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罪と罰



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罪と罰の評価: 4.33/5点 レビュー 440件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.33pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全369件 341~360 18/19ページ
No.29:
(5pt)

様々な要素をもった作品

ドストエフスキーというとなんだか暗い感じがするかもしれないし、その量からしてもなかなか読む気になれないかもしれない。でも、ドストエフスキーとか世界の名著とかっていうブランドを抜きにして、この本は単純に面白いです。あとがきにも書いてあるが、この本は色んな要素をもっている。殺人犯ラスコーリニコフが次第に追い詰められていく推理小説でもあるし、ソ―ニャとラスコーリニコフの信仰の対決と彼らの愛の小説でもある。家族の絆を描いている小説でもあるし、友情や道徳を描いている小説でもある。色んな読み方ができるので、何度読んでも飽きないと思います。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.28:
(5pt)

世界の名著、これは読むしかありません

この大作をどう攻略するかに絞って申しあげましょう。若者の読書離れが指摘されて久しい昨今、長編「罪と罰」を読もうと決意されただけでも立派です。当然ながら出来るだけ若い頃に挑戦して欲しいです、時間がたっぷりある時に。一気に読んでしまうことです。一日くらいのブランクはいいとして一週間も開けてしまうと、もう戦意は喪失したも同然。挫折してしまいます。次に、登場人物がやたら多いので読み進めていくうちにどんな人物だったか忘れてしまいます。そこで私は登場人物一覧表を作りました。登場したページも記入しておきます。そうしておくと再度その人物が現れても一覧表を参照にして元のページに戻って記憶を回復できます。私くらいの年齢になりますと次々に読まなければならない本が出てきて、なかなか読み返すことが出来ません。ですから学生時代に少なくとも二回は読破しようと決めて挑戦なさって下さい。これを読んだか、はなから無視してしまうのとでは、その後にわたって読書に旺盛な意欲を持ちえるか否かの大きな差となって現れます。所詮コミック文庫しか相手にしない人なら本書「罪と罰」なんて検索しないでしょうね。ご健闘をお祈りします。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.27:
(5pt)

ロシアの文豪が生んだ永遠の「青春小説」

ドストエフスキーの作品で一番最初に紐解かれるのがおそらく本書だろう。確かに犯罪小説であるが、後期の作品に比べれば、それほど深刻な話ではないと思う。結局ラスコーリニコフは罪を認めるし、一緒にシベリアについて行くソーニャとの未来には希望がある。スヴィドリガイロフの毒牙から守るべく殺人を決意した動機となった主人公の妹ドゥーニャと親友ラズミーヒンの仲もうまくいく方向で書かれている。愛娘ソーニャを娼婦にしなければならなかったマルメラードフの苦悩と愛情には胸を打つものがある。この作品には人間愛が溢れている。ラスコーリニコフの老婆殺害に目を向けがちであるが、この作品の細部に込めた文豪の人間に対する確固たる信頼にも気を配りたい。まさに文豪が生んだ「青春小説」である。ちなみに新潮選書の江川卓氏の『謎解き「罪と罰」』はロシア語で書かれた本書のをさらに深く読むのに役立つコメンタールであるから、ぜひ併読されたい。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.26:
(5pt)

繰り返し読みたい作品

ラスコリーニコフは何故、高利貸は有害な職業なので、その職業の者は殺してしまっても罪にならないと考えたのか。それは、当時のヨーロッパ社会では高利貸は禁じられた職業だったのです。ですが、それは「人間」は就いてはならない職業であるから、ユダヤ人は人間ではないので高利貸になっても構わないと言う高利貸に対する非ユダヤ人のユダヤ人に対する意識が根底にあります。ここのところを知らないまま読むのと知って読むのとではこの作品との付き合い方が変わってきます。ただ、非ユダヤ人がユダヤ人の高利貸から金を借りることは合法でした。年齢を重ねるごとにこの作品の持つ意味は私の中で大きくなりそうです。繰り返し読んで人生の肥やしにしたいです。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.25:
(5pt)

思い出の作品なので。

ドストエフスキーを読み始めるきっかけとなった本。わたしの中でこの作品より上をいくものは今のところないですね。読み始めた頃はなんだか分厚いし、哲学書のように難しい本だろうな、と勝手に思っていたのですが、意外と普通の小説のようにスラスラ読めました。主人公の頭のきれるところ。ソーニャの生き方。二人の関係について深く興味を持った作品です。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.24:
(4pt)

