苦役列車

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評判

苦役列車の評価:

3.84/5点 レビュー 276件。 C ランク

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全554件 241〜260 13/28ページ
No.314
(3pt)

読後感が微妙です

今時の小説では珍しい強烈な私小説です。

貫太(西村)が青春時代を過ごした時と、40代になった貫太という2部構成で書かれています。
父が性犯罪者という世間に対する強い劣等感を貫太(西村)は持っており中卒、日雇い労働者、短気、所謂``ダメ人間``で
毎日を日雇いで食いぶちを繋ぎ、自らの人生を先が見えず、どこまでもレールが続く``苦役列車``と表現してます。

文才はあると思いました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.313
(5pt)

「自称」屑専用

「愛し合ってるかーーーーーーーーーーーーーい」
(回り)「yeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeah」
(おれとその他何人か)(愛し合ってなんかねーよ、クソが)
でも清志郎は好きです。

自分の西村体験。
芥川賞のテレビインタビューがネットで話題で(未見)興味が沸いて、文芸春秋201103を買ったまま積んでおいた。

昨日、夜やっと読みはじめて、22時頃「苦役列車」及びインタビュー、選評を読んだところで、近所のブックオフに他の作品を探しにいくもまったくなく、新刊書店で「暗渠の宿」を買って、菊正宗ピンを飲みながら「けがれなき酒のへど」を読んだ。

寝て起きた今も酔っぱらってて、ピンをちょこちょこ飲みつつこれを打ってるところ。

具体的なことを。
自分の少ない読書体験から引き合いを出すと、初期町田康(初期じゃなくても好きですが)、中島らも、ちょっと変化球だと吉村萬壱を集中的に読んだ人はすぐ読むべき。読むべし。
自分の多少多めなマンガ体験から引き合いを出すと、狩撫麻礼関係、いましろたかし、初期福満しげゆき(初期じゃなくても好きですが)、安達哲、古泉智浩なんか。
自分の多くもない映画体験から引き合いに出すと、ジョン・カサヴェテス、ショーン・ペン関係、山下敦弘、「全然大丈夫」の人、なんか。

これらにピクっときたら読むべき、読むべし。
自分は坪内祐三経由で川崎長太郎も読めるものは読みましたがあまりついていけず部分的にしか揺さぶられませんでした。
吉村萬壱も、この方も川崎長太郎が作品内に固有名詞として出てきますが、今現在(38歳、無職、居候、独り好きの寂しがりや)、屑が読むのは、屑が心揺さぶられる、すいません、「自称」屑の自分の心を揺さぶるのはこの人の文章です。

ひさしぶりです。
普段だったらブログに書く程度ですが、ここで屑どもにこれを読んでほしいからアマゾン書くと思い立った。酔っぱらってますが。

ぐっときました。笑いました。涙ぐみました。切なくなりました。
新刊(お布施)で買うのはいましろたかし先生ぐらいですが、この方の本もそういう気持ちにさせます、wikiみると。

とにかく最高ってことです。
若い人はあんまり読むべきじゃないかもしれない。やられちゃったら本当にやられちゃうから、そして、このやられちゃう感は歳くってからわかるものだから安易に手を出さないほうがいい。

自分にとっては芥川賞がはじめて有益になりました。まず単行本でお布施して、文芸春秋201103を探してください。「反石原」ですけど選評は読む価値あり。この人本読んでるんだなあと思った。あと、よかった選評は山田詠美、川上弘美、よくないけどこの人ならこういうだろうなっていうのが村上龍。

なんだかよくわかんなくなってきちゃった。

共感というか共鳴。
泣き笑いの最終形態。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.312
(4pt)

