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アンダークラス



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アンダークラス

アンダークラスの評価: 4.19/5点 レビュー 26件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.19pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(3pt)

テーマが平凡(TVニュース・新聞を視聴・購読している日本人なら周知)な上に、ドキュメンタリーの様で警察小説としての練りが足りない凡作

捜査一課の窓際刑事の田川を主人公とした社会派警察小説。<underclass>という題名から下層階級の人々をテーマとしている事が窺える。まず、プロローグで介護施設に住む藤井詩子とベトナム人介護士のアインが紹介される。キャリア警視の樫山順子に畑違いの人探しを頼まれるのが物語の発端で、対象者はアインだと言う。そして、どうやら、外資系大手通販企業も焦点としているらしく、海外大手通販企業<サバンナ>の日本支社の幹部の山本及びその秘書兼愛人の中村の模様がカットバックで描写される。

人探しの件はアッサリと解決されてしまう。藤井の自殺幇助罪でアインが秋田で逮捕されたからである。ここで、田川が樫山と一緒に秋田へと出向く心理が理解不能だが、テーマ上止むを得ないという事だろう。ともかく、田川は自殺幇助ではなく、アインに依る殺害を示唆する。更に、田川は樫山と一緒に藤井の若い頃の奉公先(「女工哀史」の様)がある(アインがかつて技能実習生として働いたブラック企業もある)神戸へと飛び、六甲山に眼を付ける(神戸の山側は金持ちが住む)と共に、外国人技能実習生(あるいは女工)の苛酷な実態を目の当たりにして怒りを覚える。そして、これが少子高齢化が進む"日本の歪んだ構造"が生み出した経済事情に依るものである事を浮き彫りにする。結局、経済格差(の中で上流以外に居る方々)、外資系大手通販企業の苛酷なノルマ主義・AIP(首切りプログラム)が本作のテーマなのだろう。また、樫山と中村との間には確執があり、察するに<サバンナ>の顧客データ中の藤井のものが<サバンナ>にとって危険という事か(これが当たってしまうという安直さ)。加えて、山本を暗にスティーブ・ジョブズに准えている点も如何なものか。「藤井・アイン→ブラック企業→<サバンナ>」の繋がりを明記しているかの様。まあ、アインの悲哀を映し出してはいるが意外性は無い。

"メモ魔"で現場を良く知るベテラン刑事の田川の造形及び中村の悪女振りが際立つだけ。テーマが平凡(TVニュース・新聞を視聴・購読している日本人なら周知)な上に、ドキュメンタリーの様で警察小説としての練りが足りない凡作だと思った。
アンダークラスAmazon書評・レビュー:アンダークラスより
4093865973
No.3:
(3pt)

程々に楽しみました

多分、氏の著作は初読←作家名を意識しないで読んでるかも知れない
ん~…田川は今どき事情を知らなすぎないか?ついでに度々義憤にかられるのは良いんだが、「世間知らず」っぷりが、いい歳して刑事やってて、何でそんなに知らないの?と。
殺人だと判断した気付きが「手」ねえ…?覚悟の自死だからと言って、痛かったり苦しかったり冷たかったりしない訳じゃないから、溺死で大人しく手を添える死体ってあるんだろうか?と、初っ端から疑問を持ってしまった
ちなみに新聞奨学生は大変にキツイが、やり上げた人は評価される。そして通常そのキツさは体力と時間やりくり的な事であって「扱い」や「搾取」の話じゃない気がする…安藤何歳設定よ?
中村喋り過ぎ。周到に保険かけられるタイプが、言質とられる様なマネしないよ。「上司」であり「愛人」だから言われた通りにしてしまった。と、しらっとする方が自然な気がする。少なくともこの時点で種明かしはしないと思う
自分が藤井ならおかしな労働環境を是正するために動くと同時に、アインの為に相手から金品取る最大限の努力をするがなあ
自分は生まれも育ちも「海側」だから、金にキレイも汚いもない。金は金だ。と思う。なんやかや言って田川も樫山も「山側」なのね。という気がした
顔認証システムって恐ろしいな…人の目で判断できなくても、システムが判断すりゃ「本人」にされてしまうのか…初期のDNA鑑定のいい加減さを思うと背筋寒くなったりする
単に自分は作風に合わないんだろう
エピローグだけが気持ちよかった
アンダークラスAmazon書評・レビュー:アンダークラスより
4093865973
No.2:
(3pt)