自負あればよまねば

「選ばれし者は、~~しても許される」という思想に傾倒する青年の苦悩。手垢に塗れた本ではある文学といえば、ドストエフスキーが有名だが、その中でも有名な「罪と罰」だからこそ、やはり、読んでおくべきであろう。苦悩、恋愛、挫折など生を余すことなく描ききり、かなりのボリュームだが一気に読んでしまう。圧巻。クライマックス、最後の最後でのラスコリーニコフの「たった7年」というセリフには、個人的には、感涙した勢い余ってサンクトペテルブルグまで行って、彼の家まで行った。それほど、パワーのある本である
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.23:
(5pt)

「聖」と「俗」の見事な大逆転

将来英雄になるであろう非凡な人間は、それが英雄となるために避けられぬことであるならば、社会に有益でない人間を殺めても、許される。ナポレオンに心酔する主人公は、自ら築いたこの理論をもとに、高利貸しの老婆、さらには何の罪もないその妹までも惨殺してしまいます。たしかに歴史を紐解いてみても、ナポレオンのみならず、三国志の曹操や日本の織田信長の例もあるように、既成の概念を打ち破る人間とは、とかく他人の血を流すことを躊躇いません。これら負の英雄像を、チャップリンが映画「殺人狂時代」において、「ひとり殺せば悪党で、100万人だと英雄だ」と大いに皮肉ったことはあまりに有名です。主人公は、第一の殺人でいきなり精神的な行き詰まりに陥り、「英雄」となる前に平凡な「悪党」で終わることを恐れ、苦しむ。本書の大部分はこの非凡と平凡の狭間で揺れる主人公の心の葛藤で構成されています。この物語をいかに捉えるかは、読み手によって千差万別でしょう。私はシンプルに「愛の物語」と捉えています。なぜなら、上記の理論は彼を支える信念であっても、殺人の動機ではないと考えるからです。生活に苦しむ自分のため、富豪との愛のない結婚へ望もうとしている(と主人公は思い込んでいる)妹への愛。そして無力な自己への怒り。それらが相まって彼を殺人へ駆り立てたのではないでしょうか。しかし、平凡な人間に殺人は大事業です。それを完遂するための心の拠り所として、かの英雄論が浮かび上がってくるのです。が、すべからく英雄とは唯一無二のもの。他者を模範に英雄たらんと望む時点で、すでに彼は英雄の資格を失っており、自己の空想の中での「聖」の立場から、現実としての「俗」へ転落します。そんな敗者を救うのが、薄幸の娼婦という「俗」の象徴たるソーニャからの一点の曇りもない愛である、という点こそ、この物語の妙でしょう。主人公とソーニャだけではありません。帝政ロシア時代の輝ける首都サンクトペテルブルクは陰惨で気だるい空気に包まれ、その反面、最後の舞台であるシベリアの流刑地は、陽光の眩しい、さながら楽園のような場所。「聖」も「俗」も人間が作り出したものある以上、人間の意志ひとつでどちらにでも転じてしまえることを、この作品から強く感じることができます。多少取っ付きにくい文体ではありますが、読めば必ず得るもののある一冊です。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.22:
(4pt)

凄いパワー

世界文学と聞くと、とっつきにくくて苦手という人は、何気にこの作品から入ってもいいかも知れません。長さも丁度いいと個人的には思います。集中力のない私でも毎日読むことができました。徹夜で夢中で読んでしまう人もいることでしょう。タイトルも良いですね。罪とは何か、罰とは何ぞや?誰もが考えてしまう命題ですね。私はやはり愛によって人は新生することができるのだと思いました。物語の後も主人公は献身的行為をし続けていかなくてはならない、苦悩はなおも続いていくでしょうが、それでも最後の救いは感動です。特に現代の日本人にはこういう本が必要なのかも知れません。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.21:
(5pt)

不朽の名作

人間は社会との関わりの中で生きていかざるを得ない。自己と世界の関係を徹底的に見つめなおし、人間の真の尊厳のありかを探った不朽の大傑作。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.20:
(5pt)