予想をいい意味で裏切ってくれた

中卒、友達がいない、風俗好き、短気、金がない

話題作でもあり、またTVでのインタビューを見て興味を持ち購入。

もっとおぞましく、最低な作品かと予想していたが、結構笑いながら3時間くらいで読み終えた。

話は中卒で学歴がなく、家賃も払えず転々として、日雇いのバイトに明け暮れる毎日。

ひたすら自分のコンプレックス(中卒など)をぐだぐだ語る内容。

これだけだどウ○コみたいな小説だとみんな思うかもしれないけど、なぜか?面白い。

特に笑ってしまったのは
.田舎者は世田谷、杉並に住もうとする(確かに、田舎ものはやたら住みたがるのは事実)
.友達の彼女に「こいつはおまけしてやってもせいぜい15点の女」
で、腹いせにその彼女をオ○ニーのオカズにして、オナ世界で犯す。
(しかし自分の父親が性犯罪者なので、処理後に心の中に激しい恐怖がわきあがってくる)

とんでもない最低の男だけど、まあ男ならオナ世界では自由だから良いと思うけどね。

スラスラ読めるし、オススメできるかも?
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.311
(4pt)

「暗いのだが、どこかポップ。それがおそらく作者の人柄」

すらすらと読めました。
ただし日本語の表現として分かりづらい文章(どうも間違っていない?)が
散見したのも気になりました。
(これは私の読み込みが足りないせいかな)

「こんな男が身近にいたら面倒だなあ」と思わせて時点で作者に軍配。
私小説作家ということで半自叙伝(?)なんですよね。
時代背景は昭和の終わりとのこと。
重たく暗い雰囲気が漂う中にもどこか陽気な明るさを感じさせるのは、
それはきっと作者の人柄なのではないでしょうか。

某インタビューで石田衣良さんは「純文学は自分の病気自慢」との節を
言っていましたが、まあ共感します。突き詰めればその通りの気がします。
でもこういう作品が嫌いじゃない自分もいるんですよ。

肌に合っている、そう感じながら読みふけりました。
これは恵まれた環境しか知らない人には共感しづらい感覚かもしれませんね。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.310
(4pt)

著者で読む

ついぞ芥川賞なるものには興味が無かったが、会見での「これから風俗に行くところだった・・・」やTV番組での「編集者は皆、敵です」等発言する著者の人柄?に興味を持ち、早速手にとって読んでみた。なるほど冒頭から「朝立ち」描写ではじまり、期待を裏切られなかったが、何と言おうか、中卒者の社会的地位の低さ・・・日雇い労働でのその日暮らし、その中での人との交友、ひと時の友情、ひがみ根性、望み薄い将来への不安・・・どちらかと言えば社会の「影」の部分を巧妙に描いているのだが、何故か悲壮感のような暗さはあまり感じられない作品。成功物語がある一方で、確実にある「苦役」話。大感動とも言えないが、決してつまらない作品ではなく、何か心に引っかる・・・と言った印象だ。太宰治ほどではないにしろ、こういう「暗い」作品には何故か人を惹き付ける魅力があるのだなあ・・・と、ただ、女性にはあまりウケないだろうな・・・という余計な心配もしてしまう一冊。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.309
(1pt)

「ダメさ」に期待したような迫力がない。

『苦役列車』は芥川賞を受賞した私小説作品で、エピソードはほとんど実話に近いらしい。父親が犯した性犯罪のおかげで学校には居場所がなく、中卒で東京に出て物流倉庫の日雇い仕事でその日暮らしを送り、カネも友達も女もなく、たまの風俗通いだけを楽しみに生きている19歳の少年が主人公。日雇いの仕事場に専門学校生で同い年の友達ができて、無二の親友のような付き合いが始まるかと思ったら、彼には親からの仕送りもあるし、友達もいるし、しまいには彼女もできるぐらいで、結局主人公とは棲む世界の違う恵まれた男として去ってゆく。
 本書には『苦役列車』と、売れない小説家が川端康成賞の候補に選ばれて云々という内容の『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』という短編が収録されている。

 作者の西村賢太氏については、芥川賞受賞のニュースとかを読んでる分には「あぁなんかちょっと面白そうな人」ぐらいには思ったし、「中卒」「性犯罪者の息子」「前科者」「友達いない」「風俗好き」等々というプロフィールは人目を引きます。そういう人が「自分のことしか書けない」と言って私小説を書き、賞を取ったと言うんで単行本を買いました。もちろんべつに芥川賞なんかに期待は全くしていない。だけどインタビューでしきりに風俗云々とかわけのわからんことを語っているのは、いったいどんな奴なんだろうと思って(笑)

