくらいなわけだから 相当危ないことや人を痛めつけるような事しないかぎり金は稼げないというのも ある意味真実なわけでね
カンタをどう見るのかは
そういう意味でもあると思いましたね

ぜひ読んでほしい作品です
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.283
(3pt)

なんか惜しい

読みやすく面白かったです。 ただラストが…。 ラストがただの説明文ってのは小説としてどうなんでしょう。もう少し含みを持たせて…というと、それはそれで臭くなるのかもしれませんが、もう少し考えて欲しかったです。主人公が19歳時点のまま終わっても良かったし、どうしてもその後を書きたいなら説明調にならないようそれなりにきちんと書いて欲しかったですね。 あと、あくまで私小説と銘打ってるんですから 文学だ映画だと語りながらも郵便屋止まりだった日下部〜〜的な文章に対し、寛多は日下部も羨むであろう一人前の作家になってるんですよね。底辺のならず者を描いているのであれば、あの部分は計算ミスだと思います。 面白かった分、残念な箇所が目について惜しいです。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.282
(3pt)

読みやすかったですが・・。

薄いので2時間半ほどで読み終えました。
「こうはなりたくないなぁー、」と思っただけでした。('・ω・` )
不景気な日本を中卒の人がたくましく生きていく話とばかり思い込んでました。
予約で10万部売れたそうですが私と同じ人が多かったのではないかと思います。
内容が悪いのではないですが、内容が『以外過ぎ』でした。(あくまで私見です。)
この私のレビューを読んでから読むと先入感を持たずに読めて別の感想に至るかもです。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.281
(4pt)

面白かったですよ

私は西村さんと同世代。あの時代、20歳前後で日雇いとして日銭を稼ぎ、糊口をしのいでいた人がどの位いたのだろう?まわりを見れば華やかに見える生活をしている人たちが大勢いたのだから、やっぱり主人公は鬱屈するだろうな。この小説の中で「華やか側」にいる対比となる人物は同じバイト仲間の専門学校生。そして、もう少し「より華やか側」にいるのがそのバイト仲間の恋人(慶大生)。主人公との微妙な距離感が非常に上手く書けています。
この本では主人公の鬱屈した気持ちや、だらしなさ、性欲がかなりストレートに表現されています。概してそういった本音をそのままズバリ書くと、2チャンネルのように非常に品がなく、読んでいて嫌な気分になるものです。しかしそこはさすがに芥川賞受賞作(!?)。適度に客観的、またどこかユーモラスな文章で、少なくとも私は全く嫌な読後感は持ちませんでした(ただ、特に女性読者の中にはこの主人公に嫌悪感を持つ人が多いだろうとは思います)。
ともかくも自分の中のどこかにあるネガティブな部分が共感を覚えるのか、この小説をたいへん面白く、一気に読むことができました。
でもこの本が芥川賞に値する純文学なのか、というとちょっと疑問符も付きます。改めて芥川賞の基準って何なのだろうな、と感じました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.280
(2pt)

いまいち

私小説だからこんな感じだろうか、あまり期待しすぎたから期待はずれでした、
文語的な言い回しが少々癇にさわり、
苦役列車とは大仰で、私の周りには苦役列車にもっと思い荷物を積んだ人生を
送っている人がいます。
総じておもしろくない小説。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.279
(3pt)

今日的私小説の世界

マスコミによる批評の数々を眺めれば、久々の本格的私小説といった評価が並んでいるようだ。同受賞作品を一読したところ、確かに際立って個人的な事柄を題材に、恥部や暗部をこれでもかというくらいにさらけ出し、独特の筆致で一編の物語りにまとめ上げている。

だがどうも、おいらが永い間受け入れてきた「私小説」とは異質なのだ。例えば太宰治、坂口安吾といった昭和の巨匠作家たちのような、芸術文学に殉ずるといった志向性を感じ取ることが出来ない。

西村氏の極私的生活の中でのあれやこれやは、派遣事業者によって搾取された貧困が故の困窮だったり、父親が猥褻罪で逮捕されたという身内的の恥的体験だったりと、特殊な環境に由来するのだが、それらを越えるテーマが皆目見当たらない。たぶん作家自身によって設定されることがないのではないかと思われるのだ。

私生活を越えるテーマを持ち得ない作家が芥川賞を受賞する意味は、はてな、如何なるものなのだろうか?

