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涅槃
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涅槃の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.34pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全44件 41~44 3/3ページ
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垣根涼介の新作のレビューである。垣根涼介作品は、「光秀の定理」(角川書店、2013年)、「室町無頼」(新潮社、2016年)、「信長の原理」(KADOKAWA、2018年)と、歴史小説については全て読んできていて、書架に並べている(垣根涼介のミステリーは読んだことはない)。特に「室町無頼」は、室町期、応仁の乱の頃の荒廃した時代風景や心象風景を、見事に小説世界に昇華させた作品であり、他の歴史小説(例えば、木下昌輝「まむし三代記」朝日新聞出版、2020年)にも影響を与えているのではないか、と勝手に想像している。全く異質の歴史小説で、ユニークさが際立っている。 この新作「涅槃」は、梟雄と言われる宇喜多直家の一生を描く、上下2巻で900ページ超の大作である。もともと一城の主だった宇喜多家は、主家である浦上家の策謀により攻撃を受けて、直家(幼名、八郎)の祖父は自死し、一家は城から逃亡して、流浪の身となる。鞆の津に隠れていた一家は、備前福岡の商人である阿部善定の申し出により、福岡の阿部の自邸に匿われることとなる。福岡という商業都市のなかで直家は、商業の仕組みや重要性を学び育ち、商人になることを夢みる。しかし、母の尽力により、武家として浦上家に再び仕えることとなり、武功をあげて、小さな城持ちになる。商業的な経営の才能を発揮し、臣下を大事にして、宇喜多家の勢力は徐々に拡大する。やがて、大量の菜種油と鉄砲が時代の進行を加速して、群雄割拠の各地域が急速に統一されていく(時代の進行が加速していく描き方は、実に素晴らしい)。東には織田家が圧倒的な力で台頭し、西には毛利家が台頭する。その狭間で、直家は、ある時は織田方につき、ある時は毛利方について、ついに浦上家を滅ぼし、備前と美作を領有する五十万石の大身となる。また、岡山城を、武士と商人が融合する城下町として整備する。そして、ついに病を患い、黒田満隆の説得により、宇喜多家の命運を、織田信長の麾下にある羽柴秀吉に預ける。 物語のあらすじはこのようなところであり、以下、2つの点について感想を書いてみたい。 一つは、梟雄の描き方についてである。戦国期の梟雄と言えば、斎藤道三、松永久秀、宇喜多直家というところであろうか。仮に、梟雄をその残忍性だけを際立たせて描くと、なぜ多くの臣下が忠誠を誓ったのか、ということがわからなくなる。つまり、梟雄にも、多くの人を惹きつける人間的な魅力があったはずだ。かと言って、司馬遼太郎が「国盗り物語」(新潮文庫)で描いた颯爽とした斎藤道三や、あるいは今村翔吾が「じんかん」(講談社、2020年)で描いた正義感溢れる松永久秀であると、梟雄の持つリアリズムが薄れてしまう。垣根涼介が描く宇喜多直家は、司馬や今村よりも複雑な造形をしていて、人見知りで猜疑心が強い一方、部下を信頼し、また武家であるにもかかわらず、武力には自信がなく、人を沢山殺めるのは好まず、商業的合理性を貫いている。こうした造形により一貫した人物像になっているが、もう少し矛盾した性格にすれば、もっと奥行きが出るのではないか、と思ったりもした。この物語を読み終えて、私はいま、もっと複雑な矛盾を抱えた梟雄の物語に出会いたいと思うに至っている(なお、司馬遼太郎「国盗り物語」に対する印象は、随分前に読んだから、不正確かもしれない。機会があれば、もう一度読んでみよう)。 もう一つ、感想を書いておきたいことは、第二章で描かれた、濃密な春画を見るような、長い詳細な性描写についてである。読みながら、カンヌでパルム・ドールを受賞した映画『アデル、ブルーは熱い色』(2013年、フランス)を思い出した。あまりにも濃密すぎて、持て余してしまったのである。このような性描写をした理由として考えられることは、後に政略結婚をした妻の奈美や娘たちに対して、なぜ直家の愛情が薄かったかの説明にもなっているし、そして再婚のお福を最愛の妻として愛した説明にもなっているし、さらに、人生の最後になって、最初に愛した紗代の言葉を反芻する布石にもなっている。決して性描写が不要だと言っているわけではないが、作者の作為をあまりにも感じる描き方であり、私は懐疑的というより、否定的である。もう少し別な描きようがあったのではないだろうか。 以上のような留保を付けたが、それでも、この長い物語は淀みなく流れていき、そして最後のページに辿り着いたときの読了感は実に素晴らしい。そして、宇喜多直家が統一した岡山という土地を歩いてみたくなった。評価は「最優秀の作品」の☆5つとした。これは私の書いた30番目のレビューである。2021年10月12日読了。 | ||||
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宇喜多直家の梟雄ぶりがどう描かれるのかと思って読みましたが、人物像は、「信長の原理」の信長から、人事面での超合理主義を取り除いた感じで、作者の訴えたい価値観みたいのものは「信長の原理」と共通し、やや目新しさに欠ける印象。 そうすると、直家は極めて好人物、ある種のヒーローっぽくなっていて(家臣の信望も厚い)、ちょっとご都合主義的な主人公になってしまっている。 また、「信長の原理」のストーリー(歴史上の出来事)が、信長自身やその家臣という身内視線ではなく客観的な第三者の視点から描かれているので、「信長の原理」を読んでからの方が楽しめると思う。 セックスの描写にこれほどのページ数を割くのは謎(笑)。 一気読みしたほどなので無論面白ったのですが、信長のやりきれなさを描いた前作と比べると、新鮮味というか面白さにやや欠けてしまいます。 とはいえ、良作です。 | ||||
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初めて読んだワイルドソウルから、ずっと好きな作家。昔の作品もまた読み返したくなった。 | ||||
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この作者の歴史物は面白い。上巻を読み終え、下巻の発売はいつかとアマゾン見たらすでに出ていたので、速攻購入。上巻夜半過ぎまでで読了。下巻は朝から読み始め、夕食前までに一気読み。本は毎日の様に読んでいるが、久しぶりに読み応えのある物語であった。上下巻ともkindleで購入。 | ||||
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