 でも残念なことに作品自体は、上記のようなプロフィールとか受賞ニュースを読んで期待したほど凄惨でもないし滑稽でもなくて、はっきりいえば迫力ゼロですね。
 なんというか、もっぱら「ダメキャラ」だけをネタにしていながら、そのダメさが中途半端っていうのがさぶいです。著者はインタビュー等でもひたすら自分は「どうしようもない人間」「ダメな人間」だと言ってますが、その人生の「どうしようもなさ」の作り込みが小説中では大して徹底されてないんです。さほど「どうしようもなく」ない(笑)

 たとえば父の「性犯罪」とやらも、単に性犯罪と言われるだけで何が起きたのか語られない。想像しろと言われればいくらでも想像するけど、詩じゃないんだから、筆力でもって想像を絶する世界に読者を連れていくのが作家のつとめでしょう。
 「苦役」というけどその労働はたいして苦しそうに描かれてないし、貧乏生活も「家賃滞納で何度かアパートを追われた」というエピソードだけが繰り返し同じ言いまわして語られるだけです。また、風俗やオナニーをネタにして「ダメさ」を描きたいんでしょうが、まったく描写に滑稽味がなくて笑えないし。

 で、これがまだ20代なら「とんがった兄ちゃん」で済ませられるし、最初話を聞いた時は20代の作家だと勝手に思い込んでたんです。ところが実は43歳だったってのが・・・。たとえば著者は、親父が性犯罪者であるが故に背負った労苦というのを本作も含めて繰り返しネタにしてるようなのですが、そりゃそういう辛さはあっただろうし、それを小説に描いてくれても結構だけど、40代になってまで「父」の呪縛をネタにしてるってのはちょっと痛々しくないですか?
 逆に言うと、30年も引きずるような凄まじい経験なのであれば、徹底的に凄まじい筆致で描いてくれないと、読むにたえないです。

 ・・・と、いま書いていて分かりましたが、要するに「過ごした年月分の歳をとれてない大人の文章」という感じです。まったく作家には向いていないと思う。この著者の30年間は、小説を書くには余りにも「空っぽ」な30年間だったんでしょう。
 だったら逆にそれを生かして、べつに「貧乏」だとか「孤独」だとか、「風俗」だとか「親父の犯罪」だとかをネタにするんじゃなくて、その空っぽさを徹底的に自嘲するという「どうしようもない」作品を書いてくれたらいいんじゃないかと思いました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.308
(4pt)

意外な面白さ

悪く言ってしまえば延々と救いようのない話が続くだけ、なのですが
にもかかわらず意外にも面白く読めてしまう話でした。
表現がいいからかもしれません。

ただ、内容が内容なので、万人向けの話とはいえないでしょうし、
あるとき面白く読めても別なときに読むとまったくだめ、ということもあると思います。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.307
(5pt)

白木屋へいこう

下卑た感情表現が多いし、あまり触れられたくもないけど、
きっと誰にでもあてはまる欲望の動きが描かれてるんじゃないかなって思う。
(認めない人もいるかもしれないが)
こういう考えってよくないんだろうけど、労働階級をテーマにした小説を読むと生活のありがたみが増します。
小銭をもっていつでも立ち喰いそばに行ける喜びが再確認できます。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.306
(5pt)

魂のうめき…

この小説は俺そのものだ。バブル期に同じような挫折感を味わいながら生きていた若者達も今や立派な中年オヤジになった。なにも成功だけが人生ではない…成功しない奴は生きてちゃいけないのかい?結婚しない中年オヤジはキモイのかい?冗談じゃない…俺も人間だ。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.305
(5pt)