中上健次の再来と評する向きもあるようだが、残念ながら、それほどの凄みも感じさせることはない。

苛酷な労働環境に身を置きつつ「苦役列車」の旅を続ける作家の私生活は惨めで滑稽でさえある。この芥川賞作家は、これからどのような未来を描いてゆくのであろうか? 個人的にはどうでもよいことではあるが、少々の関心は持ち続けていきたいと思うのである。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.278
(4pt)

寅と貫多

なぜ私が西村小説にハマるのか。
これまでの著作を読んできて気づいたのは、これは現在の『男はつらいよ』ではないか、いうことだった。

新たな「寅さん」が観れなくなって、ずいぶん経つ。
同じパターンを繰り返しながら50作近くも続いた『男はつらいよ』にハマっていたのは、まさにそれが同じパターンであったがゆえであり、「寅の帰宅 → いっときの家族団らん → 妄想 → つまらぬことで家族と喧嘩 → 家を飛び出す → マドンナの登場 → ふられる → また旅に出る」という鉄板の流れに身をゆだねることの心地よさからだった。
私は西村作品に、それに似たものを感じるのだ。
「テキ屋稼業と日雇い人足」、「マドンナと藤澤清造」、「自己中なひがみや妄想と行動」、「女好き」、「つまらぬ喧嘩と、女や周囲とのいさかい」、「それでもどこか憎めない」、最終的には「これまでどおり」、といった、ある種の“安心感”にハマるのだ。

私におけるクライマックスは、貫多がぶち切れた時に、同居する女や周囲に吐く怒涛の“呪詛”(寅さんにおける自己中な妄想や、とら屋一家やタコ社長との喧嘩)だ。
本作では、第五節中盤の 「― 理不尽だ」 辺り以降と、その終盤の部分。
吐く内容はオゲレツ極まりないが、寅さんの啖呵売のごときそのキップの良さに、酔ってしまうがようになるから不思議だ。

若者だけでなく中年も含め、貫多と同じ“列車”に乗っている人が増えていること。
また、芥川賞受賞によりテレビや紙面にその姿をさらし、西村賢太≒貫多というビジュアルが与えられ、私小説が映画のようなリアリティを得たことも、この作品および西村の各著作が支持を得ている理由だろう。

盆と正月の「寅さん」が楽しみだったように、次回作を待っています。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.277
(5pt)

もたざる者たちのバイブル

今、テレビに出るのは「もってる」人ばかりだ。甲子園の優勝投手で早稲田に進学し、今季日本ハムに入団した斎藤佑樹は自らを「もってる」と言った。名声もあり、素晴らしい仲間もあり、今は、日本中の報道関係者をもっている。な〜んももってないオレは、口をアングリとして見るほかはない。

 テレビではニュースをやっている。直木賞、芥川賞の発表らしい。「道尾秀介」…あ、このまえ情熱大陸に出ていたぞ。才能あり、大ヒット作連発、セレブな友人多数。写真のモデルにもなっていた。こいつももってる奴だなあ。「きことわ」…なになに、慶應義塾大学院生の20代?フランス文学者一家?あ、きれいな人だ。才色兼備じゃねえか。この女性ももってるなあ。

 今や、もってる人でないと世に出ることは難しい。傑出した能力、清潔な外観、温厚な性格、つまり紳士淑女でないとダメなのだ。彼らは瞬く間にもってる者同士でネットワークを築き上げてしまう。今流行の「無縁社会」も、もってる人達による囲い込み運動の結果にすぎない。そして、彼らは決して「もってない」我々は視界に入らない。

 ニュースは続いている。え、もう一人、芥川賞いるのか。ぱっとしない中年男がでてきたぞ。
「今から、風俗行きます。祝ってくれる友だちもいませんし、連絡する人も誰もいません」 ???
なんだ、こいつは?見事なまでに、もってない!!!

