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ベル・カント
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ベル・カントの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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世界に稀なる歌姫・ロクサーヌ・ホスなるアメリカ人のプリマドンナを人質のうち、ただ一人の女性に据えたことで、音楽が人質、テロリスト双方の心を結びつける。 それは、まことに感動的である。が、しかし。 スペイン語、仏語、ギリシャ語、ロシア語までを操り、「自分の口から出た言葉には耳を貸さない」という天才的な日本人通訳・ゲン。 誰も知らなかったピアノの才能を披露することになる重役・カトウ。 チェスの才能を見せる10代のテロリスト。かてて加えて、これまた天才的な歌唱力を備えた、やはり10代のテロリスト・セサルーーと、とにかく、うじゃうじゃ天才が出現する。 その他、中盤を過ぎると、不自然さ、欠点が目立ってくる。 まず、時間の経過がよくわからない。いきなり、3ヶ月?4ヶ月?がたってしまう。 次に、いくら小学校の先生だったとはいえ、ジャングルを拠点にするテロリストの指揮官がチェスの達人? チェスなんて、どこで知ったのやら。 さらに。テロリストの数は「ペルー日本大使館占拠事件」とほぼ同じなのだが、兵士は全員少年少女で、指揮官が3人もいる。 この3人の指揮官の描き分けができておらず、私には帯状疱疹に悩むチェスの名手・アルフレードしか覚えられなかった。 さらに。オペラをこよなく愛する「ナンセイ」のホソカワ社長を初め、ピアニストに変身するカトウもそうだが、日本人人質が「グッド・モーニング」も解さないって? 日本企業の第一線で働く50代の実力者が、それはないでしょう。 作者は日本人とは、無言で微笑し、お辞儀をするだけの国民と思っているのだろうか。 翻訳が固く、こなれていない難点はあるものの、中盤までは一気に読ませる。 虜囚生活が長くなるにつれて、人質となった人々には、これまで働きづめだった人生を顧みる貴重な日々が与えられたことへの気づきが訪れ、そこへロクサーヌの歌が思いがけない「恩寵」として加味される。 家政に天職を見いだす副大統領、妻への愛と料理への情熱に目覚めるフランス人。ロクサーヌに愛の告白をする汗っかきで小心のロシア人の大男。人質になって初めて告解やミサを司ることができ、その機会を多いに楽しむ新米の神父などなど。人質側の造型は個性的かつ魅力的である。 が、それに比べて、テロリスト側は2人の少女(一人は向学心旺盛な美少女)と、帯状疱疹の指揮官以外、さっぱり「見えて」こない。これが一番致命的な欠点と思う。 不自然さは、まだある。ペルー大使館占拠事件と同じように軍がトンネルを掘っているのであれば、いくらなんでも手掘りであるはずがなく、騒音や振動があるはず(ペルー大使館事件では、削岩の騒音を消すため、大音量の軍歌が流された) 平和的解決の結果はペルー大使館事件とほぼ同じだが、突入に際して床を爆破するなどの音もなく、、、、 そして、最大の不自然さはエピローグである。どうしてこの2人が結婚するわけ?? 失ったものへの共通の哀惜から? いや、でも、「愛している」という言葉だけは使ったことのない彼が、はっきり「彼女を愛している」と言っているし…… 繰り返しになるが、中盤までは頁を繰るのがもどかしいほど。それゆえ、上記のもろもろが惜しい。 | ||||
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南米のとある小国の官邸がテロリストに占拠された話と聞けば、数年前実際に起きた「日本人大使公邸占拠事件」を思い出す人も多いだろう。そこで展開された状況は計り知れないが、少なくともこの小説の中では、奇妙な安らぎを湛える桃源郷を作り出したと言える。 外界から完全に閉ざされた状況の中で、人質となった各国の要人たちと、貧しい寒村で生まれ育ったテロリストたちは、まるで海を漂流していて無人島に辿り着いた人達の様に、いつしか協力し合い共に美しい楽園世界を作り上げていく。 『ストックホルム症候群』の様でもあるし、お伽話と言えなくもないが、綴られる一つ一つのエピソードが実に美しい。 事件そのものは、やはり悲劇なのだが、居合わせた人々にとっては、「きちんと生きること」を知る機会ともなり、人間はどんな状況からでも学ぶことが出来るのだなと改めて感じさせられる。 | ||||
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