東京臨海副都心再開発の貴重な記録

芥川賞作品ということで、どうせつまらないだろうと偏見を持ってしまい、この作家の書いた全作品の最後に読むことになった。私も臨海副都心再開発時に、あの辺で働いていたので、殺伐とした工事現場の一日の終わりの広大な夕陽が思いだされた。最後に『苦役列車』を読むと若い男との友情が描かれていて新鮮な感じがした。まずあの巨大な工事現場を実際に見た者にしか書けない正確な風景描写に魅了された。いま女性だらけの東京臨海副都心は、かつては女性が存在しない場所だった。日雇労働者の拘束時間中の楽しみは、昼の弁当だけなのだ。いろいろ意見があると思うが、私にとっては結局『苦役列車』収録の二作品が、この作家の全作品の中でいちばん良かった。

「或いは貫多だけの感慨かも知れないが、鈍重なコンテナ車のみが行き交っている前途の展望には、まさに今、着々と地獄の一丁目に近づきつつある実感と云ったものを抱かされ、それが今更ながらにウンザリで、我知らず消極的な沈んだ気分になってきてしまう。
 そしていよいよ目的地が見えはじめ、最早覚悟も決め直して一寸窓からその方を眺めやれば、すでに倉庫の横手を流れる京浜運河には艀が停泊し、沿岸にクレーン車もスタンバイされた上で、陸の上では倉庫の社員たちが駆る数台のフォークリフトによって、パレットの準備も手際よく進められているようであった。」(18ページ)

この作品には、この作家の生い立ちの傷が、全作品の中で最も具体的に記されている。また日下部という精悍な男性に対して一方的に友情を求める喜劇的な描写が痛ましい。この作家の人間関係は、いつも相手に愛を求めすぎる結果、相手を逆恨みして破綻する。
『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』は、無名作家時代の名声へのあこがれが、あまりにも正直に描かれていて心を揺さぶる。

 最後に、この作家の自費出版である田中英光私研究7、8に収録された二作品について紹介したい。30歳になる前に書かれたものだが、スタイルはすでに完成されており、いずれも強い印象を残す佳品である。『室戸岬へ』当時傾倒していた田中英光の不明部分を調査するために室戸岬に行く話。まるで刑事のように生存者の聞き込みをするのだが、その前に酒場で偶然に出会った現地のグループの中の女性に勘違いの恋をする。『野狐忌』田中英光のためのたったひとりの『野狐忌』。青山の立山墓地、三鷹の禅林寺の墓参、世話になっていた二人への暴行事件が詳しく描かれている。知人の懇意にしていたホステスに火のついたたばこを投げるシーンが印象的だ。この二作を見ると、現在の藤澤清造へのこの作家の墓参が、田中英光を見習っていることがわかる。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.304
(4pt)

孤独感、虚無感だけではない何か

小説の内容からして、芥川賞を受賞していなければ、手に取ることのなかった本だと思います。

単純に言えば、父親が性犯罪者として逮捕されたところから、人生が大きく狂い、その遺伝子を継いでいるという引け目から、どんどん人生に消極的となり、孤独で怠惰な日常を送っている、そんな男の物語です。

これだけの内容であれば、途中でこの本を投げ出していたかも知れません。
でも、この本には、それだけではない魅力がありました。

この内容であれば、どうしようもない読後感を抱いても不思議はありません。
しかし、この本には、そんな悲惨な毎日を描いていながらどこか切迫感がありません。
それどころか、何か可笑しみと言うか、ちょっとした「余裕」の様なものを感じます。
それは、どうしようもない奴と言うイメージだけでない主人公の憎めなさに由来しているのかも知れません。

それでも、個人的には一緒に収録されている「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の方が、説得力を持って受け止めることが出来ました。
逆に言えば、表題作は余りに自分の人生とかけ離れているため、共感しにくい面があるからかも知れません。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.303
(5pt)

試しに読んでみてください

イヤー芥川賞受賞で初めて読みましたが、自分で書けない、触れられたくない部分をきれいな文体で書いてるさまは、素晴らしいですね
ある意味、感動しましたよ
朝、出勤中、電車の中で読むと何故か素直な気持ちになります

これを読むと、今回の大震災も乗り越えられるように思えます
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.302
(2pt)

内容的に読み進めるのが辛かった

何が彼をそうさせてしまうのだろう。中卒の自分を親や境遇のせいにした、落ちぶれ方といい、とても痛々しい小説。文体としては読み易くても内容的には読み進めるのは辛い。一般受けはしないだろう。 あと、地の文が文語調なのにもかかわらず、会話のなかでは「全然〜ない」の法則が守られていないのが気になった。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.301
(4pt)