マクロとミクロのアンダークラス視点

様々な登場人物の個人視点としてのアンダークラス、また国家間の相対的地位におけるアンダークラスの両輪を軸として、現状の日本を描いた意欲作といえるでしょう。そのこだわりが物語自体を「読ませる」ことに繋がっています。ただ、アンダークラスにこだわるあまり、不自然な登場人物のやりとりや展開が散見され、「魅せる」には足枷になってしまっている点が残念でした。
アンダークラスAmazon書評・レビュー:アンダークラスより
4093865973
No.1:
(3pt)

結局、どんな社会をお望みで?

田川警部補シリーズの3作目。1作目『震える牛』が食品流通裏話のような装いを持ちつつエンターテインメント性を前面に出してたのに、2作目『ガラパゴス』で派遣労働、そして今作『アンダークラス』は巨大プラットフォーマー(誰が見ても “アマゾン”)と外国人技能実習制度を素材に、だんだん社会批判の匂いが強くなってきた。通信社の経済部記者上がりの地金がついつい出るのかな?
ミステリとしての面白さは中の上くらい。それよりも主人公以下、登場人物が揃って力みかえって “正義” を語る辺りがやや興醒めである。そういうのは行間で語ってもらって、本体はエンターテインメントに徹して欲しいな。
本作で語られている内容は、経済紙誌を読んでいる者にとっては殊更目新しいことではない。「リアル店舗を駆逐する」と豪語する世界的E-コマース企業が持つとてつもない影響力も、ギグワーカーや現代の奴隷制のような技能実習制度の暗部も。本作の犯人は、エリートの地位を失って下層階級に転落することを怖れ、殺人を犯す。自分が彼の立場だったら、やはり同じようにするだろうと思う。そんな彼を田川警部補は糾弾するのだが、ではどんな社会がお望みなのだ?
昭和の終わり頃から、わが国では流通業界の非効率さ(問屋・卸のあり方など)がやり玉に挙げられ、”中抜き” という言葉が流行った。それで中間マージンがなくなり、個人商店もなくなり、E-コマースだけになったら、これは確かに最安の仕組みなんじゃないのか? 技能実習制度も新聞奨学生制度も噴飯的な代物ではある。でも低賃金しか出せない職場に代わって誰が行く? 菅首相のブレーンとされるデービッド・アトキンソン氏は「日本の中小企業の生産性は低過ぎる。もっと企業の新陳代謝を進めるべきだ」と云う。ゾンビ企業はさっさと退場させたとして、そこで働く労働者をどうするのか? 新しいスキルなんてそうそう身につくわけもない。
本作のなかで「日本は既に貧乏な国だ。これからもっと貧乏になる」と語られる。その通りだろう。
皆が誇りを持って仕事ができて、十分な収入を貰えて、なお且つ生活は一層便利に…って、そんな魔法のような政策はないよ。敢えて考えるとシンガポールがそれに一番近い気もするが、かなり窮屈な社会らしいぞ。結局、非効率に目を瞑って、なくてもいい仕事・なくてもいい企業を残し、なんとか失業率を上げずに騙し騙しやり過ごしてきた30年の結果が今の日本だ。
ついでに、本作において犯人の行跡を辿る警察の捜査過程で監視カメラと顔貌認識ソフトが絶大な威力を発揮している。監視社会の一里塚はこんなところにありそうだが(中国はもっと凄い)、著者はそれに対してひと言ないのかね。
「仕事を選んで頑張れば下層になんか落ちない」といったことを物語終盤で田川警部補は云うけど、そんなわけなかろうよ。社会批判も結構だが、あまり空疎なことは云わない方がよい。
アンダークラスAmazon書評・レビュー:アンダークラスより
4093865973

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