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ネオナチの少女
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ネオナチの少女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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ヴァイス『ドイツの新右翼』の副読本の位置付けか。ポストモダン的文化や左翼的手法(ユートピア村とか僻地での軍事訓練って左翼の手法ですよね)をとりいれつつ、実際は古いまま、子どもや低学歴者しか動員できない。上でも書かれているとおり、脱退の場面は全然納得行くように書けていませんね。普通の不良の世界程度の抜けにくさでしかなかったようで。ただ単にだめな連中の集まりだったから辞めている。親からやらされていたから感が強すぎ、そこに留まりたいと思わせるような魔力を感じさせるようなものがほとんどない。というか全体的に筆力が足りないというか、感覚・印象に基づいた記述が多く(といってもさほど印象的な叙述はできていない...)、まったく分析的な叙述になってませんね。経験した内容も、カルトや犯罪組織に捕らわれていたとかそこまでドラマチックなものではない(わけではないのかもしれないけれど筆力がない)。こんなんじゃ『レッド』は描けないな。中に書かれているとおり、著者が義務教育しか経験せず若くしてならず者の世界に入ったため、根本的に勉強が足りないせいではないかと思われます。わざわざ翻訳して出すほどの本ではなかったかもしれない。あまりにも内容が薄い。極右の知的空虚さを如実に示してくれる本ではある。 | ||||
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著者は1992年ドイツ南部のミュンヘン近郊に生まれた女性です。父親がナチス信奉者であったため、著者は5歳のときに右翼団体のキャンプに参加させられるなど、幼いころから思想教育を徹底されて育ちました。その彼女の生い立ちが、10代の終わりのころに極右活動ときっぱり手を切る日に至るまで綴られています。 私はヨーロッパで昨今大きな問題になっている移民問題を読み解くための特異な経験談を読めるものと期待してこの書を手にしました。確かに、親の影響を受けて幼少期から極右思想を植え付けられることのどうしようもない不気味さ、そうした世界こそが唯一絶対と信奉していく著者の姿は、心胆を寒からしめるものです。 著者のように子どもを極右思想で育てようとする親たちが高学歴・高収入である点は、教育がナチズムへの防衛策と必ずしもならないことを感じます。 また、ナチスが移民排斥に留まらず、東プロイセンの再ドイツ化を企図している話も、領土問題のひとつの視点として興味深く読みましたし、若者をひきつけるために極右ロックというジャンルが利用されている話も新たな発見でした。 しかし、その一方で、骨の髄まで植え付けられたはずの極右思想を著者が捨てるにいたる経緯が判然としません。幼いころに読んだ本にナチズムの不当さを感じたり、酔ったドイツ人にからまれそうになった際に旧ユーゴスラビアからの移民の青年に助けられたりした経験も、著者をナチズムから引き離す大きな力にはならなかった様子が描かれます。 著者を変えたのは妊娠だったといいます。同じく極右メンバーだった男性と交際中に予期せぬ妊娠をして、そのことを契機に「一夜にして」生まれ変わったと記すのです。 「迷いはなかった。あらゆる問いに対する答えは初めからわかりきっていたのだから――私たちの子どもは絶対にナチにしない。母になると知ったその瞬間、ナチのイデオロギーはその魅力を完全に失った」(205頁)。著者はこう綴りますが、その論理展開がどうにも私の胃の腑に落ちません。子どもができたと分かった瞬間、生まれてくる子どもをこれまでの自分と同様、ドイツの純粋性を追求する新たな極右戦士に育てようと決意する選択肢がなぜなかったのか。その選択をしなかった理由がこの記述からはうかがえません。 また、夫となったフェーリクスも同様に極右活動から足抜けを図るうえで、「支援組織『EXIT』の支援を受け」たと一言記されますが(230頁)、受けた支援の内容が漠然としています。ナチというカルト宗教からの脱会は一朝一夕に成し遂げられるはずもなく、洗脳を解くために膨大な時間と多大な努力が必要なはずなのに。 私は移民排斥の声に大いなる違和感をおぼえていて、そうした反移民思想そのものを排斥するための根拠や手立てを脱退体験者自身の口から聴けるものと思っただけに、その詳しい内容を知ることができなかったことがとても残念でした。 -------------------------- *189頁:ドイツ「連邦外務大臣ヨシュカ・フィッシャー」という記述がありますが、ドイツは共和国ですから「大臣」という言葉はなじみません。朝日・読売・産経・日経の各新聞社は「外相」と表現しているので、こうした新聞を普段読んでいる身としては、「ドイツの外務大臣」という言葉に違和感を覚えました。 -------------------------- ドイツのナチズムが、東西ドイツ統一後の新社会に適応できない若者たちを魅了したという考察が117頁に出てきました。だからこそ彼らは極右ロックを聴きながら「俺はもうひとりじゃない」と感じるのだとか。 こうした孤独を埋めたいと感じるドイツの若者たちの姿を読んで思い出した書がありました。以下に紹介しておきます。 ◆クリスチアーネ・フェルシェリノ『』(読売新聞社/1981年)と『』(中央公論新社/2015年) :1962年生まれの著者は10代のころから薬物におぼれ、すさんだ人生を歩みます。彼女の体験は『』のタイトルで映画化もされました。 結局、著者は母となっても人生を完全に修正することができず、50代になって健康を大いに害しているところまでが描かれます。なんとも痛ましい自伝ですが、それでも人間の業のようなものを感じさせる凄みをもった2冊です。 . | ||||
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