爽快なる無頼派小説

芥川賞受賞作品として、掲載された文藝春秋誌上にて読む。
 著者の半生に基づく私小説ということだが、私が想像する私小説のイメージよりも、もっとカラッとした印象が強い。むしろ、劇画を読んでいるイメージに近いと思う。
 その日暮らしの日雇い労働に就く中卒の若者(『北町貫多』という命名自体が人を食っている)が、職場である港湾倉庫で知り合った同年代の専門学校生との友情に破れ、尚且つ暴行事件を起こし日雇いの職場をも追われる身と成り下がる顛末が綴られるのだが、かなり悲惨なその境遇を語る著者の筆致がとてもテンポがよくかつ客観的でもあり、主人公の犯す愚行の数々が、いじましいと言うよりもむしろ痛快であり、その無頼派ぶりには爽快感すら抱かされる。
 著者が私淑したという藤澤清造らの文体の影響か、漢語を多用したり、古風な言い回しを用いたりしているが、それがむしろ潔くかつ新鮮に思われ、見事に文体として小説の枠組みを支えている(小説を書くとき、英語での表現を意識して文章を書くという村上春樹氏と、何億光年も遠い存在であることか)。
 また、登場人物も適度に戯画化して描かれており、客観的で、しっかりとした足腰の強い小説世界の構築に寄与している。
 何はともあれ、芥川賞小説がこんなに面白くて良いのだろうか?(実は、同時受賞の『きことは』は、著者の優れた才能を大いに認めるものの、正直読みながら何度も居眠りしてしまった)。
 行く行くは性犯罪を犯したと言う実父を主人公にした作品も手がけるとのことであり、文学としての出来不出来なぞは兎も角、早くその作品を読みたいとものだと今から楽しみに思った次第である(H23.3.27).
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.300
(4pt)

黒々とした光

多くの人がこの小説を読んで主人公の貫多に自分自身と重ね合わせてある不思議な満足感と共感を得たのではないでしょうか。ひとの心の奥底にひそむ黒っぽいドロドロとした何かがこの作品には表現されています。最近の芥川賞がいかにも優等生的な作品や人気集めとも疑われかねない美人女流作家の受賞が続いた中でこのような作品が受賞作となったことは正直胸のすくような気持がしました。人生の中ですべての人が一度は乗車する苦役列車に一生乗り続ける貫多は黒々とした力強い光線を放っています。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.299
(4pt)

芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のようだ

芥川賞を受賞した表題作は、4帖半一間1万5千円のその日暮らしの若者が日当5500円の肉体労働にいやいや従事してやさぐれ、世間の成功者を妬み嫉み、そして鬱屈し、自涜し、たまに糞袋に精を遣りにいって身も世も呪いつつ自滅していく話で、底なしの自虐がいっそ心地よい60年代にはよくあった青春をコピーした私小説でどうということもないが、冒頭に「嚢時」なる旧弊の漢字をあえて使用したところに、著者の傲岸不遜さとあえかな矜持があらわれていると読んだは当方の僻目か。

そのようにいくぶん恰好をつけて書かれた「苦役列車」に比べると、同じ書物の後半にグリコのおまけのように収められた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、著者のやけくその捨て身の私小説家魂が赤裸々に叩きつけられていて、妙に胸をつかれる箇所がある。

「彼は文名を上げたかった。(中略)名声を得たなら、彼を裏切り別の男に去っていった女のことも、たっぷりと後悔さしてやれる。自分の方がはるかに価値ある男だと云う事実を思い知らしてやるのだ」

「後悔させて」ではなく、「後悔さして」であり、「知らせてやる」ではなく「知らししてやる」と書いてしまうところに、この人の本質がある。さうしてインテリげんちゃんならそう思っても絶対に書かないほんとうの本音を、この人はまるで芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のように、マジで書いてしまうのだ。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.298
(3pt)