ここまで深いとは・・・愛の小説

帝政ロシアの都、ぺテルスブルグに住む、大学生ラスコリーニコフは、赤貧で孤独でした。
彼は食べ物にさえ事欠き、「優秀な者は愚劣な者を殺してもかまわない」という
彼独自の論理で、高利貸しの老婆を殺し、金庫の金を奪います。
ところが、そのとき偶然居合わせた、何の咎もない老婆の妹を殺したことに、悩みだします。
下等官吏の娘ソーニャは、継母に強いられて、家庭のために街で体を売っていました。
でも、ソーニャは神への信仰を忘れてはいませんでした。
ラスコリーニコフから罪の告白を受けると、ソーニャは言います。
「十字路の真ん中に立って、ひざまずいて口付けしなさい。そして、神に自分が
人を殺した事を告白しなさい。」
ラスコリーニコフは、十字路の真ん中で、土にキスそします。
見ていた人々は、「気が狂っている」「彼は、聖なるぺテルスブルグに感謝しているのだ」
と大笑いします。
ラスコリーニコフは言います。「私は、人を、殺しました」
彼の告白を陰で聞いていたソーニャ。
ラスコリーニコフは警察に自首して、シベリア流刑になります。
シベリア行きの列車には、ラスコリーニコフと一生をともにしようと決意した
ソーニャが乗っていました。
男の魂を救う売春婦ソーニャ。この小説は二人の愛の小説です。
罪と罰〈上〉 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰〈上〉 (岩波文庫)より
4003261356
No.19:
(5pt)

強烈過ぎる個性

『カラマーゾフ』と言い、ドストエフスキーの凄いところは、よくこんな人物を描けるなあと思わせる特異な人物を登場させる点です。彼らは似たり寄ったりではなく、実に強烈な個性を発揮しています。他の文豪、たとえばトルストイでは描けないような‘アク’の強いキラクターが生み出され、しかも重要な役回りを果たしています。社会の底辺に這いつくばって(あるいは迫害され)、生きる智恵を絞る民衆を描かせたらドストエフスキーの右に出る作家はいないでしょう。かと言ってそれだけではなく、地位や教養の高い人物も必ず登場していて(これもまた個性豊かで)、その接点や対比などがじつに面白く描かれています。漱石なども私の好きな作家なのですが、登場人物が全体的に知的レベルが高すぎるきらいがあります。あらためて話の内容については述べませんが、「読んで後悔しない名作」であることには間違いありません。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.18:
(5pt)

恐れながら……

ウラジミール・ナボコフに言わせるとドストエフスキーは「二流の作家」とのことである。思想的な側面を重視せず、美学的な側面に対して高い価値を置くナボコフらしい言い様である。まあ、ごみくず同然に扱われてるゴーリキーよりはましなんだけど。実はこの私、ナボコフの考えに結構賛同する所が多く、実は大上段に「思想を語る」小説は苦手だったりする。当然、ドストエフスキーの作品とは相性が悪い。『悪霊』なんか「文学愛好家」の意地で読んだところが強く、殆んど苦行ですらあったぐらいだ。私は難解で有名なヘンリー・ジェイムズやフォークナーの作品を読んでいる人間だが、どうも「思想」とは合わないらしい。しかし、『罪と罰』は例外だ。これは文句なく素晴らしい。一級のミステリーとしても充分評価できるし、思想的な側面も(私のような思想嫌いでも)堪能できる。ラスコーリニコフとソーニャの関係に目を向ければ恋愛小説としても読める。あと、訳者の工藤さんの訳、テンションがとにかく高い!
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.17:
(5pt)

ここまで深い作品とは・・・愛の小説

ロシアの大学生ラスコリーニコフは、赤貧で孤独でした。「優秀な人間は、高利貸しを殺してもかまわない。」という独自の発想により、彼は高利貸しの老婆と、偶然居合わせた老婆の妹を殺します。偶然とはいえ、何の咎もない老婆の妹を殺したことに、ラスコリーニコフは悩みだします。彼が偶然出合った、少女ソーネチカ。彼女は、家庭を支えるために、継母に言われて、街で体を売っていました。しかし、ソーネチカは、神への信仰を失っていませんでした。ラスコリーニコフに、犯した犯罪を告白されると、彼女はいいます。「十字路に立って、地面に口付けをして、神に罪を犯したことを告白 しなさい。」罪の意識にさいなまれていたラスコリーニコフは、十字路に立って地面に口付けをします。それを見ている街の人は、「頭が狂っている」「彼は聖なるぺテルスブルグに感謝しているのだ」と大笑いします。ラスコリーニコフは大声で叫びます。「私は、人を、殺しました。」彼の告白を陰から聞いていたソーネチカ。警察にラスコリーニコフが自首し、シベリアに流刑になります。その列車には、一生を彼と過ごそうと決意した、ソーネチカが乗っていました。罪を犯した男の魂を救う売春婦ソーネチカ。「人はなぜ殺人をしてはいけないのか」という主題とともに、ソーネチカのラスコリーニコフに対する愛の描写がとても良いです。世界的な傑作で、星5つです。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.16:
(5pt)

長いけど何度も読み返したくなる!!

