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ツィスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.17pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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近所の古本市で本書を見かけ、前に読んだ同じ作者の『マイナス・ゼロ』が好印象だったので購入しました(私のは2008年8月の改訂新版第1刷).まず神奈川県C市で聴力の鋭い人にツィスの純音(577Hz(ほぼド#))が聴え始め、段々音が大きくなってやがて人が住めない状態(レベル7)までエスカレートし、東京都民が疎開するに至る.人がいない、もぬけの殻となった東京都の情景はシュールですね.本書の刊行は1971年(昭和46年)であり、その昭和レトロな社会風俗がいかにもで、懐かしいような恥ずかしいような感じです.普通に想像すれば大惨事のはずだが、事態の推移の描写が妙に丁寧でパニック感がほとんど無い(テレビの報道番組も視聴率に一喜一憂している).また記述の中心人物が、病院に訪れた患者→精神科医師→患者の娘→大学教授→テレビ局のスタッフ→イラストレータとその恋人・・と次々に移り、かつそれらの人物像が全て表層的なので小説を読む没入感・ドライブ感を得られず、400頁を超える本書を読み進めるのは私にとって少々苦痛でした.ただ、ラスト40頁ほどでの結末の付け方にはちょっとびっくり.それまでの描写が平面的だっただけにかえって人間心理の底知れなさが感じられ、不気味な読後感があります.爽やかなノスタルジーに満ちた『マイナス・ゼロ』ほど万人向けとは思いませんが、著者の作品をもっと読みたい、という方は是非どうぞ. (追記)本書の解説は司馬遼太郎氏であり、作者の精神に「透明度の高いナルシシズム」を感じた、という文章には流石、上手く抽象したものだなあ、と感心しました.その見立てに私も賛成です.東京の厄災で地方に疎開しながら、疎開してきた東京人が地方人からどう見られるか、という視点が全くなかったのには、特に悪気がないだけにちょっと引っ掛かります. | ||||
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