ごく普通。

主人公 の貫多が、西村氏なんだろうけれど。芥川賞受賞作の「苦役列車」、社会に対する反発、燃え盛るようなマグマのようなものを期待して読んだんだけれど、単に普通の、今まで自分はこのような生活をしていましたといった、そんな感じに終始一環。逆に、西村氏のみが発せるような熱い、社会に対する憤懣を猛然と書き綴ってほしかった。友達もいない、小説に没頭し、ものすごいコンプレックスの塊のような描写が数多くあります。辛い過去に反発し活字に没頭のようです。但し、芥川賞受賞作家として、今後文壇で活躍するには、この手の私小説以外に、もっと柔軟に幅広い作風を描けないと辛いと思いますよ。現状では次作を読んでみたいとは、正直思いませんでした。申し訳ございません。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.297
(3pt)

“売り”っぽいのが、やだな。

芥川賞らしいと言えば、そうだけど、
楽しめる文学でもない。

私小説であることを強調し、
それを売りにしているように思うのだが、
どうも、その辺が、僕には合わない。

もちろん赤裸々な告白とも受け取れるが、
一方では小説、物語でもある。
もう少し、
主人公が憎めない感じがあれば、良いのだが、
リアルであれば、それで良い、というものでもないだろう。

あとは、好みですね。
う〜ん、僕は、またほかの作品を読みたい、とは思えなかったなぁ。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.296
(3pt)

現代に合っている

読んでいて気持ちのよくなる小説ではない。
どこか『蟹工船』のような、表舞台にはあらわれない、最下層生活者の闇をえぐる、痛烈な作風だと思う。
舞台設定は昭和の終わりでも、ネオン街の裏でホームレスが横たわる、今の「格差」時代に非常にマッチしている。

そしてまた別に感じたことは、文章の書き方も、内容も、とても、男っぽいということ。
私は女性読者なので、作中にときどき現れる男性視点の女性の見方や、即物的な性表現に少し拒否感があった。
でもそれは、この作者が執拗なまでに、普通は人に見せたがらないような主人公の赤裸々な「生」を、痛みを伴いながら
正直にえぐりだした結果だと思う。
主人公は、女性から見れば絶対につきあいたくないタイプの、「不潔・性欲の塊・金がない・学歴がない・ひがみが強い」
という何拍子もそろった筋金入りの落ちこぼれだ。
自ら下層にいることを認識しながら、それでもねじれたプライドだけは卑しく持ち続けている男の、
目をそらしたくなるような、よこしまで醜い感情をそのままぶちまけている。
読めば読むほど苦しいし、報われない感情がつらい小説だ。
それでも、最終的には非現実的な大成功をおさめたり、最終的には女にもてたり、金をもうけたりするような、
「きれいな」内容でないことに、この小説の最大の魅力を感じる。
日常は、茫々と、続いていく。

多くの人の読書傾向に触れる仕事をしているが、きれいで、ハッピーな小説を求める人が本当に多い。
でも、それは、現実逃避だったり、思考停止だったり、成功した人間しか見ない、認めないという勝ち組思考に
即したもののようにも思う。

その面では、こうやって、人間の心の闇を正直に見つめたような作品は、受け入れられにくいだろうが、
現代にとって必要な本だと思うし、たくさんの人に読んでほしいと思う。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842
No.295
(3pt)

悪くはないけど…

悪くはありませんが、取り立てて秀作とも思えません。
学歴も資格も金も覇気もない主人公の澱んだ日常を描いています。
日雇い労働の現場やら自堕落な生活ぶりはよく分かるのですが、共感はしにくい。「自分のことが書かれている」と読者に思わせるのが良い小説の条件のひとつだとすれば、この主人公にそう感じる人はかなり少数派では?
もっとも、作者は「自分よりダメな人間がいると読者に思ってもらいたい」と話していました。もちろんそうは思いますが、そんな優越感に浸りたい読者ってどのぐらいいるんでしょう?
一連の出来事を通して主人公の内面などに変化が出れば面白いのでしょうが、ひたすらダメ男のまま。言葉遣いも奇妙に古臭く、違和感がありました。
苦役列車 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 苦役列車 (新潮文庫)より
4101312842