この本を読んで考えさせられたことは、いったい人にとって罰というのはなんなのか?ということです。私は初め、罪を犯したあとに罰があるものだ!と考えていました。しかしこの本を読んで思ったのは、罰とは常に罪と一緒にいるのだ、ということでした。吸い寄せられるように読んでしまいます。ぜひ一度この本を開いてみてください。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.15:
(5pt)

人間の本質を見抜く鋭さと人間を包み込む暖かさ

今まで読んだどの小説とも比べることのできないすばらしい物語だった。今までに何回読み返したかわからない。これとカラマーゾフの兄弟が彼の代表作だが、この二作がほかの長編と比べても抜きん出ていると思う。人間の強さ、弱さ、悲しさ、愛おしさ、滑稽さが余すところなく描かれていると同時に、全編を通して人間を暖かく見守る作者の思いが溢れている。トルストイ同様にキリスト教の影響が非常に色濃く現れていて、人間を慈しむ神の存在を髣髴とさせる。文句なしの5つ星である。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.14:
(5pt)

非凡人には殺人を犯す権利があるか?

この本の中核を成しているのは、やはり主人公の元学生ラスコーリニコフによる殺人の動機でしょう。それは、予審判事ポルフィーリイとの言論対決によって徐々に明らかになっていきます。非凡な人間には、自分自身が納得する理由があれば、法律を破る(殺人を犯す)権利がある、という理論が殺人の動機になるわけですが、その後主人公は、殺人を犯したことに対する倫理的な問題よりも、自分は殺人を犯すに足る非凡な人間ではなくてただの凡人なのではないか、という問題に悩みます。この問題にドストエフスキーは、最終的に理屈で説明の付かない結論を与えていますが、その説明をあまりしないところに、かえって著者の深い洞察力がうかがえます。軽いカタルシスではなく、重たい問題意識を読者に与え、考え悩ませるのが狙いであるとすれば、まさに絶妙のエンディングと言えるでしょう。ところで、この本を古典たらしめているのは、殺人を犯したことによって苦悩するラスコーリニコフの姿が、多くの青年が成長の一時期に持つ悩みを具現化しているからだと思いますが、ドストエフスキーの問題意識は別のところにもあるようです。本書は、爛熟のロマノフ王朝下、農奴解放期の大混乱の中で、知的階級に属する若者たちが、生半可な理論を振りかざして、革命運動をしていたことに対する批判なのではないでしょうか。金貸しの婆さんを殺すこと、つまり現体制を転覆すること、それは同時に頭の弱いリザヴェータ、すなわち普通に生きている庶民の生活を破壊することにつながる、その責任が取れるのか、とドストエフスキーはこの本で警鐘を鳴らしているように思えます。その意味で私は、金貸しの婆さんはともかく、リザヴェータを殺したことにはほとんど言及しないラスコーリニコフに不気味さを感じると同時に、著者の視点の鋭さを見ます。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.13:
(5pt)

名場面の連続

下巻はいわば「クライマックス」の連続でした。ミステリーであり、哲学小説であり、恋愛小説であり、社会小説であり、演劇作品。いろんな要素が終末に向かって収斂していく様は凄いものがあります。
この作品は主人公がころころ変わります。つまり登場人物たちのキャラがみんな(他を圧倒しうるほどに)たっている。下巻の冒頭の主人公はマルメラードフの妻カチェリーナである。ちょっと圧倒されます。
ポルフィーリィが最後の登場する。今回は何の打算も無く、ただ彼に自首を勧めに。ポルフィーリィに有利な証拠は無い。けれども彼は確信している。この対決は確実にポルフィーリィの「勝ち」である。この対決だけでもこれは優れたサスペンスだった。このあと彼は2度と登場しない。何とかっこの良い舞台!の去り方なのか。エンターテイメントとはこうあるべきである。
中盤の主人公はスヴィドリガイロフであった。詐欺師としての半生。彼はどんな女もナンパ出来ると豪語する。ラスコーリニコフの妹ドゥーニャでさえ、あともう少しのところだったと彼は言うのである。ラスコーリニコフよりスヴィドリガイロフに共感してしまう私は異常なのだろうか。結末近く、自分が殺した(かもしれない)妻の幽霊を待ち望んで会うことが出来ない場面。私には彼の孤独がいたいほど分かる。
終盤はラスコーリニコフの魂の救済が描かれる。彼は「予定通り」自首する。ソーニャから十字架のペンダントを貰って。ところが、である。彼は監獄の中でさえもまだ自分の「罪」を認めていないのである。私は物語の最後に至っても彼は殺人を犯!すに至ったあの論理を捨てていないように思える。私の読み方は間違っているのだろうか。間違っていなかったなら、この論理の扱いを我々はどうしたらいいのだろうか。ところで、救済は別のところから現れる。つまりソーニャから。「二人を復活させたのは愛だった。」「思弁の代わりに生活が登場したのだ。」
罪と罰〈下〉 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰〈下〉 (岩波文庫)より
4003261372
No.12:
(4pt)

