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(短編集)

インスマスの影: クトゥルー神話傑作選



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【この小説が収録されている参考書籍】
インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

インスマスの影: クトゥルー神話傑作選の評価: 3.95/5点 レビュー 22件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.95pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

些細なことで独自性を主張する愚

「ラヴクラフトならこれ」という作品が並んで、作品のチョイスに異論のある人は殆どいないだろう。「インスマスの影」を初めて読んだときは、確かにちと怖かった。気味の悪さでそれに次ぐのが「闇にささやくもの」。
にも拘わらず星3つにしたのは、邪神や架空の地名・書名の訳語に不満があるから。
訳者自身もそんな意見が出るのは先刻承知で、訳者解説のなかでわざわざ紙幅を割き、これまで一般化してきた読み方は「アルファベットの綴りが持っていた視覚的効果、すなわち怪異な感じや異国的、異世界的な感じなどがごっそりこそげ落ちてしまう不都合がある」と記している。考え方として一概に否定はできないにしろ、そんなにこだわるべきところか? と思う。クトゥルー物に数多の翻訳作を持つ先達・大瀧啓裕の訳語を踏襲しておけばよいだろう。些細なことで独自性を主張するのは愚かだ。

2019/8/2追記
上記のレビューは些か抽象的過ぎ、根拠も示さず悪口を云っているように見られかねないので、本書の訳文について追記しておく。以下、例示。
まずは、「ふんぐるい~」から始まるクトゥルー教団の詠唱句から。
原典の英文は ”In his house at R'lyeh dead Cthulhu waits dreaming.”
[既訳] 死せるクトゥルー、ルルイエの館にて夢見るままに待ちいたり
[本書] ル・リエーなる館にて、死せるクトゥルーは夢見て待つ

次いで『ネクロノミコン』の有名な一節。
“That is not dead which can eternal lie. And with strange aeons even death may die.”
[既訳] そは永久(とこしえ)に横たわる死者にあらねど、測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの
[本書] 永遠(とこしえ)に寝(いぬ)るものは死せるにあらず、奇しき永劫ののちには死もまた死すべし

インスマス譚に登場する半人半魚の異形のもの。
“the deep ones”
[既訳] 深きものども
[本書] 深海のものら

「先人の訳業をそのままパクるのもはばかられるし」というので苦心したのかも知れないし、むしろ原文に忠実でもあるだろうが、どちらが作品の雰囲気によりマッチしているかの話だ。少なくとも、私は断然既訳の方を推す。
それ以外の文章も全体として生硬いひと昔前の翻訳という感じで、大瀧啓裕らの手練の文体にはるかに及ばないと思う。さらに、”Pnakotic manuscripts (ナコト写本)” を「プナコトゥス写本」とするのは、英語読みの基本からしておかしいだろう。
インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)より
4102401415

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