 オイラはすぐに本屋に駆け込んだ。お金を使いたくないが仕方ねえ。「ボクに『苦役列車』を売ってください」

 すげえよ、これは。ここまで魂をゆさぶられたのは久しぶりだ。この孤独感。この孤立感。この虚無感。あがいてもあがいても浮かび上がれない息苦しさ、滑稽さ。これは、もたざる者の、もたざる者による、もたざる者のための書だ。

 日雇い先に向かうバスの中から野球場が見える。そう。オイラも何度も見てきた。バスからは決まって野球場が見える。誰もいない野球場が。
 圧巻は、日下部の彼女と接点をつくるため、一緒に野球を観に行くシークエンスだ。そこだけ主人公の頭は素早く回る。断じて怠惰ではない。フロイト曰く。「性衝動は自分が思っているよりもはるかに強い」しかし、主人公は失敗してしまう。

 『苦役列車』が優れているのは、もたざる者の声を代弁してるからではない。もたざる者が怠惰な海に心地よく浸ったときの苦境をあますところなく描いているからだ。

 それにしても、我々にしかわからない世界だ。よくぞ、選考委員の方々が推してくれたものだ。おかげで、怠惰なボクも西村賢太を知ることができた。その僥倖に深く感謝する。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.276
(3pt)

一気に読めて、読み返す

購入して一気に読みました。描写的に苦手な表現が所々見られましたが苦痛に感じ、本を閉じる程では無かったので一気に読みました。諸方が内容について詳しく述べているので割愛致しますが、もう一度じっくり読みなおしてみたいと思ったのが本音です。主人公の(多分著者ご本人)その日暮らしから小説を書くに至るまでの移行が余りに唐突で「え?!」頭の中に疑問符が散らばってしまいました。芥川賞を受けられた小説なので興味本位で手に取りましたが、「引き込まれた」等、読み終えた充足感は残りませんでした。もう一度じっくり読んでみようと思っています。自分の感想が変わる事を願って・・・
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.275
(5pt)

平成の純文学は、癒し効果も

芥川受賞、おめでとうございます!

純文学エンターテイメント部門、私小説!
いったん読み始めると病みつきになるのは、町田康以来かな。
エンターテイメント作家は危機感を持ちましょう。
人殺しも、衝撃の真相もないけれど、
こっちのほうがずっと面白いじゃん、という読者が急増するの、請け合いだもの。

平成の純文学は、面白いだけじゃない。現代人のだーい好きな、癒し効果もありますよ。
自分より駄目な奴がいる? いえ、いえ、その逆です。
だって今の若い人(中年も)たいへんでしょ。
英語喋ってコンピューターを使いこなせなきゃ、もう生きていけません。
いろいろなところから役立つ情報を忙しなく掻き集め、就活に婚活。
一方で、ゆるやかに衰退に向う日本国。
そのうちホワイトカラーもブルーカラーも、メタルカラーだって、海外出稼ぎですよ。
最高学府を出たって、国内だけで通用する学歴。欧米どころかアジアでだって、もう誰も感心しない。ブルーカラーの出稼ぎも、片道数千円の航空運賃でアジアのどこかの国へ行き、発展途上国からやってきた労働者に混じって、日本では考えられないような劣悪な労働環境で汗を流さなくちゃいけない日が、近い将来くるかもしれません。
そんな世の中で、西村賢太氏の小説は、不思議な癒しの力を持っているのではないかしら。
笑いながら、癒される。いいじゃないですか!

でも出版関係の方々は、喜んでばかりもいられませんよね。
だって、西村氏は作家になってからのことも、引き続き私小説として書き続けるでしょうから。
笑っていられるのも今のうちかもよん。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842