昏き目の暗殺者
- 暗殺 (172)
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カナダのある地方で女性が事故で死に姉が疑いを抱くが・・・というお話。 と書きましたが、一行では総括できないような長い作品で、主人公を中心とするある一家の20世紀が詳細に語られる中に主人公の妹が書いたとされる小説の挿話が挿入されながら進行していくとても長いお話。 主筋の主人公一家の話はカナダの激動の20世紀を編年体で叙述した感じのストーリーであまり語られてこなかった、或は日本では紹介されてこなかったカナダの歴史を概括していて面白く読めました。 傍筋の挿話はあるくたびれた感じの男女のラヴ・ストーリーでその男の方が作中作を書いていて、チャイニーズ・ボックスみたいに入れ子構造になっていてフラン・オブライエンの傑作「スイム・トゥー・バーズにて」みたいで楽しめました。 全体としてアトウッド女史がこの作品で何をやりたかったかはよく判りませんが、勝手に憶測して書かせてもらえば、カナダの20世紀の総括を一つの小説でやりたかったのでは、と思いましたが安易でしょうか。主筋の釦工場一家の波乱に満ちた歴史がそのままカナダの通年史、疲れた感じの男女の傍筋が大国であるにも関わらずアメリカの影に隠れて存在を無視されがちなカナダの暗喩、その男が書いているSF戦争小説がカナダの戦争の歴史のまた暗喩ではないか、という風に捉えることが出来ると考えましたが穿ちすぎでしょうか。 または以上のようなことを全て無視して単なるサスペンスとして読むべきか、とも思いましたが・・・。 いずれにしろ文章は平明で読みやすく、主筋と傍筋の描き分けも巧みで非常に楽しめました。ちょっと長いようにも感じましたが・・・。カナダにも偉大なる文学の伝統があるということを知らしめる秀作。長いけど面白かったです。 上記はハードカバーで読んだ際の感想です。今回文庫で読み直しても同じ様な感想を持ちました。以下で多少ネタに触れるので、興を削ぐとまずいので、未読の方は読まないでください。 ハードカバーで読んだ際は気づかなかったのですが、主人公が一人称で語っている所に仕掛けがあり、所謂信頼できない語り手の工夫がなされているのが今回読み直して判りました。その後の展開も作中作の著者も実は・・・という展開で、何が事実で何が真実かよく判らない文学的迷宮に彷徨う様な感じを受けました。ナボコフの「淡い焔(青白い炎)」みたいでした。ミステリの賞を獲ったのも頷けます。 また、ただ文章を読むだけで、楽しい、読む喜びに溢れていたいたので、単純に楽しめました。アトウッドさんはノーベル賞を獲っても獲らなくても偉大だと思います。前読んだ時よりも面白かったので、☆の数を増やしました。 カナダを代表する作家の傑作。必読。 | ||||
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キンドル版を購入しました。時々校正ミスがあるのが気になります。キンドル版だからでしょうか。 内容は面白いです。 | ||||
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マーガレット・アトウッドが最近の女性差別のニュースなどで再び注目されるようになっている。SFである「侍女の物語」や未来の神話的世界を描いたマッドアダムトリロジーと違って、この物語の設定が1900年代始めであることを考えて読む。閉ざされた世界、結婚に対する考え方、戦争、大恐慌、そういう時代にあって、母親を早くに亡くし理想に敗れた父親を遠目に眺めながら、主人公は育ち、やがて家族を経済的に救うために結婚する。 家族によって、お金によって、世間の価値観によって、それを「あたりまえ」だと飲み込むことが、理不尽だとすら思えずに、人形のように結婚するアイリスはまさに作中作の「舌を抜かれた捧げもの」のようだ。ところが物語が進むに連れ、小さな手がかりが集まって、全体が違う様相を見せて来る。 ひとは自己憐憫により盲目になる。そうしてしか生きられなかった彼女を、誰が裁けるだろう。老年アイリスの皮肉っぽい痛烈なブラックユーモアに唸りながら、最後にアイリスが孫に語るくだりは胸が熱くなった。 | ||||
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内容は満点です。ただし、タイトルの訳し方を見て分かるとおり、翻訳者の個性がかなり強く出た訳文です。 kindle版が安かったので購入しましたが、誤植だらけです。形の似た文字の間違いや、濁点の有無などが多いので、おそらくスキャンした後、きちんと確認していないんだろうと思われます。 早川にしては雑な仕事だと感じます。 | ||||
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作者の作品を読むのは、代表作「侍女の物語」、出世作「浮かびあがる」に続いて本作で三作目だが、作者の集大成とも言える重厚な傑作だと思った。邦題からミステリという印象を受け、確かにその趣きもあるのだが、この邦題は若くして亡くなったヒロインの妹が残した唯一の小説(作中作)の名称である。物語は老境に入ったヒロインが、当時自動車事故死と判断されていた妹の死の真相及び作中作に登場する男女のペア(のモデル)を追想しながら探究して行く姿を描くという形で進む。そして、この回想譚が地方の名家であるヒロイン一族の五代に渡る詳細な年代記(あるいは2回の世界大戦が影を落とす20世紀全体に渡るカナダの社会史)になっているという構想が本作を文学的に重層的かつ壮大なスケールのものとしている。マジック・リアリズムではないが、「百年の孤独」を想起させる全体構成である。 カットバック気味に挿入される作中作は、作者の代名詞である"フェミニズム"小説の香りが漂うミステリ・タッチの作品で、「浮かびあがる」と少し似ているが、作中の男が"異界"を舞台にした寓話を語るという二重構造となっており、全体構成と併せて、読者を神秘と呪術に満ちた迷宮へと誘うという凝った創り。一方、ヒロインの回想譚は作者特有の風刺と皮肉に満ちた鋭い人間観察眼で、祖父の代からの一族の歴史を、むしろ淡々と木目細かく綴って行く。この中には作者の死生観、言葉遊び、文学的嗜好、神学論等が詰め込まれていて読み応え充分である。更に、回想譚にはヒロインの現在の境遇も境目なく含まれる上に、所々、各時代の新聞記事(これだけは史実という意味だろう)も挿入されるので、作者が提示する記述形式の多彩さに読者は酩酊感を覚えざるを得ない。 そして、回想譚と作中作とが交錯し、ヒロインの孤独が浮き彫りにされるラストは圧巻で、作者の筆力には改めて感心させられた。上述した通り、作者の集大成と呼ぶに相応しい傑作だと思った。 | ||||
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