ポルフィーリィはまだか

この本を読もうと思ったきっかけは、高村薫の『マークスの山』『照柿』、つまり合田雄一郎シリーズを読んだからである。合田刑事の同僚に吾妻主任がいる。かれの一般的なあだ名は『ペコ』であるが、合田刑事だけは密かにもう一つあだ名を付けている。「明晰という言葉に怪奇という言葉を足してじっくり練りあげると吾妻哲郎という食えない金太郎飴が出来る。冷利というのも少し違うこの屈折した怪物に進呈する名前は、ドストエフスキーの描いた予審判事ポルフィーリィ・ペトローヴィッチ。」私はこの記述を読んで『罪と罰』をまだ読んでいないことに気が付いた。どうやら手塚治虫の漫画を見て読んだ気になっていたらしい。
『罪と罰』のあらすじは簡単である。ロシアの貧しい大学中退生ラスコーリニコフが『強者が弱者を犠牲にしてよい』という信念の元、金貸しの老婆を殺して金を盗む。完全犯罪かの様にみえたが、そのときからラスコーリニコフの悩みは始まる。直感で彼を犯人だと思ったポルフィーリィ予審判事の追求もある。心の清純な娼婦ソーニャに出会い、彼は心をいれかえる。記憶に基づき書いているので本当は違うのかもしれない。ただ、このてのテーマは映画で何回も何回も描かれてきたことだ。もう飽き飽きした。ところが、原作を読むと『飽きる』どころではない。オープニング近く、ソーニャの父親のマルメラドーフの酒場での独白を聞くと、この一編だけで一つの演劇作品が出来るなあと思わせる凄さがある。退職官吏マルメラドーフの家庭の実情が延々と述べられるのだが、彼の情けなさ、娘ソーニャが娼婦になった事情、元良家の子女だった彼の妻が病気になっている事情、等々が決して説明口調ではなく、酒飲みだからこそいえる『真実』をとき折々混ぜながら、長い長い告白を一気に読ませるのである。
上巻は『ラスコーリニコフの悩み始まる』ところまで。まだポルフィーリィは登場していない。
罪と罰〈上〉 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰〈上〉 (岩波文庫)より
4003261356
No.11:
(5pt)

圧巻の一言

ラスコーリニコフの若者特有の不安定な心を見事というまでに、繊細に描写しているさまは圧巻。地獄のどん底まで落としておいて、落としておいて、最後にやっと一筋の光を見出させるスリリングな展開は、時間を忘れさせる。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211
No.10:
(5pt)

冴える名訳!

 ドストエフスキーの作品の魅力といえば深遠な思想やスリリングな展開など枚挙に限りがないが、中でも忘れられがちでありなおかつ私が最も重視しているものとして、極度なハイテンションの滑稽さがあげられる。一見生真面目な小説と敬遠されがちなドストエフスキーだが、世の中これだけハイテンションな人々が出てくる作品も珍しいだろう。また外国語文学の翻訳独特の仰々しい文体がそれらの場面のハイテンションぶりをより絶妙なものにしていく。ことに飲んだくれの親父が妻に折檻されるシーンの訳、他の翻訳では『か・い・ら・く・なんだよー!旦那!』と訳すところをこの本では『う、うーれしいんだよー!学生さん!』と訳されているこの点などは作者のセンスが冴えておりまさに名訳といえよう。
罪と罰 (上巻) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:罪と罰 (上巻) (新潮文庫)より
4102010211

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